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ハーレー国の目的
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とても小さな声だったが、答えてくれてイノリも頬が緩む。
男達は会話に夢中になっていて、イノリは逃げ出そうとしたが入り口にハーレー国の騎士が居てパーティーを抜けようとした人を引き止めていた。
正面から無理だ、別の方法はないか周りを見渡す。
ユウはイノリの服を掴んで引っ張っていて、後ろを振り向いた。
「どうしたの?」
「あんた、まだ目が死んでないんだね…新人」
「…えっと、まぁ」
「俺の身体はもうボロボロだよ、あのジジイ性欲の塊なんだよ」
ユウは悔しそうに唇を噛んで、震える身体を抱きしめていた。
ユウの話を聞いた、ユウは元々イズレイン帝国の人間だった。
いろんな国に行って商売をする仕事を幼い頃からしている。
ユウの家は大家族で、少しでも家のためにと頑張っていた。
しかし、運悪く奴隷制度がある国で商売をしてしまい…客とトラブルになり奴隷商人に捕まった。
それから一年もの間…買われた先で酷い目に合っていたそうだ。
「……帰りたいのに、死ぬまでアイツの奴隷だ」
「……」
「あんたも、これから想像以上に酷い目に合うだろうけど…頑張って」
イノリはユウの腕を掴んで、ユウは驚いた顔をしていた。
栄養が取れていない、細すぎる腕……生きる希望がないなんてそんなの悲しすぎる。
「一緒に逃げよう」とイノリが言うと、ユウは驚いた顔をしていた。
イズレイン帝国に帰るなら、イノリも方向は同じだ。
だから一緒に行こうとユウを真剣な眼差しで見つめるとユウの瞳から涙が溢れていた。
すると、パーティー会場の電気が消えて爽快な音楽が鳴り響いた。
耳を塞ぎたくなるような、嫌な男にイノリとユウは眉を寄せた。
「お集まりいただきありがとうございます!これより、ハーレー国とヴァイデル国の記念すべき同盟を結ぶ瞬間が…」
会場は異常なほど大盛り上がりを見せていて、スポットライトがステージに当てられた。
そこにいたのは、ハーレー国の騎士服を着た全身が鎧の人物だった。
周りの人間は「アレフ様だー!!」と盛り上がっていたが、正直自己紹介もしていないのにあれが誰だか分かるのが不思議だ。
向かい合うように立つのは、綺麗な女性で…同盟を結ぶというのに表情は暗かった。
異様な光景に嫌な予感がする……これじゃあまるで無理矢理同盟を結ぶみたいだ。
誰かがステージに向かって叫ぶ声が聞こえた。
皆そちらを見ると、そこにいたのはイズレイン帝国の騎士服を着た男だった。
驚いた、まさかここにイズレイン帝国の騎士がいるなんて思わなかった。
しかし、何故だか雲行きが怪しく感じた。
「ヴァイデル国王妃!!裏切り行為は死に値する!」
そう言ってステージの上に上がり、女性に剣を向けていた。
こんな緊急事態なのに、何故かヴァイデル国の騎士はイズレイン帝国の騎士を止めようとしていなかった。
貴族達からは「イズレイン帝国はヴァイデル国との同盟を破った!」と騒いでいた。
騒いでいるだけで、自分は安全なところで見ているだけのように感じた。
イズレイン帝国の騎士が剣を振り上げて、ヴァイデル国の王妃と呼ばれた女性は目蓋を閉じてジッとしていた。
剣と剣がぶつかる激しい音がざわめきの中響いて、血飛沫が舞い上がった。
ステージから落ちて、イズレイン帝国の騎士は倒れていた。
それをステージから見下ろす人物を見て、イノリは一瞬だけ息をするのを忘れた。
誰かがその名前を口にして、その人は視線を同盟を結ぼうとしたハーレー国の騎士に向けた。
ハーレー国の騎士は一歩後ろに下がって腰に下げていた剣を掴む。
「貴様、何故ここにいる!?」
「ヴァイデル国に無償で用心棒をしている、というところだ」
「同じ志の騎士を殺して、反逆罪になるぞ!ハイド・ブラッド!!」
「我が国を陥れ、敵に寝返ったのなら…この男はイズレイン帝国の騎士ではない」
何だかよく分からないが、会場はパニックになっていた。
その混乱の中、イノリは目を離せなくなった。
ーハイドsideー
ハイドは身分を隠し、ミゼラの婚約者として自由に出来るが…ハーレー国の亡霊ならハイドの顔は知っている…あまり目立つ事はしない方がいい。
