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夕食
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「サクラ。……もう暗いのに家に戻ってこないから心配した」
声の方を振り返ると、森の方から走ってきたノルドの姿が見える。
「パパ。みて! 友だちのミルだよ」
リンクは手に持っていた水のボールを、誇らしげにノルドに向かって掲げる。
すると、ノルドは少しびっくしたように透き通った緑色の目を輝かせた。
「……うん。すごいね。水属性のスフィアの子供かな。完璧に使役できてる」
そんな事が一瞬でわかるなんて。なんだか、自分だけが何も力がないみたいで、少しだけ疎外感を感じてしまう。
「もう、仲良しになったんだ」
「なるほど。とっても懐くのが早いね。ここまで使役が出来ているのなら、どこにいても、呼べばミルは来てくれるよ」
「ねぇ、パパ。この子、水に帰さなきゃダメ?」
ペットか何かだと思っているのだろうか。リングとミルは、ぎゅっと抱き合ってお互いに悲しがっている。まぁ、ミルは水なので表情は分からないけど。
「……あまり、仲良くなるのはオススメしないけど、一緒に帰りたい?」
「うん!帰る」
……だと、思った。
まぁ。害はなさそうだし、世話は要らなそうだし、あたたかい時はひんやりして気持ちよさそうだし。
そう思って、私はミルをツンツン突くと表面に波紋がうまれ、くすぐったそうに揺れる。
感覚は、あるんだ。どこまで指が入るのか試していると、ノルドが横で食材が入ったカゴをのぞいている。
「……サクラ、ありがとう。いっぱい大変だったね」
あきらかに取りすぎな量だと思っているのか、苦笑しながらだけど。
「でしょ? ちょっと初めて見る食材で勇気がいるけど、夕食作り頑張ってみるね」
「僕が料理を上手に作れなくて、ごめん。いつも感謝してるよ」
ううん、と顔を横に振る。何でも出来るノルドなのに料理は苦手だから、頼りにしてくれた良いところを見せたい。
「ぼくも、頑張る」
「そうですね。私も一品請け負います」
続けてリンクとサーシャが手を挙げた。かなり、やる気らしい。
でも、私も誰にも負けないくらい美味しい料理を、ノルドに食べてもらいたい。
知られないように、闘志を燃やした。
星がきらめく暗い夜道では、そんな風に気合を見せる険しい私の顔は誰にも見られないですんだ。
だが、リンクは私以上にやる気なのか……、
「ちょっ、ちょっと。危ないよ」
帰るやいなや、リンクがビチビチしている魔魚に軽い麻痺の魔法をかけて、両手で包丁を上に掲げ、振り落とそうとしている。
さすがに大人用の大きい包丁は持たせたことがないというのに、いきなり見たこともない魔魚とは怖いもの知らず過ぎではないだろうか。
心配そうにキッチンに入ってきたノルドに、目線で助けを呼ぶ。すると、赤い実が入っているカゴを持って、頷いてくれた。
「リンク。この赤い実、美味しそうだね。食べても良い?」
「待って、パパ! 僕が美味しいのを選んであげるよ」
願いが伝わった!
興味が魚の解体から赤い実に移動したタイミングで、手に持っていた包丁をそっと外す。
「これ、ミルの大好物なんだよ」
「えっ、魔物も何か食べるの?」
「魔力が入っている物は食べるよ。特に、赤い実は多いから」
「へぇぇ」
「なら、……もっとミルについて知りたい? 他にも、この世界の魔物についてパパが教えてあげる」
もう一押しなのか、リンクの目が動いて料理をするかで迷っている。
「……パパ。魔物って、たくさんいるの? 」
「いるよ。ダンジョンの中には、強い火を吐くドラゴンもいるよ。ねぇ、赤い実を食べながら話そうよ」
「うん!」
心が決まったのか、そう叫ぶと、嬉しそうに声を上げてキッチンの前にある踏み台から飛び降りる。
そして、そのままノルドが肩車をして、上の子供部屋へ向かっていく。すると、ノルドが振り返りながら、笑顔で手を降ってくれる。
良かった!……と、思ったら、今度は目の端で包丁の刃ががキラリと光る。
「……サクラ様。私は魔鳥を使ったスープを作ります! 」
さっきのリンクと同じ構えで、魔鳥に包丁を振りかざしているサーシャがいた。
きっと魔物は食材ではなく、敵だと思っているのだろう。でも、鶏と構造が違うようだし教えて欲しい。
「ありがとう。横で、さばくの見てても良い?」
「はい、もちろんです。……そういえば、ノルド様とわだかまりはとけましたか?」
「まだ。話をしたいけど。タイミングがなくて、今日の夜にでもしてみようかな」
「それか、よろしいかとっ!!」
そう叫びながら、いきおいよく包丁が振り落とされた。
声の方を振り返ると、森の方から走ってきたノルドの姿が見える。
「パパ。みて! 友だちのミルだよ」
リンクは手に持っていた水のボールを、誇らしげにノルドに向かって掲げる。
すると、ノルドは少しびっくしたように透き通った緑色の目を輝かせた。
「……うん。すごいね。水属性のスフィアの子供かな。完璧に使役できてる」
そんな事が一瞬でわかるなんて。なんだか、自分だけが何も力がないみたいで、少しだけ疎外感を感じてしまう。
「もう、仲良しになったんだ」
「なるほど。とっても懐くのが早いね。ここまで使役が出来ているのなら、どこにいても、呼べばミルは来てくれるよ」
「ねぇ、パパ。この子、水に帰さなきゃダメ?」
ペットか何かだと思っているのだろうか。リングとミルは、ぎゅっと抱き合ってお互いに悲しがっている。まぁ、ミルは水なので表情は分からないけど。
「……あまり、仲良くなるのはオススメしないけど、一緒に帰りたい?」
「うん!帰る」
……だと、思った。
まぁ。害はなさそうだし、世話は要らなそうだし、あたたかい時はひんやりして気持ちよさそうだし。
そう思って、私はミルをツンツン突くと表面に波紋がうまれ、くすぐったそうに揺れる。
感覚は、あるんだ。どこまで指が入るのか試していると、ノルドが横で食材が入ったカゴをのぞいている。
「……サクラ、ありがとう。いっぱい大変だったね」
あきらかに取りすぎな量だと思っているのか、苦笑しながらだけど。
「でしょ? ちょっと初めて見る食材で勇気がいるけど、夕食作り頑張ってみるね」
「僕が料理を上手に作れなくて、ごめん。いつも感謝してるよ」
ううん、と顔を横に振る。何でも出来るノルドなのに料理は苦手だから、頼りにしてくれた良いところを見せたい。
「ぼくも、頑張る」
「そうですね。私も一品請け負います」
続けてリンクとサーシャが手を挙げた。かなり、やる気らしい。
でも、私も誰にも負けないくらい美味しい料理を、ノルドに食べてもらいたい。
知られないように、闘志を燃やした。
星がきらめく暗い夜道では、そんな風に気合を見せる険しい私の顔は誰にも見られないですんだ。
だが、リンクは私以上にやる気なのか……、
「ちょっ、ちょっと。危ないよ」
帰るやいなや、リンクがビチビチしている魔魚に軽い麻痺の魔法をかけて、両手で包丁を上に掲げ、振り落とそうとしている。
さすがに大人用の大きい包丁は持たせたことがないというのに、いきなり見たこともない魔魚とは怖いもの知らず過ぎではないだろうか。
心配そうにキッチンに入ってきたノルドに、目線で助けを呼ぶ。すると、赤い実が入っているカゴを持って、頷いてくれた。
「リンク。この赤い実、美味しそうだね。食べても良い?」
「待って、パパ! 僕が美味しいのを選んであげるよ」
願いが伝わった!
興味が魚の解体から赤い実に移動したタイミングで、手に持っていた包丁をそっと外す。
「これ、ミルの大好物なんだよ」
「えっ、魔物も何か食べるの?」
「魔力が入っている物は食べるよ。特に、赤い実は多いから」
「へぇぇ」
「なら、……もっとミルについて知りたい? 他にも、この世界の魔物についてパパが教えてあげる」
もう一押しなのか、リンクの目が動いて料理をするかで迷っている。
「……パパ。魔物って、たくさんいるの? 」
「いるよ。ダンジョンの中には、強い火を吐くドラゴンもいるよ。ねぇ、赤い実を食べながら話そうよ」
「うん!」
心が決まったのか、そう叫ぶと、嬉しそうに声を上げてキッチンの前にある踏み台から飛び降りる。
そして、そのままノルドが肩車をして、上の子供部屋へ向かっていく。すると、ノルドが振り返りながら、笑顔で手を降ってくれる。
良かった!……と、思ったら、今度は目の端で包丁の刃ががキラリと光る。
「……サクラ様。私は魔鳥を使ったスープを作ります! 」
さっきのリンクと同じ構えで、魔鳥に包丁を振りかざしているサーシャがいた。
きっと魔物は食材ではなく、敵だと思っているのだろう。でも、鶏と構造が違うようだし教えて欲しい。
「ありがとう。横で、さばくの見てても良い?」
「はい、もちろんです。……そういえば、ノルド様とわだかまりはとけましたか?」
「まだ。話をしたいけど。タイミングがなくて、今日の夜にでもしてみようかな」
「それか、よろしいかとっ!!」
そう叫びながら、いきおいよく包丁が振り落とされた。
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