リドル・ストーリーズ!~riddle stories~

魔法組

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第14話 セーラー服男(Sailormen)

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「ねえねえ、お姉ちゃん! もうこの話聞いた?」

「きゃっ!? ちょ、ちょっと。勝手に部屋に入ってこないでよ。いま着替え中なんだからね! いくらわたしたちが姉妹でも、親しき仲にも礼儀ありと言うか……」

「また趣味で自作してるコスプレ衣装の試着? そんなものわざわざ自分で作らなくっても、お店やネットで買ったほうがずっと安くていいものが手に入るのに」

「うるさいなあ。こういうのは自分で作るからこそ愛着がわくのよ。それに既製品きせいひんはサイズが微妙に合わなかったり好みに合うのがなかったりするし」

「まああたしだって時々はお姉ちゃんが作った服をもらって着てるんだから、文句はないけど……って、そんなことはどうでもいいから! それより聞いてよ。さっきスマホで、最近話題の変なニュースっていうのが地域別で紹介されてるアプリを見てたんだけどさ」

「ふうん。そんなアプリがあるんだ?」

「でね! この街にもなんかそういった面白変なネタがないかなと思って探してたんだよ。そしたらあった、ありました! セーラー服男事件っていうニュースなんだけど。お姉ちゃん、知ってる?」

「……なにそれ?」

「なんかさ。セーラー服を着た身長百八十センチくらいの色黒で角刈かくがりの強面こわもてマッチョ男が二人、最近この辺りに出没してるらしいんだよ」

「はあっ!?」

「そして二人で女の子っぽい裏声を出してきゃぴきゃぴ話しながらなよなよとした内股で歩いて、可愛らしい喫茶店やお洒落しゃれなスイーツ店に入ってお茶とかしてるらしいよ。今週に入ってからもう百件以上目撃情報が送られてきてるんだって」

「馬鹿馬鹿しい。どうせ都市伝説かなにかでしょ」

「それが実話らしいんだよ。残念ながら写真とか撮った人はいないみたいなんだけどね。その二人、ものすごく強そうで怖そうな外見をしてるから、もし写真を撮ったことに気づかれたらどんな目にあわされるか分からないと思って躊躇ちゅうちょしてるみたい。だらしないわよねえ」

「まさかとは思うけど、その人たち実は駐留米軍の人とかだったっていうオチじゃないでしょうねえ? セーラー服って元々は海軍だか海兵隊だかの制服だって聞いたことがあるわよ。だとしたら男の人が身につけていたとしてもおかしくないと思うけど」

「そんなわけないじゃん。目撃者の証言によれば、二人ともネイティブな日本語を話してたっていうしさ。そもそも二人が着ていたセーラー服って山の手のほら、お嬢さま学校として有名な女子高のものとそっくりだったんだって」

「え? あのデザインが超可愛らしいことで有名な?」

「そうそう。お姉ちゃんもこの間、あたしとおそろいで二着作ってくれたじゃんか。妙にカラフルであちこちヒラヒラしてフリルも沢山着いてる上に、無駄に胸元が大きく開いててスカートは意味もなくやたら短いやつ……」

「違うわよ! わたしが作ったのはあるえ系アニメに出てくる女子高の制服で……って、言われて気づいたけど、この二つって確かによく似てるわねえ。もしかしてあの制服のデザイナーって、アニメに出てくる制服を盗用しパクったんじゃないの?」

「かもね。でもどっちにしろ、泣く子も黙る天下の米軍があんな制服を採用するわけないじゃん」

「でしょうねえ。そうなったら別の意味で世界中から恐れられるようになっちゃうだろうし。だけどそうなるとその二人って何者なのかしらね。衣服倒錯とうさく者ってやつ?」

識者しきしゃの話によれば、その二人は女の子の着る可愛らしい服が本当に好きでたまらなくてさ。最初はそんな服を着ている自分を妄想するだけで満足してたのが、それだけではすまなくなって。買うなり自作するなりして家でこっそり本当に着るようになって。さらにそれがエスカレートして街を出歩くようになったんじゃないかって」

「ネットに出てくる識者の話なんて当てにならないと思うけど。でもまあ、そんなところかもね。同じ可愛い服好きとして、わたしも彼らの気持ちが分からなくもないわ」

「そうよね。あたしもさ、よくネット通販とかで可愛らしい服とか買うことがあるんだけど。届いてから実際着てみると、恐ろしく似合わないなって思う時が多々あるのよ。そういう時は悔しいから無理やりにでも、これは自分によく似合ってるんだって自己暗示かけてその気になったりするし」

「その二人もそれと同じってこと? 可愛いセーラー服を着たいけど、それが似合っていないことは自分でもよく分かっていて。でもそれでも着たいから自己暗示で自分はこれが似合ってるんだって言い聞かせているうちに、自分は本当に女子高校生なんだと思いこむようになってしまったと言いたいわけ?」

「あくまで想像だけどね。そう考えれば、その二人がなんの躊躇もてらいもなくセーラー服を着て歩いてたり、女の子みたいな喋りかたをして女の子が行くような店に入ったりしてる説明もつくでしょう?」

「世の中にはいろんな人がいるからねえ。まあ人に迷惑をかけないなら、誰がどんな服を着て街を歩いていようがその人の勝手だと思うけど」

「うん。それでさ、お姉ちゃん。ここからが本題なんだけど。今日これから一緒に街を歩いて、その二人を探してみない?」

「はあ? なんでそんなことを」

「実はさ。最近ネット上でこの二人のことがかなり話題になってて、最初はこの街の中だけしか通じないようなローカルネタだったのが、いまでは全国区で有名になってるみたいなのよ」

「へえ」

「だけどさっきも言ったように、このセーラー服男たちの写真っていうのはどこにもないのよ。だからある物好きな企業がスポンサーになって、首尾しゅびよく二人の写真を撮ってアップ出来た人には賞金を出すって言ってるらしいの!」

「賞金!?」

「うん。結構馬鹿にならない額だよ。お姉ちゃん最近、趣味のコスプレ衣装作りでお金がかかりすぎて、金欠だって言ってたよね? 実はあたしもちょっとネットで服を買いすぎちゃって……」

「それで、自分一人で行くのは怖いもんだから、わたしを誘ったわけ? 相変わらずちゃっかりしてるわねえ」

「えへへ。ダメかな?」

「ま、いいでしょ。上手くその二人を見つけられるとは限らないし、もし見つけてもプライバシーの問題があるから勝手に写真を撮るのはまずいと思うけどね。その人たちにもちょっと興味があるし。ダメもとのつもりで行ってみましょうか。どうせ暇だし」

「やった! そうこうなくっちゃ」

「どうせなら完成したばかりのこの服を着ていかない? 来期に始まる新アニメに登場する女子高制服のセーラー服なんだけどさ。これがまたデザインがメチャクチャ可愛いのよ!」

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