女性の部屋で寝泊まりするのは気まずいものがあったが、客用の部屋はハーレー国の騎士に占拠されて仕方なかった。
王妃とミゼラの姉は自分の部屋に向かった…あまり自分の部屋を離れていると怪しまれると言っていた。
いろいろと気になる事がある、何故…突然こうなってしまったのか。
「俺が数日前にここに訪れた時は通行手形なんてなかったし、ハーレー国の騎士があんなに沢山いなかった」
「ハーレー国の力が増したのはつい最近の事です、知らないのは無理ありません」
ハーレー国はいろんな国を支配しようとしている動きがある事を知った。
しかも、中立やイズレイン帝国と同盟を結んでるところばかりを狙っている。
ハーレー国の狙いは、イズレイン帝国への復讐だろうとミゼラは話す。
ヴァイデル国の王族達は国民にとても慕われていた。
しかし、一部の貴族達にはイズレイン帝国と同盟を結んだ事により奴隷制度がなくなり嫌われていた。
ハーレー国の人間は、そんなヴァイデル国に不満を感じている貴族達を仲間にしていた。
ヴァイデル国がハーレー国のものになれば奴隷制度を復活させると…
今はまだ奴隷制度はないが、貴族達は隠れて奴隷を連れていて…前まではひっそりとやっていた。
奴隷を堂々と連れて歩くのは、ハーレー国にヴァイデル国が支配されてからだ。
王妃も奴隷制度の違反者はたとえ貴族でも罰しなくてはいけないと考えていた。
しかし、王族達は人質を取られていて今はハーレー国に従う事しか出来ない。
その人質がいるから、同盟を結ばされると言っていた。
「人質とはいったい誰なんですか?」
「私の一番上の姉、ヴァイデル国の次期王女です」
ミゼラも辛いのか、悲しい顔をして窓を見つめていた。
逆らった場合、真っ先に次期王女が殺される…だから嫌だが従っていた。
そしてミゼラは霊媒だけではなく、未来を予知する能力もあるらしい。
ミゼラが未来に見た光景を見えるから、ミゼラがいない場所の未来は見えない。
そこで未来のミゼラは見た、母がイズレイン帝国の騎士に殺される瞬間を…
ハイドはミゼラの予知能力を疑うわけではないが、ありえないと思った。
イズレイン帝国の騎士が何故ヴァイデル国の王妃を殺すのか。
「どういう事ですか」
「それが、大勢を呼んだパーティーの目的です」
ヴァイデル国とハーレー国の同盟に賛成しているのは奴隷制度が欲しい一部の貴族だけ。
他の貴族達や国民はこの同盟に反対していた。
今まで平和だったヴァイデル国がハーレー国のものになるんだ、当然嫌だろう。
そしてヴァイデル国があるのはイズレイン帝国のおかげだと思っている人は多い。
だから、ヴァイデル国の国民に愛されている王妃をイズレイン帝国の騎士が殺して…イズレイン帝国が裏切ったと思わせたいらしい。
パーティーには貴族だけではなく、情報を流す国民も呼んでいる。
イズレイン帝国に対してヴァイデル国の国民達が憎悪を向けて、ハーレー国の駒にしようとしている。
それがミゼラが見た、パーティーの結末だった。
一度イズレイン帝国に潜入したハーレー国の騎士がいた。
その騎士に瞬は殺された、でも妙なところがあった。
イズレイン帝国は入るのに厳しくはないが、他国から来た人間には持ち物検査はする。
何故、あんな旧騎士服を着た男達が入れたのか…それにその服は何処から仕入れたのか。
裏切り者がいると思い、調べたが全く見つからなかった。
もし、今回ハーレー国に協力しているイズレイン帝国の騎士が裏切り者だとしたら騎士団長であるハイドがこの手で終わらせなくてはならない。
「…まずは人質を見つけてからの方が安全か」
「ですが、私達が行ける場所には当然お姉様はいませんでした」
「…だとしたらハーレー国の騎士がいる場所か」
王族が滅多に来なくて、ハーレー国の騎士が見張っている場所…客用の部屋が怪しい。
しかし、そこまで行くにはハーレー国の騎士にバレないようにしなくてはいけない。
バレたら最後、人質だけではなくミゼラ達も危険な目に合う。
ミゼラに城の地図を見せてもらうように頼んだ。
正面より別の入り口があればそこから客用の部屋に潜入する。
部屋の中でなにがあっても、外に漏れるような失敗をしなければバレる事はない。
「これなら、入れます」
「……仕方ない、か」
ハーレー国の騎士も馬鹿ではない、正面以外に入り口がない客用の部屋を当然選んでいる。
ここから入るしかない、しかし今はダメだ…一番いいのはパーティーで他の騎士が会場に行っていて人が減っている時だ。
