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三章
十八話 緊縛ショー
※ショーのお相手は女性です。すみません。
BL好きの中には女性が出るだけで嫌という方もいるらしいと聞きましたので、先に謝っておきます。
それから、再度伊吹の尻穴にバイブが埋め込まれ、貞操帯を着けられた。
伊吹は顔を蕩けさせて喜ぶが、これからまた外を歩かなければならないのだ。少し気を引き締めた。
瑞希だけだと心配だが、翠もいれば安心だ。何かあれば助けてもらえるだろうと、頼る気満々である。
駅ナカのショッピングエリアに向かい、翠を探しながら、瑞希は晴れやかな笑顔を伊吹に向けた。
「脱肛しなくて良かったね」
「ちょっと!? こんなところでする話じゃないだろ」
伊吹は驚いて声を荒らげたが、すぐに声を潜める。
「まぁいいじゃん。どうせ、他人の知らない話を聞いてる人なんて少数だろうし。聞かれて恥ずかしい話じゃないよ」
「十分恥ずかしい話だろ」
「分かった、もう言わない」
瑞希とする会話はほぼ下ネタとSM話だ。今まではホテル内だったから、そんな話をしてもなんら問題はなかったのだが。
外で話す内容ではない。
すると、途端にネタがなくなって二人とも無言になった。
世間話でもするべきかと伊吹が頭を悩ませていると、前から翠がやってきた。
心からホッとする。
「伊吹さーん! 瑞希さーん!」
「翠!」
「翠君、なんかいいお店あったの?」
「いえ、特に。女の子が好きそうな店ばっかりでした」
「どうせ大人の玩具も置いてないしね。じゃ、次は僕の用事に付き合ってね」
瑞希が改札口へと向かって歩き出したので、伊吹と翠は後を追い掛けた。
「どこ行くんだ?」
「ふふ~。恋人が出来たら、一緒に行きたいなってずっと思ってたところだよ。翠君も一緒に行こ」
「良いんですか? 邪魔になりませんか?」
「ならないよ。勉強も兼ねて、一緒に来て欲しいな~」
尻穴のバイブが気になる伊吹は歩く速度が遅くなる。それに気付いた翠が手を引いた。
怪我人かのように翠の腕に縋って瑞希の後に付いていく。お姫様扱いすると言ったのは忘れてしまったのか、瑞希はどんどん先へ進んでしまう。
駅を出て雑多なビルや飲食店が立ち並ぶ繁華街を抜けると、広い道路に出た。
その道路から逸れて細い道を歩いていくと、閑散とした街に出た。低いビルが多く、どのビルも外観は薄汚れていて古い。
そんなひっそりとしたビル達の内、一つのビルの前で瑞希は足を止めた。
周囲を見ると、そのビルに吸い込まれるように入って行く人が何人もいた。
ビルの前に出ている看板には白装束姿で縛られている女性と「縛」の文字。
「瑞希……もしかして、行きたいのって緊縛ショー?」
伊吹が聞くと、瑞希はキラキラと目を輝かせて伊吹と翠の両方を見つめた。
こんなに興奮している瑞希は見た事がなかった。十年以上前一緒にいて、一度もだ。
呆気に取られていると、瑞希の口からは親に一生懸命好きなものを説明している子供のような拙い言葉が出てきた。
「今日の緊縛ショー! 絶対来たかったんだ! 今日出る演者さんがね! 縛山縄太郎様で!
僕、大ファンでね! 師匠なの! だから二人にも見せたくってぇ!」
「分かった分かった、一旦落ち着け!」
こんな姿は初めてである。伊吹も驚いたが、翠もたじろいでいた。
日曜は緊縛ショーを見に行くのが通例らしいと、知ってはいたが。今日は特別楽しみにしていたようだ。
瑞希は、夏休み初日の子供のようにビルの中へと駆け込んで行った。伊吹と翠は後を追うしかなかった。
入ると、既に受付に立っている女性と話をしていた。女性は翠程の身長の高さで、スレンダー体型だ。ウェーブしている髪は腰まであり、金髪と茶髪が入り交じっている。
胸が開いているセクシーな服装だが、誰もが見たら胸元に目がいくだろう。胸の谷間の上にはハート柄の刺青が見えていた。
「久しぶり! みくちゃん!」
「瑞希ちゃーん。久しぶり。予約だから五百円引きで四千五百円ね」
「今日飛び込みで二人連れてきたんだ! あ、これフライヤーね!」
みくが瑞希の後ろを見る。伊吹と目が合った。
「二人とも男性ね。じゃあフライヤー持参で一人二百円引きだから……合計一万四千百円だわ」
「はいはーい」
瑞希は上機嫌で三人分を支払った。伊吹も翠も狼狽する。
値段表を見ると、男性が五千円、女性が三千円だ。予約割引やフライヤー値引きをしてもそれなりの金額になる。
「瑞希、さすがに払うって」
「そうですよ。自分の分は自分で出します」
だが、瑞希は二人を指さして叱った。
「もー! 人が気分良く奢ってるんだから、遠慮しないの! 今日は僕が誘ったんだから! でも、その代わり寝ちゃダメだからね!」
会場の中は一番前に壇上があり、客席は演劇の舞台会場のような、階段のような段差が上まで続いて、座るところに座布団が敷かれているだけだ。
真ん中は昇り降り出来る階段となっている。
客は圧倒的に男性が多い。女性もいるが、パートナー連れが殆どだ。一人で来ている女性は殆どいない。
中には女装している男性や、ゴスロリ姿の女性、腕にびっしりと花柄や髑髏マークのついた刺青を入れている人もいる。
後ろにたむろしているのは、緊縛ショーに出演する演者達である。
一番後ろの壁にドアがあり、そこから壇上の袖に繋がっているらしい。上にいた女性がその扉から入って壇上に現れたりしていた。
まだ人が集まっていないので、伊吹達は前から二番目の席に座った。
すると、前から大柄な男性が入ってきた。上半身裸で、肩には古風な花柄の刺青、下はレザーのズボンを穿いている。厳つい顔付きが余計に裏社会に繋がっているように感じさせる。
彼が入った途端、全員がそちらに目を向けた。伊吹も肌で感じた。普通の人ではないと。
彼はこの会場内で一番目立っていた。
そんな人物が伊吹達の前の一段目の席の下から顔を向けてきたのだから、伊吹は一瞬身構え、翠も緊張したような顔付きになっていたが。
おの男は優しく穏やかな微笑を浮かべた。まるで落ち着いた紳士のようだ。
「瑞希、久しぶり」
「縄太郎様~! お久しぶりです! 師匠の縛りを見に来ました」
瑞希が言っていた縛山縄太郎は彼なのだと、伊吹も翠もすぐに分かった。
「それは嬉しいね。お友達も一緒なんだね。瑞希が誰かと来るのは初めてじゃないかい?」
「えへ。実は、こっちの伊吹が僕の彼氏。で、そっちの翠君が伊吹のもう一人の彼氏で、僕の弟子なんです」
「ははっ、また面白い付き合い方をしているなぁ。初めまして。縛山縄太郎という名でSMバーの経営と縄師をしています」
縛山はにっこりと優しい笑みを伊吹と翠に向けた。
「篠伊吹です。ゲイ専用のラブホテルの経営している大学生です」
「俺は柳川翠です。……えっと、大学生です」
「そうか。これからも瑞希をよろしく頼みます」
縛山が頭を上げ始めたので、伊吹と翠も慌てて頭を下げた。
「もう、僕は子供じゃないですよ!」
「あはは。すまないな、見た目がどうしても子供に見えてしまってな。今日は楽しんでいってくれ」
「はい!」
縄太郎は後ろの席へと向かった。瑞希の目は輝いたままだ。話しかけづらいので、辺りを見回していると壇上の横の壁に今日のプログラムが貼られているのに気付いた。
一組につき三十分のショーが六組。途中トイレ休憩に行けるような、十分休憩が書いてあるが、伊吹は自分には関係ないと、出演者の名前に目を向ける。
この緊縛ショーは一般的なもので、男女や女性同士でやっている。
伊吹は普段ゲイのみの緊縛ショーをしている為、ここで誰の名前を見ても知らない人ばかりだ。
先程挨拶した縄太郎はトリだ。パートナーであろう女性の名前も書かれている。
何人か瑞希の知り合いと挨拶を終えた頃、ようやくショーが始まった。
和風な曲調の音楽が流れてきた。Sの男は黒い着物の着流しだ。Mの女性は翠がSMショーで着ているような白装束を着ている。
二人が三つ指をついて礼をし、男が動き出す。流れるような縄さばきに、女性はあっという間に上半身が縄化粧で飾られる。
