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ハイドと婚約者の関係
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ーイノリsideー
「ハイド様の婚約者?」
「……う、うん…」
「やっぱり気になるんだ」
「…い、一応…噂くらいあってもいいのに全然聞かないから」
数日が経過したある日、イブが店にやって来た。
イブは決まった日に来るから、きっと今日は休日なのだろう。
新作のフルーツが沢山乗ったケーキを買っていた。
イブが来たら聞こうと思っていた事をイノリは聞いてみた。
最初はハイドは大丈夫かという事を聞いた。
イブは普通に仕事をしているから大丈夫ではないかと言っていた。
イブとハイドでは身分が違うらしくて、あまり傍にいる事は出来ないと悲しんでいた。
ハイドの傍にいられる、リチャードと直属の部下だけらしい。
また無理をしていないか直接ハイドを見ていないから心配だ。
イブに「身体には気をつけてってイブくんの言葉で伝えといて」と言うとイブは頷いた。
イノリの言葉だと知られるわけにはいかないから、イブが言うなら問題ないだろう。
それと、婚約者の事が気になった。
別に他意はないが、ちょっと不思議に思った程度だ。
イノリ自身も常連客に聞いてみた。
もし婚約者の事を知られていないならイノリから言うわけにもいかず、ハイドに恋人はいるかと聞いた。
そして、何故かイノリがハイドのファンだと噂が広まってしまった。
……まぁ、好きなのは同じだからいいけどね。
ファンだと言うと、ハイドの事を知りたがってもそこまで変ではないから都合がいい。
そして聞いた話は、ハイドには恋人がいて…お菓子作りが趣味でハイドと城に住んでて優しくていい子だったけど、亡くなってしまったと聞いた。
それは自分の事だろうと、イノリは苦笑いした。
瞬の話しか聞かず、やっぱりまだ公表していないのかと不思議だった。
イブなら街の人より内部の話を知っているか聞いてみた。
イブは周りを見渡して、他に人がいるところでは話せないと言っていた。
店が終わった時間にまた来ると、イブは店を出た。
そして、夕方頃…今日の分のお菓子を売り終わり店を閉めた。
近くで待っていたのか、すぐにイブがやって来た。
店を開けてイブを店内に入れる。
この前はシヴァと話して、今日はイブとお茶をするんだなと嬉しく思った。
まったりする時間はイノリの楽しみだ。
イブと話す内容は、全くまったりする内容ではないが…
イブが椅子に座るとお茶を出した。
「ありがと…」
「この紅茶美味しいんだよ、外国からの輸入品なんだってよろず屋のおじさんに聞いたんだ」
「…ふーん、確かにほんのり苦くて甘いものに合うかもね」
イブが分かってくれて、目を輝かす。
イノリがジッと見すぎたからか、イブは顔を逸らした。
そうだ、イブがここに来てくれたのはハイドの婚約者を話してくれるからだ。
結果的に言うのは、イブは婚約者とハイドが何処まで行っているのか分からないらしい。
そもそも婚約者について、ハイドとリチャードしか知らない極秘の話らしい。
イブはお喋りなメイドから聞いたみたいで、瞬もメイドの話を聞いた。
そのメイドはハイドとリチャードの会話を聞いたらしい。
瞬もハイドとリチャードの会話を聞いて本当だと思った。
だから誰も、本人から直接聞いていないという事になる。
でも婚約者がいる事は本当らしく、イブは話してくれた。
「カーニバルの前日、ハイド様の婚約者がいて泊まってたんだって」
「……そ、そうなんだ…その婚約者の人とカーニバル過ごしたのかな」
「いや、当日の朝に帰ったんだって」
ハイドの婚約者が城にやって来て、騎士達にもハイドの婚約者の噂がより広まったらしい。
カーニバルには参加していない、ハイドは体調を崩していたから婚約者がいてもカーニバルどころではなかっただろう。
イブは婚約者の事が気になって、ずっとこそこそと部屋のドアを廊下の角から見ていたらしい。
何度もリチャードにからかわれて、その怒りを思い出したのか紅茶を一気に飲み干していた。
イブはリチャードの部下だが、リチャードが不真面目な性格だからかイブはリチャードに敬語を使わないし尊敬もしていなかった。
それは瞬が生きている時から変わらなかった。
イブはリチャードが嫌いみたいだが、イノリからしたら仲がいいなと思う。
「ハイド様、婚約者の部屋に一度も来なかったんだよね」
「…そうなの?」
「瞬の部屋には毎日のように来てたのにね」