パーティーまで残り僅か…一度しかないチャンスを無駄にはしない。
男達は会話に夢中になっていて、イノリは逃げ出そうとしたが入り口にハーレー国の騎士が居てパーティーを抜けようとした人を引き止めていた。
正面から無理だ、別の方法はないか周りを見渡す。
ユウはイノリの服を掴んで引っ張っていて、後ろを振り向いた。
「どうしたの?」
「あんた、まだ目が死んでないんだね…新人」
「…えっと、まぁ」
「俺の身体はもうボロボロだよ、あのジジイ性欲の塊なんだよ」
ユウは悔しそうに唇を噛んで、震える身体を抱きしめていた。
ユウの話を聞いた、ユウは元々イズレイン帝国の人間だった。
いろんな国に行って商売をする仕事を幼い頃からしている。
ユウの家は大家族で、少しでも家のためにと頑張っていた。
しかし、運悪く奴隷制度がある国で商売をしてしまい…客とトラブルになり奴隷商人に捕まった。
それから一年もの間…買われた先で酷い目に合っていたそうだ。
「……帰りたいのに、死ぬまでアイツの奴隷だ」
「……」
「あんたも、これから想像以上に酷い目に合うだろうけど…頑張って」
イノリはユウの腕を掴んで、ユウは驚いた顔をしていた。
栄養が取れていない、細すぎる腕……生きる希望がないなんてそんなの悲しすぎる。
「一緒に逃げよう」とイノリが言うと、ユウは驚いた顔をしていた。
イズレイン帝国に帰るなら、イノリも方向は同じだ。
だから一緒に行こうとユウを真剣な眼差しで見つめるとユウの瞳から涙が溢れていた。
すると、パーティー会場の電気が消えて爽快な音楽が鳴り響いた。
耳を塞ぎたくなるような、嫌な男にイノリとユウは眉を寄せた。
「お集まりいただきありがとうございます!これより、ハーレー国とヴァイデル国の記念すべき同盟を結ぶ瞬間が…」
会場は異常なほど大盛り上がりを見せていて、スポットライトがステージに当てられた。
そこにいたのは、ハーレー国の騎士服を着た全身が鎧の人物だった。
周りの人間は「アレフ様だー!!」と盛り上がっていたが、正直自己紹介もしていないのにあれが誰だか分かるのが不思議だ。
向かい合うように立つのは、綺麗な女性で…同盟を結ぶというのに表情は暗かった。
異様な光景に嫌な予感がする……これじゃあまるで無理矢理同盟を結ぶみたいだ。
誰かがステージに向かって叫ぶ声が聞こえた。
皆そちらを見ると、そこにいたのはイズレイン帝国の騎士服を着た男だった。
驚いた、まさかここにイズレイン帝国の騎士がいるなんて思わなかった。
しかし、何故だか雲行きが怪しく感じた。
「ヴァイデル国王妃!!裏切り行為は死に値する!」
そう言ってステージの上に上がり、女性に剣を向けていた。
こんな緊急事態なのに、何故かヴァイデル国の騎士はイズレイン帝国の騎士を止めようとしていなかった。
貴族達からは「イズレイン帝国はヴァイデル国との同盟を破った!」と騒いでいた。
騒いでいるだけで、自分は安全なところで見ているだけのように感じた。
イズレイン帝国の騎士が剣を振り上げて、ヴァイデル国の王妃と呼ばれた女性は目蓋を閉じてジッとしていた。
剣と剣がぶつかる激しい音がざわめきの中響いて、血飛沫が舞い上がった。
ステージから落ちて、イズレイン帝国の騎士は倒れていた。
それをステージから見下ろす人物を見て、イノリは一瞬だけ息をするのを忘れた。
誰かがその名前を口にして、その人は視線を同盟を結ぼうとしたハーレー国の騎士に向けた。
ハーレー国の騎士は一歩後ろに下がって腰に下げていた剣を掴む。
「貴様、何故ここにいる!?」
「ヴァイデル国に無償で用心棒をしている、というところだ」
「同じ志の騎士を殺して、反逆罪になるぞ!ハイド・ブラッド!!」
「我が国を陥れ、敵に寝返ったのなら…この男はイズレイン帝国の騎士ではない」
何だかよく分からないが、会場はパニックになっていた。
その混乱の中、イノリは目を離せなくなった。
ーハイドsideー
ハイドは身分を隠し、ミゼラの婚約者として自由に出来るが…ハーレー国の亡霊ならハイドの顔は知っている…あまり目立つ事はしない方がいい。
女性の部屋で寝泊まりするのは気まずいものがあったが、客用の部屋はハーレー国の騎士に占拠されて仕方なかった。
王妃とミゼラの姉は自分の部屋に向かった…あまり自分の部屋を離れていると怪しまれると言っていた。
いろいろと気になる事がある、何故…突然こうなってしまったのか。
