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完璧な王女は、何としてでも手に入れたい!
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退屈な毎日。
王宮図書館の有益な本は読み尽くしたし、ほぼ内容は理解した。
ちなみに、虚構の物語などはいっさい読まない。恋愛小説なんて役に立たないもの、何のために読むのだろう。
どうせ恋愛は一時の気の迷いだし、自分が1番大切に決まってる。
私は、この国の末の王女でフィオナ。そして、ユルグ、ルジェ、ノルドという兄がいて、協力してこの国を支えている。
けれど、私はまだ女性の侍女に囲まれて離れの城で生活しているので、式典の時ぐらいしか兄上達に会うことはない。
たまに、一番上のユルグは長男とし責任なのか、遊びに来て頂けるけれど。
ゴロンと図書館にある大きすぎるソファーに横になった。誰も来ることがない図書館なので、自由気ままに過ごせるのはここだけ。自室でさえ、ひっきりなしに誰かが御用聞きに来る。
「もう少しで成人になるのね。実感がないわ」
成人を前に、家庭教師からはもう教えることがないと言われてしまった。
私の知識は、図書館ですべて身につけてしまった。
魔法の本格的な授業はこれからだけど、すでに近くのダンジョンは軽く最奥まで行けてしまう。
そうなると、遠くの場所まで行かなければならないが、そこまでする必要があるのかしら。
魔法を極めると言っても、正しい統治をしていれば、すぐにユルグお兄様が混乱をおさめるし、上位以上の魔法を訓練する必要は感じない。
内覧はあるけれど、それは組織的な事で私一人が前線に出させてはもらえない。
「何をしてても、つまらないわ」
私には魔物を使役するスキルがあるから、ルジェお兄様のような対魔物の攻撃魔法はいらない。
……かと言って、ノルドお兄様みたいに、空間魔法とか特殊スキルは無理だから、あえて挑戦したくない。
「目指すべきは、精神系魔法のスキルが得意なユルグお兄様だけど」
いつだって優しく微笑んでいるけれど、何考えてるか分からない。
踏み込んでくるな、という壁を作られている感じがする。
これからどうしよう。12才のその先の未来が見えない。誰かの言いなりになんて、なりたくないのに。
「とりあえず、オブシディアンと遊ぼうかしら」
ソファーから飛び降り、中庭へ移動する。
私には仲の良い魔獣がいて、真っ黒な美しい黒い毛並みの、私の2倍くらいある大きな魔犬の男の子。
「オヴィー! 遊びましょう!」
どうせ逃げてしまうので、放し飼いにしているから、垣根の下とか馬小屋の中とか行きそうな場所を探し回る。
この城の魔物とはほぼ全員と契約してるから、魔物使役魔法を使えば、すぐに見つかるけれど、私とオヴィは友達だから強制的に呼びたくない。
後ろに黒い影が見えた。……と思ったら、何故か人の形をしている。
「オヴィが、人間に変身してる!」
誰かが、人化の魔法を?
