子育てママは突然の異世界に、ワクワクしかありません

イトウ 

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収穫がおわって

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 ウイルは空間移動が出来ないため、森の入口に設置した転送装置で一緒に帰るらしい。

「どうしました?」
「サーシャ、あのね。私だけが意識してるのかな」
「何をです?」
「ううん。何でもない。でね、ノルドが日本に来た理由だけど……、」

 リンクには少しだけ一人で練習してもらって、サーシャに時間をとってもらった。
 ノルドも、第三者から説明して貰った方が良いと思って、さっきサーシャに託したのだと思う。
 彼は優しすぎて、言葉を選んでしまうから。きっと、大事なことほど真実が伝わらない。

「毒を盛られたから、ですよ」
「えっ?」

 なのに、サーシャは直球すぎる。
 じゃ、今のノルドは。……もしかして、もう生きてないということなの? 血の気が引くのを感じながら聞き返そうとすると、いきなり「あっ、間違えました!」と大きな声を出す。
 ……もう、びっくりした。

「正確には、されそうになった、です。無事に回避しましたが」
「もう、そこは大事なところだから。間違えないで」

 でも、ノルドが無事で良かった。……そうか。だから、食事を信頼出来ない人に任せたくなかったんだ。

 それが原因で、日本へ逃げてきたってことなんだろうな。時間の進み方が違うとか言ってたけれど、命には変えられないだろうし。そう、勝手に解釈する。

「本来であれば、通常の毒ならば食事に入っていても気づくはずなのです。それが!」
「……が?」
「ノルド様に毒殺を企てた組織が、通常この世界にない禁忌の力を手に入れまして」
「やだ。こわい」
「それが魔法ではない、どうも予想できない力で。原因追求にかなりゴタゴタしまして……」

 その時の事を思い出したのか、サーシャが目を細めながら、しどろもどろに説明をする。そうか、今となっては簡単に言えるけれど、当時は大変だったんだろうな。

「……でも、今は解決してるのよね」
「一応は。国王や皇太子殿下、宮廷魔法師などが協力して闇の組織は壊滅させました! まぁ、当然ですけどね」

 サーシャが、自分のことのように得意げに話す。

「そっか。なら、良かった」
「まだ、事後処理などでノルド様は忙しいようですが、いずれ落ち着くでしょう。その時に、再度、お話を聞かれてはいかがですか?」
「ありがとう。そうする」

 話の区切りがついた所で、リンクを見ると、そろそろ一人で練習しているのに飽きたみたいで、チラチラと森の奥の方にある扉を見ている。好奇心が止めれないのは分かるけど、あきらかに危険な気がするし気分を逸らせたい。
 それに、なんだかんだで正午を過ぎてしまった。朝ごはんが遅かったとはいえ、ずっと動きっぱなしだから、そろそろ何か食べたいだろう。

「リンクー! 帰ろう」
「お腹すいたー」
「うん。知ってる」

 だから声をかけたというのに、リンクは戻ってこない。ペコペコのお腹に手を置きながら、目線はあやしい扉から、この森にある豊富な果物に向いている。現地調達をするつもりだ。

 ここについた時には気付かなかったが、最初に食べた赤い実の他にも様々な種類がなっていて、みんなキレイに色づいている。

「サーシャに、美味しいのを聞いて食べてみよう」
「うん。パパにお土産もする。あと魚も、野菜も!」

 私も行きに見た畑の野菜は、とても気になる。この世界のお金も少し貰ったし、少しずつ試してみよう。

「では、リンク様が倒した魔兎と魔鶏は私が加工して、食材にしておきますね。上手に魔素も抜けてますし、美味しそうです」

 魔物の魔素は抜けるものなの? 灰汁みたいなものなのかしら。山程の魔物の肉はサーシャが持ってくれたが、果物はリンクによって、あっという間にバスケットに詰めこまれていった。

「満足した?」
「うん。……では、母上! いざ帰還!」
「はい、勇者様」

 
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