【R18】王太子の趣味で年下イケメン騎士と結婚させられたので、呪いの下着でたびたび襲っています。

野地マルテ@2月27日『帝国後宮録』発売

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黒幕

 一方その頃。

「……ごめんよ、アリシア。私の魔力が足りなくて、昨夜は途中で監視の魔道具が使えなくなってしまった」

 髪と同色の赤い眉毛が下がる。
 彼の瞳には、寝台に腰かける桃色の長い髪の少女が映っていた。

「お気になさらないで、ロファン様」

 フリルがふんだんに使われた白い寝衣に身を包んだアリシアは、黒い板を両手で持ちながら柔らかく微笑んだ。
 彼女は二年前に王国に嫁いできた、現在十八歳。
 東にある帝国の末の姫で、母親は八番目の妃だった。
 身体の弱いアリシアは、ずっと寝台から離れられない生活を送っている。


 ロファンは、フリルの袖から覗くアリシアの腕に視線を落とす。
 そのか細い腕にはとぐろのような黒い痣があった。
 彼女を蝕む病の名は、黒紋様病。
 魔力の多い人間が、過度に抑圧された生活を幼い頃から強いられていると稀に発症した。
 主な症状は、発作的に現れる患部の痛みと倦怠感。

「私の心の目には見えましたから。レンゼとツヴァイクが仲睦まじく初めての夜を過ごす姿が……! レンゼが最初から、あんなにも積極的にツヴァイクを攻めてくれるだなんて、思ってもみませんでしたわ!」

 アリシアは頬を紅色に染めて声を弾ませるが、ロファンは曖昧に口の端を上げた。

「そっか……」

 アリシアの病を治す方法は分かっていた。
 しかしこの二年、その方法を試しても彼女の病状は悪化するばかりだった。

(……腕の黒紋様を消すには、強い胸のときめきが必要だ)

 好きなものを目にした時の、強い胸の高鳴り。
 これこそが黒紋様に効く一番の薬だった。
 
 アリシアは男女の恋愛に強い関心があった。
 大陸中の恋愛譚をかきあつめたり、役者を呼んで目の前で恋愛劇をさせたこともある。
 だが、腕の黒紋様は消えない。
 万策尽き果てて最後に投じた作戦が、アリシアが理想とする男女を娶せ、仲睦まじい姿を見せるというものだ。

「レンゼとツヴァイクは最高ですわ。まさしく私が理想とする二人……!」

 アリシアは胸の前で両手のひらを合わせると、紅玉のように真っ赤な瞳を煌めかせる。

 アリシアが望んだ男女の設定はこうだ。
 女側が年上の美人であること、また、控えめな性格で恋愛にあまり興味がないこと。
 男側が年下で、家柄と育ちはいいが喧嘩っ早く、自分が間違っていると判断すれば上位の人間にもたてをつくが、妻となった人間には絶対服従を誓うこと。

「この二人は、きっとよい主人と犬になると思います」

 アリシアは口端を上げてそう言い切るが、ロファンは内心理解できなかった。

(レンゼは本当におとなしくて控えめな女の人だし、ツヴァイクは昔から気難しいからな……)

 二人とも常識人ではあるし、それぞれの師団での評判は悪くない。気を使い合ってそれなりに上手くやるだろうが、アリシアが言うような主従関係にはならないとロファンは考える。

(……まぁ、ツヴァイクの片想いで終わるだろうな)

 レンゼのような女性が、ツヴァイクを好きになる展開がどうしても思い浮かばなかった。
 レンゼは平民で、結婚適齢期には彼女の容姿と魔力にしか興味がない男が群がったときく。
 二十六歳になった今も恋人の一人もいないということは、男そのものに失望している可能性が高い。

(……アリシアにお願いされて『淫魔の寝衣』を用意したが、レンゼとツヴァイクのあの様子じゃなにもなかったんだろうなぁ)

 監視の魔道具の通信が途切れたあと、おそらくレンゼはツヴァイクを眠らせて、何事もなかったかのようにしたのだろう。

(……前途多難だ)

 ロファンは心のなかでため息をつく。
 だが難しくてもやらなくてはいけない。
 アリシアのために。
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