少年ペット契約

眠りん

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八話 幸せの終わり

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 学校生活は毎日楽しい。新しい小学校もすぐに慣れた。
 特に仲良くしてるのが二人。他にもたくさん友達が出来たし、先生も良い人だ。
 好きな人が増えていくのは嬉しい事だなぁ。

 オレは学校から帰ると自分の部屋でゴロゴロするようになった。
 両親と住んでた時と一緒だ。休みの日にお母さんと布団でゴロゴロするのが一番好きで、幸せなひと時だった。

 今は広いダブルベッドで、布団が柔らかくて気持ちが良すぎる。
 栞ちゃんは布団を洗うのがあまり好きじゃないみたいだけど、週に一度は洗ってくれる。
 両親と住んでた時は万年床だったし、洗い過ぎじゃないかな?

 この布団から出たくない。宿題をする時もベッドの上で寝転がりながらだし、テスト勉強もベッドの上。
 漫画読む時も、おやつ食べる時もベッドから降りなかった。

 それを咎める人が誰もいなかったのもある。栞ちゃんなんて、昼寝タイムの時オレの横で寝てるし。
 雪夜も休みの日とかは、オレの横で寝たり、ベッドの上に座って、膝の上に俺の頭を乗せて耳かきしてくれたり、オレが寝るまで頭を撫でてくれたり。
 至れり尽くせりだ。

 この惰眠を貪る状態が幸せで幸せで──。


 気付けばそんな生活が約三年経とうとしていた。

 オレは高校受験で忙しくって、ベッドの上で勉強してた。栞ちゃんも手助けしてくれて、夜食におにぎりを握ってくれたりした。
 雪夜も応援してくれた。

「フーミ! 頑張ってんじゃん」

「栞ちゃん。勉強の邪魔しないでよ」

「少しくらいいいじゃん! そんな勉強してどうすんのさ?」

「高校入るんだよ!!
 栞ちゃんは雪夜の近くにいたくてたまらなくて、高校卒業しても進学も就職せずに家政婦になったんでしょ?
 オレは別の方向から雪夜を支えたいんだよ」

「別に私は雪夜さんの近くにいたくなかったけどね。フミにとっては命の恩人だもんね」

「そう。大学入って、勉強して、雪夜の仕事手伝いたいんだよね」

「へぇ。雪夜さんの仕事っていうと、弁護士じゃなかったっけ?」

「えっ、雪夜の仕事知らないの?」

「知らなーい。興味ないし。弁護士じゃなかったっけ?」

「代議士だよ!」

「発音似てるし、同じようなものじゃない?」

「全然違うんだけど。選挙の時忙しくしてたでしょ? 色んな人がウチに来たりしてたじゃん」

「あぁ。先生に御用の方は事務所までお願い致しますって毎回答えたっけ。最終的に居留守使ってたけど。
 先生がどうの言ってたから、弁護士とかだと思ってた」

「違うよ。だから余計にオレや栞ちゃんが人身売買で買われたってバレないようにしないといけないよ」

「あはは。偉い立場で買う方がおかしいし、バレてもそれは雪夜さんの自業自得でしょ」

「そりゃあそうなんだろうけど。オレにとっては、オレとお母さん両方救ってくれた人だから、捕まって欲しくないな」

「どうせバレないよ。私は家政婦で通ってるし、フミの場合、両親から同意を得て養子になってるんじゃん」

「ならいいけど」

 その時、栞が窓の外をキッと睨んだ。ツカツカと窓に近寄り、外を見下ろした。

「……栞ちゃん? どうしたの?」

「分かんない。けど、外からこっちを見てる人がいたよ」

 オレはベッドから立ち上がって、栞ちゃんの隣に立った。
 窓の外はいつもと変わらない、住宅街が広がっているだけだった。

 オレは何も感じなかった。けれど、栞ちゃんは不安そうにしていて、それが何故かは教えてもらえなかった。
 きっと栞ちゃんの考え過ぎだ。オレの幸せはずっと続く筈だって、そう思っていた。


 高校は第一志望に合格した。まぁ近くの公立高校なんだけど。その日は雪夜と栞ちゃんと食事に出掛けた。
 栞ちゃんはここぞとばかりに高いものばかり頼んで、食べ過ぎて後悔してた。
 オレと雪夜はそんな栞ちゃんを見て笑ってた。
 楽しかった。

