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第12話 古代遺跡への挑戦
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朝の冒険者ギルドは、いつもと違う緊張感に包まれていた。
昨日発見された古代遺跡の入口。瘴気噴出事故の処理中に偶然見つかったその場所は、すでに噂となって広まり始めている。石造りの重厚な扉には、千年以上前の文字が刻まれ、その奥から濃密な瘴気が漏れ出していた。
「準備はいいか?」
俺は振り返って、浄化士ギルドの仲間たちを見渡した。
大きなリュックサックを背負ったリクが、緊張した面持ちで頷く。肩から提げた革袋には、応急処置用の包帯や薬草がぎっしりと詰まっている。昨夜遅くまで準備していたのだろう、目の下にはうっすらとクマができていた。
「は、はい! 松明も予備のロープも、全部用意しました」
アンナは腰に下げたポーチを確認しながら、きりっとした表情を作る。家政術師として培った整理整頓の技術で、必要な道具を効率的に収納していた。ただ、その手が微かに震えているのを俺は見逃さなかった。
「ふむ、瘴気濃度測定器も正常に作動しておる」
グスタフが手にした真鍮製の機器を見つめながら言う。経験豊富な施設管理士である彼の落ち着いた態度が、若い二人の不安を和らげているようだった。
「おい、本気か?」
声をかけてきたのは、近くのテーブルで朝食を取っていた冒険者だった。革鎧に身を包んだ戦士風の男が、心配そうな顔でこちらを見ている。
「昨日の瘴気噴出で分かっただろう。あの遺跡は危険すぎる。少なくともレベル50以上のパーティーじゃないと――」
「大丈夫です」
俺は静かに答えた。確かに危険は伴う。だが、瘴気を浄化できるのは俺たちだけだ。
「行こう。日が高くなる前に出発したい」
◆
遺跡の入口は、街の北東にある採石場跡の奥にあった。
朝露に濡れた草を踏みしめながら進むと、ひんやりとした空気が肌を撫でる。鼻を突く瘴気の臭いが、徐々に強くなっていく。腐った卵のような、吐き気を催す悪臭だ。
「うぅ……」
アンナが口元を押さえた。瘴気に慣れていない彼女にとって、この臭いはきついだろう。
「【浄化】」
俺は軽く手をかざし、周囲の空気を浄化した。淡い光が広がり、悪臭が和らぐ。
「あ、ありがとうございます」
「無理はするな。体調が悪くなったらすぐに言ってくれ」
やがて、巨大な石造りの扉が姿を現した。
高さは優に5メートルを超え、表面には複雑な文様が刻まれている。古代文字で何かが書かれているが、風化が激しく判読は困難だった。扉の隙間から、紫色の瘴気が霧のように漏れ出している。
「瘴気濃度、通常の20倍じゃ」
グスタフが測定器を見ながら眉をひそめた。
「これほどの濃度となると、普通の人間なら数分で意識を失うレベルじゃな」
「だからこそ、俺たちが行く意味がある」
俺は扉に手を当てた。冷たい石の感触が、掌から腕へと伝わってくる。長い年月を経た石には、無数の傷と苔が付着していた。
「【浄化】――レベル5」
光が扉全体を包み込む。紫色の瘴気が、まるで朝霧が日光に晒されるように消えていく。同時に、扉に刻まれた文様が淡く光り始めた。
ゴゴゴゴ……
重い音を立てて、扉がゆっくりと開いていく。千年の時を経て、封印が解かれる瞬間だった。
「すげぇ……」
リクが息を呑む。
扉の向こうには、長い石造りの廊下が続いていた。壁には等間隔で松明を置くための金具が設置されているが、当然ながら火は消えている。代わりに、壁自体がぼんやりと光を放っていた。瘴気と反応して発光する、特殊な鉱物が含まれているのかもしれない。
「松明に火を」
グスタフの指示で、リクが松明に火を灯した。パチパチと燃える炎の音が、静寂の中に響く。オレンジ色の光が石壁に揺らめき、不気味な影を作り出した。
「では、参ろう」
俺を先頭に、一列になって廊下を進む。足音が石造りの空間に反響し、まるで誰かがついてきているような錯覚を覚えた。湿った空気が肌にまとわりつき、カビ臭さが鼻腔を刺激する。
壁画が、松明の光に照らされて浮かび上がった。
「これは……」
