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新事実
しおりを挟む「まって、パヴェル……! 止まって!」
抱きかかえられた状態で、パヴェルの騎士服の胸元を引っ張る。
立ち止まるように言う私の顔を見、パヴェルは困惑しつつも、足を止めてくれた。
「何だ、レティシア」
「やっぱり、王妃様の元へ戻りましょう」
「あぶねぇっつってんだろ!」
「遠くから二人の様子を見るだけいいの! ……お願い」
頭上から大きなため息が聞こえる。
やはり駄目だろうか。
私はモーラに負けた。
王妃様やパヴェルのおかげであの場から命からがら抜け出すことが出来た。それを戻ろうだなんて、確かに馬鹿げている。
パヴェルは私を睨んだ。
「……おい。絶対に突っ込んでいくなよ? 俺はお前と結婚するつもりなんだ。死んでもらっちゃ困る」
「パヴェル、……ありがとう」
「プロポーズの返事は落ち着いてからでいいからな。……ま、今回ダメでも死ぬまで諦めねぇけど」
ぶっきらぼうだけど温かい物言いに、胸の奥が熱くなる。
パヴェルはいつだって、私の意見を尊重してくれた。
どうしてパヴェルが私に想いを寄せてくれるのかは分からない。昔から、当たり前のように私の味方をしてくれる理由も。
何故私のことが好きなのかを聞いても、パヴェルはきっと答えてくれないだろう。
でも、それでもいいと思った。
ここまで私のことを想ってくれる人は、そうはいまい。
パヴェルは私の身体を抱えたまま、元来た道を引き返した。
荘厳だった旧王城は、見る影もないほど崩れていた。
その荒れ果てた様に、あらためて息をのむ。
山のような瓦礫に今も立ちのぼる砂埃。
まるで戦争のあとのようだ。
王妃様とモーラの戦いは決着がついたのか、地面の揺れや爆音はおさまっていた。
パヴェルは私の身体をそっと地面に降ろした。
「……状況が分からんな。物陰から中を伺おう。……こっちだ」
パヴェルは比較的壁が残っている場所を指差す。
堅牢そうな扉は、先程王妃様が出した衝撃波で半壊していた。
喉をごくりと鳴らしながら、そっと中を覗く。
王妃様とモーラがいた。
まだ二人は何事も無かったかのように、立って、何やら話をしている。
──私のドレス……。
モーラが着ていた私のドレスはもうボロボロだ。ふんわり広がっていた裾は、破れに破れている。
絶対弁償させよう。
「なにか、話をしているな……」
大破した大広間にいる、二人の声は筒抜けだった。
「モーラ……。あなただけは許せません」
王妃様の怒りの声。
一侍女のために、ここまで怒ってくれる主人はそうそういないだろう。
胸にこみあげるものがあり、目に涙の膜を張りそうになった。
その時だった。
私たちは王妃様の口からとんでもない事実を聞くこととなった。
「私の主人に手を出すとは……許せません‼︎」
思わず、「えっっ」と声が出そうになった。
隣にいるパヴェルも目を見開いている。
そう、モーラは王妃様の夫であり、パヴェルの兄である──陛下にも手を出していたのである。
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