転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~

宵町あかり

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第105話 新たな力

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 「絶望の翼」の完全浄化から数日が経った。

 窓の外には、いつもの王都の朝が広がっている。

 レオンは研究室の窓際に立ち、柔らかな朝日を浴びながら街並みを見下ろしていた。

 人々が行き交う大通り。商店の軒先に並ぶ新鮮な野菜。子供たちの笑い声。

 平和な光景だ。

 レオンの胸に、温かなものが広がる。

 僕たちが成し遂げたんだ。七人で、古代の六体の意志を継いで、この平和を守った。予言者の言葉通り、絶望を浄化し、封印を強化した。ここ数日、王都には笑顔が戻り、人々は希望を語り合っている。目に見えて、活気が戻ってきた。それでも...完全に安心はできない。予言者は言っていた。「七つの闇」のうち、一つを浄化しただけだと。残りの六つは、まだどこかに...特に北の火山地帯については、何か不穏な予感がする。

 レオンが思考を巡らせていると、ノックの音が響いた。

「レオン様、入ってもよろしいですか?」

 フィルミナの声だ。

「ああ、どうぞ」

 扉が開き、フィルミナが入室する。

 彼女の表情は穏やかだが、どこか引き締まったものがある。

「おはようございます。良い朝ですね」

 フィルミナが窓の外を見て、微笑む。

「ああ、本当に」

 レオンが頷く。

 フィルミナが、レオンの隣に立つ。

「レオン様...数日前のこと、まだ夢のようです。私たちは本当に、古代の六体の意志を継いで、封印を強化したのですね」

 フィルミナの声に、達成感と同時に、責任感が滲む。

 彼女は炎の覚醒個体として、イグニスの意志を継ぐ者だ。今回の浄化で、自分が果たすべき役割の重さを、改めて実感したのだろう。だが同時に、それを成し遂げた喜びもある。七人で協力し、絶望を浄化し、王都の人々を救った。その事実が、彼女の中で誇りとなっている。ただし、彼女もまた、次への不安を感じているはずだ。予言者の警告を忘れてはいない。

「君がいなければ、成し遂げられなかった。マリーナとの炎と水の調和...あれが全ての始まりだった」

 レオンが、感謝を込めて言う。

「いいえ、レオン様がいたからこそです。私たちを導き、六体共鳴という答えを見つけてくださった」

 フィルミナが、謙遜する。

 そこへ、もう一度ノックの音。

「失礼します」

 クリスタの声だ。

 扉が開き、クリスタが入室する。

「おはようございます、レオン様、フィルミナ様」

「おはよう、クリスタ」

 レオンとフィルミナが、同時に挨拶を返す。

 クリスタが、二人の隣に立つ。

「今朝の王都を見ていると...本当に、私たちは成し遂げたのだと実感します」

 クリスタの声には、深い感慨がある。

 彼女は三百年前から存在し、古代の六体を直接知る唯一の存在だ。長い年月を生きてきた彼女にとって、今回の浄化は特別な意味を持つ。イグニス、アクア、テラエ、グラキエス、アウラ、ルクスの意志が、新たな六人に引き継がれ、そして完全に発揮された。三百年の時を超えて、古代の意志が再び輝いた。その瞬間を目撃できたことが、彼女にとって何よりの喜びなのだろう。

「クリスタ、君も...ありがとう。君がいなければ、僕たちは古代の封印の仕組みを理解できなかった」

「いいえ、レオン様。私はただ、知っていることを伝えただけです。実際に行動し、絆を証明したのは、レオン様と皆様です」

 クリスタが、微笑む。

 しばらく、三人は沈黙する。

 平和な朝の静けさ。

 だが、その静けさの中に、何かが潜んでいる。

 レオンが、口を開く。

「...でも、これで終わりじゃない」

 フィルミナとクリスタが、レオンを見る。

「予言者は言っていた。『七つの闇』のうち、僕たちが浄化したのは一つだけだと。残りの六つは、まだどこかに存在している」

 レオンの声に、緊張が走る。

 フィルミナが、頷く。

「はい...特に、北の火山地帯については、何か不穏な予感があります」

「私も同じです。予言者は『怒りの牙』という言葉を使っていました。あれは...おそらく、次に目覚める闇の名前でしょう」

 クリスタが、冷静に分析する。

 レオンが、窓の外を見る。

 平和な王都。

 だが、その平和は、いつ脅かされるかわからない。

 僕は...研究者として、この世界の魔法の謎を解きたい。スライムたちとの共生、古代の遺跡の探索、新しい魔法理論の構築...やりたいことは山ほどある。でも同時に、僕は予言者に選ばれた者として、この世界を守る責任がある。絶望の翼を浄化した今、その責任の重さを改めて感じている。研究と守護...その両立は簡単じゃない。だけど、僕にはフィルミナたちがいる。六人の覚醒個体と、シグレ。七人で協力すれば、きっと両方を実現できる。

