夏休みの夕闇~刑務所編~

苫都千珠(とまとちず)

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第六章 真実

カミサマ面談最終回・前編

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~灰谷ヤミの死刑まで残り3日~


「どうですか?調子は」

「……よくないよ」

「お望みの死がそこまで来てるというのに?」

「………………」

「彼女と喧嘩したんでしょう?もうすぐ死刑なのに。仲直りしたほうがいいんじゃないですか?今まであんなに仲良くしていたのに。さすがに淋しいんじゃないですか?」

「……」

「ま、私には関係のないことではありますが……。だって、あなたがどんな気持ちで死のうがどうだっていいですしね。やっぱり最後まで酷い人生だったと、この世を恨みながら死んでいこうが関係ないですから」

「そうだよ、あんたには関係ない。もう、部屋に帰らせてくれないか」

「そんな冷たいことをおっしゃらずに。……今日はね、ひとつ提案があってあなたを呼んだんです」

「もうすぐ死ぬのに、提案も何もないだろう。静かに過ごさせてくれよ」

「……そう、それです。死刑執行を延期する気はありませんか?」

「………何を言ってる?」

「だから、死刑の執行をもっと後にずらすんです。あと、……そうですね、半年?いや、1年でもいい。とにかく、延期するんですよ。私は気が長いですから、いつかあなたが死んでくれればなんだっていいんです。国にはあなたは予定通り死んだと公表しますから」

「……なんのためにそんなことをするんだよ?前回の話を忘れたのか?僕は『早く死にたい』と言っただろう。延期するメリットが、僕にとっては何もない」

「この間も言った通り、私はあなたの『信仰心』にとても興味がある。解明したいんです。でもまだ解明できていないんですよ。もう少し時間が欲しいんです」

「……僕にとってのメリットの話だよ。何度も言っただろ。僕は死にたいんだ」

「でも、あなたには彼女との時間が足りないでしょう。それに、彼女だってあなたともっと一緒にいたいはずです。違いますか?……下世話ですか?私」

「…………もう、いいよ。長く一緒にいたところで、いつか死ぬのは変わりないだろう。早く死なせて欲しい。気が変わらないうちに」

「それは、気が変わりそうだということですか?」

「……言葉の綾だ」

「では……もう少し、延期する気になりそうなことを言ってあげましょうか」

「……これ以上なんだよ」

「あなたの悲劇は、私のせいなんですよ」

「…………え?」

「だからね、あなたが常に悲劇的な人生に苦しみ、悩まされ、人々とのつながりや愛情、承認、安心を全く得られなかったのはすべて、私のせいなんです」

「……冗談だろ?」

「覚えていませんか?あなたの悲劇がはじまったのは、だいたい…2歳から3歳にかけてですね?その間に何があったか。あなたは2歳のころ、私に出会っている。私は2歳のあなたの運命を、ちょこっと操作したんです。それで、こうなった」

「何……を…………」

「驚いていますね?そうですよね、初めて言いましたからね。あなた達は私が何かの研究をしていることには気づいたようですが……さすがに人の運命にまで干渉しているとは思わなかったでしょう?」

「ちょっと待てよ……意味がわからない」

「私は、常に実験をしているんです。誰かの人生を使った、壮大な、心理学的臨床実験です。誰かの人生に密着した実験なんて、なかなかできるもんじゃありません。だって密着する本人も、同じ時間軸で年をとっていってしまうのですから。でも私はカミサマだから、そこについて気にする必要はありません。何人もの人生を追うことができます。不老不死ですから」

「あんたは……何なんだ?」

「『カミサマ』ですよ?ヒトとは異なる、より上位の存在です。……あ、そうだ!それでは今日は特別に、私の行っている研究の話をしましょうか!ええ、そうしましょう。

もう最後の面談ですからね。今になってあなたから何かを訴えられてもどうしようもないですから、今日は私の講釈の時間にしましょう」
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