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閨の練習※
また夜が訪れる。
レンゼは顎の下に人差し指を当てながら、客室の中をぐるぐると歩き回っていた。
(……閨の練習をしたほうがいいんじゃないかしら?)
監視の魔道具の力が安定するまで、『初夜はしないでほしい』とロファンから言われているが、経験がないのにいきなりそういうことをしようとすれば上手く繋がれない可能性がある。
(……ツヴァイクの、大きかったし)
レンゼは自分の手をじっと見つめる。
指がぎりぎり回り切るか切らないか、それぐらいの太さがあった上に長さもかなりのものがあった。
あれがすんなり自分の腹に収まるとは思えない。
それにロファンの前で初夜が失敗すれば、きっとツヴァイクの矜持は傷つく。
(でも、どうやって誘えばいいのかしら……?)
性的な行為を誘う女は彼の好みではないかもしれない。
だが、ぶっつけ本番で上手くいくとは思えない。
昨夜は淫魔の寝衣のおかげで堂々と振る舞うことができたが、あれは初夜というよりも、ただツヴァイクを性的に弄んだだけだ。
やめてほしいと何度も言う彼に、心が痛むどころか興奮してしまった。
あれは淫魔の寝衣の効力なのか、それとも自分でも知らなかった性癖なのか。
(……ぞくぞくする)
目隠しをされて身を捩るツヴァイクの姿を思い出すだけで、背に這い上がるものを感じる。
レンゼの手には、洗濯済みの黒い紐のような布があった。
◆
寝室に荒い吐息が響く。
寝台の上には、裸で目隠しをされ、後ろ手に縛られた状態で座らせているツヴァイクの姿があった。
レンゼは己に芽生えつつあった欲望に抗えなかった。
今宵もまた、淫魔の寝衣を身につけた。
(これは彼のためでもあるのだから)
歪んだ考えだと分かっている。
だが、どうしてもまた彼のことを性的に攻めたかったのだ。
「レンゼ様……どうして」
「これは閨の練習よ。殿下の御前で上手く振る舞えなかったら困るでしょう?」
レンゼはツヴァイクを見下ろした。
彼には何の咎もない。だが、拘束された彼を見ていると胸がいっぱいになった。
(この夜は、彼の記憶には残らない)
ツヴァイクには、今宵のことは夢だと錯覚する魔法をかけた。
人の記憶に作用する魔法は規制が厳しく、小心者のレンゼは知識はあっても今まで使ったことがなかった。
だが、昨夜の経験がたがを外してしまった。
「やめましょう。ロファンの命令もないのに」
「……私とこういうことをするのが嫌なの?」
レンゼはツヴァイクの股間にするりと手をのばす。
この状況のせいか、彼の雄はすっかり縮こまっている。
軽く握り込むと、彼は腰をびくりと揺らした。
「……おやめください。お手が汚れます」
言葉とは裏腹に、レンゼの手のうちにあるものはみるみるうちに硬さを帯びる。
レンゼは黙って手を動かした。
輪の形にした指を小刻みに前後させ、扱く。
「……ぅっ、ぅぅう」
ツヴァイクは額に汗を浮かべて呻いている。
「我慢しなくてもいいのよ?」
ふっと彼の耳元に息を吹きかけて囁く。
屈強な男が、自分の手で翻弄されている。
なんて愉快な光景なのか──笑顔がとまらない。
レンゼの手の動きが早まった。
「はっ、はっ……」
さらにツヴァイクの息が荒くなる。割れた腹筋は何度も凹んでいた。
昨日の今日だからか、今夜の彼はなかなか射精に至らない。
それでも十数分同じ刺激を続けると、丸い先から透明な液が滴りはじめる。
やがて、レンゼの手に薄くて生ぬるい白濁が迸った。
昂りをはき出したツヴァイクは、肩で息をしている。
目隠しの隙間から、一筋の汗が伝った。
「はぁっ……はっ……は」
「よくできました。偉いわよ、ツヴァイク」
レンゼは微笑むと、白く汚れた手をツヴァイクの口元へ持っていく。
「舐めなさい」
当然、彼は顔を背けようとする。
「続きをしてあげないわよ」
だが、レンゼが厳しい口調で言うと、唇を引き結んだあとおずおずと口を開いた。
ツヴァイクの赤い舌が、拙い動きでレンゼの指を這う。
レンゼの肌がぞわりと粟立つと、空いている手で自分の口元をおさえた。
声を出して笑ってしまいそうになるのを堪える。
(どうしてこんなに楽しい気持ちになるのかしら……)
魔導書に囲まれて、好きな魔法の研究をする毎日はやりがいに満ちていたはずなのに。
今、あの日々が空虚なものに感じた。
◆
(あぁぁぁぁ!!!!)
