転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~

宵町あかり

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第43話 雪原の戦い

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 夜が深まった。遠くで光が揺れ、何かが近づいてくる気配がある。

 クリスタが立ち上がった。

「敵だ!」

 氷の槍を構える。レオンたちも目を覚ました。

「何が...」

 その時、黒装束の集団が現れた。十数人、全員が魔力を帯びている。足音が雪を踏みしめる音——ザクッ、ザクッ、ザクッ——不気味なリズムを刻んでいた。

 先頭の男が叫んだ。

「氷姫を確保せよ!」

 クリスタの顔が青ざめる。知っている、この声を。300年前、自分を追放した組織の関係者だ。

「まさか...生きていたの?」

 男が冷笑する。

「我々は救世主組織の末裔」

「失敗作の回収に来た」

 レオンが前に出た。

「クリスタは失敗作なんかじゃない!」

 魔力を解放すると、空気が震え、肌に魔力の波動が伝わってくる。

「僕が...守る」

 リヴィエルが剣を抜いた。刃が月光を反射し、キィンと鋭い金属音を響かせる。

「レオン様を守ります」

 冷静な声だが、強い意志が込められていた。

 フィルミナたちも戦闘態勢に入る。

「お姉ちゃんを渡さない!」

 プリマ、テラ、マリーナが共鳴し、虹色の光が波紋のように広がった。

 護衛たちも動く。ガルヴァン帝国の隊長が指示を出した。

「戦闘隊形!」

 冷静に部隊を配置すると、鎧がガチャガチャと鳴り、兵士たちの緊張した息遣いが伝わってくる。

「敵戦力、魔導師5名、戦士10名」

 瞬時に分析していた。メルキオール教国の神官が防御魔法を展開する。

「神の守りを!」

 聖騎士団が前に出ると、重い足音が大地を揺らす。チェン・ロン商業同盟の商人が護衛隊に指示した。

「レオン様確保が最優先だ」

 氷原に緊張が走った。

 黒装束の集団が攻撃を開始する。魔法が飛んできて、ヒュウウウウと空気を切り裂く音が響いた。

 リヴィエルが迎撃する。剣が魔法を弾き、ガキィン!と火花が散った。

「くっ...!」

 しかし数が多い。フィルミナたちも応戦した。

「みんな、一緒に!」

 五体が力を合わせると、水の壁が立ち上がり、ゴォオオオと大地が震える。

 だが、敵は経験豊富だった。連携が取れており、魔法が次々と襲い来る。じわじわと押されていく。

 クリスタが震えていた。

「私が...戦えば」

 しかし体が動かない。トラウマが蘇る。

「また...失敗する」

 昔の声が耳に響く——「失敗作」「用済みだ」。足がすくむ。

 その時、レオンに魔法が飛んできた。ヒュゥウウウウと鋭い風の音が迫る。

「レオン様!」

 リヴィエルが叫ぶ。クリスタが動いた。体が勝手に動く。

「レオン様!」

 間に飛び込むと、氷の壁を展開した。ゴオオオオンと氷がせり上がり、地面が凍てつく。ピシッ、ピシッ、ピシッと氷の結晶が広がる音が響いた。

 魔法が壁に当たり、ドガァアアン!と衝撃が体を貫く。

 しかし威力が強すぎる。壁にヒビが入り、ピシッ...ピシシシッ...と亀裂が走る音がした。

「くっ...」

 クリスタが膝をつき、呼吸が荒くなる。

---

 レオンが駆け寄った。雪を踏むザッ、ザッ、ザッという音が近づく。

「クリスタ!」

 優しく手を取る。

「大丈夫?」

 クリスタの目から涙が溢れた。

「ごめん...私、やっぱり...」

「失敗作だから...」

 レオンが首を振り、笑顔を見せた。

「君は失敗作なんかじゃない」

 強く手を握る。温かい。

「君の力を...僕は信じてる」

 その言葉がクリスタの心に響いた。300年間、誰も言ってくれなかった——「信じてる」という言葉。

 クリスタの瞳が輝いた。

「信じて...くれるの?」

 レオンが頷く。

「もちろん」

「君は...強いから」

 クリスタの体から白銀の魔力が溢れ出した。ゴゴゴゴゴと大地が震え、まるで光の泉のように美しく圧倒的な力が放たれる。空気が凍てつき、ピシッ、ピシッ、ピシシシシッと周囲の雪が次々と結晶化する音が響いた。風が吹雪となって舞い上がり、ゴォオオオオと咆哮するような音を立てる。

