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4夜 夢のあとさき
4-7.望むことは(2)
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「ぐ、あ」
腰の動きを速めて、フレディが表情を歪ませた。額に冷や汗が流れている。
身体の中で、熱いものが放たれた。私の身体はそれを吸い上げる。
苦しそうなフレディが小さくしぼんだそれを、私から抜いた。
「触って、ソフィー」
フレディが私の左手をぬめっとしたそれに誘導する。
私は感覚のなくなったはずのその手が、液体で濡れたふにゃふにゃしたものに触るのを感じた。
「嫌よ!」
私はフレディの手を振り払った。左手は私の意志のとおりに動いた。
左足をばたばたさせてみる。それも動いた。
身体の感覚が戻ってくる。
私はフレディを睨んだ。
「何をしたのよ」
フレディは大粒の汗を額に浮かべながら、苦しそうに笑う。
「君にもらったものを返しただけだよ」
私は左手と左足を全力でばたつかせた。
だって、フレディ、これは、あなたにとっては良くないことなんじゃないの。
「フレディ、あなた、これをしたら、あなたは大丈夫じゃないでしょ!?」
私が怒鳴ってもフレディは笑顔を崩さない。
「ぜんぜん、大丈夫だって」
「嘘つき。あなた、嘘つくの下手なのよ。苦しそうじゃない、なんでよ」
フレディは、シーツを割いた。暴れる私の左手と左足を、右と同じようにベッドの足に縛り付けた。
「暴れないでよ、頼むから」
「放しなさいよ」
私はぎしぎしとベッドを揺らす。フレディは私にまたがると、私の胸でそれを挟んで、前後に揺らした。鱗で硬くなっていたはずの胸は、弾力を取り戻していて、フレディのそれを挟んで揺れた。それは、私の胸の谷間でまたむくむくと大きくなっていった。
「気持ちいいよ、ソフィー」
彼は大きくなったそれを、また下にあてがう。
「やめてよ……」
私は懇願した。それでも、さっきはあんなに侵入がきつかったそれは、吸い込まれるようにそこに入る。
フレディは私の唇にキスをした。
一番最初に彼の唇に触れた時のように、冷たい感触がした。
見つめると、青かった瞳が赤くなっている。
ゆっくりと腰を上下しながら、彼は私の髪をなでる。
「ソフィー、俺は、クラーケンが襲ってきたとき、何で君を助けたのか、自分でもわからなかった」
お腹の中が温かくなってくる。
「そんなのは初めてだったから。どうして君に生きていて欲しいって、こんなに思うのかわからなかったんだ、だけどさ、」
身体の中から、みちみちと何かが出てくるような音がする。
内側から外側へ押し上げるような何かを感じる。
「前に、夢の世界は、いくつも球体が並んでるみたいだって言っただろ。人間や、他の生き物はわからないけど、意識の世界はつながっていて、お互いに、影響しあってるんだ」
激しく息を吐きながら彼は言葉を続ける。
「球体が並んでるというか、時にそれは、重なりあっていて、俺は未熟だからかもしれないけど、そこに入るときに、その周りにある意識の影響を、受けてしまうみたいで、」
彼は腰を止めて、また私に冷たくなった唇をつけた。
「君の周りにある人たちの意識が、君に生きてくれって強く、思ってるから、俺も、そう思ったんだ、きっと」
フレディは私の頬を何度もなでた。
「生気を奪えるなら、逆もできるんじゃないかと思って。ちゃんとできて良かった」
いたずらっぽく笑うけど、瞳は潤んでいる。彼の頬に涙がつたった。
「元気になって、生きてほしい、ソフィー」
フレディは上体を起こすと、腰を激しく動かした。中で、また弾ける。
それと同時に私の身体からパリパリパリという音がした。鱗が下から何かに押し上げられて割れている。バリン!と音がして背中が割れた。
