妹に婚約者を寝取られたとグチったら、王弟に求婚され、復讐しようと誘われた件

野地マルテ@2月27日『帝国後宮録』発売

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一晩考えさせてください

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 パヴェルは口は悪いが良い人だ。
 いつも私が嬉しい時には自分のことのように喜んでくれて、私が怒ってる時には私以上に激怒してくれる、そんな優しい男の子だった。

 だからこそ、妹と、元婚約者……否、その旦那に一緒に復讐しようと言ってくれたのだろう。


 妹モーラは不貞が発覚する一年も前から、私の元婚約者と密会していたらしい。

 私と元婚約者は、うちの実家である伯爵家を継ぐため、長らく準備をしてきた。
 執務室でよく、二人で将来のことを語らったものだ。希望に満ちてあふれていたと思う。二人の間には笑顔が絶えず、良い領主夫妻になれると信じて疑わなかった。
 元婚約者とは身体の関係こそ無かったが、夫婦同然の仲だと私は認識していた。

 だからこそ、ベッドで愛し合う二人を偶然見てしまった時、何かの間違いだと思ったし、雷に撃たれたかのように動けなかった。

 ──一時の気の迷いだと思ったのに。

 背を丸め、頭を抱える。

 元婚約者──スオルクは甘やかな美男子で、昔からモテていたことは知っていた。
 私とて、世間をまったく知らないわけじゃない。
 スオルクが多少他の女の人をみても、許そうと思っていたのだ。

 しかしスオルクは、あろう事かうちの妹と不倫をしていた。子どもが出来るような行為に耽っていた。

 私たちは婚約者同士といっても、家の運営に関わる仕事を共にし始めていて、夫婦同等の契約をすでに交わしていた。
 それなのに、スオルクは妹と一年間も穢らわしい関係を持ち続けていたのである。

 不貞が発覚し、むせび泣くモーラ。
 私はただちに家を出、一生ここへは戻ってくるなとモーラへ言ったが、何故か追い出されたのは私の方だった。

 両親は昔から妹に甘かった。
 ミルクに蜂蜜をどばどば入れ、さらに砂糖を山ほど入れたぐらいにクソ甘かった。
 『結婚前から身体の関係を持つぐらい愛し合っているのなら、モーラこそがスオルクの妻に相応しい』と言い出したのだ。

 まったくもって信じられない。

 スオルクと私は婚約破棄。
 妹はそのままスオルクと結婚した。
 あろうことか私が着るはずだった婚礼衣装を着て、妹はスオルクの妻の座についたのだ。

 私はなんとか気を取り直して他の婿を取ろうとしたのに、うちの両親はどこまでも血迷っていて、スオルクと結婚したモーラに家を継がせると言いやがったのだ。

 ──今、思い出しても腹立つっっぅ……!

 べきべきとこめかみや、握りしめた拳に血管が浮く。

 復讐を提案してきたパヴェルには、『一晩考えるから返事は待ってほしい』と言ったが、そんな必要は無かった。
 今でもクソほどむかついている。

 なんなら実家ごと潰したい。実家のイリス家ごと消し去りたかった。

 妹が生まれてから十八年。
 あの家で育った私に人権など無かった。

 それでもスオルクと、はじめて好きになった人と一緒にさえなれれば、私は幸せになれると信じていたのに。


 私は今、本来モーラがやるはずだった王宮のお勤めに出ている。不幸中の幸いか、私は働くことは嫌いじゃないし、職場環境は実家とは比べものにならないほど良いので、『スオルクと結婚できなくてむしろ良かったわーハハッ』と思いはじめていたが、王城で幼馴染の王弟パヴェルと再会し、心の内をぶち撒けたら怒りが再熱した。

 ──モーラもスオルクも、お父様もお母様も許せない……!

 かくして、私の心は決まった。
 かつての家族と婚約者へ復讐すると。
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