今までそんなの聞いたことないけれど、特殊スキルであるのかもしれない。
驚いて反応が出来ずにいると、いきなりオヴィが話し出す。
「フィオナ王女様。私は、ウイルという者です。オヴィ、とは、この魔獣でしょうか?」
真っ黒な短い髪に、深い紺の目をしたオヴィにそっくりの精悍な人間は、淡々と自己紹介をした。
普段、この離れの城には年老いた庭師しか男性はいないのに。
どんなに格好良くって、声も低くてドキドキするからって、不審者という場合もある。ひっそりと、攻撃魔法の発動を準備する。
「お待ち下さい。……式典などで、ユルグ殿下の護衛をしております。記憶にございませんか?」
……しかも、私の隠した魔法も難なく見極めた。
私の前では隠し事をしないという表明なのか、簡単にウイルを鑑定するが、かなり魔力値も高い。
魔力量は私の方が上だけど、努力で身につけられる物理攻撃魔法が完璧過ぎて、戦ったら負けを認めざるを得ない。すぐに、手に集中させた魔力を解く。
そうだ、思い出した。
先祖代々、王家全体を護衛をしている侯爵家の次男が、ウイルという名前だった。顔も遠目だが、黒い人がユルグの側にいたのは覚えている。
「それは、失礼したわ。けれど、ここは私の住んでいる城。許可がなければ、入れないはずですけれど」
王女という立場上、配下に下に見られるような事はあってはいけない。それは避けなければならず、高圧的に話す。
すると、ウイルは何も言わずに、何才も自分よりも小さな少女に頭を下げて、私の前でひざまずいた。
こんなプライベートな空間で、しかも、芝生の上で。……大変、顔が熱くなってきた。頬が赤くならないように、体温を調節しなきゃ。
「えぇ、と。あの、どうなされたの?」
「……フィオナ様の成人に合わせて、護衛の役目を承りに参りました」
そうだわ。
成人になると、この城から離れて開放的な王宮の方へ移るから、護衛が必要になる。
その事を、忘れていた。
「そうだったわね」
表情を引き締めて、覚えているふりをしなくては。
「私は王族であられる方、全員の護衛の統括役ですので頻繁には来られません。ですが、何か不都合があれば、気兼ねなく私をお呼びください」
その紳士的な動作、威圧的な態度に怒らない、大きな心。さらには、精悍な顔に、鍛え上げられたたくましい厚い胸板。
その胸の中に入って、ギュッと強く抱きしめて欲しい。
この数分で理解した。私は、恋をしている。
「恋愛なんて意味がないわ」そう、思っていたけれど、意味なんか必要がない。しようとするものでもない。
恋って、突然さらわれるものなのね。
「……何のための、王女という立場なの」
権力を、使うしかない。
ウイルが私に望んでいる事、彼が好きなもの、家庭環境、交友関係、全て調査しよう。
それで、私の事を好きになって貰えるために、傾向と対策を考え、必ず結婚をして一生一緒にいてもらうの。そろそろ、成人になる。
私は、何としてでも、彼を手に入れる。
王宮図書館の有益な本は読み尽くしたし、ほぼ内容は理解した。
ちなみに、虚構の物語などはいっさい読まない。恋愛小説なんて役に立たないもの、何のために読むのだろう。
どうせ恋愛は一時の気の迷いだし、自分が1番大切に決まってる。
私は、この国の末の王女でフィオナ。そして、ユルグ、ルジェ、ノルドという兄がいて、協力してこの国を支えている。
けれど、私はまだ女性の侍女に囲まれて離れの城で生活しているので、式典の時ぐらいしか兄上達に会うことはない。
たまに、一番上のユルグは長男とし責任なのか、遊びに来て頂けるけれど。
ゴロンと図書館にある大きすぎるソファーに横になった。誰も来ることがない図書館なので、自由気ままに過ごせるのはここだけ。自室でさえ、ひっきりなしに誰かが御用聞きに来る。
「もう少しで成人になるのね。実感がないわ」
成人を前に、家庭教師からはもう教えることがないと言われてしまった。
私の知識は、図書館ですべて身につけてしまった。
魔法の本格的な授業はこれからだけど、すでに近くのダンジョンは軽く最奥まで行けてしまう。
そうなると、遠くの場所まで行かなければならないが、そこまでする必要があるのかしら。
魔法を極めると言っても、正しい統治をしていれば、すぐにユルグお兄様が混乱をおさめるし、上位以上の魔法を訓練する必要は感じない。
内覧はあるけれど、それは組織的な事で私一人が前線に出させてはもらえない。
「何をしてても、つまらないわ」
私には魔物を使役するスキルがあるから、ルジェお兄様のような対魔物の攻撃魔法はいらない。
……かと言って、ノルドお兄様みたいに、空間魔法とか特殊スキルは無理だから、あえて挑戦したくない。
「目指すべきは、精神系魔法のスキルが得意なユルグお兄様だけど」
いつだって優しく微笑んでいるけれど、何考えてるか分からない。
踏み込んでくるな、という壁を作られている感じがする。
これからどうしよう。12才のその先の未来が見えない。誰かの言いなりになんて、なりたくないのに。
「とりあえず、オブシディアンと遊ぼうかしら」
ソファーから飛び降り、中庭へ移動する。
私には仲の良い魔獣がいて、真っ黒な美しい黒い毛並みの、私の2倍くらいある大きな魔犬の男の子。
「オヴィー! 遊びましょう!」
どうせ逃げてしまうので、放し飼いにしているから、垣根の下とか馬小屋の中とか行きそうな場所を探し回る。
この城の魔物とはほぼ全員と契約してるから、魔物使役魔法を使えば、すぐに見つかるけれど、私とオヴィは友達だから強制的に呼びたくない。
後ろに黒い影が見えた。……と思ったら、何故か人の形をしている。
「オヴィが、人間に変身してる!」
誰かが、人化の魔法を?
