夏休みの夕闇~刑務所編~

苫都千珠(とまとちず)

文字の大きさ
11 / 67
第二章 神様

ヤミの神様2

しおりを挟む
「……話は変わるんだけど……君は、神様って信じてる?」

「突然どうしたの?……うーん、八百万やおよろずの神はいてもいいかなって思うけど……唯一神、絶対神みたいなものは信じてないかな」

「………そうか。……でも『神様』っていう言葉にするから胡散臭くなるけど……『揺るがない善の概念』みたいなものならある気がしない?」

「揺るがない善なんかあるかなあ。そういうのって、その場の状況や時代とかによっても変わらない?何が良くて何が悪いのかって」

「でも、例えば……。道端に困っているお年寄りがいて、助けを求めてる。その人を助けるのは善?悪?」

「…………そう言われると、助けるのは『善』だけど……」

「だろ?それは、古今東西変わらない真理じゃないか?遥か昔から、人類はそういう行為を『善』だとみなしていたと思うよ」

彼女は顎に手を当てて考え込み、少しの空白の後、口を開く。

「……でもさ、1秒でも早く会わないと死ぬかもしれない家族が待ってるとする。その場合は、どっちが善?家族の元へ急ぐのと、困っている人を助けるのは」

頭を回転させて、僕の話に真剣に答えてくれる火置ひおきさん。適当な返事を返さずに、こんな話題にも引かずに会話してくれることに、僕は純粋な喜びを覚える。

「そういった究極の選択系の場合は、自分の信念に従って行動するのが善だと思う」

「………どういうこと?」

「たとえば、普段から何よりも家族を優先すると決めている……とか。そういう、その人の確固たる主義思想に、自らの意思で従うかどうかで判断する」

「……その場の流れで……みたいな選び方は善とみなさないってこと?」

「そう。君の言う通り、善い行いは時として判断が難しい。トロッコ問題然り。他人に判断を委ねず答えのない問題に立ち向かうのもまた、善なる人だと思う。そして、『神様』に近しい存在だと思う」

「その言い方だと……あなたは神様を信じてるんだ」

「うん。僕は僕の考える神様を信じてるんだ。10歳の頃からずっと」

「…………ヤミ教を開祖したってこと?」

「信者は一人だけどね」

「…………やっぱり、なかなかレベルの高いおかしな人だった」

彼女はこちらに向かってニヤリと笑う。その表情を見る限りでは、僕に対して嫌悪感は抱いていないように見える。……と、思う。

「そうだ、今日は僕の考える神様の話をしていい?今日も時間を潰さなくちゃいけないし、どうかな?」

「いいよ。好きなだけ話して」

火置さんはいつもと変わらない表情で頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

青春リフレクション

羽月咲羅
青春
16歳までしか生きられない――。 命の期限がある一条蒼月は未来も希望もなく、生きることを諦め、死ぬことを受け入れるしかできずにいた。 そんなある日、一人の少女に出会う。 彼女はいつも当たり前のように側にいて、次第に蒼月の心にも変化が現れる。 でも、その出会いは偶然じゃなく、必然だった…!? 胸きゅんありの切ない恋愛作品、の予定です!

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...