アンナが立ち止まる。壁一面に描かれているのは、巨大な戦いの様子だった。空を覆う黒い雲、地を這う紫色の霧、そしてそれに立ち向かう人々の姿。千年前の大戦を描いたものだろうか。
「瘴気との戦いですね」
リクが壁画を見上げながら呟いた。確かに、紫色の霧は瘴気を表現しているように見える。そして、光を放つ剣を持った戦士たちが、それに立ち向かっている。
「待て」
グスタフが測定器を見ながら警告を発した。
「瘴気濃度が上昇しておる。この先は、さらに危険じゃ」
確かに、廊下の奥から流れてくる瘴気が濃くなっていた。紫色の霧が、まるで生き物のように蠢いている。普通の冒険者なら、ここで引き返すレベルだ。
「【浄化領域展開】」
俺は新しく習得したスキルを発動させた。体を中心に、半径5メートルほどの浄化空間が生まれる。仲間たちを瘴気から守るバリアのようなものだ。
「おお、息がしやすくなった」
リクが驚きの声を上げる。確かに、浄化領域の中では瘴気の影響が完全に遮断されていた。
廊下の突き当たりに、大きな広間が現れた。
天井は高く、中央には巨大な石像が鎮座している。人型をした守護像のようだが、全身が紫色の瘴気に覆われていた。まるで、瘴気の鎧を纏っているかのようだ。
その瞬間――
ゴゴゴゴ……
石像が動き始めた。
━━━━━━━━━━━━━━━
【鑑定結果】
汚染された守護像
レベル:45
HP:2,500 / 2,500
状態:瘴気汚染(重度)
━━━━━━━━━━━━━━━
「ひっ!」
リクが後ずさる。無理もない。レベル45の敵は、普通なら熟練の冒険者でも苦戦する相手だ。
石像が重い足取りで近づいてくる。その一歩一歩が、地面を震わせた。握られた石の拳は、人の頭ほどもある。
「下がってろ!」
俺は聖剣エクスカリバーを抜いた。銀色の刀身が、瘴気に反応して淡く光を放つ。
石像が拳を振り上げた。風を切る音が耳を打つ。俺は横に跳んで攻撃を避ける。拳が床に激突し、石の破片が飛び散った。その破片の一つが頬をかすめ、熱い痛みが走る。
「【浄化】レベル8!」
光の刃が石像を切り裂く。紫色の瘴気が霧散し、石像の動きが一瞬止まった。だが、完全には浄化できない。レベル45の敵を一撃で倒すには、まだ俺の力は足りなかった。
「翔太さん!」
アンナの声が響く。振り返ると、彼女が小さな光を手に宿していた。
「私も……【浄化】!」
彼女の浄化適性レベル2の力が、石像に向かって放たれる。威力は俺の百分の一にも満たないが、確かに瘴気を削っていた。
「俺も!」
リクも続く。レベル1の浄化適性でも、仲間の力になろうとする姿勢が嬉しかった。
「ふむ、儂もやってみるかの」
グスタフまでもが、浄化の光を放つ。三人の小さな光が、石像を包み込む。
その時、俺は気づいた。
三人の浄化が、俺の浄化と共鳴している。まるで、小さな川が大河に合流するように、力が増幅されていく。これが、浄化士ギルドの真の力なのかもしれない。
「みんな、タイミングを合わせよう!」
俺は叫んだ。
「3、2、1――」
「「「「【浄化】!」」」」
四つの光が一つになり、巨大な光の柱となって石像を貫いた。紫色の瘴気が完全に霧散し、石像が膝をついた。
そして――
ガラガラと音を立てて、石像が崩れ落ちた。ただの石の山と化した守護像の残骸から、小さな光の玉が浮かび上がる。
━━━━━━━━━━━━━━━
【戦闘結果】
守護像を浄化しました
経験値を獲得しました
隠し通路が開きました
━━━━━━━━━━━━━━━
石像があった場所の奥の壁が、音もなくスライドして開いた。その先には、下へと続く階段が見えた。
「やった……」
リクが息を吐いた。その額には汗が浮かび、手は微かに震えていた。初めての本格的な戦闘で、相当緊張していたのだろう。
「みんな、よくやった」
俺は仲間たちに声をかけた。正直、レベル6や7の彼らにとって、レベル45の敵は恐怖の対象だったはずだ。それでも逃げずに立ち向かってくれた。その勇気が、俺の心を熱くした。
「いえ、翔太さんがいたからこそです」
アンナが微笑む。その顔には、達成感と自信が滲んでいた。
「これが、浄化士ギルドの力なんですね」
そう、今の戦いで証明された。レベルの差があっても、浄化の力を合わせれば、強大な敵にも立ち向かえる。これこそが、俺たちの強みだ。
「さて、この先じゃが……」