ハイドが部屋に来なかっただけで、不仲だとは思わない。
でも、イブの言った通りハイドはほとんど毎日瞬に会いに部屋に訪れていた。
どんなに忙しくても、疲れていても瞬を見るだけで癒されるとハイドは笑っていた。
瞬が疲れている時は遠慮して来ない日もあったから、もしかしたら婚約者は疲れていたのかもしれない。
婚約者の話を街の人が知らないとなると、きっと他国の人だろうし長旅で疲れたのかもしれない。
もしかしたら結婚の挨拶に街に来たのかもしれない。
イブはハイドに婚約者について聞いてみた事があったらしいが、プライベートだからと何も教えてくれなかったようだ。
結局、ハイドと婚約者の関係は全く分からなかった。
でも、仲はいいと思う…じゃないとわざわざ遠くの国まで来ないだろうし。
「イブくん、紅茶のおかわりいる?」
「うん」
空になったカップを掴んでカウンターに戻る。
ふと、ドアの方を見ると…そこにいた人物に驚いた。
ドアを見つめて固まるイノリに、イブもドアを見つめて慌てたように立ち上がった。
店のドアは開いているから、その人は店の中に入っていった。
いつものような明るい表情ではなく、何処か暗い表情でイノリを見つめていた。
イノリの前にイブが立って、庇うようにしていた。
「ちょっとリチャード、今閉店してるんだけど」
「俺は客じゃない、そこの子……瞬様に話があるんだ」
「…っ」
リチャードははっきりと瞬に会いに来たと言っていた。
なんで、瞬だという事がバレたのか分からなかった。
なにか瞬だと思わせる行動を無意識にしただろうか。
イブは必死に「違うし!目が腐ってるんじゃないの!?」とイノリを庇っていた。
リチャードは疑問もなく、イノリが瞬だと確信していた。
もう、誤魔化す事は出来ないと…そう思った。
リチャードはハイドに一番近い、ハイドにさえ言わなければリチャードにバレても…もう手遅れだし仕方ないと思っている。
「リチャードさん、ハイドさんには言わないで下さい」
「…じゃあ、瞬様だって認めるんだね」
「………」
「ちょっと!カマかけたわけ!?最低最低!ってか僕の後付けてきたんでしょ!?」
イブはリチャードに向かってポコポコと殴っていた。
でも、リチャードには全く聞いていなくて無視されていた。
イノリを真っ直ぐ見つめるリチャードに緊張する。
リチャードのあの顔は分かっていると感じた、だからカマかけたわけではないだろう。
「ハイド様の婚約者?」
「……う、うん…」
「やっぱり気になるんだ」
「…い、一応…噂くらいあってもいいのに全然聞かないから」
数日が経過したある日、イブが店にやって来た。
イブは決まった日に来るから、きっと今日は休日なのだろう。
新作のフルーツが沢山乗ったケーキを買っていた。
イブが来たら聞こうと思っていた事をイノリは聞いてみた。
最初はハイドは大丈夫かという事を聞いた。
イブは普通に仕事をしているから大丈夫ではないかと言っていた。
イブとハイドでは身分が違うらしくて、あまり傍にいる事は出来ないと悲しんでいた。
ハイドの傍にいられる、リチャードと直属の部下だけらしい。
また無理をしていないか直接ハイドを見ていないから心配だ。
イブに「身体には気をつけてってイブくんの言葉で伝えといて」と言うとイブは頷いた。
イノリの言葉だと知られるわけにはいかないから、イブが言うなら問題ないだろう。
それと、婚約者の事が気になった。
別に他意はないが、ちょっと不思議に思った程度だ。
イノリ自身も常連客に聞いてみた。
もし婚約者の事を知られていないならイノリから言うわけにもいかず、ハイドに恋人はいるかと聞いた。
そして、何故かイノリがハイドのファンだと噂が広まってしまった。
……まぁ、好きなのは同じだからいいけどね。
ファンだと言うと、ハイドの事を知りたがってもそこまで変ではないから都合がいい。
そして聞いた話は、ハイドには恋人がいて…お菓子作りが趣味でハイドと城に住んでて優しくていい子だったけど、亡くなってしまったと聞いた。
それは自分の事だろうと、イノリは苦笑いした。
瞬の話しか聞かず、やっぱりまだ公表していないのかと不思議だった。
イブなら街の人より内部の話を知っているか聞いてみた。
イブは周りを見渡して、他に人がいるところでは話せないと言っていた。
店が終わった時間にまた来ると、イブは店を出た。
そして、夕方頃…今日の分のお菓子を売り終わり店を閉めた。
近くで待っていたのか、すぐにイブがやって来た。
店を開けてイブを店内に入れる。
この前はシヴァと話して、今日はイブとお茶をするんだなと嬉しく思った。
