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近所の子
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ぬくもりを感じながら目を覚ますことは、とても幸せなことだったんだな、って。
ヒンヤリと冷たくなってしまったシーツのシワを伸ばしながら、そう考える。
寝起きの、ぼんやりとした頭でノロノロと起き上がり窓を開けると、下に見える裏庭でリンクの笑い声が響いている。それは、初めて聞くような無邪気な声で、前との、あまりの変わりように驚く。
どうやら、村の子供達が数人で遊びに来たらしい。
昨日、道行く人の視線を感じたから、私達が引っ越してきたのが噂になって、知れ渡ったのかもしれない。
鬼ごっこをしているのか、汗をかいているリンクの表情を見ながら、後悔する。
「私が、児童館とか公園に連れて行ってあげなかったからかな」
自分のまわりにある何か透明な壁には自覚があって、気にさせてはいけないという気持ちから、ママ友が集まる場所は敬遠してしまっていた。
だから、いつもリンクが行きたいという、遊具のない小さな公園ばかりに行っていて、一人で遊ばせていた。
それは私に気を遣っただけで、間違いだったのかもしれない。あの笑顔を見ていると、そう思う。
「ママ! おはよう」
こっちに気づいたリンクが、大きく手を振る。
「おはよう。お友達?」
聞こえるように、息を吸って大声を出す。
「そう。みんな、昨日、ぼくたちが歩いてるのを見て来てくれたんだってー!」
「そう。良かったわね」
本当に、良かった。
知らない人から注目されるのは苦手だけど。リンクのためにも、家族のためにも、この場所で孤立はしたくない。
トントンと、ノックの音がする。
「サクラ様、おはようございます」
振り返ると、サーシャがエプロンを付けて立っていた。
「おはよう、サーシャ。リンクがね、楽しそう」
一緒に、窓の外を眺める。
「このあたりの子供達なんです。ノルド様の前に、この屋敷に住まわれていた辺境伯も、子沢山で友好的な方ですので、その流れでしょう」
「そっか、そうだよね。じゃなきゃ、こんな大きなお屋敷に遊びに来づらいよね」
「ええ。ノルド様も少し前に挨拶に行かれていますし、子供たちを誘ったのかもしれません」
「え。いつのまに」
そんなの、知らない。
バタバタしてたのに、いつ、行ったのだろう。
「サクラ様には気を遣わせていけないと、言っていなかったかもしれません」
「サーシャ、隠し事は完璧にしてくれないと、気になっちゃう」
信じてるのは、ノルドからの愛情だけで、他は気にしてないふりをしてるんだから。
でも聞いたら、私も行くと言ってしまっていただろう。
「申し訳ありません。まぁ、いずれ分かると思ってましたので」
「うん、でも、隠し事が出来ないサーシャの方が好きだよ」
「ありがとうございます?」
微妙な表情でお礼を言われてしまった。本当なのに。
「でね、……今日は何をしたら良いのかな」
「そうでした。明日は、ノルド様がお休みを取られるそうです」
「えっ、そうなの?」
良かった!
ちゃんとゆっくり休めているのか、不安だったから。それなら、家でのんびりと……、
「丘の上までピクニックに行きたいと、おっしゃられてました。……いかがですか?」
と、思っていたのにピクニックとは。……とても行きたいけど。
「……せっかくの休みなのに、疲れないかな?」
「大丈夫ですよ。ノルド様は、サクラ様と居られれば元気になります」
「そう?」
「そうですよ」
それなら、良いけど。でも、ノルドから希望を言うことは少ないから、やっぱり叶えたい。
「じゃ、今日のやることは決まった。まず、お弁当の食材の調達と明日の準備。どうかな?」
「もちろん、良いと思います」
サーシャは、手をたたいて賛成してくれた。
あとは、やっぱりリンクの意見を聞かないと。普段は大人しいのに、好きなことを勝手に進めると、ふてくされてしまう。
「リンクー! 明日、パパがピクニックに連れてくれるって」
友達と離れて、汗を拭きながら部屋に戻ってきたリンクに聞く。
熱くなった体を冷まそうというのか、ミルもリンクの首すじにくっついてくれている。
「えー、やった!」
「行きたい場所とかあるの?」
「ある! さっき遊んでた友達の中に、家が牧場の子がいてね、行きたくなった」
牧場か……。
なら、冷蔵庫に入っていた牛乳はそこのかな。牛じゃない、違う動物だろうけど。
「じゃあ、パパに聞いてみようね。あとは……、お弁当で食べたいものある?」
要望には応じられない可能性が高いけど。一応。すると、リンクは常に腰にさしている木刀をシュッと構えた。
「それは、ぼくが、これから狩りをして魔物を捕まえてみせるよ。定番は、魔鶏の唐揚げと玉子焼きに決まってる」
昨日の夕飯の、焼いて塩をかけただけの肉が気に入ったらしい。油は無いから、唐揚げ風になってしまうけど。
「あ、ありがとうございます!!」
その料理を作ったサーシャが、涙を浮かべている。
ノルドは、明日の休日のために遅くまで仕事をしてくるよえで、夕食はいらないらしい。それなら、明日の弁当に努力を全振りしよう。
どうせなら、準備を万全にして楽しまないと!
ヒンヤリと冷たくなってしまったシーツのシワを伸ばしながら、そう考える。
寝起きの、ぼんやりとした頭でノロノロと起き上がり窓を開けると、下に見える裏庭でリンクの笑い声が響いている。それは、初めて聞くような無邪気な声で、前との、あまりの変わりように驚く。
どうやら、村の子供達が数人で遊びに来たらしい。
昨日、道行く人の視線を感じたから、私達が引っ越してきたのが噂になって、知れ渡ったのかもしれない。
鬼ごっこをしているのか、汗をかいているリンクの表情を見ながら、後悔する。
「私が、児童館とか公園に連れて行ってあげなかったからかな」
自分のまわりにある何か透明な壁には自覚があって、気にさせてはいけないという気持ちから、ママ友が集まる場所は敬遠してしまっていた。
だから、いつもリンクが行きたいという、遊具のない小さな公園ばかりに行っていて、一人で遊ばせていた。
それは私に気を遣っただけで、間違いだったのかもしれない。あの笑顔を見ていると、そう思う。
「ママ! おはよう」
こっちに気づいたリンクが、大きく手を振る。
「おはよう。お友達?」
聞こえるように、息を吸って大声を出す。
「そう。みんな、昨日、ぼくたちが歩いてるのを見て来てくれたんだってー!」
「そう。良かったわね」
本当に、良かった。
知らない人から注目されるのは苦手だけど。リンクのためにも、家族のためにも、この場所で孤立はしたくない。
トントンと、ノックの音がする。
「サクラ様、おはようございます」
振り返ると、サーシャがエプロンを付けて立っていた。
「おはよう、サーシャ。リンクがね、楽しそう」
一緒に、窓の外を眺める。
「このあたりの子供達なんです。ノルド様の前に、この屋敷に住まわれていた辺境伯も、子沢山で友好的な方ですので、その流れでしょう」
「そっか、そうだよね。じゃなきゃ、こんな大きなお屋敷に遊びに来づらいよね」
「ええ。ノルド様も少し前に挨拶に行かれていますし、子供たちを誘ったのかもしれません」
「え。いつのまに」
そんなの、知らない。
バタバタしてたのに、いつ、行ったのだろう。
「サクラ様には気を遣わせていけないと、言っていなかったかもしれません」
「サーシャ、隠し事は完璧にしてくれないと、気になっちゃう」
信じてるのは、ノルドからの愛情だけで、他は気にしてないふりをしてるんだから。
でも聞いたら、私も行くと言ってしまっていただろう。
「申し訳ありません。まぁ、いずれ分かると思ってましたので」
「うん、でも、隠し事が出来ないサーシャの方が好きだよ」
「ありがとうございます?」
微妙な表情でお礼を言われてしまった。本当なのに。
「でね、……今日は何をしたら良いのかな」
「そうでした。明日は、ノルド様がお休みを取られるそうです」
「えっ、そうなの?」
良かった!
ちゃんとゆっくり休めているのか、不安だったから。それなら、家でのんびりと……、
「丘の上までピクニックに行きたいと、おっしゃられてました。……いかがですか?」
と、思っていたのにピクニックとは。……とても行きたいけど。
「……せっかくの休みなのに、疲れないかな?」
「大丈夫ですよ。ノルド様は、サクラ様と居られれば元気になります」
「そう?」
「そうですよ」
それなら、良いけど。でも、ノルドから希望を言うことは少ないから、やっぱり叶えたい。
「じゃ、今日のやることは決まった。まず、お弁当の食材の調達と明日の準備。どうかな?」
「もちろん、良いと思います」
サーシャは、手をたたいて賛成してくれた。
あとは、やっぱりリンクの意見を聞かないと。普段は大人しいのに、好きなことを勝手に進めると、ふてくされてしまう。
「リンクー! 明日、パパがピクニックに連れてくれるって」
友達と離れて、汗を拭きながら部屋に戻ってきたリンクに聞く。
熱くなった体を冷まそうというのか、ミルもリンクの首すじにくっついてくれている。
「えー、やった!」
「行きたい場所とかあるの?」
「ある! さっき遊んでた友達の中に、家が牧場の子がいてね、行きたくなった」
牧場か……。
なら、冷蔵庫に入っていた牛乳はそこのかな。牛じゃない、違う動物だろうけど。
「じゃあ、パパに聞いてみようね。あとは……、お弁当で食べたいものある?」
要望には応じられない可能性が高いけど。一応。すると、リンクは常に腰にさしている木刀をシュッと構えた。
「それは、ぼくが、これから狩りをして魔物を捕まえてみせるよ。定番は、魔鶏の唐揚げと玉子焼きに決まってる」
昨日の夕飯の、焼いて塩をかけただけの肉が気に入ったらしい。油は無いから、唐揚げ風になってしまうけど。
「あ、ありがとうございます!!」
その料理を作ったサーシャが、涙を浮かべている。
ノルドは、明日の休日のために遅くまで仕事をしてくるよえで、夕食はいらないらしい。それなら、明日の弁当に努力を全振りしよう。
どうせなら、準備を万全にして楽しまないと!
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