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15才

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何本もの木が、バリバリと大きな音をたてて割れる。
王宮のまわりをぐるりと囲む、森。
そこには、反逆者の使役する魔獣が暴れ、空から激しい雷が鳴り響いている。
「ウィル!私、このあたりの森は私の友達が多いの守ってくれる?」
私はリリア様の遊び相手をしてくれている小動物を思い浮かべる。そして、このあたり一帯にいる小魔獣を1箇所に集め、結界を作った。
「もう、大丈夫ですよ。」
「ありがとう。」
すぐ隣で戦闘が始まり、木の枝や火の粉が飛んできた。地面から揺れにより隆起し、足元を崩させる。私はリリア様が転ばないように、風魔法で強い岩の上へふわっと、移動させる。
「残念。」
とほっぺたをリリア様はふくらませる。
きっと、希望としては私が抱っこするべきだったのだろう。
「それは両手がふさがり、緊急の防御が出来ないから無理ですね。」
ため息をつき、たしなめる。
最近は特にリリア様は魔法をつかった戦闘の学習に力を入れていて、とにかく戦場の最前線に出たがる。
「それにしても、お父様の命令とはいえ、わざと敵の攻撃を受けなくても良いわよね」
「意味はありますよ。まだ、隠れている隠密や貴族などがいるので、見つけ捕らえなくてはなりません。殿下は根絶やしにするまで、一斉攻撃を出すのを待っておられます。」
ふーん。と、私の防御結界に守られたリリア様が悔しそうにする。
「リリア様もお兄様のお役にたちたいんですね。」
「そうね。もう、力になれるとはと思うわ」
そう言って、自信にみちた笑顔でほほえむ。
「でも、まだ15才でいらっしゃいます。城の安全な所で待っててはもらえませんか?」
「嫌よ。私はウィルの側が1番安心だから。」
こうして離れようとしないのは、わざと甘えるふりをしてると分かっている。
私以外の人には、王女らしく弱みなど見せず、ピンと背筋を伸ばし真っ直ぐ前を見ている。
それを理解した上で、なるべく思い通りにさせて差し上げたい。それだけの責務に耐えておられるのだから。
「わかりました。すぐに終わらせます。お待ちを。」
私は話しながら、リリア様のいる結界から出る。
そして、木の陰に隠れていた敵を次々と捜し出し、クルクルと魔力の紐で縛る。
「このあたりは14名か。そこの兵士!捕まえた兵士たちがここの周辺にいる。地下牢へ連れて行け。そして、必ず、逃さず殺さず情報を手に入れろ。」
1番近くにいた味方の兵士へ伝え、安全を確認する。
リリア様は、ぼんやりとした様子で見ている。
「緊張が続いて疲れてしまいましたか?」
いつもより少し顔が赤いようだ。
「はい。緊張というよりドキドキしています。」
たしかに、心拍数が上がっている。光もゆらぎが多く、少し心配だ。
「では、帰って休みましょう。」
そっとリリア様に向かって手を差し出し、部屋へ帰るために森を出た。


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