「僕たちは...準備を続けよう。次の闇がいつ現れても、対応できるように」

 レオンが、決意を込めて言う。

 フィルミナとクリスタが、力強く頷く。

「はい!」

「承知しました」

---

 レオンは、資料を広げていた。

 研究室の机の上には、『絶望の翼』との戦いで学んだ「対極の調和」に関するメモが散らばっている。

 フィルミナとクリスタも、レオンの隣に座っている。

「対極の調和...」

 レオンが、メモを見ながら呟く。

「絶望の翼を浄化したとき、僕たちは三つのペアで対極の調和を実現した。フィルミナとマリーナの炎と水。テラとクリスタの大地と氷。エオリアとルミナの風と光。そして、その三つの波動を一つにまとめることで、完全な浄化を成し遂げた」

 レオンの説明に、フィルミナとクリスタが頷く。

「あのときの虹色の波動...本当に美しかったです」

 フィルミナが、感慨深く言う。

「ええ。六つの力が完全に調和した瞬間でした」

 クリスタが、同意する。

 レオンが、メモを見つめる。

「だけど...あれは完璧だったわけじゃない」

 二人が、驚いてレオンを見る。

「完璧じゃなかった...ですか?」

「そうだ。僕たちは成功した。でも、発動までに時間がかかりすぎた。もし次の闇が突然現れたら、あの速度では間に合わない可能性がある」

 レオンの分析に、二人が真剣な表情になる。

 確かに、あのとき僕たちは慎重に進めた。フィルミナとマリーナが最初に調和を実現し、次にテラとクリスタが続き、最後にエオリアとルミナが調和を完成させた。段階的な進行だったからこそ、確実に成功できた。だけど、それは時間的余裕があったからだ。もし敵が即座に反撃してきたら?もし浄化の途中で闇が暴走したら?そう考えると、僕たちにはまだ改善の余地がある。発動速度を上げる。より瞬時に、より確実に、対極の調和を実現する方法を見つける必要がある。

「つまり、私たちはもっと訓練が必要だということですね」

 フィルミナが、理解する。

「そうだ。そして...もう一つ試したいことがある」

 レオンが、二人を見る。

「試したいこと...ですか?」

 クリスタが、首を傾げる。

「君たち二人で、炎と氷の調和を試してみたい」

 レオンの提案に、二人が驚く。

「私と...クリスタ様が?」

「はい、私とフィルミナ様が?」

 二人が、互いを見る。

「そうだ。炎と氷は、最も極端な対極だ。フィルミナの炎は熱を生み、クリスタの氷は冷気を生む。真逆の性質を持つ二つの力が調和できれば、新しい発見があるかもしれない」

 レオンの説明に、二人が考え込む。

「でも...炎と氷が触れ合えば、激しく反応するのでは...?」

 フィルミナが、不安げに言う。

「確かに、危険はある。だからこそ、訓練場で試すんだ。まずは少量の力で、慎重に進める」

 レオンが、安心させるように言う。

 クリスタが、頷く。

「わかりました。私も...フィルミナ様との調和を試してみたいです」

 フィルミナも、決意を固める。

「はい。レオン様がそう仰るなら、挑戦してみます」

「ありがとう。じゃあ、訓練場へ移動しよう」

 三人は、研究室を出て訓練場へ向かう。

 廊下を歩きながら、フィルミナとクリスタは互いに視線を交わす。

 二人の間に、緊張と期待が入り混じる。

 炎と氷...本当に調和できるのだろうか?

---

 訓練場に到着した。

 広い空間に、三人だけ。

 レオンが、二人に指示を出す。

「まず、二人は向かい合って。距離は五メートルくらい離れて」

 フィルミナとクリスタが、指示通りに配置につく。

 二人が向かい合い、互いを見つめる。

「最初は、地面に向けて力を発動してみて。炎と氷を、少しずつ近づけていく」

 レオンの指示に、二人が頷く。

 フィルミナが、右手を地面に向ける。

 掌から、小さな炎が生まれる。

 オレンジ色の温かな光。

 クリスタも、左手を地面に向ける。

 掌から、淡い青白い光が漏れる。

 氷の冷気。

 二人が、ゆっくりと力を近づけていく。

 炎と氷が、互いに引き寄せられるように接近する。

 一メートル。

 五十センチ。

 三十センチ。

 そして...接触。

 瞬間、激しい爆発が起こった。

 ドォンッ!