「私は...失敗作じゃない」

 立ち上がると、力が満ちてくる。心臓がドクン、ドクン、ドクンと高鳴った。

「私には、守りたい人たちがいる」

 レオン、リヴィエル、フィルミナたち——大切な人たち。

「もう...逃げない」

 氷原全体が共鳴した。ゴォオオオオオンと低く美しい音が響き、大地から氷が歌を奏でる。美しい氷の結晶が舞い上がり、シャラシャラシャラと風鈴のような音を立てる。まるで雪の妖精のようだった。

 敵たちの足元が凍結していく。ピシッ、ピシシシシッと氷が這い上がる。

「な、何だこれは...!」

 バキッ、バキバキッと武器が次々と凍る音が響く。氷の壁が味方を守り、ゴオオオンと防壁が立ち上がった。

 クリスタの手から氷の槍が現れた。シュウウウウと冷気が収束する音がする。

 しかし致命傷は与えない。敵の武器を凍らせ、パキン、パキン、パキンと剣が砕ける。動きを封じる——制御された圧倒的な力だった。

「これが...私の本当の力」

 クリスタが初めて自信を持った。敵たちが後退する。雪を蹴るザッ、ザザザッという慌てた足音が響く。

「バケモノか...!」

「撤退だ!」

 黒装束の集団が逃げていき、足音が遠ざかる。氷原に静寂が戻り、風が優しく吹いた。

 リヴィエルが駆け寄る。雪を踏む音が響く。

「クリスタ様...すごい」

 感嘆の声。フィルミナたちが抱きついた。

「お姉ちゃん、かっこよかった!」

 プリマが涙を流している。クリスタが笑った——初めての本当の笑顔。

「みんな...ありがとう」

 レオンが微笑む。

「やっぱり...君は凄い」

 クリスタの頬が赤くなった。

---

 遠くでガルヴァン帝国の隊長が部下に指示していた。

「全て記録したか」

 真剣な表情で、羽根ペンが紙を走るカリカリカリという音が響く。

「戦略級魔法確認!」

「これは...帝国魔導師団でも太刀打ちできん」

 本国に緊急報告が必要だった。

「世界の軍事バランスが...崩れる」

 しかし内心では、娘の記憶を残す技術を思っていた。

「あの少年なら...」

 希望が見えた気がした。

 メルキオール教国の神官は祈りを捧げていた。詠唱の声が静かに響く。

「神よ...預言が現実に」

 恐れと畏敬。

「聖遺物級の力...」

 神殿に報告しなければ。しかし内心では、師の言葉を残したいという想いがあった。

 チェン・ロン商業同盟の商人は計算していた。算盤を弾くパチパチパチという音が響く。

「軍事価値、計り知れない」

 経済換算が追いつかない。

「これは...国が買える」

 しかし内心では、平和的利用の方が利益が大きいと考えていた。

---

 各国がそれぞれの視点で真剣だった。

 一方、レオンたちはまだ安心できていなかった。

「まだ来るかもしれない」

 緊張が残っている。その時、遠くでまた光が見えた。ゴオオオと魔力の音が響く。

「第二波!」

 リヴィエルが叫ぶ。しかしレオンは冷静だった。

「大丈夫」

 ノートを取り出し、ページをめくるパラパラパラという音が響く。

「クリスタの力を...分析できた」

 科学者の目になり、ペンを走らせるカリカリカリという音がする。

「魔力の結晶化パターン、理解した」

 前世の知識を応用する。

「共鳴理論を使えば...」

 魔法陣を設計し、即座に地面に描いていく。雪を払うシャッ、シャッ、シャッという音が響く。

「魔力増幅装置だ」

 プリマたちが驚く。

「レオン様、すごい!」

 クリスタも感嘆していた。

「これは...」

 レオンが説明する。

「氷の結晶を利用した魔力増幅」

「クリスタの力を、五体に分配する」

「効率化で、消耗を最小限に」

 魔法陣が輝き始めた。ピカァアアアと光が広がり、美しい光のネットワークが形成される。シュゥゥゥゥと魔力が流れる音がし、五体が同調していく。ゴォオオオンと共鳴の音が響いた。

