妹に婚約者を寝取られたとグチったら、王弟に求婚され、復讐しようと誘われた件

野地マルテ@2月27日『帝国後宮録』発売

文字の大きさ
9 / 13

新事実

しおりを挟む



「まって、パヴェル……! 止まって!」

 抱きかかえられた状態で、パヴェルの騎士服の胸元を引っ張る。
 立ち止まるように言う私の顔を見、パヴェルは困惑しつつも、足を止めてくれた。

「何だ、レティシア」
「やっぱり、王妃様の元へ戻りましょう」
「あぶねぇっつってんだろ!」
「遠くから二人の様子を見るだけいいの! ……お願い」

 頭上から大きなため息が聞こえる。
 やはり駄目だろうか。
 私はモーラに負けた。
 王妃様やパヴェルのおかげであの場から命からがら抜け出すことが出来た。それを戻ろうだなんて、確かに馬鹿げている。
 パヴェルは私を睨んだ。

「……おい。絶対に突っ込んでいくなよ? 俺はお前と結婚するつもりなんだ。死んでもらっちゃ困る」
「パヴェル、……ありがとう」
「プロポーズの返事は落ち着いてからでいいからな。……ま、今回ダメでも死ぬまで諦めねぇけど」

 ぶっきらぼうだけど温かい物言いに、胸の奥が熱くなる。
 パヴェルはいつだって、私の意見を尊重してくれた。

 どうしてパヴェルが私に想いを寄せてくれるのかは分からない。昔から、当たり前のように私の味方をしてくれる理由も。
 何故私のことが好きなのかを聞いても、パヴェルはきっと答えてくれないだろう。
 でも、それでもいいと思った。
 ここまで私のことを想ってくれる人は、そうはいまい。

 パヴェルは私の身体を抱えたまま、元来た道を引き返した。
 荘厳だった旧王城は、見る影もないほど崩れていた。
 その荒れ果てた様に、あらためて息をのむ。
 山のような瓦礫に今も立ちのぼる砂埃。
 まるで戦争のあとのようだ。

 王妃様とモーラの戦いは決着がついたのか、地面の揺れや爆音はおさまっていた。
 パヴェルは私の身体をそっと地面に降ろした。

「……状況が分からんな。物陰から中を伺おう。……こっちだ」

 パヴェルは比較的壁が残っている場所を指差す。
 堅牢そうな扉は、先程王妃様が出した衝撃波で半壊していた。

 喉をごくりと鳴らしながら、そっと中を覗く。
 王妃様とモーラがいた。
 まだ二人は何事も無かったかのように、立って、何やら話をしている。

 ──私のドレス……。

 モーラが着ていた私のドレスはもうボロボロだ。ふんわり広がっていた裾は、破れに破れている。
 絶対弁償させよう。

「なにか、話をしているな……」

 大破した大広間にいる、二人の声は筒抜けだった。

「モーラ……。あなただけは許せません」

 王妃様の怒りの声。
 一侍女のために、ここまで怒ってくれる主人はそうそういないだろう。
 胸にこみあげるものがあり、目に涙の膜を張りそうになった。
 その時だった。

 私たちは王妃様の口からとんでもない事実を聞くこととなった。

「私の主人に手を出すとは……許せません‼︎」

 思わず、「えっっ」と声が出そうになった。
 隣にいるパヴェルも目を見開いている。

 そう、モーラは王妃様の夫であり、パヴェルの兄である──陛下にも手を出していたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。 そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。 母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。 アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。 だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

【完結】妹に婚約者まであげちゃったけれど、あげられないものもあるのです

ムキムキゴリラ
恋愛
主人公はアナスタシア。妹のキャシーにほしいとせがまれたら、何でも断らずにあげてきた結果、婚約者まであげちゃった。 「まあ、魔術の研究やりたかったから、別にいいんだけれどね」 それから、早三年。アナスタシアは魔術研究所で持ち前の才能を活かしながら働いていると、なんやかんやである騎士と交流を持つことに……。 誤字脱字等のお知らせをいただけると助かります。 感想もいただけると嬉しいです。 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...