 中学の卒業式も終えて、高校生になった。そんな矢先だった。
 高校は殆どが中学の時と変わらないメンバーだった。

 友達にも恵まれて、こんなに幸せでいいのかな、なんて呑気に考えながら帰宅して、家に帰ってゴロゴロしよ~なんて思いながら玄関のドアを開けた。
 すると、「ただいまー」って言う前に栞ちゃんが走ってきて、オレの胸に飛び込んできた。
 オレの身長はもう栞ちゃんを抜かしてて、か弱い女性がオレの腕の中にいるみたいな、不思議な気分になる。

「し、栞ちゃん!?」

「フミッ!! フミ! どうしよう!? 雪夜さんが!! 雪夜さんが捕まっちゃったよ!!」

 栞ちゃんは泣き腫らした顔で、更に涙をボタボタと流していた。

「つ、捕まった!? 誰に?」

「警察!! 人身売買がバレちゃったの!! 証拠も全部掴まれてて、人身売買組織も、購入者も全員、全員捕まっちゃったって!! さっき秘書の人から電話がきたの」

 嘘……。詐欺とかじゃなくて?

 ピンポーンとチャイムが鳴った。オレが帰ってくるのを待ってたかのように。
 オレはインターフォンには出ず、玄関の扉をゆっくりと開いた。

「警察です。堂島文和君、ですよね?」

 本物の警察だ。パトカーが停まっており、二人の刑事が警察手帳を見せてきた。

「は、はい……」

「あなたにお話があります。警察署でお話を聞かせていただけますか?」

「っ、わ、分かりました」

 頷くしかない。雪夜が逮捕されたんだ、下手な嘘をついて逃げられるわけがない。

「あと、あなたは金井栞さんですよね? 十四年前に人身売買された……」

「違います!! 違います!!」

「栞ちゃん嘘はダメだ。認めたくないのは分かる。でも、逃げたら雪夜はどうなる?
 雪夜を守るんだ、二人で!」

「グスッ……うぅ。分かった」

 オレ達は警察に必死に訴えた。雪夜は悪くない事、オレに関しては自分自身の意思で売られた事、雪夜に助けてもらって幸せな生活を送らせてもらった事。

 オレと栞ちゃんは何度も警察側に起訴しないでくれと必死に訴えた。
 けど、無理だった。
 人身売買組織は壊滅し、犯罪に著名人が関わっていた事が公となり、殆どが逮捕された。
 一部、上手く逃れられた人もいたみたいだけど……。

 栞ちゃんは、本当の親の元に帰されてしまった。

「雪夜さんに気持ちを伝えれば良かった。好きって言えば良かった」

 って後悔しながら。


 オレはその後もずっと家で雪夜を待ってた。マスコミに囲まれて身動きが取れなくなった時期もあったけど、落ち着いた頃に高校に通いだして、夜中はバイトして生活費を稼ごうと必死だった。

 辛かった。悲しかったけど、雪夜を信じて待つ事が、五億を払ってくれた雪夜に対する恩返しだと思って耐えた。

 逮捕から一ヶ月も経たずして雪夜は家に帰ってきた。保釈金を支払ったらしい。
 帰ってきた雪夜に、オレはあったかいお茶を入れた。向かい合うようにソファーに座る。雪夜は随分痩せたみたいだ。可哀想な程、身体が小さくなったように見える。

「実刑判決になるだろうけど、出来る限り刑が軽くなるよう尽力するって、弁護士に言われたよ」

「そうみたいだね。オレ待ってるよ、雪夜が出てくるの」

「いや、もう俺の事は忘れていい。フミはフミらしく幸せになって。学費は一括で払ってあるから心配しないで通いなさい。
 この家はマスコミも来るし、周りの目もある。引越しした方がフミの為だ。
 引越し費用と、生活するのに十分な金はフミの通帳に貯金してあるから使って欲しい。
 結婚資金にと思って貯めた栞の分の通帳もあるんだ、渡しておいてくれるか?」

「やだよ! 雪夜の事忘れられるわけないだろ! 出てきたらまた一緒に暮らそうよ! ねぇっ!?」

「無理だよ。やっぱり俺は犯罪者なんだ。こんな俺が綺麗なお前といられるわけないんだ」

「どこが犯罪者なんだよ!? こんなに優しい人なのに!! オレを幸せにしてくれた雪夜が犯罪者なわけないっ!!」

 スクッと静かに雪夜が立ち上がった。そして、オレの前まで歩いてきて、腕を掴まれる。

「雪夜!?」

 そして雪夜の寝室に連れていかれて、急に──オレを押し倒した。
 
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