豊満な乳房は主張するように張り、弓なりに撓る背中は女性らしい色気を見せている。
背中から伸びた縄は天井から吊るされたカラビナに引っ掛けられ、女性の身体が引っ張られる。そして、女が爪先立ちをする位置で固定された。
そのまま腰に支えの縄を巻かれる。縄は十分に余っており、尾骨の上の辺りから余った縄を背中の縄と同じく上のカラビナに引っ掛けた。
……その瞬間、男の腕は筋が張り、太くなる。その瞬間、グンっと女の背中と腰が水平になった。脚はだらんと下に垂れ下がっている。
男は女の白装束の裾を、邪魔そうに太腿まで捲った。そしてそれぞれの足を曲げた状態で太腿から足首までを格子状になるように縛り、足首なら上に引き上げて、腰が曲がる限界で固定した。
逆海老縛りだ。
その状態で、露わになっている足をメインに鞭を振るい、胸元を開いて赤い低温蝋燭を垂らす。
赤い花が咲いたようだ。女性の身体はビクビクと震えていた。
その後の演者も縛り方や、吊り方、責め方に違いはあれど、同じ流れの繰り返しだ。寝てしまう人もいないわけではない。
伊吹は性別が男のみというだけで、同じような緊縛ショーの開催をし、監督をしている為、少し新鮮な気持ちで見ていた。
チラリと翠を見ると真剣な目で見ていたので、それには安堵した。伊吹は翠がSMにはあまり興味ない事を知っている。
自発的に瑞希にSMの指導を願い出た事に驚愕もしたし、伊吹の為に仕方なく始めたのだろうと思っていたのだ。
例えそうだとしても、真剣に向き合ってくれている事が嬉しく思える。
瑞希も瑞希で、ショーに集中しているのか、悪戯でバイブのスイッチを押しそうな雰囲気はない。伊吹は安心して壇上へ視線を向けられた。
そして最後の組になった。縄太郎が女性と共に出てきた時、周囲の期待度は高まる。
彼らは今までとは全く違う緊縛ショーを見せたのだった。
───────────────────
※ちなみに、縛山縄太郎様の本名。
芝山丞太郎で、読みそのままです。
BL好きの中には女性が出るだけで嫌という方もいるらしいと聞きましたので、先に謝っておきます。
それから、再度伊吹の尻穴にバイブが埋め込まれ、貞操帯を着けられた。
伊吹は顔を蕩けさせて喜ぶが、これからまた外を歩かなければならないのだ。少し気を引き締めた。
瑞希だけだと心配だが、翠もいれば安心だ。何かあれば助けてもらえるだろうと、頼る気満々である。
駅ナカのショッピングエリアに向かい、翠を探しながら、瑞希は晴れやかな笑顔を伊吹に向けた。
「脱肛しなくて良かったね」
「ちょっと!? こんなところでする話じゃないだろ」
伊吹は驚いて声を荒らげたが、すぐに声を潜める。
「まぁいいじゃん。どうせ、他人の知らない話を聞いてる人なんて少数だろうし。聞かれて恥ずかしい話じゃないよ」
「十分恥ずかしい話だろ」
「分かった、もう言わない」
瑞希とする会話はほぼ下ネタとSM話だ。今まではホテル内だったから、そんな話をしてもなんら問題はなかったのだが。
外で話す内容ではない。
すると、途端にネタがなくなって二人とも無言になった。
世間話でもするべきかと伊吹が頭を悩ませていると、前から翠がやってきた。
心からホッとする。
「伊吹さーん! 瑞希さーん!」
「翠!」
「翠君、なんかいいお店あったの?」
「いえ、特に。女の子が好きそうな店ばっかりでした」
「どうせ大人の玩具も置いてないしね。じゃ、次は僕の用事に付き合ってね」
瑞希が改札口へと向かって歩き出したので、伊吹と翠は後を追い掛けた。
「どこ行くんだ?」
「ふふ~。恋人が出来たら、一緒に行きたいなってずっと思ってたところだよ。翠君も一緒に行こ」
「良いんですか? 邪魔になりませんか?」
「ならないよ。勉強も兼ねて、一緒に来て欲しいな~」
尻穴のバイブが気になる伊吹は歩く速度が遅くなる。それに気付いた翠が手を引いた。
怪我人かのように翠の腕に縋って瑞希の後に付いていく。お姫様扱いすると言ったのは忘れてしまったのか、瑞希はどんどん先へ進んでしまう。
駅を出て雑多なビルや飲食店が立ち並ぶ繁華街を抜けると、広い道路に出た。
その道路から逸れて細い道を歩いていくと、閑散とした街に出た。低いビルが多く、どのビルも外観は薄汚れていて古い。
そんなひっそりとしたビル達の内、一つのビルの前で瑞希は足を止めた。
周囲を見ると、そのビルに吸い込まれるように入って行く人が何人もいた。
ビルの前に出ている看板には白装束姿で縛られている女性と「縛」の文字。
「瑞希……もしかして、行きたいのって緊縛ショー?」
伊吹が聞くと、瑞希はキラキラと目を輝かせて伊吹と翠の両方を見つめた。
こんなに興奮している瑞希は見た事がなかった。十年以上前一緒にいて、一度もだ。
呆気に取られていると、瑞希の口からは親に一生懸命好きなものを説明している子供のような拙い言葉が出てきた。
「今日の緊縛ショー! 絶対来たかったんだ! 今日出る演者さんがね! 縛山縄太郎様で!
僕、大ファンでね! 師匠なの! だから二人にも見せたくってぇ!」
「分かった分かった、一旦落ち着け!」
こんな姿は初めてである。伊吹も驚いたが、翠もたじろいでいた。
日曜は緊縛ショーを見に行くのが通例らしいと、知ってはいたが。今日は特別楽しみにしていたようだ。
瑞希は、夏休み初日の子供のようにビルの中へと駆け込んで行った。伊吹と翠は後を追うしかなかった。
入ると、既に受付に立っている女性と話をしていた。女性は翠程の身長の高さで、スレンダー体型だ。ウェーブしている髪は腰まであり、金髪と茶髪が入り交じっている。
胸が開いているセクシーな服装だが、誰もが見たら胸元に目がいくだろう。胸の谷間の上にはハート柄の刺青が見えていた。
「久しぶり! みくちゃん!」
「瑞希ちゃーん。久しぶり。予約だから五百円引きで四千五百円ね」
「今日飛び込みで二人連れてきたんだ! あ、これフライヤーね!」
みくが瑞希の後ろを見る。伊吹と目が合った。
「二人とも男性ね。じゃあフライヤー持参で一人二百円引きだから……合計一万四千百円だわ」
「はいはーい」
瑞希は上機嫌で三人分を支払った。伊吹も翠も狼狽する。
値段表を見ると、男性が五千円、女性が三千円だ。予約割引やフライヤー値引きをしてもそれなりの金額になる。
「瑞希、さすがに払うって」
「そうですよ。自分の分は自分で出します」
だが、瑞希は二人を指さして叱った。
「もー! 人が気分良く奢ってるんだから、遠慮しないの! 今日は僕が誘ったんだから! でも、その代わり寝ちゃダメだからね!」
会場の中は一番前に壇上があり、客席は演劇の舞台会場のような、階段のような段差が上まで続いて、座るところに座布団が敷かれているだけだ。
真ん中は昇り降り出来る階段となっている。
客は圧倒的に男性が多い。女性もいるが、パートナー連れが殆どだ。一人で来ている女性は殆どいない。
中には女装している男性や、ゴスロリ姿の女性、腕にびっしりと花柄や髑髏マークのついた刺青を入れている人もいる。
後ろにたむろしているのは、緊縛ショーに出演する演者達である。
一番後ろの壁にドアがあり、そこから壇上の袖に繋がっているらしい。上にいた女性がその扉から入って壇上に現れたりしていた。
まだ人が集まっていないので、伊吹達は前から二番目の席に座った。
すると、前から大柄な男性が入ってきた。上半身裸で、肩には古風な花柄の刺青、下はレザーのズボンを穿いている。厳つい顔付きが余計に裏社会に繋がっているように感じさせる。
彼が入った途端、全員がそちらに目を向けた。伊吹も肌で感じた。普通の人ではないと。
彼はこの会場内で一番目立っていた。
そんな人物が伊吹達の前の一段目の席の下から顔を向けてきたのだから、伊吹は一瞬身構え、翠も緊張したような顔付きになっていたが。
おの男は優しく穏やかな微笑を浮かべた。まるで落ち着いた紳士のようだ。
「瑞希、久しぶり」
「縄太郎様~! お久しぶりです! 師匠の縛りを見に来ました」
瑞希が言っていた縛山縄太郎は彼なのだと、伊吹も翠もすぐに分かった。
「それは嬉しいね。お友達も一緒なんだね。瑞希が誰かと来るのは初めてじゃないかい?」
「えへ。実は、こっちの伊吹が僕の彼氏。で、そっちの翠君が伊吹のもう一人の彼氏で、僕の弟子なんです」
「ははっ、また面白い付き合い方をしているなぁ。初めまして。縛山縄太郎という名でSMバーの経営と縄師をしています」
縛山はにっこりと優しい笑みを伊吹と翠に向けた。
「篠伊吹です。ゲイ専用のラブホテルの経営している大学生です」
