1 / 89
第一章「氷姫が出会った男」
1.氷姫、出会う。
しおりを挟む
その美しい姫は城内でこう呼ばれていた。
――氷姫
可憐で気品あふれる彼女だったが一部の者を除き、接する態度は氷のように冷たくまるで感情を持たぬ人形のよう。数か月前に父である国王が行方不明になったこともそれに拍車をかけていた。
(明日は公休日。じゃあ、行きましょう……)
そんな彼女、アンナ・キャスタールが唯一楽しみにしていたのが、中立都市『ルルカカ』にある覆面バー。マスクやフードを被り、身分を明かさずにお酒を楽しむ場所である。
最初は庶民の暮らしを学ぶために通っていたのだが、お酒を覚えたばかりのアンナはいつしかそこでの時間を楽しみにするようになっていた。
そして今宵。
そのバーで運命の男に出会う。
中立都市『ルルカカ』。
戦時中でも決して争いが起きない場所。交易の中心でもあり、もし仮にここが戦火に見舞われるならば周辺国の物流が停止するため不可侵条約が結ばれている。
その『ルルカカ』にある一軒のバー。夜にしか開かないそのバーは通称『覆面バー』と呼ばれ、様々な人が身分を隠し心の疲れを癒しに集まって来る。
ネガーベル王国の姫であるアンナもそのひとりだった。
国王が行方知らずとなってから国政を担うようになったが、まだ若く未熟な彼女への風当たりは強く、懇意にしていた貴族達も踵を返すようにその元を離れて行った。
(私じゃ、何もできない……、お父様、一体どこへ……)
カウンターに座りひとりグラスを握るアンナの目が赤く染まる。
長く美しい金色の髪。すらっとした彼女はマスクをつけていてもその美しさは隠しきれない。実際、これまでも何人もの男が彼女に言い寄ったが、すべて適当にあしらい相手にすらしていない。
(今日は人が多いわね。明日お休みだからかな)
アンナはむわっとした空気漂う店内に目をやる。
たくさんの人が酒を飲み楽しそうに会話している。男女、男だけのグループなど様々。カウンターにいたマスターが店内に新たに入ってきたひとりの男に言う。
「どうも、今日は混んでましてね。さ、そちらのカウンターへどうぞ」
アンナの耳にバーのマスターの声が聞こえる。
(ん?)
同時に空いていた自分の隣の席にひとりの男が座る。
「邪魔するよ、嬢ちゃん」
その男、銀色の短髪で逞しい巨躯の男。溢れる男臭さに渋さが混じる。アンナが答える。
「え、ええ……」
一瞬どきっとしたアンナが小さく返事をする。
男はそんな彼女に見向きもせずに、マスターが置いた酒を黙って飲み始める。
沈黙。
黙々とマイペースで酒を飲む男に対し、隣に座ったアンナはなぜか緊張し、何をしていいのか分からずグラスを次から次へと空けて行く。そして程よく酔いが回った頃に、耐えきれなくなって男に言った。
「ねえ……」
「……」
無言。男は前を向いたまま答えようとしない。
「ねえ、どうして黙ってるのよ」
男はちらりとアンナを見ると再び前を向いてグラスを口に運ぶ。アンナがむっとして言う。
「私が話し掛けているのに、どうして何も答えないのよ!!」
少し大きな声。
ようやく男がアンナの方を少し向いて言った。
「俺に、話し掛けているのか……?」
アンナは金色の美しい髪を手でかき上げながら更にむっとして言う。
「あなたしかいないじゃない!! そもそもこんなに若くて可愛い女の子が隣にいるのにぃ、どーして何も話そうとしないのよぉ!!」
酔いと興奮でアンナ自身、一体何を言っているのかよく分からなくなってくる。男が答える。
「用がないからだ」
(むかっ!!!)