 炎と氷が激しく反応し、白い蒸気が爆発的に広がる。

 衝撃波が訓練場を揺らす。

 フィルミナとクリスタが、後ろに吹き飛ばされる。

「きゃあっ!」

「うっ!」

 二人が地面に倒れ込む。

 レオンも、衝撃に巻き込まれる。

「うわっ!」

 レオンが、咄嗟に腕で顔を守る。

 白い蒸気が訓練場を満たし、視界が真っ白になる。

 しばらくして、蒸気が晴れる。

 フィルミナが、震える手で地面を押さえながら起き上がる。

 どうして...制御できない。炎が暴走している。私の意志に反して、どんどん強くなっていく。いつもなら、炎は私の一部のように扱えるのに。今は...まるで別の生き物のように、勝手に動いている。クリスタ様の氷と触れ合ったせいだ。炎が、氷に対抗しようとして、自ら力を増幅させている。これは...危険だ。このままでは...

 クリスタも、氷の結晶を纏いながら立ち上がる。

 氷が...制御不能になっている。私の氷は通常、冷静で穏やかな性質を持つ。だが今は、まるで怒りに燃えるかのように、激しく冷気を放出している。フィルミナ様の炎に対抗しようとして、自ら暴走している。これでは、調和どころか...破壊しか生まない。私たちは、何か根本的に間違えている。

 レオンが、二人に叫ぶ。

「二人とも!力で抑えようとするな!相手を受け入れるんだ!」

 レオンの声が、訓練場に響く。

 だが、炎と氷の暴走は止まらない。

 フィルミナの炎が、さらに膨れ上がる。

 クリスタの氷が、鋭い結晶となって周囲を覆う。

 二つの力が、互いに衝突し続ける。

 白い蒸気が再び訓練場を満たす。

 熱と冷気が入り混じり、温度が急激に変動する。

 レオンが、必死に叫び続ける。

「フィルミナ!クリスタ!力で抑え込もうとするな!相手を敵だと思うな!調和は、対立からは生まれない!互いを認め、受け入れることで初めて実現するんだ!これまでに学んだことを思い出せ!対極の調和は、互いの違いを尊重し、補完し合うことで生まれる!」

 レオンの言葉が、二人の心に届く。

 フィルミナとクリスタが、互いを見つめる。

 視線が交錯する。

 フィルミナが、決意する。

 クリスタ様を...信じる。

 クリスタも、決意する。

 フィルミナ様を...信じる。

 二人が、同時に力の制御を変える。

 抑え込むのではなく、受け入れる。

 炎と氷が、互いを認め合う。

 暴走が、ゆっくりと収まり始める。

 白い蒸気が、少しずつ薄れていく。

 そして...

 地面に、微かな霧が漂う。

 白い、穏やかな霧。

 その霧の中に、薄紫色の光が宿る。

 炎でもなく、氷でもない。

 その中間の、新しい何か。

 レオンが、驚いて霧を見つめる。

 これは...対極の調和だ。炎と氷が、完全に融合した状態。フィルミナの炎の温かさと、クリスタの氷の冷たさが、互いに中和し合い、新しい状態を生み出した。薄紫色の波動...これは、対立ではなく調和の証だ。僕たちは成功したんだ。初回は失敗したが、その失敗から学び、最終的に成功した。これこそが、研究の本質だ。

 フィルミナが、霧を見つめる。

 これが...私とクリスタ様の調和。炎と氷が、一つになった。信じられない。こんなにも美しい光が生まれるなんて。私たちは、互いを受け入れることで、新しい力を創り出した。レオン様の言葉が正しかったんだ。対極の調和は、力ではなく、心で実現するものなのだと。

 クリスタも、霧を見つめる。

 薄紫色の光...炎と氷の完全な調和。これは、私が三百年生きてきた中で初めて見る光景だ。古代の六体も、ここまで深い調和を実現したことはなかったかもしれない。フィルミナ様と私は、新しい一歩を踏み出した。これから、さらに深い調和を目指せる。そう確信できる。

 霧が、ゆっくりと消えていく。

 薄紫色の光も、静かに消える。

 訓練場に、再び静けさが戻る。

 レオンが、二人に近づく。

「すごい...本当に、調和が生まれた」

 フィルミナとクリスタが、互いを見て微笑む。

「はい...最初は失敗しましたが」

「ええ...でも、失敗から学べました」

 レオンが、二人を見て頷く。

「失敗は、研究の一部だ。大事なのは、そこから何を学ぶか。君たちは、完璧な答えを見つけた」

 三人が、笑顔を交わす。

「でも...まだ課題はある。今回は、発動に時間がかかった。もっと速く、もっと確実に調和を実現する方法を見つけないと」

 レオンが、冷静に分析する。

 フィルミナとクリスタが、頷く。

「はい。訓練を続けます」

「私も、さらに研究を深めます」

「ありがとう。今日はここまでにしよう。研究室に戻って、今日の結果をまとめる」

 三人は、訓練場を後にする。

---

 夕方。

 レオンの研究室に、全員が集まっていた。

 レオン、フィルミナ、マリーナ、テラ、クリスタ、エオリア、ルミナ、そしてシグレ。

 八人が、円を描くように立っている。

 レオンが、今日の訓練結果を報告する。

「今日、フィルミナとクリスタで炎と氷の調和を試してみた。最初は失敗したが、最終的には成功した。薄紫色の波動が生まれたんだ」

 全員が、驚く。

「炎と氷の調和...ですか?」

 マリーナが、目を丸くする。

「すごいです!」

 テラが、興奮気味に言う。

「私も見たかったです」

 エオリアが、残念そうに言う。

「美しかったでしょうね」

 ルミナが、微笑む。

 レオンが、続ける。

「これは、新しい発見だ。僕たちは今まで、特定のペアでしか対極の調和を試していなかった。でも、別の組み合わせでも可能だとわかった。つまり、僕たちの可能性はまだまだ広がる」

 レオンの展望に、全員が期待の表情を浮かべる。

 もしかしたら、僕たちは今まで気づいていなかった組み合わせで、新しい力を生み出せるかもしれない。炎と風、水と大地、氷と光...考えられる組み合わせは無数にある。そして、それぞれが独自の波動を生み出す可能性がある。これは、魔法理論の新しい扉を開くことになる。僕は研究者として、この可能性を追求したい。

「では、私たちも試してみたいです」

 マリーナが、手を挙げる。

「私も!」

 テラが、続く。

「私たちも、新しい組み合わせを探したいです」

 エオリアとルミナも、同意する。

 レオンが、微笑む。

「もちろん。みんなで、少しずつ試していこう。ただし、今日の訓練でわかったように、失敗する可能性もある。慎重に、安全に進める」

 全員が、頷く。

 シグレが、口を開く。

「レオン様...明日、王宮で重要な会議があります」

 全員が、シグレを見る。

「会議...ですか?」

 レオンが、首を傾げる。

「はい。各国の代表が集まり、『絶望の翼』浄化の報告を求められています」

 シグレの言葉に、全員が緊張する。

 レオンが、思い出す。

 ああ、そうだった。数日前に、三人の代表が来たんだ。聖教会のメルキオール、軍事国家のガルヴァン、商業連合のチェン・ロン。彼らは、僕たちの浄化を見て、それぞれ異なる解釈をした。神の奇跡、新兵器、商業的価値...どれも、僕たちの本当の目的とは違う。でも、彼らに真実を説明しても、理解してもらえないだろう。彼らは、自分たちの世界観の中でしか物事を見ない。

 レオンが、苦笑する。

「また、あの噛み合わない会話が始まるのか...」

 フィルミナが、心配そうに言う。

「大丈夫でしょうか...」

「大丈夫。僕たちは、真実を伝えるだけだ。彼らがどう解釈しようと、それは彼らの自由だ」

 レオンが、覚悟を決める。

 シグレが、頷く。

「わかりました。では、明日の朝、王宮へ向かいます」

 全員が、解散する。

 レオンは、一人研究室に残る。

 窓の外を見ると、夕日が沈みかけている。

 明日から、また新しい展開が始まる。

 会議、そして...次の闇への対峙。

 僕たちの冒険は、まだまだ続く。

---

 夜。

 レオンの研究室。

 フィルミナとクリスタが、再び訪れていた。

 三人だけの静かな時間。

 レオンが、二人を見る。

「今日は...ありがとう。君たちのおかげで、新しい発見ができた」

 レオンの感謝の言葉に、フィルミナとクリスタが微笑む。

 私は...レオン様に出会えて本当に良かった。彼は、私を単なる炎の覚醒個体として見ない。一人の仲間として、対等に接してくれる。今日の訓練も、私の成長を信じて提案してくれた。クリスタ様との調和を実現できたのは、レオン様の導きがあったからだ。これからも、レオン様と共に、世界を守り、新しい力を見つけていきたい。

「いいえ、レオン様。私たちこそ、感謝しています」

 フィルミナが、心からの感謝を述べる。

 クリスタも、頷く。

 三百年...長い時を生きてきたが、今ほど充実した日々はなかった。レオン様と六人の覚醒個体たち。この七人の絆こそが、古代の六体が夢見た未来なのかもしれない。私は、この絆を守り続けたい。そして、レオン様が目指す世界を、共に実現したい。

「レオン様は、私たちに新しい可能性を示してくださいます。三百年生きてきた私でも、まだ知らないことがたくさんあると教えてくれました」

 クリスタの言葉に、レオンが照れくさそうに笑う。

「僕も、まだまだ学ぶことばかりだよ」

 三人が、屋上へ移動する。

 星空が広がっている。

 レオンが、星を見上げる。

「この平和を...守りたい」

 レオンの呟きに、フィルミナとクリスタが同意する。

「はい」

「ええ」

 星空が、美しく輝いている。

 その時。

 星空に、光の揺らぎが生じた。

 三人が、驚いて空を見上げる。

 光が集まり、人の形を作る。

 透明な幻影。

 予言者だ。

 三人が、息を呑む。

 予言者の幻影が、静かに語りかける。

「よくやった...レオン、そして覚醒せし者たちよ」

 予言者の声が、夜空に響く。

「しかし...油断するな」

 三人が、緊張する。

「次の闇が...目覚めつつある」

 予言者の言葉に、レオンが尋ねる。

「次の闇...それは、『怒りの牙』ですか?」

 予言者が、頷く。

「そうだ。北の火山地帯で、その牙が研がれている。絶望の翼よりも、さらに凶暴な闇だ。お前たちは...さらなる力を得なければならない」

 予言者の警告に、レオンが覚悟を決める。

 僕たちは...もっと強くならないといけない。対極の調和を、さらに深める。六体共鳴を、より速く発動できるようにする。そして、新しい組み合わせを見つける。『怒りの牙』がどんな闇であろうと、僕たちは立ち向かう。この世界を守るために。みんなと共に。

「わかりました。僕たちは、準備を強化します」

 レオンの決意に、予言者が微笑む。

「良い答えだ。お前たちの絆は...真実だ。その絆を信じ続けよ」

 予言者の幻影が、消えていく。

 星空に、再び静けさが戻る。

 三人が、互いを見る。

 フィルミナが、決意を新たにする。

「私たちは...さらに強くなります」

 クリスタも、頷く。

「ええ。レオン様と共に」

 レオンが、二人を見て微笑む。

「ありがとう。一緒に、乗り越えよう」

 三人が、星空を見上げる。

 北の空に、微かに赤い光が見える。

 火山地帯の方角だ。

 あそこで、何かが起きている。

 でも、今夜は...この平和を楽しもう。

 レオンが、そう思いながら、星空を眺め続けた。

---

 翌朝。

 レオンは、正装に着替えていた。

 シンプルだが、上質な服。

 王宮での会議に相応しい格好だ。

 シグレが、部屋に入ってくる。

「レオン様、準備はよろしいですか?」

「ああ、大丈夫」

 レオンが、頷く。

 シグレが、会議の詳細を確認する。

「各国代表は、聖教会のメルキオール大司教、軍事国家ヴァロールのガルヴァン将軍、商業連合のチェン・ロン長官です」

「ああ、覚えてる。彼らは...それぞれの視点で、僕たちの浄化を解釈するだろうね」

 レオンが、苦笑する。

 シグレが、心配そうに言う。

「誤解を解くことは...難しいかもしれません」

「わかってる。でも、僕たちは真実を伝えるだけだ。彼らがどう解釈しようと、それは彼らの自由だ」

 レオンが、覚悟を決める。

 二人が、研究室へ向かう。

 研究室には、六体の覚醒個体が待っていた。

 フィルミナ、マリーナ、テラ、クリスタ、エオリア、ルミナ。

 全員が、正装している。

 レオンが、全員を見渡す。

「みんな、準備はいいか?」

 全員が、頷く。

「はい!」

 七人が、研究室を出る。

 王宮へ向かう道。

 朝の王都は、活気に満ちている。

 人々が、七人を見て手を振る。

「レオン様!」

「ありがとうございます!」

 人々の感謝の声。

 レオンが、微笑んで手を振り返す。

 この人々の笑顔を守るために。

 僕たちは、戦い続ける。

 七人が、王宮へと向かっていく。

 新しい一日が、始まる。
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旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

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