「俺は柳川翠です。……えっと、大学生です」
「そうか。これからも瑞希をよろしく頼みます」
縛山が頭を上げ始めたので、伊吹と翠も慌てて頭を下げた。
「もう、僕は子供じゃないですよ!」
「あはは。すまないな、見た目がどうしても子供に見えてしまってな。今日は楽しんでいってくれ」
「はい!」
縄太郎は後ろの席へと向かった。瑞希の目は輝いたままだ。話しかけづらいので、辺りを見回していると壇上の横の壁に今日のプログラムが貼られているのに気付いた。
一組につき三十分のショーが六組。途中トイレ休憩に行けるような、十分休憩が書いてあるが、伊吹は自分には関係ないと、出演者の名前に目を向ける。
この緊縛ショーは一般的なもので、男女や女性同士でやっている。
伊吹は普段ゲイのみの緊縛ショーをしている為、ここで誰の名前を見ても知らない人ばかりだ。
先程挨拶した縄太郎はトリだ。パートナーであろう女性の名前も書かれている。
何人か瑞希の知り合いと挨拶を終えた頃、ようやくショーが始まった。
和風な曲調の音楽が流れてきた。Sの男は黒い着物の着流しだ。Mの女性は翠がSMショーで着ているような白装束を着ている。
二人が三つ指をついて礼をし、男が動き出す。流れるような縄さばきに、女性はあっという間に上半身が縄化粧で飾られる。
豊満な乳房は主張するように張り、弓なりに撓る背中は女性らしい色気を見せている。
背中から伸びた縄は天井から吊るされたカラビナに引っ掛けられ、女性の身体が引っ張られる。そして、女が爪先立ちをする位置で固定された。
そのまま腰に支えの縄を巻かれる。縄は十分に余っており、尾骨の上の辺りから余った縄を背中の縄と同じく上のカラビナに引っ掛けた。
……その瞬間、男の腕は筋が張り、太くなる。その瞬間、グンっと女の背中と腰が水平になった。脚はだらんと下に垂れ下がっている。
男は女の白装束の裾を、邪魔そうに太腿まで捲った。そしてそれぞれの足を曲げた状態で太腿から足首までを格子状になるように縛り、足首なら上に引き上げて、腰が曲がる限界で固定した。
逆海老縛りだ。
その状態で、露わになっている足をメインに鞭を振るい、胸元を開いて赤い低温蝋燭を垂らす。
赤い花が咲いたようだ。女性の身体はビクビクと震えていた。
その後の演者も縛り方や、吊り方、責め方に違いはあれど、同じ流れの繰り返しだ。寝てしまう人もいないわけではない。
伊吹は性別が男のみというだけで、同じような緊縛ショーの開催をし、監督をしている為、少し新鮮な気持ちで見ていた。
チラリと翠を見ると真剣な目で見ていたので、それには安堵した。伊吹は翠がSMにはあまり興味ない事を知っている。
自発的に瑞希にSMの指導を願い出た事に驚愕もしたし、伊吹の為に仕方なく始めたのだろうと思っていたのだ。
例えそうだとしても、真剣に向き合ってくれている事が嬉しく思える。
瑞希も瑞希で、ショーに集中しているのか、悪戯でバイブのスイッチを押しそうな雰囲気はない。伊吹は安心して壇上へ視線を向けられた。
そして最後の組になった。縄太郎が女性と共に出てきた時、周囲の期待度は高まる。
彼らは今までとは全く違う緊縛ショーを見せたのだった。
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※ちなみに、縛山縄太郎様の本名。
芝山丞太郎で、読みそのままです。
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