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梅干しとレモン
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窓の外には、シトシトと雨が降っている。
「ふるならふる。やむならやむ。どっちかにしてくれないかなぁ」
凪夜が空に向かって文句を言っている。
何に対しても合理的なのに、たまに無駄な子供じみた事を言い出す。
「このどっちつかずが、侘び寂びなんじゃないの?」
隣にいる春人が、窓にひっついているナメクジを目で追いながら、俳句を考えながら話し出す。
「凪夜、出来たよ。ナメクジが 塩をかけると 縮こまる」
どう?と得意げな顔をするか、全くおもむきはない。
どうも、梅雨の時期はやる気が失せている。
「なんだよ。みんな、元気ないな」
桃夢は相変わらずのゴミ部室に嫌気がさし、今日は課題をみんなに出さず、掃除に専念することにした。
「おーい。この、するめ、賞味期限過ぎてるから捨てるぞー」
誰からも反応は無いので、ゴミ袋へ直行だ。
「雨は農産物が育つのに必要なのよ。感謝しないと」
夏葉が、最近、特に気に入ってる有毒植物の本を熱心に読みながら1年生たちに活を入れる。
「そりゃ、分かってはいるが、ジメジメしてると気分が乗らないのだよ」
いつも我が道を行く渡瀬さえもグダグダしてるので梅雨の悪影響はものすごい。
夏葉は、タッパーを取りだし梅干しを取り出す。
「これでも食べて元気出して。梅干しは体内の水分調整をしてくれるし、元気になるから。はい。桃夢先生
も」
かなり大きいが、一口で食べる。
やはり酸っぱい。
桃夢は顔にシワをたくさん作り酸っぱさが抜けるのを待つ。
「大丈夫?おじいちゃん」
「うるさい。凪夜は酸っぱいの強いんだな」
塩分強いからこれで最後ね、と夏葉に言われながら凪夜はお代わりをしてモグモグしている。
「レモンも普通にオレンジみたいに食べられるよ」
レモンって唐揚げに少し絞るだけの物ではなかったのか。
フルーツとしてたべる人がいるなんて驚きだ。
「夏葉先輩、食べ物について詳しいですよね。将来、栄養士とか目指してるんですか?」
一つどう?とタッパーを向けられたが、丁重に断っていた、酸っぱいもの嫌いの春人が質問をする。
「栄養学は別に。知っていた方が良いかなってくらい。料理は好きだけど」
「それでは、夏葉くん。家庭科部に入った方が良かったのではないか?いや、そしたら去年のミス研は私1人になってしまい廃部だったのか。それは、困る。頼む。辞めないでくれ!」
渡瀬が、手を合わせて拝んでいる。
すると、「辞めないわよ」と、その手をはたき落とされた。
「うちの家庭科部、手芸もしなきゃだし、そもそもレシピ通りに作るのなら、入らなくても良いわ。それなら、トリックを考えたり、雑学の知識を増やしたほうが、料理に役立つと思ってミス研へはいったのよ」
もう、誰も食べない梅干しをカバンにしまいながら、夏葉はみんなに聞く。
「子どもの頃に、初めて食べる食べ物ってドキドキしたじゃない。みんな、そんな経験ない?そういう料理を大人になっても食べられるような店を出すのがを夢なの」
たった今、経験したが。
梅干しを食べる前、事前に味を聞いていないと酸っぱいのか甘いのか分からず、少しためらう。
そんな感覚なのだろう。
「そうだなぁ。俺はドリアかな。和食がメインの家庭だったから、ご飯にホワイトソースをかけてあるっていうのが違和感過ぎて」
いつの間にか、委員会が終わって部室にきていた丈一郎が話に混ざる。
「それを言ったら、ツナマヨおにぎりもじゃないか?今や定番だけど、ご飯にマヨネーズという理解しがたいものに驚いたよ。小さい頃の桃夢少年は」
と、桃夢が言うと、それは思わないな、という視線を全員から浴びる。
1人だけ昭和産まれで肩身が狭い。
「私は、その未知の物を食べる感覚が好きなの。料理はミステリー。それでいて、科学であり植物学である。とても興味深い学問だと思うのよね」
夏葉は普段はクールなのに、熱くなって語っている。
桃夢は、ずっと夏葉の話を聞いていたら、何となく良いテーマな気がしてきた。
「今度の部活は、食べ物でのトリックを考えよう。ほら、色が変わるお茶のバタフライピーとか流行ったし、トリックになるんじゃないか?」
桃夢は、掃除で出たほこりでコホコホしながら課題を出す。
「1週間後、発表するから各自、考えてくるように。解散!」
テーマを出した本人が、料理は基本しか出来ない。
