誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

イトウ 

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新しい旅路へ ⑧

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「それにしても、さきほどのフォンシル様の魔力は驚きました。他の皆さんも転換後はあの様になるんですか?」

 死ぬかもしれないとは聞いたかが、年に数回行われているという性転換魔法が、あれほど危険なものだと思わなかった。
 ピーターに湯浴みの用意をしてもらっている間、状況を整理しようとフォンシルと話す。

「いや、本来は問題ない。性転換魔法を行う王族もコントロール力の良い人材を登用しているし、補佐役のコントロール役の宮廷魔法師は優秀だ」
「では、何で……」
「私の魔力の強さから、今回のような繊細な魔法は私には不向きなんだ。出来るかと思ったんだが……」

 それなのに、こんな悪条件でするなんて。
 グランは少し憤りながら、質問をする。

「そこまで、急ぐ必要があったんですか?」
「疑って悪いが、魔法式を見せて、グランが王族だという最終確認も兼ねていた。それに、いざという時はお前が助けてくれるという安心もあったし」
「だから、音は遮断しなかったんですね。すぐ、助けられるように」

 頑なにピーターが拒否したから、あきらめたが、それなら入っても問題なかったのではないだろうか。

「……実際に見たかったです」
「それは迷ったが……。女性の裸を見せるのは、早いかな、と」

 ……そうだった。
 もう、フォンシルは女性なんだった。

 見た目では分からないから同じ感じで話していた。

 改めて意識するとドキドキしてしまう。

「そうでしたね。……あっ! では、湯浴みはどうしたら。僕、目隠ししてお手伝いしましょうか?」
「大丈夫だよ。一人で入れる」
「そ、そうですか……」
「女性でも男性でも、今までと同じように対応してくれ。ただ体調を崩す場合もあると思うから、その時はまた、助けてくれると嬉しい。友達になろう」

 そう言って、フォンシルはキレイな笑顔で笑った。

 グランはフォンシルの初めて見る笑顔にときめいてしまって、手を繋ぐ事も出来ないのではないかと不安になってしまった。

 なんだが、気まずい。

 その時、タイミングよくピーターが戻ってきた。

「殿下。お湯の用意ができました」
「分かった。ありがとう」

 フォンシルは、準備に向かおうとベッドから勢いよく降りる。
 すると、すこし足元がよろめいてしまって、グランは慌てて駆け寄り支える。
 良かった。
 何ともないように、さわることが出来た。

「お気を付け下さい」
「すまない。そういえば、グランはこれからどうする? 私達はアルフのいる場所を追いかけ、旅をする。次期国王になってもらわねば」

 あれ?

「今回のこと王族同士が繋がっているなら、説明して王都へ来てもらえないのですか?」
「大体の居場所と存在は分かるのだが、会話までは出来ない。直接、行った方が良いだろう。それほど、遠くにはいない」
「そうですか……」

 グランは、早くユーディアと合流しないことには先に進めない。

「その前に、一度王宮に戻り国王に皇位継承権の順位が下がった事を説明せねば。……そうだ。グランも王都だろう? 一緒に行こう。父に聞けば、グランの両親について分かるかもしれない」

 フォンシルと別れて、ユーディアを走って追いかけるか。
 一緒に王都へ向かうか……。

 フォンシルは性転換後で体調が心配だ。
 だが、護衛としてピーターがいる。
 このあたりには魔物もいるしユーディアの方が優先順位が上だろう。
 アダマゼインは、まだ、いまいち信用にかけている。

「いえ、一緒に旅をしていた姉が先に行っているので、走って追いかけます」
「……そうか。そうだったな。すまない」

 いや、名付けに関しては自分が悪いので……、と何回目かの謝罪を心のなかでする。

「また、王都で会いましょう」
 
 
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