中からモノを引き抜いたフレディは私の背中の、その割れ目に指を入れて引っ張った。ずるりと音がして、鱗がはがれる。夜の冷たい空気が、その下にできた、また湿ったような新しい肌にあたるのを感じる。フレディは肩で呼吸しながら、背中、足、腕、顔と、私を覆ていた鱗を順番にはがした。
まるで蛇が脱皮したように私の形をしたそれが、床に転がる。
フレディの身体からは黒い煙のようなものが出ていた。瞳は真っ赤になっていて、耳が尖ってきている。身長が少しずつ縮んでいるように見えた。
私はその一連の光景に言葉を失っていた。
彼はよろめきながら立ち上がると、ずり下げた私の下着を戻し、ネグリジェを元通りになおした。左腕と左足をしばった布をほどき、元通りにして立ち上がる。
「あ」と言って振り返ると、シーツをはがした。
「ソフィーが誤解されると嫌だから、これは持っていくね」
シーツにはうっすらと、私の血の染みができている。
私は左腕を伸ばして、彼の名前を呼んだ。
「フレディ!」
私の手をとって、手の甲にキスして、彼は、私にウインクした。
「目を覚ましたらフレッドに会いに行きなよ。彼はきっと、君をまた好きになるよ」
でも、それは瞳が潤んでいて、苦し気にしているせいで、もう片方の目も閉じかかったぐちゃぐちゃのウインクだった。
彼は窓を開けた。夜風が吹き込んでくる。
フレディは振り返らずに、震える声で言った。
「じゃあね、ソフィー」
彼の姿が窓の外に消える。
「フレディ、待ってよ!! またね、は!? ねえ!!」
私の声は夜の闇に吸われてしまう。窓の外から、どんがらがっしゃんと何かが何かにぶつかる音がした。
――あの、ポンコツ夢魔。
「馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの」
私は暴れた。右手と右足が縛られているのが鬱陶しかった。彼を追いかけたかったのに。
暴れているうちに、だんだんと意識が遠のいてくる。
左手を窓に伸ばす。――待ってよ、フレディ!
誰もいない窓から、風が吹き込む。
待ってよ、フレディ。あなたに、伝えたいことがあるのよ。
私は薄れていく意識の中で、叫び続けた。
腰の動きを速めて、フレディが表情を歪ませた。額に冷や汗が流れている。
身体の中で、熱いものが放たれた。私の身体はそれを吸い上げる。
苦しそうなフレディが小さくしぼんだそれを、私から抜いた。
「触って、ソフィー」
フレディが私の左手をぬめっとしたそれに誘導する。
私は感覚のなくなったはずのその手が、液体で濡れたふにゃふにゃしたものに触るのを感じた。
「嫌よ!」
私はフレディの手を振り払った。左手は私の意志のとおりに動いた。
左足をばたばたさせてみる。それも動いた。
身体の感覚が戻ってくる。
私はフレディを睨んだ。
「何をしたのよ」
フレディは大粒の汗を額に浮かべながら、苦しそうに笑う。
「君にもらったものを返しただけだよ」
私は左手と左足を全力でばたつかせた。
だって、フレディ、これは、あなたにとっては良くないことなんじゃないの。
「フレディ、あなた、これをしたら、あなたは大丈夫じゃないでしょ!?」
私が怒鳴ってもフレディは笑顔を崩さない。
「ぜんぜん、大丈夫だって」
「嘘つき。あなた、嘘つくの下手なのよ。苦しそうじゃない、なんでよ」
フレディは、シーツを割いた。暴れる私の左手と左足を、右と同じようにベッドの足に縛り付けた。
「暴れないでよ、頼むから」
「放しなさいよ」
私はぎしぎしとベッドを揺らす。フレディは私にまたがると、私の胸でそれを挟んで、前後に揺らした。鱗で硬くなっていたはずの胸は、弾力を取り戻していて、フレディのそれを挟んで揺れた。それは、私の胸の谷間でまたむくむくと大きくなっていった。
「気持ちいいよ、ソフィー」
彼は大きくなったそれを、また下にあてがう。
「やめてよ……」
私は懇願した。それでも、さっきはあんなに侵入がきつかったそれは、吸い込まれるようにそこに入る。
フレディは私の唇にキスをした。
一番最初に彼の唇に触れた時のように、冷たい感触がした。
