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アナザー(順不同)
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「こんにちはー!」
あっという間に街の人気者になったリンクは、そこかしろから声をかけられる。その度に、抵抗もなく笑顔を振りまく姿は、誰に似たのだろうか。私たち夫婦には、このスキルはない。
ノルドは、幼少期からの環境で身についてはいるが、明らかに笑顔は偽物で、民衆との距離は遠い気がする。……多分、誰からも気づかれてはいないけど。
休日なこともあり、リンクもついてくることになったが、宝石店に子供なんて普通であれば断られるのではないだろうか。そう思ったけれど、ノルドいわく一緒の方が良いらしい。
私は食品と日用品が売っている所にしか用がないから、専門店の区画に入ると少し緊張する。
それなのに、リンクは学校帰りの寄り道が趣味らしく、このあたりも詳しい。地図も見ないで端から何の店か報告してくれるけれど、控えて欲しい。
このあたりは治安はいいけど、悪い人がいないわけじゃない。
まぁ、それを心配性のノルドが許す訳もなく、了解の上、リンクに追跡魔法をかけているらしいから大丈夫だろうけど。
「あっ、あそこだよ。キラキラの宝石が店の前に、いっぱい飾られてるお店」
さすがのリンクも、宝石店には入ったことが無いらしく、興味津々だ。私も一緒に中をのぞくけれど、ここからだと価格が分からなくて入りづらい。
「着いたね。……では、行こうか」
私は、ノルドに手を引かれながら、重い足を動かした。
重厚なドアを開けるとカランカランと掛かっていた鈴がなる。
大ぶりな宝石が埋め込まれた指輪やネックレスが並んでいて、それらを横目に中へ入ると、どんどん奥まった場所にある扉の中へ気にせずに入っていく。
近所の人に、この宝石店の事を聞いたら、このあたりは貴族の避暑地として人気らしく、お土産に購入したり、緊急の舞踏会が入ったときなどに重宝しているらしい。
確かに、少しここだけ王都にきたような高級感のある雰囲気だ。
つきあたりには、魔導具師の紋章がついた杖を携帯しているローブ姿の男性が、静かに私達を待っていた。
自然と身についている優雅な所作を見る限り、かなり上位の魔道具師に見える。
「ようこそ、お越しくださいました」
「こ、こんにちは」
どういう態度をしてよいのか分からず、とりあえず挨拶をして立ったままでいると、こちらを見て何かを納得をしたように数回、瞬きをする。
穏やかな微笑みが何かを含んでいるようで、緊張感が高まる。
「……では、こちらにどうぞ」
この部屋でさえ特別な人だけが入れる空間のようなのに、さらに、壁に作られた隠し扉を通される。
こんなに厳重にするなんて、ノルドはどんな指輪を用意したのだろうか。
「サクラ、座って」
「う、うん」
目の前には金色のビロードと、木材で作られた指輪のケースが、二つ中央においてある。
「さわってはダメよ」
リンクの目線は指輪の方を向いている。気持ちは分かるが、きっと、これはただの指輪じゃない。
魔力が戻った今の私なら分かる。
この指輪のケースの中から強い魔力の波動。そして、隠しているけど、この魔導具師からも強い何かが感じる。
ノルドは、無造作に金色の方の指輪のケースを手に取って複雑にかけられていた魔法の鍵を開けた。
「サクラ、この指輪を受け取ってほしい」
そう言って、こちらに見せるように蓋を開けた。
「わぁー。パパ、とってもキレイだね」
私が見るよりも、真っ先にリンクが感嘆の声を出す。
「それは、ママを思って頑張って作ったからだよ」
その気持ちは嬉しいけど、その指輪に似合う自分なら良いのに。
そう思いながら、ノルドの手の中にある指輪を見ると、私はその精巧な魔法と装飾の意匠に目を奪われて言葉を失う。
早く感想を言わないと、ノルドが不安になってしまうのに。
「……えっ……と、」
「どう、かな?」
「とても素敵だね」
やっと、一言だけ感想を言う。
少し震える指で、落とさないようにリングの部分をしっかりと指で挟み、目の高さに上げる。
金色のリングに、緑色とピンク色がグラデーションになり、桜の形の土台に可愛くはまっている。
普段遣いが出来るようにか、私の指に違和感がないくらいの大きさだ。
それを見たノルドは満足したように、隣に座っている魔道具師に礼を言う。。
「私の想像する指輪が出来上がった。散々、時間も苦労もかけたな」
「いえ、ノルド様の構築した魔法を、宝石と定着させただけでございます」
目の前の2人が、にこやかに話しているのを聞きながら、こっそり指輪を鑑定する。
ノルドの魔力が込められた、この指輪は訳はないとは思ったが、ここまで歪みがない澄んでいる魔力を指輪に付加させるなんて。
この完成度は、ノルドの魔法の力もあるけれど、やっぱりこの人は、魔道具職人として一流なんだろう。
それをふまえて、この指輪の価値を考えると持っている手が震える。後で絶対に盗まれない空間をノルドに作ってもらおう。
