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その後
行く道 3
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王都の中心部を出て少し歩くと、こぢんまりとした通行門があらわれる。
基本的には、他国から騒がれずに入国したい貴族の為におかれている。
だが、自分たちのように誰にも知られずに王都を出たい王族などにも利用されているらしい。
ちなみにアダマゼインは神出鬼没なので、どこかに行った。
一応、検問をする警備兵が常駐しているが、見て見ぬふりをせざるを得ないだろう。
「殿下。また、旅へ出発ですか?」
「いや、その山のふもとまでだ」
「ふもと?……はぁ。かしこまりました」
ぞろぞろと歩く個性豊かな一行にポカンとしながらも、丁寧に小さいながらも重厚な門を開けてくれる。
「……グランは、自分が王族って事を国民に発表しないの?」
横を歩いていたエンジュが不思議そうに言いながら、ぴょこぴょこ歩いている。
長い旅から帰った後も、食堂宿の埃っぽい物置場所で寝泊まりしているのが気になったらしい。
「まだ、しないかな。だって、言う必要がないし」
「必要ない?」
「そもそも1から説明するの大変だよ。とりあえず次期国王はアルフにしておいて、僕が成人後でも良いかなって話がまとまった」
治世の勉強はさせられているが、今のところ責務は持たされていない。
「そう?そうかなー。えー、それってもったいなくないかな。まって、どうかなー。うーん………、いやいや!」
なんだか、不服そうだ。
きっとエンジュの脳内には、フルーツ盛りが並んでいる空間で、踊り子に扇子で風を送られながら長椅子に寝転んでいるグランのイメージが浮かんでいるのだろう。
長い付き合いにもなると分かってしまう。
実際は、そんな贅沢は出来ないのに。
そんな予算があれば、早々にあの川に船を通したり橋をかけたりしているだろう。
「ごめんね。なんか、期待を裏切っちゃったみたいで」
「……グランが謝ることないわよ。エンジュは、どうせ未来の王太子妃を狙ってるんでしょ?」
ユーディアが茶化してくる。
すると、エンジュが口を尖らせてむくれる。
「それね。グランは好きだけど、結局、姉弟ポジションのほうが得な気がしてきて、やめたの。国政とかよくわからないし、私は食堂で働く方が楽しいわ」
損得で諦められるくらいの好意だったことに、グランはがっかりして、転びかけた。
自分も結婚なんて考える年齢でもないから、エンジュが本気でも困ってしまうけど!
すると、突然、一番うしろで静かに歩いていたフォンシルが小さく魔法を発動させた。
「山周辺に。凪。爆発防護。結界強化」
魔法陣を組みながら、丁寧に言葉をのせる。
目には見えないが、美しい空気が山と自分たちを囲む。
「申し訳ありません、フォンシル様。いつのまにか着いてました」
速歩きで近くまで寄り、謝る。
「いや。なんだか、込み入った話をしていたから声をかけなかった」
「え、そこまででは……」
「結婚するとか、言っていたが」
…………。
断片的に聞いていたらしい。
「しないですよ?」
「そうか?なら、良かった」
良かったって、何がだろうか。
まぁ、会話が途切れた所で、ぶり返すのも嫌だし、何を言っても誤解をされそうなので、黙っていたほうが良いだろう。
「はい。では、僕も準備しますね」
神経を集中させて、山の麓に手のひらをむける。
そして、事前に計算をしていた村まで最短で行ける道筋に石で作った導火線を通した。
あとは、爆発させるだけだ。
基本的には、他国から騒がれずに入国したい貴族の為におかれている。
だが、自分たちのように誰にも知られずに王都を出たい王族などにも利用されているらしい。
ちなみにアダマゼインは神出鬼没なので、どこかに行った。
一応、検問をする警備兵が常駐しているが、見て見ぬふりをせざるを得ないだろう。
「殿下。また、旅へ出発ですか?」
「いや、その山のふもとまでだ」
「ふもと?……はぁ。かしこまりました」
ぞろぞろと歩く個性豊かな一行にポカンとしながらも、丁寧に小さいながらも重厚な門を開けてくれる。
「……グランは、自分が王族って事を国民に発表しないの?」
横を歩いていたエンジュが不思議そうに言いながら、ぴょこぴょこ歩いている。
長い旅から帰った後も、食堂宿の埃っぽい物置場所で寝泊まりしているのが気になったらしい。
「まだ、しないかな。だって、言う必要がないし」
「必要ない?」
「そもそも1から説明するの大変だよ。とりあえず次期国王はアルフにしておいて、僕が成人後でも良いかなって話がまとまった」
治世の勉強はさせられているが、今のところ責務は持たされていない。
「そう?そうかなー。えー、それってもったいなくないかな。まって、どうかなー。うーん………、いやいや!」
なんだか、不服そうだ。
きっとエンジュの脳内には、フルーツ盛りが並んでいる空間で、踊り子に扇子で風を送られながら長椅子に寝転んでいるグランのイメージが浮かんでいるのだろう。
長い付き合いにもなると分かってしまう。
実際は、そんな贅沢は出来ないのに。
そんな予算があれば、早々にあの川に船を通したり橋をかけたりしているだろう。
「ごめんね。なんか、期待を裏切っちゃったみたいで」
「……グランが謝ることないわよ。エンジュは、どうせ未来の王太子妃を狙ってるんでしょ?」
ユーディアが茶化してくる。
すると、エンジュが口を尖らせてむくれる。
「それね。グランは好きだけど、結局、姉弟ポジションのほうが得な気がしてきて、やめたの。国政とかよくわからないし、私は食堂で働く方が楽しいわ」
損得で諦められるくらいの好意だったことに、グランはがっかりして、転びかけた。
自分も結婚なんて考える年齢でもないから、エンジュが本気でも困ってしまうけど!
すると、突然、一番うしろで静かに歩いていたフォンシルが小さく魔法を発動させた。
「山周辺に。凪。爆発防護。結界強化」
魔法陣を組みながら、丁寧に言葉をのせる。
目には見えないが、美しい空気が山と自分たちを囲む。
「申し訳ありません、フォンシル様。いつのまにか着いてました」
速歩きで近くまで寄り、謝る。
「いや。なんだか、込み入った話をしていたから声をかけなかった」
「え、そこまででは……」
「結婚するとか、言っていたが」
…………。
断片的に聞いていたらしい。
「しないですよ?」
「そうか?なら、良かった」
良かったって、何がだろうか。
まぁ、会話が途切れた所で、ぶり返すのも嫌だし、何を言っても誤解をされそうなので、黙っていたほうが良いだろう。
「はい。では、僕も準備しますね」
神経を集中させて、山の麓に手のひらをむける。
そして、事前に計算をしていた村まで最短で行ける道筋に石で作った導火線を通した。
あとは、爆発させるだけだ。
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