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ゾンビワールド
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「早く!シェルターの鍵をこの中から見つけないと!」
御坂茜(みさかあかね)は必死の形相で阿斗に沢山の鍵が入った袋を押し付けた。
これはさっき見つけた鍵の中にシェルターの物があると信じて片っ端から持ってきた物である。
押し付けられた阿斗は、相変わらずの器用な手つきで鍵を総当たりで当てはめていく。
音に反応するゾンビは、阿斗がどれだけ器用とはいえど鍵のガチャガチャとした音で寄ってくる。
流石にこの数の鍵を総当たりで見つけるのは困難だ。その前にゾンビが来て手遅れになる。
そう判断した京魔が瞬時に行動に移った。
「俺が囮になる。その間にシェルターの鍵を見つけてくれ」
「嫌…ダメだよ…みんなで助かろうよ。清の分まで生きるって決めたじゃない。きっともうすぐ世界のどこかから助けがくるよ。ね」
お互いもう残り少ない体内の水分を吐き出すように汗が流れる。
「泣くなよ。涙がもったいねぇ」
「京魔だって泣いてるくせに!」
「ごめん」
そう言い残してシェルターとは逆方向に走っていく。
歯はカチカチと音を鳴らし血管がごうごうと唸るようだ。ゾンビをできるだけ惹きつけるために必死で叫ぶ。
「お前らこっちに来い!追いつけるものならな!あぁあああああああああ」
あぁ。何故こうなったのだろう。それぞれ何の鍵か書いてあればまだ3人で助かったかもしれないのに。いや、そんなことを言いたいんじゃない。何故ゾンビの世界になったんだ。どこかの研究施設で人体実験をしていてその実験隊が脱走したのか。はたまた新種のウイルスが世界を狂わせたのか。もしくは『神がこの世界を滅亡に追いやったのか』いやいや、そんな非現実的なことがあるものか?いや、ゾンビという非現実を目の前にしているのだ。何があっても信じるだろう。
皮肉なことに京魔が犠牲になってすぐの時だった。「ガチャ」という音がしてシェルターが開いたのだ。
阿斗と茜は素直に喜べなかった。内心京魔の犠牲が必要ない様に思えたからだ。
くそ、この世界は理不尽だ!おかしい。理論的に正しいことをしても結果は悪を引き寄せる。
私は確信した。『この世界に神はいない』
鍵が開くと同時に私達は複雑な気持ちを一生分抱えながら急いでシェルターに入る。
だが目の前の景色に落胆する。
「うそ、でしょ?」
「何もない…のか…」
何もなかった。食料も。水も。唯一残ったものは絶望だけ。
「私…喉が渇いた」
茜が阿斗に視線を向けながらそう呟く。どこかで思っているのだ。阿斗なら今まで通りなんとかできると。
「おしっこって意外と飲めるんだぞ」
「う…最終手段だね」
「嫌なら私が飲む」
「お好きにどうぞ」
「阿斗っていつも明晰で聡明だよね」
「慌てても私にとってはいいことがないからね」
「これからどうなっちゃうの?」
「私はここでできる限り生きるけど」
「できる限りなんて嫌だ。京魔の分まで生きようよ」
「わかった」
阿斗は淡白にそう答えた。
「ねぇ!阿斗(あと)ならいつも通りなんとかできるんでしょ?ねえ!ねえってば!」
彼女がどれだけ優秀だろうが、もはやここから助かる術など存在しなかった。するわけがなかった。
「1つだけあるよ」
「うそ、本当なの!?でも、『死んでこの世界から逃げるんだよ』とか言わないよね…そんなの嫌だよ!清の分まで生きるって!京魔の犠牲の分まで生きるって!そう約束したでしょ!?」
私、御坂茜(みさかあかね)は唯一の希望である阿斗さえも信用できないぐらいに追い詰められていた。
こんな状況を覆すなんて天と地がひっくり返っても不可能だと思われた。
いや、無理だと思ったのは世界でたった1人、私だけ。この世界はもはや私達2人しかいないのだから。阿斗は助かると確信していた。
「ごめん…取り乱した。助かる方法って?」
「それは…私がゲームに負ければいいんだよ」
「え?それはどういう…」
「私、実は神でね、だから助かるのは簡単。だけど問題があって…」
「色々言いたいところはあるけど問題って?」
普通この状況で頭がおかしくなったのだと思うのが妥当なリアクションだと思うが、茜はもう阿斗のいうことならなんでも信じてしまう体になっていた。
「問題っていうのは…このゾンビの世界で、別世界にいるもう片方の神とどっちが長く生きられるかゲームで負けたら…」
「負けたら?」
「昔あった恥ずかしい話をしないといけないんだよ!」
「さっさとこの世界から出せえええええええええええ!!!」
御坂茜(みさかあかね)は必死の形相で阿斗に沢山の鍵が入った袋を押し付けた。
これはさっき見つけた鍵の中にシェルターの物があると信じて片っ端から持ってきた物である。
押し付けられた阿斗は、相変わらずの器用な手つきで鍵を総当たりで当てはめていく。
音に反応するゾンビは、阿斗がどれだけ器用とはいえど鍵のガチャガチャとした音で寄ってくる。
流石にこの数の鍵を総当たりで見つけるのは困難だ。その前にゾンビが来て手遅れになる。
そう判断した京魔が瞬時に行動に移った。
「俺が囮になる。その間にシェルターの鍵を見つけてくれ」
「嫌…ダメだよ…みんなで助かろうよ。清の分まで生きるって決めたじゃない。きっともうすぐ世界のどこかから助けがくるよ。ね」
お互いもう残り少ない体内の水分を吐き出すように汗が流れる。
「泣くなよ。涙がもったいねぇ」
「京魔だって泣いてるくせに!」
「ごめん」
そう言い残してシェルターとは逆方向に走っていく。
歯はカチカチと音を鳴らし血管がごうごうと唸るようだ。ゾンビをできるだけ惹きつけるために必死で叫ぶ。
「お前らこっちに来い!追いつけるものならな!あぁあああああああああ」
あぁ。何故こうなったのだろう。それぞれ何の鍵か書いてあればまだ3人で助かったかもしれないのに。いや、そんなことを言いたいんじゃない。何故ゾンビの世界になったんだ。どこかの研究施設で人体実験をしていてその実験隊が脱走したのか。はたまた新種のウイルスが世界を狂わせたのか。もしくは『神がこの世界を滅亡に追いやったのか』いやいや、そんな非現実的なことがあるものか?いや、ゾンビという非現実を目の前にしているのだ。何があっても信じるだろう。
皮肉なことに京魔が犠牲になってすぐの時だった。「ガチャ」という音がしてシェルターが開いたのだ。
阿斗と茜は素直に喜べなかった。内心京魔の犠牲が必要ない様に思えたからだ。
くそ、この世界は理不尽だ!おかしい。理論的に正しいことをしても結果は悪を引き寄せる。
私は確信した。『この世界に神はいない』
鍵が開くと同時に私達は複雑な気持ちを一生分抱えながら急いでシェルターに入る。
だが目の前の景色に落胆する。
「うそ、でしょ?」
「何もない…のか…」
何もなかった。食料も。水も。唯一残ったものは絶望だけ。
「私…喉が渇いた」
茜が阿斗に視線を向けながらそう呟く。どこかで思っているのだ。阿斗なら今まで通りなんとかできると。
「おしっこって意外と飲めるんだぞ」
「う…最終手段だね」
「嫌なら私が飲む」
「お好きにどうぞ」
「阿斗っていつも明晰で聡明だよね」
「慌てても私にとってはいいことがないからね」
「これからどうなっちゃうの?」
「私はここでできる限り生きるけど」
「できる限りなんて嫌だ。京魔の分まで生きようよ」
「わかった」
阿斗は淡白にそう答えた。
「ねぇ!阿斗(あと)ならいつも通りなんとかできるんでしょ?ねえ!ねえってば!」
彼女がどれだけ優秀だろうが、もはやここから助かる術など存在しなかった。するわけがなかった。
「1つだけあるよ」
「うそ、本当なの!?でも、『死んでこの世界から逃げるんだよ』とか言わないよね…そんなの嫌だよ!清の分まで生きるって!京魔の犠牲の分まで生きるって!そう約束したでしょ!?」
私、御坂茜(みさかあかね)は唯一の希望である阿斗さえも信用できないぐらいに追い詰められていた。
こんな状況を覆すなんて天と地がひっくり返っても不可能だと思われた。
いや、無理だと思ったのは世界でたった1人、私だけ。この世界はもはや私達2人しかいないのだから。阿斗は助かると確信していた。
「ごめん…取り乱した。助かる方法って?」
「それは…私がゲームに負ければいいんだよ」
「え?それはどういう…」
「私、実は神でね、だから助かるのは簡単。だけど問題があって…」
「色々言いたいところはあるけど問題って?」
普通この状況で頭がおかしくなったのだと思うのが妥当なリアクションだと思うが、茜はもう阿斗のいうことならなんでも信じてしまう体になっていた。
「問題っていうのは…このゾンビの世界で、別世界にいるもう片方の神とどっちが長く生きられるかゲームで負けたら…」
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「さっさとこの世界から出せえええええええええええ!!!」
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