またレンゼは客室にて朝を迎えた。寝台の敷布に顔を埋めてもがく。
(どうして……!? なんで!?)
昨夜は日が落ちると、ツヴァイクのことを襲いたくなってしまった。
歯止めが効かないまま、彼を魔法で拘束した。
今のところは彼の性器を弄り、吐精させたところで正気に戻れている。
だが、このまま行為が加速すれば、身体を繋げてしまうかもしれない。
何故なら、昨夜の自分は途中まで彼と性交するつもりでいたからだ。……閨の練習と称して。
淫魔の寝衣に、夜になると意識を奪われてしまうのか。
そう疑って調べるも、淫魔の寝衣は身につけないかぎりその効力を発揮しないらしい。
誰かが、自分の意識を操っているのだ。
レンゼの頭に一瞬ロファンの顔が浮かぶが、すぐに首を横に振る。
ロファンも相当高い魔力の持ち主だが、王国魔法師団の魔法使いのなかでも屈指の魔力を持つレンゼほどではない。
(……殿下の魔法なら、私は抗えるはず)
昨夜も感じたのだ。強い魔力の視線を。
ロファン以外にも自分達を見ようとしている者がいる。
(誰なのかしら……)
上官かと考えたが、魔力の質が違う気がする。
それに知っている人間の魔力なら、もう察知できているはずだ。
「はぁ……」
敷布の上に大きなため息が落ちた。
レンゼは顎の下に人差し指を当てながら、客室の中をぐるぐると歩き回っていた。
(……閨の練習をしたほうがいいんじゃないかしら?)
監視の魔道具の力が安定するまで、『初夜はしないでほしい』とロファンから言われているが、経験がないのにいきなりそういうことをしようとすれば上手く繋がれない可能性がある。
(……ツヴァイクの、大きかったし)
レンゼは自分の手をじっと見つめる。
指がぎりぎり回り切るか切らないか、それぐらいの太さがあった上に長さもかなりのものがあった。
あれがすんなり自分の腹に収まるとは思えない。
それにロファンの前で初夜が失敗すれば、きっとツヴァイクの矜持は傷つく。
(でも、どうやって誘えばいいのかしら……?)
