転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~

宵町あかり

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第68話 新たな日常と混乱

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【研究ノート・光の実用性】

光は、ただ照らすだけではない。
前世では、植物工場で光を使って成長を促進していた。
波長を調整すれば、様々な効果が期待できる。
ルミナの光を実践的に使えば、
この世界にも新しい可能性が見えてくるかもしれない。

---

 朝、屋敷の食堂にレオンと仲間たちが集まった。広いテーブルには、焼きたてのパンと温かいスープの香りが漂っている。

「皆様、朝食の準備が整いました」シグレが丁寧に料理を運んでくる。その表情には、新しい仲間を迎えた喜びが滲んでいた。

 ルミナが料理を見て、目を輝かせる。「これは...何ですか?」初めて見る料理に、興味津々の様子だ。

「これはパンで、こっちはスープだよ」シグレが優しく説明すると、ルミナは恐る恐るパンを手に取った。「食べ方は...こう?」

「そうそう、そのまま食べて」「スープに浸しても美味しいわ」フィルミナとクリスタの説明が重なり、ルミナが笑顔で頷く。二人の優しい雰囲気に、緊張が少しずつ解けていく。

「ナイフとフォークはこう使うの」エオリアが優雅な所作で示すと、「ゆっくり慣れれば大丈夫」とテラが穏やかに言葉を添える。ルミナは二人の動きを真剣に見つめながら、丁寧に真似ようとしていた。

「ルミナ、水もあるよ!」マリーナが元気いっぱいに水を注ぐ。「ありがとう、マリーナ様」ルミナの表情が嬉しさで輝く。

 リヴィエルが丁寧にナプキンを渡しながら、「食後はこちらで口を拭いてください」と説明を加える。「はい、ありがとうございます」

 その時、朝日が差し込んできた。でも、ルミナの席は影になっている。ルミナが手のひらに光を灯すと、淡い金色の光がテーブルを優しく照らした。

「まあ、素敵」エオリアが感心の声を上げる。レオンは興味深そうに観察していた。

(光の強さを調整できる...前世の調光器と同じ原理だ)

 レオンの心に前世の知識が浮かぶ。研究者としての探求心が刺激される。科学を共有できる喜びが、彼の心を温かく満たしていた。

「ルミナ様、素晴らしい制御ですね。自然な光で、目に優しい」シグレが感心した様子で記録を取り始める。

「ありがとうございます、シグレ様」ルミナの表情に安堵が広がる。

 その光に照らされた小さな鉢植えが、微かに葉を広げた。レオンが驚いて鉢植えを見つめる。「これは...植物が反応してる?」

 フィルミナが不思議そうに首を傾げる。「光で、植物が元気になるの?」

「うん、前世では光合成って言って、植物は光でエネルギーを作るんだ」レオンが簡単に説明すると、仲間たちの目が興味深そうに輝いた。

 レオンと仲間たちの朝食が、賑やかに始まった。

---

 朝食後、レオンとルミナは庭に出た。シグレも一緒だ。

「ルミナ、光で植物の成長を促進できるか試してみよう」レオンが提案する。

「はい、やってみます!」ルミナが手を花壇にかざすと、淡い金色の光が花に降り注いだ。すると、蕾が少しずつ開き始めた。

「すごい...本当に開いた」レオンが驚きの声を上げる。シグレも興味深そうに記録を取り始めた。

「前世の植物工場と同じ原理です。光合成を促進して、成長を早めている」レオンが説明すると、「面白いわ」とクリスタが静かに近づいてきた。

「ルミナ、少し光の色を変えられる?」レオンが頼むと、ルミナが集中する。光が淡い青色に変わった。

 すると、葉が少し緑色を増した。「あ、葉の色が濃くなった」マリーナが目を輝かせる。

「すごい!」マリーナの歓声が庭に響く。光が当たった植物が、みるみる生き生きとしてくる。

 レオンは興奮を抑えきれない様子で、さまざまな角度から観察を続けている。「光の色...波長によって、植物の反応が違うんだ」

 テラが静かに土に触れる。「...大地も、喜んでる」大地の記憶が、光の恵みを感じ取っている。

「私の光が、役に立つんですね」ルミナの表情が嬉しさで輝く。

 シグレが温かく見守りながら、ノートに実験データを丁寧に記録していく。「ええ、とても役立ちます。この記録は、今後の研究の基礎になりますよ」

 レオンの心に研究者としての興奮が満ちていく。前世では一人で研究していた孤独な日々。でも今は違う。ルミナの光、シグレの協力、そして仲間たちとの絆。科学を共有できる喜びが、彼の心を温かく満たしていた。