アンナは顔を真っ赤にして怒る。手にしていたグラスの酒を一気飲みにしてから男に言う。
「あなたぁ!! 自分じゃ、カッコひぃ~とか思ってんでちょ!? バッカじゃないぃ~? うぬほれよ、うぬほれっ!!」
既にろれつが回らなくなっているアンナ。興奮と酔いで感情のまま思ったことが口に出る。男が静かに答える。
「俺はひとりで静かに酒を飲みたい。それだけだ」
アンナが目を赤くして言う。
「な、なひよ、それ!? あなたまで、あなたまで、わたひぃをそんな風に言うの……??」
無言の男。前を向いたまま答えようとはしない。アンナが男の方を向いて言う。
「勝負よぉ!!!」
「勝負?」
男が横目でアンナを見て言う。アンナが答える。
「そう、しょーふ!!! 酒の飲み比べで、勝ったほーが、何でもひうことを聞くのぉ!! いい!!??」
「なぜ俺がそんなことを……」
そう言いかけた男を無視してアンナが新たにグラスに入れられた酒を一気に飲み干す。
「ぷはーーっ!! わたひぃ~は飲んだよぉ~!! さあ、あなたぁ、あなたぁ!!!」
そう言ってアンナは男の前にあったグラスを持ち彼の顔に押し付ける。
(やれやれ……)
男は内心そう感じながらも逃げられないと思い、グラスの酒を一気に飲み干す。それを見たアンナが手を叩いて喜んで言う。
「ひひじゃない~!! ひひよ、ひひよぉ~!! じゃあ、次はわたひぃ!!!」
そう言ってアンナがグラスの酒を次々と空けて行く。男も半ば強制的に飲まされ、数杯飲んだところでアンナが先に音を上げた。
「ぐほっ、ごほっ、うごっ!!!!」
カウンターに頭を乗せてむせるアンナ。一切顔色も態度も変えない男が彼女の背中をさすりながら言う。
「大丈夫か、嬢ちゃん。これくらいにしておかないと……」
「あなひゃの勝ちぃぃぃ!!!」
アンナは急にがばっと上半身を起こして叫ぶ。男は困った顔をしてアンナを見ながら言う。
「そんなことどうでもいい。子供はもう家に帰んな」
アンナは男の言葉を無視して言う。
「さー、わたひぃは何でも言うことを聞くよぉ~!! 言ってごらん、なになに?」
男は眉間に皺を寄せてあからさまに困った表情を浮かべる。
酒の匂いとざわざわと騒がしい店内。皆自分達の会話に夢中でアンナと男の会話は聞こえない。男がアンナに言う。
「別に何もねえ」
(むかっ!!!)
アンナは酔いながらも怒りの感情だけはしっかりと感じていた。先ほどよりも更に大きな声で言う。
「なひ、それ~!! 言いなさいよぉ!! 言ひなしゃ……」
「じゃあ、黙っていてくれ」
「ん?」
男はアンナの声を遮るようにしてそう言った。
「黙って座ってろ。それが望みだ」
そう言うと男は再び前を向いて静かにグラスを口に運ぶ。
(むかっ、むかっ、むかっ、むかああああっ!!!!!!)
アンナは悔しさの絶頂の中にいたが、自分が負けたことはしっかりと理解しており相手の言うことに従わなければならないこともちゃんと分っていた。
それでも腹の虫がおさまらないアンナが男に言う。
「こんなに可愛ひぃ、わたひがいるって言うのに。なによぉ、それぇ。ぶつぶつ……」
男は前を向いて黙って酒を飲む。隣のアンナは目の焦点が合わない酔った顔で独り言を言い続ける。
「わたひぃは、どうせぇ、何もできなくて……。聖女ときゃ、ううっ、もう、無理でぇ……」
男は変わらず黙って酒を飲む。アンナが男に言う。
「あなたぁ、わたひぃなんか、どうでもいいんでしょ~、わたひぃなんか……」
それでも何も喋らない男にアンナがむっと来て言う。
「しょーぶよ、しょーぶっ!! 飲み比べっ!!! もうひっかい、さあっ!!!!」
そう言ってアンナは目の前にあったグラスの酒を再び一気飲みする。
「う、うえっ……、うげげげっ……、ぐほぐほっ!! さ、さあ、今度はあなたぁのバンよ……」
男はグラスを口まで持ってくると一口も飲まず、そのままカウンターに置いた。そして言う。
「俺の負けだ。嬢ちゃん、あんたの勝ちだ」
近くにいたマスターが小さな声で男に言う。
「いいのかい?」
「ああ、今日飲む分の金も尽きた。俺の負けさ」
男が初めて少しだけ笑って言った。
アンナはずっと下を向いたまま動かない。男が声をかける。
「嬢ちゃん、お前の勝ちだ。言うことを聞いてやる。何かあるか?」
アンナは真っ赤な顔を上げて男を見つめる。
(涙……)
男は初めて彼女が泣いていることに気付いた。アンナが涙を流しながら言う。
「……救って」
(!?)
