子育てママは突然の異世界に、ワクワクしかありません

イトウ 

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アナザー(順不同)

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 私は気になって、たずねる。

「実はね。その仕組みが思ったよりも複雑で、時間がかかってしまった」

 どんな魔法なのだろう。
 楽しいサプライズなら、嫌いではないけど。

 ノルドは素早く指輪をケースに戻すと、もう1つの指輪も服に入れ、また別の小さな扉をから外に出る。
 不思議に思いながら、離れないように後に続いて外を出ると、そこには果てしなく広がる草原が見渡せた。両側には森、中央には湖が、そして、そこかしこに様々な魔物や動物が住んでいる。

「すごい。こんな所があるんだね」

 私が思わずつぶやくと、リンクが我慢できない様子で 蝶々を追いかけて走り出していった。

「特別な、場所だよ。結界が張り巡らせてあるから、王家の許可を得ないと誰も入れない」
「……空間を移動したの?」

 さすがに、あの喧騒の中でいきなりこの場所に出るとは思えない。小さな扉にも、かすかに魔力が込められていた。

「誰にも、まだ見られなくないからね」

 そう笑うと、シンプルな木箱に入っていた指輪を、私の右の薬指にはめる。

「うん、良いね。ちゃんと作用してる。最初に、一般に販売する為の指輪から試してみよう」
「販売って、これを?」
「そう。……説明するより、実際にやってみようか。サクラ、指輪に右手をふれて、この領地内の好きな場所を思い浮かべて?」
「うん、わかった」

 本当は分からないが、とりあえずやってみる事にする。
 次第に何も無い空間に歪みが出来て、いつも行っている馴染みのある牧場が目の前に現れた。
 想像ではなく、実際に。
 サーシャが牛乳を両手に持ち、牧場主と楽しく話をしている。牛の鳴き声も、私の耳にハッキリと聞こえてきた。

「わあぁ。ママ、パパ! どうして、サーシャがいるの?」

 いつの間にか、楽しいことを察知したリンクが、サーシャに向かって手を降っている。

「リンク、向こうからは聞こえないよ。見てるだけなんだ」

 いつでも走り出すリンクのように、牧場の方へ入り込む。だが、その空間を通り抜け草原になってしまった。
 そしめ、振り返るとまた牧場が見える。

「本当ね」
「実時間で、空間をつなげる魔法。プライバシーもあるし、公共の場の限られた場所しか見られないけどね」
「すごい、みんな欲しがるよ。ねぇ、魔力がない人でも、誰でも使えるの?」

 食い気味に聞く。
 私は残念ながら、親から空間系の魔法は遺伝しなかった。だから、これがあれば、迷子になった時にリンクを探し出せるようになる。
 リンクだって一人で王都に勉強しに行く時、さみしくない。

「そうだね。領地の特産品に出来ないかな、って思って。だから、この領地内限定しか接続点を作ってないけど」
「あ、王都は無理なんだ。残念」

 心の声が出てしまった。せっかく作ってくれたのに、後悔してもすでに遅い。

「……あまり範囲を広げると、僕が犯罪行為があった時に管理できないから」
「ごめん! ほら、リンクの行動範囲が広がったから、心配だなって思っただけなの」
「分かるよ。僕も、ついつい気になってるから」
「ね。……あ、リンクにも貸してあげて良いかな?」

 私は指輪を外し、ぴょんぴょん跳ねて、借りたがっているリンクの指にはめる。

「そういえば、もう一つの指輪も同じ魔法が使えるの?」

 まだ、貰ってない指輪。
「少し高価なものは困るな」と思っておきながら、今度は欲しがってる。
 なんて、自分は自分勝手なのか。

「あれ以上の魔法だよ。……何倍も」

 リンクが新しい魔導具に夢中になって、こちらを見ていないのを確認すると、ノルドは私の前で膝をつく。
 王子様みたい、……元王子様だけど。

 丁寧に金色の指輪ケースを取り出し、私の手をそっと支え、指輪をはめた。

「嬉しい。ありがとう。」
「この指輪は特別に作ったものだから。僕たち3人にしか使えないから」
「え、私たちだけ?」

 どれだけすごいのかは分からないけど、何だかもったいない気もする。

「そう。一般用は大量生産をすることで、価格を抑えるつもりなんだ」
「確かに……、その方が良いかも」
「うん。じゃあ、これから5秒間、目をつむってて」

 まだ、サプライズがあるのか。意外と、ノルドは驚かせるのが好きみたい。
 でも、やっぱり嫌じゃないので、言われた通りに目を閉じる。

「……もう、いい?」
「いいよ」

 すると、目の前には、桜の木が浮かび上がっていた。

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