今度までに、少し練習をしておかなきゃな、と、こっそり思っていた。
「ふるならふる。やむならやむ。どっちかにしてくれないかなぁ」
凪夜が空に向かって文句を言っている。
何に対しても合理的なのに、たまに無駄な子供じみた事を言い出す。
「このどっちつかずが、侘び寂びなんじゃないの?」
隣にいる春人が、窓にひっついているナメクジを目で追いながら、俳句を考えながら話し出す。
「凪夜、出来たよ。ナメクジが 塩をかけると 縮こまる」
どう?と得意げな顔をするか、全くおもむきはない。
どうも、梅雨の時期はやる気が失せている。
「なんだよ。みんな、元気ないな」
桃夢は相変わらずのゴミ部室に嫌気がさし、今日は課題をみんなに出さず、掃除に専念することにした。
「おーい。この、するめ、賞味期限過ぎてるから捨てるぞー」
誰からも反応は無いので、ゴミ袋へ直行だ。
「雨は農産物が育つのに必要なのよ。感謝しないと」
夏葉が、最近、特に気に入ってる有毒植物の本を熱心に読みながら1年生たちに活を入れる。
「そりゃ、分かってはいるが、ジメジメしてると気分が乗らないのだよ」
いつも我が道を行く渡瀬さえもグダグダしてるので梅雨の悪影響はものすごい。
夏葉は、タッパーを取りだし梅干しを取り出す。
「これでも食べて元気出して。梅干しは体内の水分調整をしてくれるし、元気になるから。はい。桃夢先生
も」
かなり大きいが、一口で食べる。
やはり酸っぱい。
桃夢は顔にシワをたくさん作り酸っぱさが抜けるのを待つ。
「大丈夫?おじいちゃん」
「うるさい。凪夜は酸っぱいの強いんだな」
塩分強いからこれで最後ね、と夏葉に言われながら凪夜はお代わりをしてモグモグしている。
「レモンも普通にオレンジみたいに食べられるよ」
レモンって唐揚げに少し絞るだけの物ではなかったのか。
フルーツとしてたべる人がいるなんて驚きだ。
「夏葉先輩、食べ物について詳しいですよね。将来、栄養士とか目指してるんですか?」
一つどう?とタッパーを向けられたが、丁重に断っていた、酸っぱいもの嫌いの春人が質問をする。
「栄養学は別に。知っていた方が良いかなってくらい。料理は好きだけど」
「それでは、夏葉くん。家庭科部に入った方が良かったのではないか?いや、そしたら去年のミス研は私1人になってしまい廃部だったのか。それは、困る。頼む。辞めないでくれ!」
渡瀬が、手を合わせて拝んでいる。
すると、「辞めないわよ」と、その手をはたき落とされた。
「うちの家庭科部、手芸もしなきゃだし、そもそもレシピ通りに作るのなら、入らなくても良いわ。それなら、トリックを考えたり、雑学の知識を増やしたほうが、料理に役立つと思ってミス研へはいったのよ」
もう、誰も食べない梅干しをカバンにしまいながら、夏葉はみんなに聞く。
「子どもの頃に、初めて食べる食べ物ってドキドキしたじゃない。みんな、そんな経験ない?そういう料理を大人になっても食べられるような店を出すのがを夢なの」
たった今、経験したが。
梅干しを食べる前、事前に味を聞いていないと酸っぱいのか甘いのか分からず、少しためらう。
そんな感覚なのだろう。
「そうだなぁ。俺はドリアかな。和食がメインの家庭だったから、ご飯にホワイトソースをかけてあるっていうのが違和感過ぎて」
いつの間にか、委員会が終わって部室にきていた丈一郎が話に混ざる。
「それを言ったら、ツナマヨおにぎりもじゃないか?今や定番だけど、ご飯にマヨネーズという理解しがたいものに驚いたよ。小さい頃の桃夢少年は」
と、桃夢が言うと、それは思わないな、という視線を全員から浴びる。
1人だけ昭和産まれで肩身が狭い。
「私は、その未知の物を食べる感覚が好きなの。料理はミステリー。それでいて、科学であり植物学である。とても興味深い学問だと思うのよね」
夏葉は普段はクールなのに、熱くなって語っている。
桃夢は、ずっと夏葉の話を聞いていたら、何となく良いテーマな気がしてきた。
「今度の部活は、食べ物でのトリックを考えよう。ほら、色が変わるお茶のバタフライピーとか流行ったし、トリックになるんじゃないか?」
桃夢は、掃除で出たほこりでコホコホしながら課題を出す。
「1週間後、発表するから各自、考えてくるように。解散!」
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今度までに、少し練習をしておかなきゃな、と、こっそり思っていた。
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