意味が分からない男にアンナが再度言う。
「あなたぁ、何でも言うことぉ聞くんでしょ……、救ってよぉ、わたひぃを……、救って……」
酔ってはいるがその言葉に嘘偽りの気持ちはないと直ぐに分かった。
「……分かった」
男は小さく答えた。アンナがちょっとだけ嬉しそうに言った。
「ありがとぉ、約束だよ……」
「ああ」
アンナはカウンターに頭をドンと乗せ、横を向いて男に言う。
「名前ぇ、教えてよぉ。あなたぁ、の、なまへ……」
「頼み事はひとつじゃなかったのか?」
「……」
とろんとした目のまま答えないアンナ。男が言う。
「……ロレンツ、だ」
それを聞いたアンナが少し間を置いてからにこっと笑い言う。
「わたひぃは……、ぁん、にゃ……、だよぉ……」
アンナはそう言うとすっと意識が遠くなった。
まるで夢のような感覚。心地良い幸せな夢を見ているような気持ち。
だがアンナはその男、ロレンツがこの先、自分そして国をも救ってくれる事になるとは、まさかそんな夢にも思っていなかった。
――氷姫
可憐で気品あふれる彼女だったが一部の者を除き、接する態度は氷のように冷たくまるで感情を持たぬ人形のよう。数か月前に父である国王が行方不明になったこともそれに拍車をかけていた。
(明日は公休日。じゃあ、行きましょう……)
そんな彼女、アンナ・キャスタールが唯一楽しみにしていたのが、中立都市『ルルカカ』にある覆面バー。マスクやフードを被り、身分を明かさずにお酒を楽しむ場所である。
最初は庶民の暮らしを学ぶために通っていたのだが、お酒を覚えたばかりのアンナはいつしかそこでの時間を楽しみにするようになっていた。
そして今宵。
そのバーで運命の男に出会う。
中立都市『ルルカカ』。
戦時中でも決して争いが起きない場所。交易の中心でもあり、もし仮にここが戦火に見舞われるならば周辺国の物流が停止するため不可侵条約が結ばれている。
その『ルルカカ』にある一軒のバー。夜にしか開かないそのバーは通称『覆面バー』と呼ばれ、様々な人が身分を隠し心の疲れを癒しに集まって来る。
ネガーベル王国の姫であるアンナもそのひとりだった。
国王が行方知らずとなってから国政を担うようになったが、まだ若く未熟な彼女への風当たりは強く、懇意にしていた貴族達も踵を返すようにその元を離れて行った。
(私じゃ、何もできない……、お父様、一体どこへ……)
カウンターに座りひとりグラスを握るアンナの目が赤く染まる。
長く美しい金色の髪。すらっとした彼女はマスクをつけていてもその美しさは隠しきれない。実際、これまでも何人もの男が彼女に言い寄ったが、すべて適当にあしらい相手にすらしていない。
(今日は人が多いわね。明日お休みだからかな)
アンナはむわっとした空気漂う店内に目をやる。
たくさんの人が酒を飲み楽しそうに会話している。男女、男だけのグループなど様々。カウンターにいたマスターが店内に新たに入ってきたひとりの男に言う。
「どうも、今日は混んでましてね。さ、そちらのカウンターへどうぞ」
アンナの耳にバーのマスターの声が聞こえる。
(ん?)
