子育てママは突然の異世界に、ワクワクしかありません

イトウ 

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アナザー(順不同)

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「うわ。おまえ、ノルドか? 急に現れやがって、一体どうした……、」

 いきなり、何だ。うるさいな、。
 木漏れ日が射し込むんできて、暗い部屋の中にいた目には眩しくて、思わず目をつむる。
 何故、突然転送されたのだろう。そして、ルジェが何でここにいる。

 早く戻らなくては……。
 
「え、知り合い?」
「俺の弟」
「……ってことは、第3王子のノルド殿下ということ? ちょっと、あの有名な?」

 この声は、ルジェか。二番目の兄で、各地を冒険しているといっていたが……。
 あとは、赤い髪が目立つ……、女の子?
 
 それよりも、早くサクラのもとへ帰らないと心配する。向こうの時間は、早いんだから。

「…………っなんで……、」

 いくら力をためようとしても、何かの邪魔が入る。

「おーい、大丈夫か? ここは辺境の森だぞ」
「ねぇ、それよりも……」
「ああ、そうだな」
「…………あの、ノルド殿下。その魔力、大丈夫ですか?」

 大丈夫な訳ない。
 そう女の子に言おうとするが、ショックで声も出ない。

 体の中の魔力を確認するが、僕の魔力が、ほとんど減っていた。
 こんなことをできるのは、創造神のみ。……丁寧にも、サクラのいる世界に戻れないように、奪っていったらしい。
 王族の持つ魔力量は膨大で、こんな力が抜けていく感覚は初めてだ。
 今の量だと、必要量がたまるまであと何日かかるのだろう。そもそも、自然にたまっていくものなのか。

「事情はよくわからないが、元気出せ」
「そんな言葉で元気になるんなら、とっくに出してるよ」

 少し、黙っててはくれないだろうか。考えがまとまらない。
 向こうへの連絡手段はない。
 誰かに頼むにも、今は王都に、十分な魔力量を保有している魔法師はいないだろう。ただでさえ、高度な空間魔法は持つ人間は数人もいない。
 いろんな可能性を想定するが、絶望で頭がズキズキと痛い。

「なぁ、ミュウのスキルで、少しノルドに魔力をあげてくれないか?」
「あー、ルジェのも分けてくれるかな。そうしたら、ノルド殿下の全容量の半分、は無理かも。でも、出来るよ」

 何?
 魔力をゆずれるとは、赤い髪の女の子は特殊スキル持ちか。それで、何とかなれば。

「お願い、します」

 絞り出すように声を出す。自分には、それしか選択肢はない。

「いえいえいえ。じゃ、いきますね」

 ミュウが弟のルジェに左手をかざし、魔力を取り込んでいるようだ。そして、自分の魔力を上乗せしつつ、自分に魔力を注入する。
 魔力移動。冒険者なようだが、この魔力量は貴族か。
 しばらくすると、僕の体に少しずつ魔力が行き渡ってきた。

「おい、ミュウ! もう、無理。しんどい」
「あ、あの。……そろそろよろしいですか?」

 もう十分だ。
 これだけあれば。

「ありがとう。お礼は必ず」

 それだけ言って、王都へ走り出した。

 まず、父である国王に会い、王籍を返還する。普通であれば、何ヶ月もかかる儀式を最速でこなす。
 神に、受理させれば良い。きっと、これが望みなのだろう。

 もう、僕は迷わない。
 王宮の中にある、王族専用の他の魔力が干渉されない特別な部屋に入り、魔法陣専用の部屋で転送する準備をする。
 サクラとリンクを呼ぶためだ。
 いつもだったら、何も考えなくても簡単に出来る空間移動だが、今回は失敗が出来ない。
 念入りに、いつもはしない魔法陣を丁寧に構築し、イメージを明確なものにする。

 準備に1日もかかってしまった。向こうでは1週間か。
 サクラ、早くリンクを抱きしめて。

 すると、祈りが通じたのか、その瞬間が来て転送魔法を実行する。……無事に、転送が成功したようだ。

 思念伝達魔法を使い、ウィルと連絡をとる。

「辺境の森にサクラとリンクがいる。至急、探して辺境の家へ!」

 早く僕も迎えに行きたいが、今ので魔力を使いきってしまった。
 あまり、魔力を使わない身体強化魔法を使い移動しよう。そうすれば数時間で王都から辺境まで着くはず。

 サクラは僕のことを許してくれるだろうか。少しずつ持ち込んだ、リンクの玩具や絵本、部屋の内装を喜んでくれるだろうか。サクラが来る可能性も考えて、すべて準備した。

 いや、まず、説明しなきゃ。
 そんな、ごちゃごちゃな事を考えて、全速力で走った。
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