まったりする時間はイノリの楽しみだ。
イブと話す内容は、全くまったりする内容ではないが…
イブが椅子に座るとお茶を出した。
「ありがと…」
「この紅茶美味しいんだよ、外国からの輸入品なんだってよろず屋のおじさんに聞いたんだ」
「…ふーん、確かにほんのり苦くて甘いものに合うかもね」
イブが分かってくれて、目を輝かす。
イノリがジッと見すぎたからか、イブは顔を逸らした。
そうだ、イブがここに来てくれたのはハイドの婚約者を話してくれるからだ。
結果的に言うのは、イブは婚約者とハイドが何処まで行っているのか分からないらしい。
そもそも婚約者について、ハイドとリチャードしか知らない極秘の話らしい。
イブはお喋りなメイドから聞いたみたいで、瞬もメイドの話を聞いた。
そのメイドはハイドとリチャードの会話を聞いたらしい。
瞬もハイドとリチャードの会話を聞いて本当だと思った。
だから誰も、本人から直接聞いていないという事になる。
でも婚約者がいる事は本当らしく、イブは話してくれた。
「カーニバルの前日、ハイド様の婚約者がいて泊まってたんだって」
「……そ、そうなんだ…その婚約者の人とカーニバル過ごしたのかな」
「いや、当日の朝に帰ったんだって」
ハイドの婚約者が城にやって来て、騎士達にもハイドの婚約者の噂がより広まったらしい。
カーニバルには参加していない、ハイドは体調を崩していたから婚約者がいてもカーニバルどころではなかっただろう。
イブは婚約者の事が気になって、ずっとこそこそと部屋のドアを廊下の角から見ていたらしい。
何度もリチャードにからかわれて、その怒りを思い出したのか紅茶を一気に飲み干していた。
イブはリチャードの部下だが、リチャードが不真面目な性格だからかイブはリチャードに敬語を使わないし尊敬もしていなかった。
それは瞬が生きている時から変わらなかった。
イブはリチャードが嫌いみたいだが、イノリからしたら仲がいいなと思う。
「ハイド様、婚約者の部屋に一度も来なかったんだよね」
「…そうなの?」
「瞬の部屋には毎日のように来てたのにね」
ハイドが部屋に来なかっただけで、不仲だとは思わない。
でも、イブの言った通りハイドはほとんど毎日瞬に会いに部屋に訪れていた。
どんなに忙しくても、疲れていても瞬を見るだけで癒されるとハイドは笑っていた。
瞬が疲れている時は遠慮して来ない日もあったから、もしかしたら婚約者は疲れていたのかもしれない。
婚約者の話を街の人が知らないとなると、きっと他国の人だろうし長旅で疲れたのかもしれない。
もしかしたら結婚の挨拶に街に来たのかもしれない。
イブはハイドに婚約者について聞いてみた事があったらしいが、プライベートだからと何も教えてくれなかったようだ。
結局、ハイドと婚約者の関係は全く分からなかった。
でも、仲はいいと思う…じゃないとわざわざ遠くの国まで来ないだろうし。
「イブくん、紅茶のおかわりいる?」
「うん」
空になったカップを掴んでカウンターに戻る。
ふと、ドアの方を見ると…そこにいた人物に驚いた。
ドアを見つめて固まるイノリに、イブもドアを見つめて慌てたように立ち上がった。
店のドアは開いているから、その人は店の中に入っていった。
いつものような明るい表情ではなく、何処か暗い表情でイノリを見つめていた。
イノリの前にイブが立って、庇うようにしていた。
「ちょっとリチャード、今閉店してるんだけど」
「俺は客じゃない、そこの子……瞬様に話があるんだ」
「…っ」
リチャードははっきりと瞬に会いに来たと言っていた。
なんで、瞬だという事がバレたのか分からなかった。
なにか瞬だと思わせる行動を無意識にしただろうか。
イブは必死に「違うし!目が腐ってるんじゃないの!?」とイノリを庇っていた。
リチャードは疑問もなく、イノリが瞬だと確信していた。
もう、誤魔化す事は出来ないと…そう思った。
リチャードはハイドに一番近い、ハイドにさえ言わなければリチャードにバレても…もう手遅れだし仕方ないと思っている。
「リチャードさん、ハイドさんには言わないで下さい」
「…じゃあ、瞬様だって認めるんだね」
「………」
「ちょっと!カマかけたわけ!?最低最低!ってか僕の後付けてきたんでしょ!?」
イブはリチャードに向かってポコポコと殴っていた。
でも、リチャードには全く聞いていなくて無視されていた。
イノリを真っ直ぐ見つめるリチャードに緊張する。
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