子育てママは突然の異世界に、ワクワクしかありません

イトウ 

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正直に言うと、ダンジョンにいるのが好きなので何処にも行きません!

予告

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  王都から、危険を知らせる音が鳴る。

 国の端っこにある村の、しかも路地裏の奥まったギルドにいるから、かすかにカーンっていう余韻の音しか聴こえない。

「何か、またあったのかなぁ」

 まだ、かけだしの低ランク冒険者だから、何かあったとしても私は呼ばれないけどね。

「……おっ、ミュウじゃん。これからダンジョン入るのか? ちっちゃいのに、頑張るな」
「ふーん。この身長だと洞窟に入るの便利なんだよ。モンズなんて、何回も頭を打っちゃうでしょ」
「まあな」
「……なあに? 依頼、探してるんだけど」
「さすが、運が良いな。ちょうど、ミュウに合うの入ってるぞ」

 ギルドを仕切っている、クマみたいなギルドマスターのモンズが、赤色の髪の上に手をのせて、いいこいいこする。
 大きな手が、すっぽりと私の頭をおおって小さな子供のようだ。その手は傷だらけで、昔はかなりの腕前だったらしい。

「やめて、モンズ。もう14才なんだから、大人になったんだよ」

「そっかそっか、悪いなー」と軽い口調で謝る。きっと、悪いと思っていない。

 私は、ほっぺたをプーッとふくらまし、カウンターに出された依頼を見る。
 この国は実力主義で、年齢は重要視されないが、十三才になると一般教養の学校は卒業し、一応は大人とみなされる。
 そうしたら、働くことも出来るし、能力が高いと判断されると魔法学院に進学も出来る。
 しかも、この魔法学院は、周辺国、すべての範囲でスカウトされた優秀な人物だけが入れる総合国立学校。……内緒にしているスキル以外、平凡な魔力である私には無縁だ。
 それに、私はこの辺境地をこよなく愛している。万が一、誘われたとしても離れるつもりはない。

「ミュウは門限あるからなー。じゃあ、受けられるのは、これとこれくらいか」

 モンズが、依頼用紙に魔法で赤く丸をつける。

「もうさ、嫌になっちゃうよ。普通、泊まりがダメな冒険者とかいる? いないよね。過保護すぎじゃない?」

 モンズは、グチり出した私の言葉に唖然とする。

「普通は、辺境伯の令嬢を冒険者にさせないだろ。むしろ、感謝するべきだと思うがな」

 それもそうか。
 父と母はお人好しで、善人で、向上欲がなくて、私を出世のために使ったりしない。
 八人目の子供だから自由にさせてくれてるんだと思うけど、冒険者になることを心配はされたが、反対はされなかった。
 もちろん、貴族のたしなみとして、小さい頃から家庭教師やらダンスの先生に厳しくしつけられたけれど、なんとも宝の持ち腐れだ。
  でも、将来で何に役立つか分からないと冒険者になってからも、その令嬢教育は続けられていて、それに間に合うために門限がある。
 でも、この仕事を許してくれるなら、両親の意見も聞かないといけないな、とは理解してる。

「ま、しょうがないよね。じゃ、こっちにする!」

 ダンジョンの手前付近にいる、森の魔物の討伐依頼の紙をトントンと指先で叩く。
 内容は、食料採集。
 分かりやすく言うと、夕飯のお肉とってきて! ということだ。

 この国では普通に魔物を食べる。
 むしろ、魔物しか食べない日もあるくらい重要な食材だ。

「そうだな、うーん。……まぁ、ちょうど良いんじゃねぇか? 手続きしてくるから待ってろ」

 私の身分に気を遣わないで接してくれるモンズは、とても優しい。
 冒険者の中でも、何人か私が貴族なことを知っている人はいるけど、みんなよそよそしくしないで可愛がってくれる。

 ありがたいな。こんなに、まわりに恵まれてるから、頑張れる。
 その時、警報の音が鳴り止んだ。良かった、すぐに出発できる。

「ほら。気を付けて行って来い。遅くなって門限やぶるんじゃねぇぞ。あと、怪我なんかしたら冒険者やめさせられるぞ」

 2人めの父親みたいに、心配をされる。こっちは、口が悪いが、言っている内容は同じだ。

「分かってるよ。じゃ、また夕方」

 地図と依頼書を持って扉に外に出ると、冒険者仲間がたむろっていた。
 次々に贈られる、「頑張れ」という無責任な声も、嫌じゃなくて、応援だと心から思える人たち。

「頑張ってきまーす!」




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