グスタフが階段を覗き込む。螺旋状に下へと続く石段は、底が見えないほど深い。そこから立ち上る瘴気は、さらに濃密だった。
「瘴気濃度が異常じゃ。通常の50倍以上ある」
測定器の針が振り切れそうになっている。これは、さらなる危険が待ち受けている証拠だ。
「一度態勢を整えよう」
俺は提案した。
「みんな、怪我はないか? 疲労は?」
「大丈夫です!」
リクが元気よく答える。初めての勝利に興奮しているのだろう。
「私も問題ありません」
アンナも頷く。ただ、その額には汗が浮かんでいた。浄化を使ったことで、MPを消費したのだろう。
「少し休憩しましょう」
俺は広間の隅にある、比較的瘴気の薄い場所を見つけた。
「この先は、もっと危険になるはずだ。万全の状態で臨みたい」
仲間たちが座り込む。アンナがポーチから水筒を取り出し、みんなに配る。冷たい水が喉を潤し、緊張が少しほぐれた。
「なあ、翔太さん」
リクが口を開いた。
「この遺跡って、何のためにあるんだろう?」
「千年前の大戦の遺物かもしれんの」
グスタフが答える。
「あの壁画を見る限り、瘴気との戦いがあったことは確かじゃ。この遺跡も、その戦いに関係しているのかもしれん」
「でも、なぜ今になって瘴気が噴出したんでしょうか?」
アンナが疑問を投げかける。
「封印が弱まっているのかもしれない」
俺は推測した。
「千年という時間は、どんな封印でも劣化させる。だからこそ、俺たちが浄化する必要があるんだ」
仲間たちが頷く。そこには、使命感が宿っていた。
十分ほど休憩した後、俺たちは立ち上がった。
「行こう」
俺は階段の前に立つ。
「この先に何があるか分からない。でも、みんながいれば大丈夫だ」
「はい!」
リクが力強く返事をする。
「浄化士ギルドの初仕事、最後までやり遂げましょう!」
アンナも決意を新たにする。
「儂も老骨に鞭打って頑張るとするかの」
グスタフが微笑む。
俺たちは、暗い階段を下り始めた。
一段一段、慎重に足を進める。松明の光が揺らめき、石壁に不気味な影を作り出す。瘴気の濃度は、下るほどに増していく。
やがて、壁に新たな壁画が現れた。
一人の戦士が、巨大な怪物と対峙している。その手には、光り輝く何かが握られている。まるで、俺たちの今の状況を予言しているかのようだ。
「これは……」
アンナが息を呑む。
「千年前にも、同じような戦いがあったんですね」
そうかもしれない。歴史は繰り返す。千年前の戦士も、今の俺たちと同じように、瘴気に立ち向かったのだろう。
階段の先に、微かに紫色の光が見える。
「あれは……」
俺は目を凝らした。
どうやら、この階段の終点が近づいているようだ。そして、その先には――
「みんな、気を引き締めろ」
俺は仲間たちに警告した。
「きっと、この先にこの遺跡の核心がある」
緊張が走る。だが、恐怖よりも、使命感と好奇心が勝っていた。
俺たちは、未知なる深部へと、一歩一歩進んでいった。
━━━━━━━━━━━━━━━
【ステータス】
佐藤翔太 Lv.53
職業:掃除士
称号:聖剣の主、宮廷浄化士、聖泉守護者、王城浄化官、ギルド創設者
━━━━━━━━━━━━━━━
HP :930/930
MP :1480/1480
攻撃力:113(+300)
防御力:403(+50)
敏捷 :113(+50)
━━━━━━━━━━━━━━━
【スキル】
浄化 Lv.12
└効果:概念浄化まで可能
鑑定 Lv.5
└効果:隠された情報も取得可能
収納 Lv.4
剣術 Lv.2
└効果:基本剣技習得
浄化効率:65
汚染耐性:30
━━━━━━━━━━━━━━━
昨日発見された古代遺跡の入口。瘴気噴出事故の処理中に偶然見つかったその場所は、すでに噂となって広まり始めている。石造りの重厚な扉には、千年以上前の文字が刻まれ、その奥から濃密な瘴気が漏れ出していた。
「準備はいいか?」
俺は振り返って、浄化士ギルドの仲間たちを見渡した。
大きなリュックサックを背負ったリクが、緊張した面持ちで頷く。肩から提げた革袋には、応急処置用の包帯や薬草がぎっしりと詰まっている。昨夜遅くまで準備していたのだろう、目の下にはうっすらとクマができていた。
「は、はい! 松明も予備のロープも、全部用意しました」
