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二十七話 疑い
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樹良の血がついてしまったシーツだけを取り替えると、先程まで犯し犯され合った事実など一切なかったようである。
時刻は二十一時だ。中学卒業したとはいえ、あまり遅いと家族が心配をする。早く帰らなければ、と樹良は少し焦る。
「じゃ、陽にぃ帰ってくる前に僕は帰りますね。今後、僕が呼んだ時は必ず駆けつけて下さいよ。
無理な時はその理由と証拠をラインで送ってください」
「ガキの癖に……」
「選んだのはあなたですよ。陽にぃが清廉潔白で裏の顔なんてないって。
拒むなら、陽にぃに全部言います。直にぃや歌にぃと浮気してる事、僕に犯されて楽しそうに喘いでた事、全部」
「チッ。早く帰れよ」
「従順さが足りないなぁ。ねぇ、諭さんから僕にキスしてください」
樹良が顔を突き出すと、諭はあからさまに嫌そうな顔をした。
「誰がお前なんかと」
「しないなら陽にぃに言っちゃおうかな」
「分かった!! します!!」
諭は嫌々ながら樹良の唇にキスをしたのだ。
「諭さんの嫌そうな顔見たら、また勃ってきちゃいました。でも今日はいっぱいしましたからね。
また来週しましょう。楽しみにしててくださいね」
扉を閉めて帰路に着く。
樹良は上機嫌だ。新しい玩具を手に入れた子供のように、ワクワクした気持ちが治まらない。
誰かに自慢したくもなるが、この事を言える相手はいない。
(一番楽しい事はいつだって誰とも共有出来ない。唯一話せたのは陽にぃだったけど……。
一番話せないな)
大好きな兄を裏切っている自覚はある。それでも止められない気持ちというものがある。
「嫌いだと思ってたのにな」
空を見上げる。月の一つでも見れると思ったが、生憎曇りだ。時折雲の隙間から星が見える程度でどんよりしている。
それでも気分が晴れていると、空が曇りでも晴れのように感じた。
樹良は高校に上がってから、定期的に諭を呼び出し、セックスを強要した。
身体を重ねれば飽きると思っていたが、寧ろ、重ねる毎に諭を愛しく思えた。
特に、樹良を睨みつけてくる諭の目が好きだ。
陽翔を信じ、一切黒いところはないと言い張る諭は、犯される度に樹良を睨み、悔しそうにしているのだ。
諭がその態度でいる内は飽きる事はないだろう。
そんな関係になってから二ヶ月。高校生活も慣れて順風満帆だと思っていた時だった。陽翔から電話がかかってきた。
自室で宿題で出た数学の問題を解いていたのだが、中断してすぐに出た。
「はい、もしもし」
「もしもし、樹良……?」
「陽にぃどうしたの?」
何故か陽翔の声色が暗い。何か良くない事でもあったのだろうかと、樹良は耳を傾けた。
「樹良は諭の事どう思う?」
ドキリとした。陽翔の質問の真意が分からない。答えによってはすぐに諭との関係がバレるだろう。
答えを慎重に考える。
「クズっぽいって前に言ったよね?」
「うん。でも、その後にシロだって言ったじゃん? 諭は僕の事だけ考えてくれてるって」
「何? 浮気でもされた?」
「分からない。でも、多分、十中八九、浮気してると思う」
「諭さんと話した?」
「ううん。諭の鞄にGPSつけてみたんだけど、ウチにいるか、僕の実家にしか行ってないみたい。
あと大学と、バイト先の塾」
それはそうだろうと樹良は頷いた。諭は直陽とする時は実家の直陽の部屋でやっているし、歌陽とは陽翔のアパートでやっている。
樹良も、諭の職場と同じビル内のトイレや、実家を指定しているのでバレる事はまずない。
「行動履歴は変なところないんだけど。樹良、諭が何してるか、探ってもらえないかな?」
「いやいやいや、それはやり過ぎだろ。束縛激し過ぎるよ」
「諭の毎日の予定は把握してるんだ。多分バイトと家庭教師以外の日が怪しいのかな。
相手は狡猾だと思う。僕が絶対に仕事でいなくて、かつ諭のバイトがない日を狙ってるっぽい。
しかも、ラインとかメールのやり取りを一切残させてないし、諭に証拠を残させないようにしてる」
「相手がさせてるって確定してんの? 諭さんが狡猾なのかもしれないじゃん」
「相手が諭に合わせて会ってるなら、僕は怪しまないと思う。諭は悪知恵働くし、どうすれば僕が疑わないかを考えて動くと思う。
多分だけど、浮気相手は諭に無理させてるのかも」
「証拠はないんだよね? それなのに疑ってるの?」
「うん。でも分かるよ。ほぼ確実に浮気してる。ねぇ、樹良、どうしたらいいだろう?」
その瞬間、陽翔の声が更に暗くなった。疑っているのだ、樹良が相手だと。
陽翔がどこまで把握しているか分からない。どう誤魔化すか、それとも知らないふりをするか。
陽翔は樹良には裏の顔を平気で見せる。バレたら何をされるか分からないのが怖い。
だからといって、諭を手放す気にはなれない。
「諭さんと僕が浮気してるって思ってる?」
「そんな事は言ってない」
「まぁ安心しなよ。諭さん、僕の事嫌いだし。それに、諭さんはいつも陽にぃの事ばっかり話してるよ」
「……嫌いな相手に、よく僕の話を聞かせてるの? 僕の諭は」
一言一言に気を使っているつもりなのに陽翔の方がどうしても一枚上手だ。もう何を言えば陽翔の猜疑心に触れるか分からない。
「いや、うちで家庭教師してる時、桜子に陽にぃの話してるの、僕にも聞こえてくるんだよ」
「そっかー。まぁ樹良の事は信用してるし、別に疑ってるわけじゃないから。
ありがとね。また電話するね」
「はいよ、あんまり神経質にならないようにね」
電話を切ると、樹良は自分の心臓がバクバクとうるさく鳴っている事に気付いた。
陽翔が証拠もないのに浮気を確信出来る程、勘が鋭いとは思わなかった。
(僕は浮気というより強姦してるわけだけど、諭は直にぃ、歌ねぇとはきっちり浮気してる。
もしそれが全部バレたらどうなんだろう?)
陽翔を思い浮かべた。諭がフラれるだけならまだいいが、家族の縁を切られたら……──。
樹良は宿題をやめて、脅迫して強姦している事がバレた時の言い訳を考え始めたのだった。
───────────────────
※ここで三男編終わりです。
次回からは末っ子次女ですね。
時刻は二十一時だ。中学卒業したとはいえ、あまり遅いと家族が心配をする。早く帰らなければ、と樹良は少し焦る。
「じゃ、陽にぃ帰ってくる前に僕は帰りますね。今後、僕が呼んだ時は必ず駆けつけて下さいよ。
無理な時はその理由と証拠をラインで送ってください」
「ガキの癖に……」
「選んだのはあなたですよ。陽にぃが清廉潔白で裏の顔なんてないって。
拒むなら、陽にぃに全部言います。直にぃや歌にぃと浮気してる事、僕に犯されて楽しそうに喘いでた事、全部」
「チッ。早く帰れよ」
「従順さが足りないなぁ。ねぇ、諭さんから僕にキスしてください」
樹良が顔を突き出すと、諭はあからさまに嫌そうな顔をした。
「誰がお前なんかと」
「しないなら陽にぃに言っちゃおうかな」
「分かった!! します!!」
諭は嫌々ながら樹良の唇にキスをしたのだ。
「諭さんの嫌そうな顔見たら、また勃ってきちゃいました。でも今日はいっぱいしましたからね。
また来週しましょう。楽しみにしててくださいね」
扉を閉めて帰路に着く。
樹良は上機嫌だ。新しい玩具を手に入れた子供のように、ワクワクした気持ちが治まらない。
誰かに自慢したくもなるが、この事を言える相手はいない。
(一番楽しい事はいつだって誰とも共有出来ない。唯一話せたのは陽にぃだったけど……。
一番話せないな)
大好きな兄を裏切っている自覚はある。それでも止められない気持ちというものがある。
「嫌いだと思ってたのにな」
空を見上げる。月の一つでも見れると思ったが、生憎曇りだ。時折雲の隙間から星が見える程度でどんよりしている。
それでも気分が晴れていると、空が曇りでも晴れのように感じた。
樹良は高校に上がってから、定期的に諭を呼び出し、セックスを強要した。
身体を重ねれば飽きると思っていたが、寧ろ、重ねる毎に諭を愛しく思えた。
特に、樹良を睨みつけてくる諭の目が好きだ。
陽翔を信じ、一切黒いところはないと言い張る諭は、犯される度に樹良を睨み、悔しそうにしているのだ。
諭がその態度でいる内は飽きる事はないだろう。
そんな関係になってから二ヶ月。高校生活も慣れて順風満帆だと思っていた時だった。陽翔から電話がかかってきた。
自室で宿題で出た数学の問題を解いていたのだが、中断してすぐに出た。
「はい、もしもし」
「もしもし、樹良……?」
「陽にぃどうしたの?」
何故か陽翔の声色が暗い。何か良くない事でもあったのだろうかと、樹良は耳を傾けた。
「樹良は諭の事どう思う?」
ドキリとした。陽翔の質問の真意が分からない。答えによってはすぐに諭との関係がバレるだろう。
答えを慎重に考える。
「クズっぽいって前に言ったよね?」
「うん。でも、その後にシロだって言ったじゃん? 諭は僕の事だけ考えてくれてるって」
「何? 浮気でもされた?」
「分からない。でも、多分、十中八九、浮気してると思う」
「諭さんと話した?」
「ううん。諭の鞄にGPSつけてみたんだけど、ウチにいるか、僕の実家にしか行ってないみたい。
あと大学と、バイト先の塾」
それはそうだろうと樹良は頷いた。諭は直陽とする時は実家の直陽の部屋でやっているし、歌陽とは陽翔のアパートでやっている。
樹良も、諭の職場と同じビル内のトイレや、実家を指定しているのでバレる事はまずない。
「行動履歴は変なところないんだけど。樹良、諭が何してるか、探ってもらえないかな?」
「いやいやいや、それはやり過ぎだろ。束縛激し過ぎるよ」
「諭の毎日の予定は把握してるんだ。多分バイトと家庭教師以外の日が怪しいのかな。
相手は狡猾だと思う。僕が絶対に仕事でいなくて、かつ諭のバイトがない日を狙ってるっぽい。
しかも、ラインとかメールのやり取りを一切残させてないし、諭に証拠を残させないようにしてる」
「相手がさせてるって確定してんの? 諭さんが狡猾なのかもしれないじゃん」
「相手が諭に合わせて会ってるなら、僕は怪しまないと思う。諭は悪知恵働くし、どうすれば僕が疑わないかを考えて動くと思う。
多分だけど、浮気相手は諭に無理させてるのかも」
「証拠はないんだよね? それなのに疑ってるの?」
「うん。でも分かるよ。ほぼ確実に浮気してる。ねぇ、樹良、どうしたらいいだろう?」
その瞬間、陽翔の声が更に暗くなった。疑っているのだ、樹良が相手だと。
陽翔がどこまで把握しているか分からない。どう誤魔化すか、それとも知らないふりをするか。
陽翔は樹良には裏の顔を平気で見せる。バレたら何をされるか分からないのが怖い。
だからといって、諭を手放す気にはなれない。
「諭さんと僕が浮気してるって思ってる?」
「そんな事は言ってない」
「まぁ安心しなよ。諭さん、僕の事嫌いだし。それに、諭さんはいつも陽にぃの事ばっかり話してるよ」
「……嫌いな相手に、よく僕の話を聞かせてるの? 僕の諭は」
一言一言に気を使っているつもりなのに陽翔の方がどうしても一枚上手だ。もう何を言えば陽翔の猜疑心に触れるか分からない。
「いや、うちで家庭教師してる時、桜子に陽にぃの話してるの、僕にも聞こえてくるんだよ」
「そっかー。まぁ樹良の事は信用してるし、別に疑ってるわけじゃないから。
ありがとね。また電話するね」
「はいよ、あんまり神経質にならないようにね」
電話を切ると、樹良は自分の心臓がバクバクとうるさく鳴っている事に気付いた。
陽翔が証拠もないのに浮気を確信出来る程、勘が鋭いとは思わなかった。
(僕は浮気というより強姦してるわけだけど、諭は直にぃ、歌ねぇとはきっちり浮気してる。
もしそれが全部バレたらどうなんだろう?)
陽翔を思い浮かべた。諭がフラれるだけならまだいいが、家族の縁を切られたら……──。
樹良は宿題をやめて、脅迫して強姦している事がバレた時の言い訳を考え始めたのだった。
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