心に決めたその時、指輪のリングの内側に小さな魔法陣が描かれているのに気付いた。
あっという間に街の人気者になったリンクは、そこかしろから声をかけられる。その度に、抵抗もなく笑顔を振りまく姿は、誰に似たのだろうか。私たち夫婦には、このスキルはない。
ノルドは、幼少期からの環境で身についてはいるが、明らかに笑顔は偽物で、民衆との距離は遠い気がする。……多分、誰からも気づかれてはいないけど。
休日なこともあり、リンクもついてくることになったが、宝石店に子供なんて普通であれば断られるのではないだろうか。そう思ったけれど、ノルドいわく一緒の方が良いらしい。
私は食品と日用品が売っている所にしか用がないから、専門店の区画に入ると少し緊張する。
それなのに、リンクは学校帰りの寄り道が趣味らしく、このあたりも詳しい。地図も見ないで端から何の店か報告してくれるけれど、控えて欲しい。
このあたりは治安はいいけど、悪い人がいないわけじゃない。
まぁ、それを心配性のノルドが許す訳もなく、了解の上、リンクに追跡魔法をかけているらしいから大丈夫だろうけど。
「あっ、あそこだよ。キラキラの宝石が店の前に、いっぱい飾られてるお店」
さすがのリンクも、宝石店には入ったことが無いらしく、興味津々だ。私も一緒に中をのぞくけれど、ここからだと価格が分からなくて入りづらい。
「着いたね。……では、行こうか」
私は、ノルドに手を引かれながら、重い足を動かした。
重厚なドアを開けるとカランカランと掛かっていた鈴がなる。
大ぶりな宝石が埋め込まれた指輪やネックレスが並んでいて、それらを横目に中へ入ると、どんどん奥まった場所にある扉の中へ気にせずに入っていく。
近所の人に、この宝石店の事を聞いたら、このあたりは貴族の避暑地として人気らしく、お土産に購入したり、緊急の舞踏会が入ったときなどに重宝しているらしい。
確かに、少しここだけ王都にきたような高級感のある雰囲気だ。
つきあたりには、魔導具師の紋章がついた杖を携帯しているローブ姿の男性が、静かに私達を待っていた。
自然と身についている優雅な所作を見る限り、かなり上位の魔道具師に見える。
「ようこそ、お越しくださいました」
「こ、こんにちは」
どういう態度をしてよいのか分からず、とりあえず挨拶をして立ったままでいると、こちらを見て何かを納得をしたように数回、瞬きをする。
穏やかな微笑みが何かを含んでいるようで、緊張感が高まる。
「……では、こちらにどうぞ」
この部屋でさえ特別な人だけが入れる空間のようなのに、さらに、壁に作られた隠し扉を通される。
こんなに厳重にするなんて、ノルドはどんな指輪を用意したのだろうか。
「サクラ、座って」
「う、うん」
目の前には金色のビロードと、木材で作られた指輪のケースが、二つ中央においてある。
「さわってはダメよ」
リンクの目線は指輪の方を向いている。気持ちは分かるが、きっと、これはただの指輪じゃない。
魔力が戻った今の私なら分かる。
この指輪のケースの中から強い魔力の波動。そして、隠しているけど、この魔導具師からも強い何かが感じる。
ノルドは、無造作に金色の方の指輪のケースを手に取って複雑にかけられていた魔法の鍵を開けた。
「サクラ、この指輪を受け取ってほしい」
そう言って、こちらに見せるように蓋を開けた。
「わぁー。パパ、とってもキレイだね」
私が見るよりも、真っ先にリンクが感嘆の声を出す。
「それは、ママを思って頑張って作ったからだよ」
その気持ちは嬉しいけど、その指輪に似合う自分なら良いのに。
そう思いながら、ノルドの手の中にある指輪を見ると、私はその精巧な魔法と装飾の意匠に目を奪われて言葉を失う。
早く感想を言わないと、ノルドが不安になってしまうのに。
「……えっ……と、」
「どう、かな?」
「とても素敵だね」
やっと、一言だけ感想を言う。
少し震える指で、落とさないようにリングの部分をしっかりと指で挟み、目の高さに上げる。
金色のリングに、緑色とピンク色がグラデーションになり、桜の形の土台に可愛くはまっている。
普段遣いが出来るようにか、私の指に違和感がないくらいの大きさだ。
それを見たノルドは満足したように、隣に座っている魔道具師に礼を言う。。
「私の想像する指輪が出来上がった。散々、時間も苦労もかけたな」
「いえ、ノルド様の構築した魔法を、宝石と定着させただけでございます」
目の前の2人が、にこやかに話しているのを聞きながら、こっそり指輪を鑑定する。
ノルドの魔力が込められた、この指輪は訳はないとは思ったが、ここまで歪みがない澄んでいる魔力を指輪に付加させるなんて。
この完成度は、ノルドの魔法の力もあるけれど、やっぱりこの人は、魔道具職人として一流なんだろう。
それをふまえて、この指輪の価値を考えると持っている手が震える。後で絶対に盗まれない空間をノルドに作ってもらおう。
心に決めたその時、指輪のリングの内側に小さな魔法陣が描かれているのに気付いた。
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