アンナは腰に下げたポーチを確認しながら、きりっとした表情を作る。家政術師として培った整理整頓の技術で、必要な道具を効率的に収納していた。ただ、その手が微かに震えているのを俺は見逃さなかった。
「ふむ、瘴気濃度測定器も正常に作動しておる」
グスタフが手にした真鍮製の機器を見つめながら言う。経験豊富な施設管理士である彼の落ち着いた態度が、若い二人の不安を和らげているようだった。
「おい、本気か?」
声をかけてきたのは、近くのテーブルで朝食を取っていた冒険者だった。革鎧に身を包んだ戦士風の男が、心配そうな顔でこちらを見ている。
「昨日の瘴気噴出で分かっただろう。あの遺跡は危険すぎる。少なくともレベル50以上のパーティーじゃないと――」
「大丈夫です」
俺は静かに答えた。確かに危険は伴う。だが、瘴気を浄化できるのは俺たちだけだ。
「行こう。日が高くなる前に出発したい」
◆
遺跡の入口は、街の北東にある採石場跡の奥にあった。
朝露に濡れた草を踏みしめながら進むと、ひんやりとした空気が肌を撫でる。鼻を突く瘴気の臭いが、徐々に強くなっていく。腐った卵のような、吐き気を催す悪臭だ。
「うぅ……」
アンナが口元を押さえた。瘴気に慣れていない彼女にとって、この臭いはきついだろう。
「【浄化】」
俺は軽く手をかざし、周囲の空気を浄化した。淡い光が広がり、悪臭が和らぐ。
「あ、ありがとうございます」
「無理はするな。体調が悪くなったらすぐに言ってくれ」
やがて、巨大な石造りの扉が姿を現した。
高さは優に5メートルを超え、表面には複雑な文様が刻まれている。古代文字で何かが書かれているが、風化が激しく判読は困難だった。扉の隙間から、紫色の瘴気が霧のように漏れ出している。
「瘴気濃度、通常の20倍じゃ」
グスタフが測定器を見ながら眉をひそめた。
「これほどの濃度となると、普通の人間なら数分で意識を失うレベルじゃな」
「だからこそ、俺たちが行く意味がある」
俺は扉に手を当てた。冷たい石の感触が、掌から腕へと伝わってくる。長い年月を経た石には、無数の傷と苔が付着していた。
「【浄化】――レベル5」
光が扉全体を包み込む。紫色の瘴気が、まるで朝霧が日光に晒されるように消えていく。同時に、扉に刻まれた文様が淡く光り始めた。
ゴゴゴゴ……
重い音を立てて、扉がゆっくりと開いていく。千年の時を経て、封印が解かれる瞬間だった。
「すげぇ……」
リクが息を呑む。
扉の向こうには、長い石造りの廊下が続いていた。壁には等間隔で松明を置くための金具が設置されているが、当然ながら火は消えている。代わりに、壁自体がぼんやりと光を放っていた。瘴気と反応して発光する、特殊な鉱物が含まれているのかもしれない。
「松明に火を」
グスタフの指示で、リクが松明に火を灯した。パチパチと燃える炎の音が、静寂の中に響く。オレンジ色の光が石壁に揺らめき、不気味な影を作り出した。
「では、参ろう」
俺を先頭に、一列になって廊下を進む。足音が石造りの空間に反響し、まるで誰かがついてきているような錯覚を覚えた。湿った空気が肌にまとわりつき、カビ臭さが鼻腔を刺激する。
壁画が、松明の光に照らされて浮かび上がった。
「これは……」
アンナが立ち止まる。壁一面に描かれているのは、巨大な戦いの様子だった。空を覆う黒い雲、地を這う紫色の霧、そしてそれに立ち向かう人々の姿。千年前の大戦を描いたものだろうか。
「瘴気との戦いですね」
リクが壁画を見上げながら呟いた。確かに、紫色の霧は瘴気を表現しているように見える。そして、光を放つ剣を持った戦士たちが、それに立ち向かっている。
「待て」
グスタフが測定器を見ながら警告を発した。
「瘴気濃度が上昇しておる。この先は、さらに危険じゃ」
確かに、廊下の奥から流れてくる瘴気が濃くなっていた。紫色の霧が、まるで生き物のように蠢いている。普通の冒険者なら、ここで引き返すレベルだ。
「【浄化領域展開】」
俺は新しく習得したスキルを発動させた。体を中心に、半径5メートルほどの浄化空間が生まれる。仲間たちを瘴気から守るバリアのようなものだ。
「おお、息がしやすくなった」
リクが驚きの声を上げる。確かに、浄化領域の中では瘴気の影響が完全に遮断されていた。
廊下の突き当たりに、大きな広間が現れた。