(ルミナの光...これは、農業革命を起こせるかもしれない)

 フィルミナとクリスタは記録を取りながら、植物の変化に見入っている。エオリアとテラは静かに観察を続け、マリーナは興奮気味に跳ねていた。新しい仲間と共に過ごす日常への喜びが、それぞれの表情に満ちている。

 ルミナの心に、温かい気持ちが広がっていく。自分の光が役に立つこと。仲間たちが喜んでくれること。長い封印の孤独が、ようやく報われた気がした。

---

 午後、レオンと仲間たちで街へ買い物に出かけた。ルミナにとって、初めての外出だ。

「街...こんなに人がいるんですね」ルミナが驚いた表情で周囲を見回す。

「うん、今日は特に賑やかだよ」レオンが穏やかに答える。

 一行は、大きな雑貨店に入った。店内は少し暗く、商品が見えにくい。ルミナが少し戸惑った様子で周囲を見回す。

「あの...少し暗くて、商品が見えにくいですね」ルミナが呟く。

「じゃあ、光で照らしてみる?」レオンが提案すると、ルミナが手をかざした。店内全体が優しい光に包まれる。

 店主が驚きの声を上げ、感激する。光に照らされた商品が色鮮やかに見える。「まあ、明るい!こんなに明るい魔法は、初めて見ました!」店主が興奮気味に声を上げる。

「この布、こんなに綺麗な色だったのね」エオリアが感心し、「このガラス細工も、輝いて見えるわ」とクリスタが静かに言葉を添える。

 ルミナが金貨を手に取り、不思議そうに眺める。500年の封印の中で、お金というものを使ったことがない。「これは...何に使うんですか?」

「これは金貨だよ。物を買う時に使うんだ」シグレがルミナの手を取り、丁寧に説明を始める。金貨を手のひらで転がしながら、ルミナは価値の概念を理解しようと真剣な表情を見せる。

「あ、そうなんですね...」

 シグレが棚の商品を指差し、値札を見せながら説明を続ける。「値段は、この数字で書いてあるんだよ」

 ルミナがその数字を見て、さらに困惑する。金貨の枚数と値段の関係が、まだよくわからない。「でも、これは高いの?安いの?」

 フィルミナが優しく肩に手を置く。同じ覚醒個体として、日常を学ぶ大変さを理解している。「大丈夫、私たちが教えるから」その言葉に、ルミナの表情が少し和らいだ。

 店主がレオンに近づいてきた。「レオン様、この光の魔法...素晴らしい!お客様も商品がよく見えて、売上が3割は増えそうです!また来てください!」店主の興奮が伝わってくる。

「あ、はい...」レオンが戸惑う。

(単に照らしただけなのに...そんなに喜んでもらえるなんて)

 レオンの心に、温かい気持ちが広がる。ルミナの光が店を明るくし、店主が喜び、お客様が商品を見やすくなる。科学が直接、人々の生活を豊かにする。前世では研究室に籠もり、理論だけを追い求めていた。でも今は、科学が人々の役に立つ光景を目の当たりにしている。その実感が、彼の心を温かい満足感で満たしていった。

 マリーナとリヴィエルが商品を選んでいる。「これ美味しそう!」「お支払いはこちらで」

 レオンと仲間たちの賑やかな買い物が続く。

---

 夕方、屋敷に戻った一同は、リビングでお茶を飲んでいた。ルミナが一日を振り返る。

「今日は...本当に楽しかったです」ルミナの表情が嬉しさで輝く。

 シグレがお茶を注ぐ。「ルミナ様、お茶をどうぞ」

「ありがとうございます」ルミナが手のひらに優しい光を灯すと、金色の光がリビングを温かく照らした。

「この光、温かくて落ち着きます」エオリアが穏やかに言葉を添える。

「うん、間接照明みたいで素敵だね」レオンの声にも安らぎが滲んでいた。

 その時、ルミナの光が少し輝きを増した。「あ、光が強くなった」マリーナが驚く。

「これは...感情と連動してるのかな」レオンが考え込む。

 ルミナが頬を染める。「嬉しい時に...輝きが増すみたいです」

「素敵ね、感情が見えるなんて」クリスタが優しく言葉をかける。

 フィルミナが温かい笑顔を見せる。「ルミナ、今日は良く頑張ったわね。慣れない街も、上手に歩けたし」

「ありがとうございます。皆様のおかげです」ルミナの目に、涙が滲む。

「これから、もっと楽しいことがあるよ」レオンが優しく声をかける。

「はい...この家族と一緒なら、何でも乗り越えられそうです」ルミナの光が、温かい金色に輝く。

 リビングに集まったレオンと仲間たちに、温かい時間が流れていた。

(ここが私の居場所。みんなが私の家族。もう、孤独じゃない)

 ルミナの心が、幸福感で満たされていく。遺跡の中で一人、光の中で佇み続けていた日々。誰も訪れない、永遠のような孤独。何度も諦めそうになった。でも、いつか誰かが起こしてくれると信じ続けた。そしてレオンが現れた。長い孤独が報われた瞬間。そして今、こんなに温かい仲間に囲まれている。この幸せが、夢ではないかと何度も確認してしまう。でも、これは現実。温かい家族の絆が、確かにここにある。ルミナの心は、深い安堵と喜びで満たされていった。

 クリスタが静かに言葉を添える。「私たちも、ルミナが来てくれて嬉しいわ。仲間が増えるって、こんなに素敵なことなのね」

 クリスタの言葉には、同じ経験をした者だからこそわかる優しさがあった。封印されていた孤独と、解放された喜び。その両方を知る者の、深い共感。300年の暗闇。時を数え続けた孤独。レオンが解放してくれるまで、どれほど長かったか。クリスタだからこそ、ルミナの気持ちが痛いほどわかる。その想いが、クリスタの言葉に深く込められていた。

---

 その頃、各国のスパイたちは再び大混乱に陥っていた。

 ガルヴァンが、帝国本部に緊急報告を送っていた。

「光属性の戦術運用を確認...植物成長促進?これは食糧生産の軍事転用だ!兵站革命が起こる!即座に全軍に報告せよ!」

 軍事的視点で見れば、食糧生産の革新は軍事力の根幹を揺るがす。

 聖教国のスパイが、涙を流しながら祈りを捧げていた。

「光の使徒が植物に祝福を...これは女神の奇跡!全ての農地に光の恵みを!緊急祈祷を全教会に命じる!女神様の栄光が世界を照らす!」

 宗教的視点で見れば、光による祝福は神の意志の顕現。

 東方連合のスパイが、そろばんを激しく弾いていた。

「光による農業革命...市場価値は計り知れん!種苗業界が一変する!独占契約を結べば、金貨3000万枚は下らない!全商隊に最優先連絡を!」

 商業的視点で見れば、農業技術は莫大な利益を生む。

 王立魔法学院の研究員が、興奮した様子で記録を取っていた。

「光合成の加速...これは生物魔法学の新分野だ!特別研究予算2000万枚を申請!学会で大論争必至だ!」

 彼は義眼を光らせる。

 学術的視点で見れば、光合成制御は未知の研究領域。

 帝国技術局のスパイが、望遠鏡で観察している。

「光による成長促進技術...軍用食糧の即時生産が可能に!開発最優先!光学農業プロジェクト、即座に起動せよ!」

 彼は設計図を広げる。

 技術的視点で見れば、食糧生産技術は軍事戦略の要。

 近隣小国の外交官が、震える手で報告書を書いていた。

「農業技術...食糧自給率向上の交渉材料だ!帝国との条約改定のチャンスが来た!この情報を適切なタイミングで提供すれば、通商条約で有利に立てる!」

 外交的視点で見れば、農業技術は交渉の切り札。

 街の人々も、噂話で盛り上がっていた。

「光の魔法使いが店を祝福したって!あの店、売上3割増だって!」

「私たちの店にも来てほしい!光の女神様の化身だ!」

「お祈りしなくちゃ!光の祝福を受けたいわ!」

 民衆レベルでも、ルミナの光は神秘化されていた。

 世界中が、光属性の戦略的価値で騒然としていた。

 でも、屋敷の中では。

「今日は楽しかったね」レオンが穏やかに言葉をかける。

「はい、本当に楽しかったです」ルミナの表情が幸せで満ちている。

「明日は、お庭でもっと研究しようね」マリーナが元気いっぱいに声を上げる。

「楽しみです!」ルミナが笑顔で答える。

 レオンたちは、平和な日常を楽しんでいた。

 世界が激変すると騒ぐ各国。

 新しい仲間と楽しく過ごすレオンと仲間たち。

 その温度差は、果てしなく大きかった――。
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