同時に空いていた自分の隣の席にひとりの男が座る。
「邪魔するよ、嬢ちゃん」
その男、銀色の短髪で逞しい巨躯の男。溢れる男臭さに渋さが混じる。アンナが答える。
「え、ええ……」
一瞬どきっとしたアンナが小さく返事をする。
男はそんな彼女に見向きもせずに、マスターが置いた酒を黙って飲み始める。
沈黙。
黙々とマイペースで酒を飲む男に対し、隣に座ったアンナはなぜか緊張し、何をしていいのか分からずグラスを次から次へと空けて行く。そして程よく酔いが回った頃に、耐えきれなくなって男に言った。
「ねえ……」
「……」
無言。男は前を向いたまま答えようとしない。
「ねえ、どうして黙ってるのよ」
男はちらりとアンナを見ると再び前を向いてグラスを口に運ぶ。アンナがむっとして言う。
「私が話し掛けているのに、どうして何も答えないのよ!!」
少し大きな声。
ようやく男がアンナの方を少し向いて言った。
「俺に、話し掛けているのか……?」
アンナは金色の美しい髪を手でかき上げながら更にむっとして言う。
「あなたしかいないじゃない!! そもそもこんなに若くて可愛い女の子が隣にいるのにぃ、どーして何も話そうとしないのよぉ!!」
酔いと興奮でアンナ自身、一体何を言っているのかよく分からなくなってくる。男が答える。
「用がないからだ」
(むかっ!!!)
アンナは顔を真っ赤にして怒る。手にしていたグラスの酒を一気飲みにしてから男に言う。
「あなたぁ!! 自分じゃ、カッコひぃ~とか思ってんでちょ!? バッカじゃないぃ~? うぬほれよ、うぬほれっ!!」
既にろれつが回らなくなっているアンナ。興奮と酔いで感情のまま思ったことが口に出る。男が静かに答える。
「俺はひとりで静かに酒を飲みたい。それだけだ」
アンナが目を赤くして言う。
「な、なひよ、それ!? あなたまで、あなたまで、わたひぃをそんな風に言うの……??」
無言の男。前を向いたまま答えようとはしない。アンナが男の方を向いて言う。
「勝負よぉ!!!」
「勝負?」
男が横目でアンナを見て言う。アンナが答える。
「そう、しょーふ!!! 酒の飲み比べで、勝ったほーが、何でもひうことを聞くのぉ!! いい!!??」
「なぜ俺がそんなことを……」
そう言いかけた男を無視してアンナが新たにグラスに入れられた酒を一気に飲み干す。
「ぷはーーっ!! わたひぃ~は飲んだよぉ~!! さあ、あなたぁ、あなたぁ!!!」
そう言ってアンナは男の前にあったグラスを持ち彼の顔に押し付ける。
(やれやれ……)
男は内心そう感じながらも逃げられないと思い、グラスの酒を一気に飲み干す。それを見たアンナが手を叩いて喜んで言う。
「ひひじゃない~!! ひひよ、ひひよぉ~!! じゃあ、次はわたひぃ!!!」
そう言ってアンナがグラスの酒を次々と空けて行く。男も半ば強制的に飲まされ、数杯飲んだところでアンナが先に音を上げた。
「ぐほっ、ごほっ、うごっ!!!!」
カウンターに頭を乗せてむせるアンナ。一切顔色も態度も変えない男が彼女の背中をさすりながら言う。
「大丈夫か、嬢ちゃん。これくらいにしておかないと……」
「あなひゃの勝ちぃぃぃ!!!」
アンナは急にがばっと上半身を起こして叫ぶ。男は困った顔をしてアンナを見ながら言う。
「そんなことどうでもいい。子供はもう家に帰んな」
アンナは男の言葉を無視して言う。
「さー、わたひぃは何でも言うことを聞くよぉ~!! 言ってごらん、なになに?」
男は眉間に皺を寄せてあからさまに困った表情を浮かべる。
酒の匂いとざわざわと騒がしい店内。皆自分達の会話に夢中でアンナと男の会話は聞こえない。男がアンナに言う。
「別に何もねえ」
(むかっ!!!)