天井は高く、中央には巨大な石像が鎮座している。人型をした守護像のようだが、全身が紫色の瘴気に覆われていた。まるで、瘴気の鎧を纏っているかのようだ。
その瞬間――
ゴゴゴゴ……
石像が動き始めた。
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【鑑定結果】
汚染された守護像
レベル:45
HP:2,500 / 2,500
状態:瘴気汚染(重度)
━━━━━━━━━━━━━━━
「ひっ!」
リクが後ずさる。無理もない。レベル45の敵は、普通なら熟練の冒険者でも苦戦する相手だ。
石像が重い足取りで近づいてくる。その一歩一歩が、地面を震わせた。握られた石の拳は、人の頭ほどもある。
「下がってろ!」
俺は聖剣エクスカリバーを抜いた。銀色の刀身が、瘴気に反応して淡く光を放つ。
石像が拳を振り上げた。風を切る音が耳を打つ。俺は横に跳んで攻撃を避ける。拳が床に激突し、石の破片が飛び散った。その破片の一つが頬をかすめ、熱い痛みが走る。
「【浄化】レベル8!」
光の刃が石像を切り裂く。紫色の瘴気が霧散し、石像の動きが一瞬止まった。だが、完全には浄化できない。レベル45の敵を一撃で倒すには、まだ俺の力は足りなかった。
「翔太さん!」
アンナの声が響く。振り返ると、彼女が小さな光を手に宿していた。
「私も……【浄化】!」
彼女の浄化適性レベル2の力が、石像に向かって放たれる。威力は俺の百分の一にも満たないが、確かに瘴気を削っていた。
「俺も!」
リクも続く。レベル1の浄化適性でも、仲間の力になろうとする姿勢が嬉しかった。
「ふむ、儂もやってみるかの」
グスタフまでもが、浄化の光を放つ。三人の小さな光が、石像を包み込む。
その時、俺は気づいた。
三人の浄化が、俺の浄化と共鳴している。まるで、小さな川が大河に合流するように、力が増幅されていく。これが、浄化士ギルドの真の力なのかもしれない。
「みんな、タイミングを合わせよう!」
俺は叫んだ。
「3、2、1――」
「「「「【浄化】!」」」」
四つの光が一つになり、巨大な光の柱となって石像を貫いた。紫色の瘴気が完全に霧散し、石像が膝をついた。
そして――
ガラガラと音を立てて、石像が崩れ落ちた。ただの石の山と化した守護像の残骸から、小さな光の玉が浮かび上がる。
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【戦闘結果】
守護像を浄化しました
経験値を獲得しました
隠し通路が開きました
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石像があった場所の奥の壁が、音もなくスライドして開いた。その先には、下へと続く階段が見えた。
「やった……」
リクが息を吐いた。その額には汗が浮かび、手は微かに震えていた。初めての本格的な戦闘で、相当緊張していたのだろう。
「みんな、よくやった」
俺は仲間たちに声をかけた。正直、レベル6や7の彼らにとって、レベル45の敵は恐怖の対象だったはずだ。それでも逃げずに立ち向かってくれた。その勇気が、俺の心を熱くした。
「いえ、翔太さんがいたからこそです」
アンナが微笑む。その顔には、達成感と自信が滲んでいた。
「これが、浄化士ギルドの力なんですね」
そう、今の戦いで証明された。レベルの差があっても、浄化の力を合わせれば、強大な敵にも立ち向かえる。これこそが、俺たちの強みだ。
「さて、この先じゃが……」
グスタフが階段を覗き込む。螺旋状に下へと続く石段は、底が見えないほど深い。そこから立ち上る瘴気は、さらに濃密だった。
「瘴気濃度が異常じゃ。通常の50倍以上ある」
測定器の針が振り切れそうになっている。これは、さらなる危険が待ち受けている証拠だ。
「一度態勢を整えよう」
俺は提案した。
「みんな、怪我はないか? 疲労は?」
「大丈夫です!」
リクが元気よく答える。初めての勝利に興奮しているのだろう。
「私も問題ありません」
アンナも頷く。ただ、その額には汗が浮かんでいた。浄化を使ったことで、MPを消費したのだろう。
「少し休憩しましょう」
俺は広間の隅にある、比較的瘴気の薄い場所を見つけた。
「この先は、もっと危険になるはずだ。万全の状態で臨みたい」