今までそんなの聞いたことないけれど、特殊スキルであるのかもしれない。
驚いて反応が出来ずにいると、いきなりオヴィが話し出す。
「フィオナ王女様。私は、ウイルという者です。オヴィ、とは、この魔獣でしょうか?」
真っ黒な短い髪に、深い紺の目をしたオヴィにそっくりの精悍な人間は、淡々と自己紹介をした。
普段、この離れの城には年老いた庭師しか男性はいないのに。
どんなに格好良くって、声も低くてドキドキするからって、不審者という場合もある。ひっそりと、攻撃魔法の発動を準備する。
「お待ち下さい。……式典などで、ユルグ殿下の護衛をしております。記憶にございませんか?」
……しかも、私の隠した魔法も難なく見極めた。
私の前では隠し事をしないという表明なのか、簡単にウイルを鑑定するが、かなり魔力値も高い。
魔力量は私の方が上だけど、努力で身につけられる物理攻撃魔法が完璧過ぎて、戦ったら負けを認めざるを得ない。すぐに、手に集中させた魔力を解く。
そうだ、思い出した。
先祖代々、王家全体を護衛をしている侯爵家の次男が、ウイルという名前だった。顔も遠目だが、黒い人がユルグの側にいたのは覚えている。
「それは、失礼したわ。けれど、ここは私の住んでいる城。許可がなければ、入れないはずですけれど」
王女という立場上、配下に下に見られるような事はあってはいけない。それは避けなければならず、高圧的に話す。
すると、ウイルは何も言わずに、何才も自分よりも小さな少女に頭を下げて、私の前でひざまずいた。
こんなプライベートな空間で、しかも、芝生の上で。……大変、顔が熱くなってきた。頬が赤くならないように、体温を調節しなきゃ。
「えぇ、と。あの、どうなされたの?」
「……フィオナ様の成人に合わせて、護衛の役目を承りに参りました」
そうだわ。
成人になると、この城から離れて開放的な王宮の方へ移るから、護衛が必要になる。
その事を、忘れていた。
「そうだったわね」
表情を引き締めて、覚えているふりをしなくては。
「私は王族であられる方、全員の護衛の統括役ですので頻繁には来られません。ですが、何か不都合があれば、気兼ねなく私をお呼びください」
その紳士的な動作、威圧的な態度に怒らない、大きな心。さらには、精悍な顔に、鍛え上げられたたくましい厚い胸板。
その胸の中に入って、ギュッと強く抱きしめて欲しい。
この数分で理解した。私は、恋をしている。
「恋愛なんて意味がないわ」そう、思っていたけれど、意味なんか必要がない。しようとするものでもない。
恋って、突然さらわれるものなのね。
「……何のための、王女という立場なの」
権力を、使うしかない。
ウイルが私に望んでいる事、彼が好きなもの、家庭環境、交友関係、全て調査しよう。
それで、私の事を好きになって貰えるために、傾向と対策を考え、必ず結婚をして一生一緒にいてもらうの。そろそろ、成人になる。
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