3 / 6
~プロローグ~
-3- 判決
しおりを挟む
「なぜ嘘をついた?弁明するなら聞いてやろう」
閻王を名乗る彼女の目はこちらが息苦しくなるほどに凍てついていた。
ひりつく喉に唾を流し込んで、なんとか言葉を発する。
「どうにも貴重な経験をしているみたいなんでね、折角だから嘘をついたらどうなるか確認しときたかったんですよ」
もう一度電撃が来るかなと全身に力を入れて身構える。
数瞬後訪れたのは、衝撃ではなく閻王の笑い声だった。
「くふっ、くふふ、くふふふふ。其方は本当に阿呆じゃのう。よもや好奇心だけでこの閻王相手に嘘をつく戯けがおるとは思わんかったぞ。くふっ、こんなに笑ったのは久しぶりじゃ」
そう言って、お腹を押さえてその場にうずくまる。
「俺の弁解を信じるのか?」
俺は身構えていたのが馬鹿馬鹿しくなってポツリと本音をこぼした。
「信じるも何も其方は電撃を受けてないではないか」
「え?」
「その鎖は余が作成した神具でな、縛られた者が嘘をつけば、自動で電撃が流れるようになっておる。先程の阿呆な弁明で電撃が流れないと言うことは、それが其方の偽らざる本心と言うことじゃ」
彼女は説明を終えると肩で息をしながらソファへと座り直しす。
先程までの締め付けるような緊張感は既に完全に弛緩していた。
「清水用宗、余にこれほどの愉悦をもたらすとは褒めて遣わそう。よって先ほどの非礼は水に流す。感謝するがいい。さて、仕事の途中じゃったな。質問を続けるぞ。無論、嘘をついても構わん。もう一度あの苦痛を味わう勇気があるのであればの」
そう言って閻王は挑発的に口元を歪める。
俺は頬を引きつらせながら、彼女の質問に対して正直に答え続けた。
「ふむ、これで一通り質問は終わったが、どうやらこの調書に間違いはないようじゃの。其方はつくづくお人好しのようじゃな。閻王相手に嘘を吐くような戯けではあるがの」
そう言ってもう一度くふふと笑うと大きなため息をついた。
「清水用宗、余の前で其方が善人である事は詳らかとなった。しかし、残念じゃが其方には地獄へと落ちてもらわねばならぬ。ここに来ておる時点で其方の地獄行きは既に決まっておるのじゃ。不甲斐ない事じゃが余に与えられた権限ではこの判決は覆せぬ。余にできるのは精々最も軽い地獄に落とし、そこでの生活に不具合がないよう便宜を図ってやるくらいじゃ」
閻王はその瞳にほんの少しだけ哀れみの色を浮かべ、口元に皮肉めいた笑みを浮かべる。
「尤も、軽いとは言え地獄は地獄じゃ、余が便宜を図るとは言え辛い思いをする事になるじゃろう。其方には申し訳ないが……。なんじゃ、やけに反応が薄いがちゃんと聞いておるか?抗議の一つもしても良いんじゃぞ?」
「あ、いえ、なんと言うか、地獄も天国も行ったことが無いもので、どんな場所か想像がつかなくて、どれくらい嘆いていいのか分からないと言うか……」
正直に答えると閻王が吹き出した。
「くっ、くふふふ、くふふふふふ、其方は本に正直な阿呆じゃの」
閻王はそう言うとソファの上でお腹を抱えて笑い出した。
一頻り笑い転がすと、その細い指で目尻の涙を拭う。
”この阿呆を彼奴の所に送ってみるか、きっと面白い事になるじゃろうな。こちらにもちとリスクはあるが、まあよかろう。”
閻王は咳払いを一つして言葉を紡ぐ。
「清水用宗。余から其方に一つ提案がある」
彼女の瞳は獰猛に輝いていた。
閻王を名乗る彼女の目はこちらが息苦しくなるほどに凍てついていた。
ひりつく喉に唾を流し込んで、なんとか言葉を発する。
「どうにも貴重な経験をしているみたいなんでね、折角だから嘘をついたらどうなるか確認しときたかったんですよ」
もう一度電撃が来るかなと全身に力を入れて身構える。
数瞬後訪れたのは、衝撃ではなく閻王の笑い声だった。
「くふっ、くふふ、くふふふふ。其方は本当に阿呆じゃのう。よもや好奇心だけでこの閻王相手に嘘をつく戯けがおるとは思わんかったぞ。くふっ、こんなに笑ったのは久しぶりじゃ」
そう言って、お腹を押さえてその場にうずくまる。
「俺の弁解を信じるのか?」
俺は身構えていたのが馬鹿馬鹿しくなってポツリと本音をこぼした。
「信じるも何も其方は電撃を受けてないではないか」
「え?」
「その鎖は余が作成した神具でな、縛られた者が嘘をつけば、自動で電撃が流れるようになっておる。先程の阿呆な弁明で電撃が流れないと言うことは、それが其方の偽らざる本心と言うことじゃ」
彼女は説明を終えると肩で息をしながらソファへと座り直しす。
先程までの締め付けるような緊張感は既に完全に弛緩していた。
「清水用宗、余にこれほどの愉悦をもたらすとは褒めて遣わそう。よって先ほどの非礼は水に流す。感謝するがいい。さて、仕事の途中じゃったな。質問を続けるぞ。無論、嘘をついても構わん。もう一度あの苦痛を味わう勇気があるのであればの」
そう言って閻王は挑発的に口元を歪める。
俺は頬を引きつらせながら、彼女の質問に対して正直に答え続けた。
「ふむ、これで一通り質問は終わったが、どうやらこの調書に間違いはないようじゃの。其方はつくづくお人好しのようじゃな。閻王相手に嘘を吐くような戯けではあるがの」
そう言ってもう一度くふふと笑うと大きなため息をついた。
「清水用宗、余の前で其方が善人である事は詳らかとなった。しかし、残念じゃが其方には地獄へと落ちてもらわねばならぬ。ここに来ておる時点で其方の地獄行きは既に決まっておるのじゃ。不甲斐ない事じゃが余に与えられた権限ではこの判決は覆せぬ。余にできるのは精々最も軽い地獄に落とし、そこでの生活に不具合がないよう便宜を図ってやるくらいじゃ」
閻王はその瞳にほんの少しだけ哀れみの色を浮かべ、口元に皮肉めいた笑みを浮かべる。
「尤も、軽いとは言え地獄は地獄じゃ、余が便宜を図るとは言え辛い思いをする事になるじゃろう。其方には申し訳ないが……。なんじゃ、やけに反応が薄いがちゃんと聞いておるか?抗議の一つもしても良いんじゃぞ?」
「あ、いえ、なんと言うか、地獄も天国も行ったことが無いもので、どんな場所か想像がつかなくて、どれくらい嘆いていいのか分からないと言うか……」
正直に答えると閻王が吹き出した。
「くっ、くふふふ、くふふふふふ、其方は本に正直な阿呆じゃの」
閻王はそう言うとソファの上でお腹を抱えて笑い出した。
一頻り笑い転がすと、その細い指で目尻の涙を拭う。
”この阿呆を彼奴の所に送ってみるか、きっと面白い事になるじゃろうな。こちらにもちとリスクはあるが、まあよかろう。”
閻王は咳払いを一つして言葉を紡ぐ。
「清水用宗。余から其方に一つ提案がある」
彼女の瞳は獰猛に輝いていた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
うわさの行方
下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。
すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。
戦場から帰るまでは。
三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。
ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる