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2章 舞踏会
2-8.パーティーへ
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王宮までは、ステファン、私、アーロンの3人、それからお父様とお父様の≪恋人≫のグローリアに別れて2台で出発した。
アーロンはいつもの軽装ではなく、しっかりと礼装していた。いつもくしゃくしゃしている金髪を綺麗に撫でつけていて、大分大人っぽく見えた。
こうして見ると、やっぱり金色の髪の毛は華やかだと思う。いわゆる童話の王子様のようだ。実の兄弟でもステファンは明るい茶色の髪をしている。
「――良いじゃない」
頭から足元まで見て頷くと、アーロンは俯いてしまった。
「やっぱり白のがいいかな」
ステファンがアーロンの襟のところにつけるスカーフみたいなものを持って、今つけている紫色のものと比べている。
「白のが華やかでいいんじゃない」
私が言うと、ステファンはため息をついた。
「カミラが言うなら、紫かな」
「え、逆?」
「だってお前いつも派手なんだもん」
私は赤くなった。確かに、「カミラ」はバブリー趣味というか、派手好きの気がある。吸血鬼になって田舎から急に都会に出た影響か、派手なほど良いみたいな時期があって、ルゼットの一員になった当初は、ステファンにそのことをいじられて喧嘩をしていた記憶があった。でも、私は今、そんなに派手好きじゃない日本人『沙代里』の感覚を持っている。
「アーノルドに聞いてみなさいよ」
「わかったよ。アーノルド、白は派手だよな」
玄関で見送りに立っていたアーノルドは、アーロンをしげしげと眺めて言った。
「ええ。紫ですね」
「だろ?」
「ええー、白だめ?」
「全体が白ですから、襟飾りまで白にしたら印象がぼやけます」
「やっぱり」
「『派手』の問題じゃないじゃない」
アーロンが面倒そうにつぶやいた。
「どっちでもいいよ、はやく行こう。父さん行っちゃったし」
私とステファンは声を合わせて「はい」と返事した。
王宮につくと、裏口から女王の執務室に通される。
そこは、『執務室』というには異様な部屋だった。石造りの小部屋で、部屋の真ん中にある大きな石のテーブルの上に、鹿の皮に書かれたアラスティシアと周辺の地図が貼られていて、上には、何かの骨で作ったようなピンがいくつも刺さっている。部屋の壁には、干からびた何かの生物だとか、昆虫の標本みたいなのだとか、お面だとかが所せましと並んでいて、部屋の端っこにはお決まりの大きな水晶玉が置かれていた。それぞれがこれでもないくらい、女王の魔女感を演出している。
部屋の中では、グウェン女王と、トーデン王子、お父様とグローリアが向かい合っていた。
「お母様、トーデンお変わりなく」
金髪の髪をハーフアップで結い上げて、胸元の大きく開いた真っ赤なドレスを着たグローリアはお父様に腕を絡め、寄りかかるようにして女王とトーデン王子に笑いかけた。
――うわ。
私はその部屋の空気に顔を引きつらせた。お父様の《恋人》グローリアは、女王の娘・王子の姉。事がややこしいのは、女王グウェンも若いころお父様の《恋人》だったのだ。
アーロンはいつもの軽装ではなく、しっかりと礼装していた。いつもくしゃくしゃしている金髪を綺麗に撫でつけていて、大分大人っぽく見えた。
こうして見ると、やっぱり金色の髪の毛は華やかだと思う。いわゆる童話の王子様のようだ。実の兄弟でもステファンは明るい茶色の髪をしている。
「――良いじゃない」
頭から足元まで見て頷くと、アーロンは俯いてしまった。
「やっぱり白のがいいかな」
ステファンがアーロンの襟のところにつけるスカーフみたいなものを持って、今つけている紫色のものと比べている。
「白のが華やかでいいんじゃない」
私が言うと、ステファンはため息をついた。
「カミラが言うなら、紫かな」
「え、逆?」
「だってお前いつも派手なんだもん」
私は赤くなった。確かに、「カミラ」はバブリー趣味というか、派手好きの気がある。吸血鬼になって田舎から急に都会に出た影響か、派手なほど良いみたいな時期があって、ルゼットの一員になった当初は、ステファンにそのことをいじられて喧嘩をしていた記憶があった。でも、私は今、そんなに派手好きじゃない日本人『沙代里』の感覚を持っている。
「アーノルドに聞いてみなさいよ」
「わかったよ。アーノルド、白は派手だよな」
玄関で見送りに立っていたアーノルドは、アーロンをしげしげと眺めて言った。
「ええ。紫ですね」
「だろ?」
「ええー、白だめ?」
「全体が白ですから、襟飾りまで白にしたら印象がぼやけます」
「やっぱり」
「『派手』の問題じゃないじゃない」
アーロンが面倒そうにつぶやいた。
「どっちでもいいよ、はやく行こう。父さん行っちゃったし」
私とステファンは声を合わせて「はい」と返事した。
王宮につくと、裏口から女王の執務室に通される。
そこは、『執務室』というには異様な部屋だった。石造りの小部屋で、部屋の真ん中にある大きな石のテーブルの上に、鹿の皮に書かれたアラスティシアと周辺の地図が貼られていて、上には、何かの骨で作ったようなピンがいくつも刺さっている。部屋の壁には、干からびた何かの生物だとか、昆虫の標本みたいなのだとか、お面だとかが所せましと並んでいて、部屋の端っこにはお決まりの大きな水晶玉が置かれていた。それぞれがこれでもないくらい、女王の魔女感を演出している。
部屋の中では、グウェン女王と、トーデン王子、お父様とグローリアが向かい合っていた。
「お母様、トーデンお変わりなく」
金髪の髪をハーフアップで結い上げて、胸元の大きく開いた真っ赤なドレスを着たグローリアはお父様に腕を絡め、寄りかかるようにして女王とトーデン王子に笑いかけた。
――うわ。
私はその部屋の空気に顔を引きつらせた。お父様の《恋人》グローリアは、女王の娘・王子の姉。事がややこしいのは、女王グウェンも若いころお父様の《恋人》だったのだ。
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