仲間たちが座り込む。アンナがポーチから水筒を取り出し、みんなに配る。冷たい水が喉を潤し、緊張が少しほぐれた。
「なあ、翔太さん」
リクが口を開いた。
「この遺跡って、何のためにあるんだろう?」
「千年前の大戦の遺物かもしれんの」
グスタフが答える。
「あの壁画を見る限り、瘴気との戦いがあったことは確かじゃ。この遺跡も、その戦いに関係しているのかもしれん」
「でも、なぜ今になって瘴気が噴出したんでしょうか?」
アンナが疑問を投げかける。
「封印が弱まっているのかもしれない」
俺は推測した。
「千年という時間は、どんな封印でも劣化させる。だからこそ、俺たちが浄化する必要があるんだ」
仲間たちが頷く。そこには、使命感が宿っていた。
十分ほど休憩した後、俺たちは立ち上がった。
「行こう」
俺は階段の前に立つ。
「この先に何があるか分からない。でも、みんながいれば大丈夫だ」
「はい!」
リクが力強く返事をする。
「浄化士ギルドの初仕事、最後までやり遂げましょう!」
アンナも決意を新たにする。
「儂も老骨に鞭打って頑張るとするかの」
グスタフが微笑む。
俺たちは、暗い階段を下り始めた。
一段一段、慎重に足を進める。松明の光が揺らめき、石壁に不気味な影を作り出す。瘴気の濃度は、下るほどに増していく。
やがて、壁に新たな壁画が現れた。
一人の戦士が、巨大な怪物と対峙している。その手には、光り輝く何かが握られている。まるで、俺たちの今の状況を予言しているかのようだ。
「これは……」
アンナが息を呑む。
「千年前にも、同じような戦いがあったんですね」
そうかもしれない。歴史は繰り返す。千年前の戦士も、今の俺たちと同じように、瘴気に立ち向かったのだろう。
階段の先に、微かに紫色の光が見える。
「あれは……」
俺は目を凝らした。
どうやら、この階段の終点が近づいているようだ。そして、その先には――
「みんな、気を引き締めろ」
俺は仲間たちに警告した。
「きっと、この先にこの遺跡の核心がある」
緊張が走る。だが、恐怖よりも、使命感と好奇心が勝っていた。
俺たちは、未知なる深部へと、一歩一歩進んでいった。
━━━━━━━━━━━━━━━
【ステータス】
佐藤翔太 Lv.53
職業:掃除士
称号:聖剣の主、宮廷浄化士、聖泉守護者、王城浄化官、ギルド創設者
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HP :930/930
MP :1480/1480
攻撃力:113(+300)
防御力:403(+50)
敏捷 :113(+50)
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【スキル】
浄化 Lv.12
└効果:概念浄化まで可能
鑑定 Lv.5
└効果:隠された情報も取得可能
収納 Lv.4
剣術 Lv.2
└効果:基本剣技習得
浄化効率:65
汚染耐性:30
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「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜
最上 虎々
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ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。
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早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。
本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
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定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
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