「わあ...」

 フィルミナたちの力が強まる。第二波が襲ってきた。足音が近づくザザザザッという音と、魔法が飛んでくるヒュウウウウという音が響く。

「今度は...負けない!」

 クリスタの氷とプリマの共鳴がゴォオオオンと美しい音色を奏で、テラの大地とマリーナの水がゴゴゴゴ、ザァアアアと地響きと水音を響かせる。フィルミナが全体を統率し、完璧な連携で圧倒的な力を発揮して敵を撃退した。

 氷の槍が空を舞い、ヒュウウウ、ヒュウウウと音を立てる。水の波が地を覆い、ザァアアアアと音を響かせる。大地が敵を捕らえ、ゴゴゴゴゴと震える。

「撤退だ!」

 敵が完全に逃げていき、足音が遠ざかるザザザ、ザザザという音が聞こえる。氷原に平和が戻り、風が静かに吹いた。

 レオンが満足そうに頷く。

「成功だ」

 しかしすぐに——

「みんなのおかげだよ」

 謙虚に笑った。

 遠くで各国の護衛たちが緊急会議を開いていた。

 ガルヴァン帝国。

「魔力増幅技術!」

 部下に詳細を記録させ、羽根ペンが走るカリカリカリという音が響く。

「一個師団分の戦力増強が可能」

「本国に、緊急報告を」

 全軍警戒態勢。世界が変わろうとしている。

 メルキオール教国。

「神の奇跡...連続で」

 神官が祈りを捧げる。

「救世主降臨、疑いなし」

 聖騎士団に最高警戒命令。

 チェン・ロン商業同盟。

「特許取れば...」

 商人が計算し、算盤の音パチパチパチが響く。

「世界経済が変わる」

 しかし——

「平和的利用の方が...」

 本音と建前の狭間。

 各国がそれぞれの視点で緊迫していた。国家総動員、世界の命運——

 一方、レオンたちは焚き火で休憩していた。薪がパチパチと弾け、温かい雰囲気が漂う。

 クリスタが微笑んでいる。

「みんな、ありがとう」

 レオンが首を振る。

「いや、君が頑張ったから」

 リヴィエルが優しく見つめる。レオン様の優しさ——それが好きだった。

 プリマたちがはしゃいでいる。

「お姉ちゃん、かっこよかった!」

「また見せて~」

 平和な時間。全く違う世界が同時に存在していた。

---

 翌朝、出発の準備が整った。雪を踏むザッ、ザッ、ザッという音が響く。

 クリスタがレオンに言った。

「私も...一緒に行く」

 決意の表情。レオンが笑顔で答える。

「もちろん」

 フィルミナたちが喜ぶ。

「やった!」

「六人だね!」

 リヴィエルが優しく微笑む。

「お姉ちゃん、よろしくお願いします」

 六人の旅が始まる。氷原を後にすると、雪を踏む音がリズムを刻んだ——ザッ、ザッ、ザッ。

 遠くでガルヴァンが報告を受けていた。紙が手渡されるサッという音がする。

「本国から、新命令」

 真剣な顔。メルキオールも神殿からの指令を受け取る。封蝋が割れるパキッという音が響いた。

「神殿が、動き始めた」

 チェン・ロンも商人ネットワークからの情報を受け取る。情報網が動く。

「世界中の商人が、注目している」

 世界が動き始めていた。

 しかしレオンたちは知らない。ただ温かい時間を過ごしている。

 帰還への旅——その始まり。

 風が優しく吹き、氷原に別れを告げた。
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