「俺が数日前にここに訪れた時は通行手形なんてなかったし、ハーレー国の騎士があんなに沢山いなかった」
「ハーレー国の力が増したのはつい最近の事です、知らないのは無理ありません」
ハーレー国はいろんな国を支配しようとしている動きがある事を知った。
しかも、中立やイズレイン帝国と同盟を結んでるところばかりを狙っている。
ハーレー国の狙いは、イズレイン帝国への復讐だろうとミゼラは話す。
ヴァイデル国の王族達は国民にとても慕われていた。
しかし、一部の貴族達にはイズレイン帝国と同盟を結んだ事により奴隷制度がなくなり嫌われていた。
ハーレー国の人間は、そんなヴァイデル国に不満を感じている貴族達を仲間にしていた。
ヴァイデル国がハーレー国のものになれば奴隷制度を復活させると…
今はまだ奴隷制度はないが、貴族達は隠れて奴隷を連れていて…前まではひっそりとやっていた。
奴隷を堂々と連れて歩くのは、ハーレー国にヴァイデル国が支配されてからだ。
王妃も奴隷制度の違反者はたとえ貴族でも罰しなくてはいけないと考えていた。
しかし、王族達は人質を取られていて今はハーレー国に従う事しか出来ない。
その人質がいるから、同盟を結ばされると言っていた。
「人質とはいったい誰なんですか?」
「私の一番上の姉、ヴァイデル国の次期王女です」
ミゼラも辛いのか、悲しい顔をして窓を見つめていた。
逆らった場合、真っ先に次期王女が殺される…だから嫌だが従っていた。
そしてミゼラは霊媒だけではなく、未来を予知する能力もあるらしい。
ミゼラが未来に見た光景を見えるから、ミゼラがいない場所の未来は見えない。
そこで未来のミゼラは見た、母がイズレイン帝国の騎士に殺される瞬間を…
ハイドはミゼラの予知能力を疑うわけではないが、ありえないと思った。
イズレイン帝国の騎士が何故ヴァイデル国の王妃を殺すのか。
「どういう事ですか」
「それが、大勢を呼んだパーティーの目的です」
ヴァイデル国とハーレー国の同盟に賛成しているのは奴隷制度が欲しい一部の貴族だけ。
他の貴族達や国民はこの同盟に反対していた。
今まで平和だったヴァイデル国がハーレー国のものになるんだ、当然嫌だろう。
そしてヴァイデル国があるのはイズレイン帝国のおかげだと思っている人は多い。
だから、ヴァイデル国の国民に愛されている王妃をイズレイン帝国の騎士が殺して…イズレイン帝国が裏切ったと思わせたいらしい。
パーティーには貴族だけではなく、情報を流す国民も呼んでいる。
イズレイン帝国に対してヴァイデル国の国民達が憎悪を向けて、ハーレー国の駒にしようとしている。
それがミゼラが見た、パーティーの結末だった。
一度イズレイン帝国に潜入したハーレー国の騎士がいた。
その騎士に瞬は殺された、でも妙なところがあった。
イズレイン帝国は入るのに厳しくはないが、他国から来た人間には持ち物検査はする。
何故、あんな旧騎士服を着た男達が入れたのか…それにその服は何処から仕入れたのか。
裏切り者がいると思い、調べたが全く見つからなかった。
もし、今回ハーレー国に協力しているイズレイン帝国の騎士が裏切り者だとしたら騎士団長であるハイドがこの手で終わらせなくてはならない。
「…まずは人質を見つけてからの方が安全か」
「ですが、私達が行ける場所には当然お姉様はいませんでした」
「…だとしたらハーレー国の騎士がいる場所か」
王族が滅多に来なくて、ハーレー国の騎士が見張っている場所…客用の部屋が怪しい。
しかし、そこまで行くにはハーレー国の騎士にバレないようにしなくてはいけない。
バレたら最後、人質だけではなくミゼラ達も危険な目に合う。
ミゼラに城の地図を見せてもらうように頼んだ。
正面より別の入り口があればそこから客用の部屋に潜入する。
部屋の中でなにがあっても、外に漏れるような失敗をしなければバレる事はない。
「これなら、入れます」
「……仕方ない、か」
ハーレー国の騎士も馬鹿ではない、正面以外に入り口がない客用の部屋を当然選んでいる。
ここから入るしかない、しかし今はダメだ…一番いいのはパーティーで他の騎士が会場に行っていて人が減っている時だ。
パーティーまで残り僅か…一度しかないチャンスを無駄にはしない。
応援ありがとうございます!
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