見つめると、青かった瞳が赤くなっている。
ゆっくりと腰を上下しながら、彼は私の髪をなでる。
「ソフィー、俺は、クラーケンが襲ってきたとき、何で君を助けたのか、自分でもわからなかった」
お腹の中が温かくなってくる。
「そんなのは初めてだったから。どうして君に生きていて欲しいって、こんなに思うのかわからなかったんだ、だけどさ、」
身体の中から、みちみちと何かが出てくるような音がする。
内側から外側へ押し上げるような何かを感じる。
「前に、夢の世界は、いくつも球体が並んでるみたいだって言っただろ。人間や、他の生き物はわからないけど、意識の世界はつながっていて、お互いに、影響しあってるんだ」
激しく息を吐きながら彼は言葉を続ける。
「球体が並んでるというか、時にそれは、重なりあっていて、俺は未熟だからかもしれないけど、そこに入るときに、その周りにある意識の影響を、受けてしまうみたいで、」
彼は腰を止めて、また私に冷たくなった唇をつけた。
「君の周りにある人たちの意識が、君に生きてくれって強く、思ってるから、俺も、そう思ったんだ、きっと」
フレディは私の頬を何度もなでた。
「生気を奪えるなら、逆もできるんじゃないかと思って。ちゃんとできて良かった」
いたずらっぽく笑うけど、瞳は潤んでいる。彼の頬に涙がつたった。
「元気になって、生きてほしい、ソフィー」
フレディは上体を起こすと、腰を激しく動かした。中で、また弾ける。
それと同時に私の身体からパリパリパリという音がした。鱗が下から何かに押し上げられて割れている。バリン!と音がして背中が割れた。
中からモノを引き抜いたフレディは私の背中の、その割れ目に指を入れて引っ張った。ずるりと音がして、鱗がはがれる。夜の冷たい空気が、その下にできた、また湿ったような新しい肌にあたるのを感じる。フレディは肩で呼吸しながら、背中、足、腕、顔と、私を覆ていた鱗を順番にはがした。
まるで蛇が脱皮したように私の形をしたそれが、床に転がる。
フレディの身体からは黒い煙のようなものが出ていた。瞳は真っ赤になっていて、耳が尖ってきている。身長が少しずつ縮んでいるように見えた。
私はその一連の光景に言葉を失っていた。
彼はよろめきながら立ち上がると、ずり下げた私の下着を戻し、ネグリジェを元通りになおした。左腕と左足をしばった布をほどき、元通りにして立ち上がる。
「あ」と言って振り返ると、シーツをはがした。
「ソフィーが誤解されると嫌だから、これは持っていくね」
シーツにはうっすらと、私の血の染みができている。
私は左腕を伸ばして、彼の名前を呼んだ。
「フレディ!」
私の手をとって、手の甲にキスして、彼は、私にウインクした。
「目を覚ましたらフレッドに会いに行きなよ。彼はきっと、君をまた好きになるよ」
でも、それは瞳が潤んでいて、苦し気にしているせいで、もう片方の目も閉じかかったぐちゃぐちゃのウインクだった。
彼は窓を開けた。夜風が吹き込んでくる。
フレディは振り返らずに、震える声で言った。
「じゃあね、ソフィー」
彼の姿が窓の外に消える。
「フレディ、待ってよ!! またね、は!? ねえ!!」
私の声は夜の闇に吸われてしまう。窓の外から、どんがらがっしゃんと何かが何かにぶつかる音がした。
――あの、ポンコツ夢魔。
「馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの、馬鹿じゃないの」
私は暴れた。右手と右足が縛られているのが鬱陶しかった。彼を追いかけたかったのに。
暴れているうちに、だんだんと意識が遠のいてくる。
左手を窓に伸ばす。――待ってよ、フレディ!
誰もいない窓から、風が吹き込む。
待ってよ、フレディ。あなたに、伝えたいことがあるのよ。
私は薄れていく意識の中で、叫び続けた。
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