性的な行為を誘う女は彼の好みではないかもしれない。
だが、ぶっつけ本番で上手くいくとは思えない。
昨夜は淫魔の寝衣のおかげで堂々と振る舞うことができたが、あれは初夜というよりも、ただツヴァイクを性的に弄んだだけだ。
やめてほしいと何度も言う彼に、心が痛むどころか興奮してしまった。
あれは淫魔の寝衣の効力なのか、それとも自分でも知らなかった性癖なのか。
(……ぞくぞくする)
目隠しをされて身を捩るツヴァイクの姿を思い出すだけで、背に這い上がるものを感じる。
レンゼの手には、洗濯済みの黒い紐のような布があった。
◆
寝室に荒い吐息が響く。
寝台の上には、裸で目隠しをされ、後ろ手に縛られた状態で座らせているツヴァイクの姿があった。
レンゼは己に芽生えつつあった欲望に抗えなかった。
今宵もまた、淫魔の寝衣を身につけた。
(これは彼のためでもあるのだから)
歪んだ考えだと分かっている。
だが、どうしてもまた彼のことを性的に攻めたかったのだ。
「レンゼ様……どうして」
「これは閨の練習よ。殿下の御前で上手く振る舞えなかったら困るでしょう?」
レンゼはツヴァイクを見下ろした。
彼には何の咎もない。だが、拘束された彼を見ていると胸がいっぱいになった。
(この夜は、彼の記憶には残らない)
ツヴァイクには、今宵のことは夢だと錯覚する魔法をかけた。
人の記憶に作用する魔法は規制が厳しく、小心者のレンゼは知識はあっても今まで使ったことがなかった。
だが、昨夜の経験がたがを外してしまった。
「やめましょう。ロファンの命令もないのに」
「……私とこういうことをするのが嫌なの?」
レンゼはツヴァイクの股間にするりと手をのばす。
この状況のせいか、彼の雄はすっかり縮こまっている。
軽く握り込むと、彼は腰をびくりと揺らした。
「……おやめください。お手が汚れます」
言葉とは裏腹に、レンゼの手のうちにあるものはみるみるうちに硬さを帯びる。
レンゼは黙って手を動かした。
輪の形にした指を小刻みに前後させ、扱く。
「……ぅっ、ぅぅう」
ツヴァイクは額に汗を浮かべて呻いている。
「我慢しなくてもいいのよ?」
ふっと彼の耳元に息を吹きかけて囁く。
屈強な男が、自分の手で翻弄されている。
なんて愉快な光景なのか──笑顔がとまらない。
レンゼの手の動きが早まった。
「はっ、はっ……」
さらにツヴァイクの息が荒くなる。割れた腹筋は何度も凹んでいた。
昨日の今日だからか、今夜の彼はなかなか射精に至らない。
それでも十数分同じ刺激を続けると、丸い先から透明な液が滴りはじめる。
やがて、レンゼの手に薄くて生ぬるい白濁が迸った。
昂りをはき出したツヴァイクは、肩で息をしている。
目隠しの隙間から、一筋の汗が伝った。
「はぁっ……はっ……は」
「よくできました。偉いわよ、ツヴァイク」
レンゼは微笑むと、白く汚れた手をツヴァイクの口元へ持っていく。
「舐めなさい」
当然、彼は顔を背けようとする。
「続きをしてあげないわよ」
だが、レンゼが厳しい口調で言うと、唇を引き結んだあとおずおずと口を開いた。
ツヴァイクの赤い舌が、拙い動きでレンゼの指を這う。
レンゼの肌がぞわりと粟立つと、空いている手で自分の口元をおさえた。
声を出して笑ってしまいそうになるのを堪える。
(どうしてこんなに楽しい気持ちになるのかしら……)
魔導書に囲まれて、好きな魔法の研究をする毎日はやりがいに満ちていたはずなのに。
今、あの日々が空虚なものに感じた。
◆
(あぁぁぁぁ!!!!)
またレンゼは客室にて朝を迎えた。寝台の敷布に顔を埋めてもがく。
(どうして……!? なんで!?)
昨夜は日が落ちると、ツヴァイクのことを襲いたくなってしまった。
歯止めが効かないまま、彼を魔法で拘束した。
今のところは彼の性器を弄り、吐精させたところで正気に戻れている。
だが、このまま行為が加速すれば、身体を繋げてしまうかもしれない。
何故なら、昨夜の自分は途中まで彼と性交するつもりでいたからだ。……閨の練習と称して。
淫魔の寝衣に、夜になると意識を奪われてしまうのか。
そう疑って調べるも、淫魔の寝衣は身につけないかぎりその効力を発揮しないらしい。
誰かが、自分の意識を操っているのだ。
レンゼの頭に一瞬ロファンの顔が浮かぶが、すぐに首を横に振る。
ロファンも相当高い魔力の持ち主だが、王国魔法師団の魔法使いのなかでも屈指の魔力を持つレンゼほどではない。
(……殿下の魔法なら、私は抗えるはず)
昨夜も感じたのだ。強い魔力の視線を。
ロファン以外にも自分達を見ようとしている者がいる。
(誰なのかしら……)
上官かと考えたが、魔力の質が違う気がする。
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「はぁ……」
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