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強さは、愛だ
しおりを挟む後日、謁見の許可が出、陛下にお会いできたのだが──陛下の顔はボコボコだった。
まるでジャガイモのよう。
目の周りの皮膚は盛り上がり、瞳は埋没している。果たしてこちらの姿は見えているのだろうか。
私の隣にいたパヴェルは事情を知っているのか、苦々しい顔をしている。
まあ、予想はつく。
王妃様にやられたのだろう。
──すごい、これだけボコボコになるほど、あの王妃様に殴られて、頭と胴体が切り離されていないなんて。
パヴェルもだが、陛下もものすごく身体が頑丈だと思う。
この国の王族や貴族のなかには、並外れた身体能力を持つ者がいる。
衝撃波だけで万物を吹き飛ばす王妃様の打撃を受けて、生きていられる陛下は充分人外だろう。
「……パヴェル、レティシアと結婚するそうだな。王妃から聞いた」
「はい」
「レティシアの両親と妹夫婦、イリス家の家令は旧王城の倒壊に巻き込まれ、亡くなったと聞く。イリス家は代々旧王城を護ってきた。取り壊す前に見学したいと言われ、許可したが……痛ましいことだ。パヴェル、レティシアを支えてやりなさい」
陛下はたらこのように膨れた唇でそう仰った。優しいお言葉に胸が痛む。
実際は私の復讐を遂げさせるために、王妃様がうちの両親らを旧王城に呼び出した。
──王妃様……。
たおやかな、王妃様の笑みを思い浮かべる。
王妃様は初めから、ご自分の手を汚すつもりだったのだろう。
私が己の手で、妹や両親・元婚約者・家令を殺せば罪になる。
しかし、王妃様なら罪に問われない。
この国は国王夫妻の物。
貴族は王家の所有物に過ぎない。
それでも王家の人間みずから臣下を殺せば世論は黙っていない。
それを未曾有の災害に見せかけるとは、さすが王妃様だ。もはや人間じゃない。
◆
「良かった、結婚を兄に許してもらえて」
「本当ね」
「……俺は公爵位を貰えるらしい。イリス領は丸々レティシアのものになるし、これからは忙しくなるな」
夏の青空のようなパヴェルの目が輝く。
「でも、良かったの? パヴェルは騎士を辞めることになったけど……」
「ふん、騎士じゃなきゃ剣を振るえなくなるわけじゃないんだ。これからは人の上に立つ者として、もっと鍛錬しなきゃな」
ぶんっと、パヴェルは何も持っていない手を振り下ろす。
その精悍な横顔にどきりとした。
「私も、もっと強くなれるように頑張るわ!」
「何でだよ?」
「だって──」
パヴェルはこんなにもかっこいいのだ。
ライバルがいつ現れてもおかしくない。
王妃様、とまでは言わなくても、それなりに強くならなきゃ、浮気相手を蹴散らす事など出来ないだろう。
「あなたのことが好きだから! あなたの隣を護るの!」
強さは、愛だ。
<おわり>
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