アンナは酔いながらも怒りの感情だけはしっかりと感じていた。先ほどよりも更に大きな声で言う。
「なひ、それ~!! 言いなさいよぉ!! 言ひなしゃ……」
「じゃあ、黙っていてくれ」
「ん?」
男はアンナの声を遮るようにしてそう言った。
「黙って座ってろ。それが望みだ」
そう言うと男は再び前を向いて静かにグラスを口に運ぶ。
(むかっ、むかっ、むかっ、むかああああっ!!!!!!)
アンナは悔しさの絶頂の中にいたが、自分が負けたことはしっかりと理解しており相手の言うことに従わなければならないこともちゃんと分っていた。
それでも腹の虫がおさまらないアンナが男に言う。
「こんなに可愛ひぃ、わたひがいるって言うのに。なによぉ、それぇ。ぶつぶつ……」
男は前を向いて黙って酒を飲む。隣のアンナは目の焦点が合わない酔った顔で独り言を言い続ける。
「わたひぃは、どうせぇ、何もできなくて……。聖女ときゃ、ううっ、もう、無理でぇ……」
男は変わらず黙って酒を飲む。アンナが男に言う。
「あなたぁ、わたひぃなんか、どうでもいいんでしょ~、わたひぃなんか……」
それでも何も喋らない男にアンナがむっと来て言う。
「しょーぶよ、しょーぶっ!! 飲み比べっ!!! もうひっかい、さあっ!!!!」
そう言ってアンナは目の前にあったグラスの酒を再び一気飲みする。
「う、うえっ……、うげげげっ……、ぐほぐほっ!! さ、さあ、今度はあなたぁのバンよ……」
男はグラスを口まで持ってくると一口も飲まず、そのままカウンターに置いた。そして言う。
「俺の負けだ。嬢ちゃん、あんたの勝ちだ」
近くにいたマスターが小さな声で男に言う。
「いいのかい?」
「ああ、今日飲む分の金も尽きた。俺の負けさ」
男が初めて少しだけ笑って言った。
アンナはずっと下を向いたまま動かない。男が声をかける。
「嬢ちゃん、お前の勝ちだ。言うことを聞いてやる。何かあるか?」
アンナは真っ赤な顔を上げて男を見つめる。
(涙……)
男は初めて彼女が泣いていることに気付いた。アンナが涙を流しながら言う。
「……救って」
(!?)
意味が分からない男にアンナが再度言う。
「あなたぁ、何でも言うことぉ聞くんでしょ……、救ってよぉ、わたひぃを……、救って……」
酔ってはいるがその言葉に嘘偽りの気持ちはないと直ぐに分かった。
「……分かった」
男は小さく答えた。アンナがちょっとだけ嬉しそうに言った。
「ありがとぉ、約束だよ……」
「ああ」
アンナはカウンターに頭をドンと乗せ、横を向いて男に言う。
「名前ぇ、教えてよぉ。あなたぁ、の、なまへ……」
「頼み事はひとつじゃなかったのか?」
「……」
とろんとした目のまま答えないアンナ。男が言う。
「……ロレンツ、だ」
それを聞いたアンナが少し間を置いてからにこっと笑い言う。
「わたひぃは……、ぁん、にゃ……、だよぉ……」
アンナはそう言うとすっと意識が遠くなった。
まるで夢のような感覚。心地良い幸せな夢を見ているような気持ち。
だがアンナはその男、ロレンツがこの先、自分そして国をも救ってくれる事になるとは、まさかそんな夢にも思っていなかった。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる