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釣人
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リンクの勇者設定に話を合わせながら、帰り道を歩く。その間も道を蛇行しながらキョロキョロしていて、落ち着きがない。
「人が来たら、よけるのよ」
「はーい」
反復横とびをして返事をするが、その元気はいつ減るのだろうか。突然、切れたら困るからちょっとずつ使ってほしいのに、そういうわけにはいかないらしい。
しかもダッシュで先に行ってしまった。サーシャがついているから、大丈夫だとは思うけど。
なんとか早歩きでリンクに追いつくと、森と屋敷の中間地点にある川の所で止まっていた。
どうやら、その場所で釣りをしていた男性に話しかけていたらしい。しかも、情報を得るだけでなく釣り竿まで貰っていてびっくりする。
「ねぇ。無理に、貰ってない?」
「そんなことしないよ。いらないんだって」
新品そうだし、きっと気を遣わせないようにという嘘だろう。
「じゃ。何か、お返しをしないと」
「僕も果物とかあげようとしたけど、手づくりだから良いって」
「そうなの?」
「でね、お兄さんに聞いたら、この辺りがオススメスポットらしいよ」
せめて、お礼を言おうとしていたら、足早に去ってしまって後ろ姿が王都の方へ向かう道へ消えていった。
体格もよさそうだし、冒険者だろうか。
「ありがとうございます」男性の後ろ姿にお礼を言って、流れる透明な川を眺める。
陽の光が反射して、水面が眩しい。目が慣れてきて、川の中をのぞくと、そこには私の知っている川魚とはあきらかに違う魚がいた。大きいし歯はギザギザしてるし目もギラギラで、指を入れたら噛まれてしまいそう。
「ママ。今夜はご馳走だよ!」
リンクは動じていないし、私はこれを食べる事が決定してしまったようだ。せめて、無難な魚を選びたい。
「サーシャ、どの魚が美味しい?」
「まず、目が虹色の魔魚ですね、見た目は大きくて凶暴そうですが、身も柔らかく最高です!」
「一番、こわそうなのを選ぶのね!それは、意外……」
と言う前に、言葉を止める。
向こうの世界のタコとかアンコウとかも、初めて見た人は悪魔みたいな外見だ。でも美味しいのだから、なんでも先入観は良くない。
リンクは、ここでも戦いは長くなりそうな予感がする。お兄さんから貰った釣り竿は魔力も付加されているらしく、予想外にどんどん釣っていって、何故かアイテムボックスに入っていたバケツからビチビチ尻尾が見える。
「アイテムボックスって、何でも入ってるけど、中はどうななってるんだろう。あ、そうだ。ノルドは空間魔法が使えるんだった」
暇すぎて自問自答の独り言を呟きながら、川で泳ぐ小さな魚を数える。すると、サーシャが話し相手をしてくれるのか隣に座ってきた。リンクは一人でも大丈夫そうだと判断したのだろう。
「サクラ様。ここは、良いところでしょう」
「えぇ、食べ物も景色も住んでいる人も。とってもステキね」
「ノルド様の前に、この村を統治していた辺境伯が人格者だったようで。このあたりは治安が良いのです」
前に、っていうことは……、
「じゃ、今はノルドがこの村を統治しているの?」
「ええ、そうですよ」
「いつのまに……」
なら、向こうの世界にいた時の話だろう。まったく気づかなかったのは私が鈍いのか、それともノルドが仕事が早いのか。
「管理する貴族が誰もいないと、治安が悪くなりますからね。ノルド様には、ほぼ無断で辺境伯になってもらったのです」
「無断で?」
「はい。皇太子殿下が。……こちらにノルド様を戻す理由が、少しでも多く欲しかったのではないでしょうか」
「理由……」
「ノルド様は、あまり王宮が好きではありませんから。せめて、穏やかな場所で過ごして欲しいと……」
たしかに、ここは穏やかで落ち着く。
きっと、私の知っている王国の制度は違うだろうけど、人に注目される立場なのは一緒だろう。ノルドの優しい性格を考えれば分かる気がする。
「大漁だあ!」
大漁なんて言葉をいつ覚えたのだろう。リンクの大きな声がする。さすがに、バケツがいっぱいになったのだろうか。
「食べる分だけ、持って帰ろうね!」
私も、遠くにいるリンクに届くように大きな声をあげる。
「はーい!!」
そう言いながら、やや乱暴に魚を川に投げ入れる。
「ノルドは、真面目で静かで。虫も殺さないほど優しいのに、何でかな」
疲れてしまったからか、普段言わないようにしている愚痴が思わず口に出てしまう。すると、サーシャが首を傾げた。
「そう、思われますか?」
「思うよ。優しすぎるほど、優しいじゃない」
なんで聞くんだろう。そんなこと。
「そうですか。……あ。戻ってきましたよ。リンク様、たくさん釣れましたね」
「ママ、魚とバイバイしてきた! そのかわり、なんか他の魔物を捕まえたけど、食べられるかなぁ」
そう言って、リンクは後ろに隠していた水色のポヨンポヨンとした透明なボールを目の前に投げてくる。
あきらかに、食べられないだろう。
「逃がしてきなさい!」
すべての疑問が、頭から消し飛んだ。
「人が来たら、よけるのよ」
「はーい」
反復横とびをして返事をするが、その元気はいつ減るのだろうか。突然、切れたら困るからちょっとずつ使ってほしいのに、そういうわけにはいかないらしい。
しかもダッシュで先に行ってしまった。サーシャがついているから、大丈夫だとは思うけど。
なんとか早歩きでリンクに追いつくと、森と屋敷の中間地点にある川の所で止まっていた。
どうやら、その場所で釣りをしていた男性に話しかけていたらしい。しかも、情報を得るだけでなく釣り竿まで貰っていてびっくりする。
「ねぇ。無理に、貰ってない?」
「そんなことしないよ。いらないんだって」
新品そうだし、きっと気を遣わせないようにという嘘だろう。
「じゃ。何か、お返しをしないと」
「僕も果物とかあげようとしたけど、手づくりだから良いって」
「そうなの?」
「でね、お兄さんに聞いたら、この辺りがオススメスポットらしいよ」
せめて、お礼を言おうとしていたら、足早に去ってしまって後ろ姿が王都の方へ向かう道へ消えていった。
体格もよさそうだし、冒険者だろうか。
「ありがとうございます」男性の後ろ姿にお礼を言って、流れる透明な川を眺める。
陽の光が反射して、水面が眩しい。目が慣れてきて、川の中をのぞくと、そこには私の知っている川魚とはあきらかに違う魚がいた。大きいし歯はギザギザしてるし目もギラギラで、指を入れたら噛まれてしまいそう。
「ママ。今夜はご馳走だよ!」
リンクは動じていないし、私はこれを食べる事が決定してしまったようだ。せめて、無難な魚を選びたい。
「サーシャ、どの魚が美味しい?」
「まず、目が虹色の魔魚ですね、見た目は大きくて凶暴そうですが、身も柔らかく最高です!」
「一番、こわそうなのを選ぶのね!それは、意外……」
と言う前に、言葉を止める。
向こうの世界のタコとかアンコウとかも、初めて見た人は悪魔みたいな外見だ。でも美味しいのだから、なんでも先入観は良くない。
リンクは、ここでも戦いは長くなりそうな予感がする。お兄さんから貰った釣り竿は魔力も付加されているらしく、予想外にどんどん釣っていって、何故かアイテムボックスに入っていたバケツからビチビチ尻尾が見える。
「アイテムボックスって、何でも入ってるけど、中はどうななってるんだろう。あ、そうだ。ノルドは空間魔法が使えるんだった」
暇すぎて自問自答の独り言を呟きながら、川で泳ぐ小さな魚を数える。すると、サーシャが話し相手をしてくれるのか隣に座ってきた。リンクは一人でも大丈夫そうだと判断したのだろう。
「サクラ様。ここは、良いところでしょう」
「えぇ、食べ物も景色も住んでいる人も。とってもステキね」
「ノルド様の前に、この村を統治していた辺境伯が人格者だったようで。このあたりは治安が良いのです」
前に、っていうことは……、
「じゃ、今はノルドがこの村を統治しているの?」
「ええ、そうですよ」
「いつのまに……」
なら、向こうの世界にいた時の話だろう。まったく気づかなかったのは私が鈍いのか、それともノルドが仕事が早いのか。
「管理する貴族が誰もいないと、治安が悪くなりますからね。ノルド様には、ほぼ無断で辺境伯になってもらったのです」
「無断で?」
「はい。皇太子殿下が。……こちらにノルド様を戻す理由が、少しでも多く欲しかったのではないでしょうか」
「理由……」
「ノルド様は、あまり王宮が好きではありませんから。せめて、穏やかな場所で過ごして欲しいと……」
たしかに、ここは穏やかで落ち着く。
きっと、私の知っている王国の制度は違うだろうけど、人に注目される立場なのは一緒だろう。ノルドの優しい性格を考えれば分かる気がする。
「大漁だあ!」
大漁なんて言葉をいつ覚えたのだろう。リンクの大きな声がする。さすがに、バケツがいっぱいになったのだろうか。
「食べる分だけ、持って帰ろうね!」
私も、遠くにいるリンクに届くように大きな声をあげる。
「はーい!!」
そう言いながら、やや乱暴に魚を川に投げ入れる。
「ノルドは、真面目で静かで。虫も殺さないほど優しいのに、何でかな」
疲れてしまったからか、普段言わないようにしている愚痴が思わず口に出てしまう。すると、サーシャが首を傾げた。
「そう、思われますか?」
「思うよ。優しすぎるほど、優しいじゃない」
なんで聞くんだろう。そんなこと。
「そうですか。……あ。戻ってきましたよ。リンク様、たくさん釣れましたね」
「ママ、魚とバイバイしてきた! そのかわり、なんか他の魔物を捕まえたけど、食べられるかなぁ」
そう言って、リンクは後ろに隠していた水色のポヨンポヨンとした透明なボールを目の前に投げてくる。
あきらかに、食べられないだろう。
「逃がしてきなさい!」
すべての疑問が、頭から消し飛んだ。
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