25 / 44
目的地はどこ?
しおりを挟む
車のクラクションが交差点で鳴り響く。
狼のアシェルとひよこのルークは、
たくさんの人が行き交う街の中を
歩いていた。
ビルの屋上にある
電光掲示板は透明なガラスのディスプレイ。
表示画面は瞬時に変わる。
LEDを採用されていて眩しかった。
斜めかけの黒いポーチを
黒のポロシャツの上に乗っていた。
青いデニムに銀色の
ウォレットチェーンが光る。
ルークは寝癖を少し立たせて、
あくびをした。
「なんだ、黄色。
寝不足か。」
「…いつから私はイエローという名前に
なったんですか。」
目をギラギラと充血させて言う。
「俺は黄色と言ったけどな、ルーク。
ボスにこき使われすぎじゃないの?
スプーン作りが注文に追いつかないって
オリヴァから聞いたぞ。」
「…ロボットに頼んでいた仕事が全部徹夜で
僕がすることになっただけですよ。
注文が殺到してる時に限って、
ロボットが故障するんです。
今、修理中なんですけどね。
でも、なんだかんだで
僕、仕事できますから。
スプーン1000本くらい
朝飯前ですよ。」
「は? 1000本?
工場並みの注文数じゃねえか。
ボスはわかってるのか?」
「…今、ボスは、出張中です。
頼ろうにも後は任せたって…。
ブラックの中でも漆黒企業ですよね。
ハハハ……。」
目の下のクマも目立っていた。
ひよこでもクマがいるんだと
マジマジと顔をのぞいた。
「あまり見ないでもらえます?
体の震えが止まらないので…。」
「食べないよ。
焼き鳥にしないと美味しく
食べられないだろ?
俺、ぼんじりって好きなんだよな。」
青筋を立てて近づくアシェル。
ひよこは、全身震えた。
焼き鳥にさせられるのかと
恐れた。
「ま、冗談は置いておくとして…。
なんだっけ、クレアってやつは
どこに行けば会えるんだ?」
「冗談キツいです。
本当に食べられるかと思いました。」
ルークは深呼吸を何度もした。
「だーかーらー。」
アシェルはルークの真後ろに近付いた。
「ぎゃーーーー!!」
顔が近くて本当に
アシェルの口の中に入りそうだった。
「食べないっつぅーの。
目的地を教えろって。」
「あ、あ。もう、顔近すぎですって。
ただでさえ、
寝不足で思考力も
低下してるんですから、
優しくしてください。
クレアさんがいるところは
ここです。」
ルークはスマホを取り出して、
マップを表示させた。
スマホ画面と空中にマップが
浮かび上がる。
この世界が下界のリアルワールドなら、
クレアが住む世界は空にあるフロンティア。
移動するには、気球に乗って空を
登っていかないといけない。
マップを表示する際、
気球もうつっていた。
「まさか、この気球に乗って
移動するつもりでは?」
「そのまさかです。
フロンティアには気球でしか行けません。
今日は天気も良いですし、
上にあがれますよ。
あ、アシェルさん?」
「俺、高所恐怖症なんだけど、
どうしても行かないとダメなのか。」
「……。
狼だから高いところ苦手ってこと
ですかね。
でも、交渉も仕事のうちです。
ね?あなたはSpoonの社員ですから。
頑張ってください。」
「へ?
俺、会社の社員になった覚えは
ないんだ…けど。
やーめーーてーーー。」
ルークのくちばしは、
アシェルの首根っこの
ポロシャツを思いっきり引っ張れている。
身動きができない。
もう後戻りもできない。
アシェルとルークは気球の
バスケットの中にフクロウの乗車員と
ともに乗っていく。
想像以上に早いスピードで空を登る。
高いところから見える
都会の景色は綺麗だったが、
高所恐怖症のアシェルは
怖くて、膝を抱えることしか
できなかった。
遠くの山の近くで虹が
さしかかっていた。
良いことがありそうだとルークは思った。
横で膝を抱えて沈んでいるアシェルが
いた。
登っていく途中に雲海の中を
気球ですり抜けていく。
フロンティアの世界が見えてきた。
小さな山から滝が流れ落ちている。
湖では首が長い恐竜が顔を出していた。
ルークも空の世界に来るのは
初めてだった。
「アシェルさん、着きましたよ。」
「あー…。」
ルーク以上にアシェルの顔は
げっそりしていた。
がっくり首を垂れた。
「ほら、行きますよ。
クレアさんの家に交渉しに
行くんですから
シャキッとしてください。」
(無理、絶対無理。
もう乗りたくない。この気球。)
断固拒否するが、
ルークは意地でも連れていく。
ズルズルと体が引きずられていく。
アシェルが通った道は跡が
残っていた。
狼のアシェルとひよこのルークは、
たくさんの人が行き交う街の中を
歩いていた。
ビルの屋上にある
電光掲示板は透明なガラスのディスプレイ。
表示画面は瞬時に変わる。
LEDを採用されていて眩しかった。
斜めかけの黒いポーチを
黒のポロシャツの上に乗っていた。
青いデニムに銀色の
ウォレットチェーンが光る。
ルークは寝癖を少し立たせて、
あくびをした。
「なんだ、黄色。
寝不足か。」
「…いつから私はイエローという名前に
なったんですか。」
目をギラギラと充血させて言う。
「俺は黄色と言ったけどな、ルーク。
ボスにこき使われすぎじゃないの?
スプーン作りが注文に追いつかないって
オリヴァから聞いたぞ。」
「…ロボットに頼んでいた仕事が全部徹夜で
僕がすることになっただけですよ。
注文が殺到してる時に限って、
ロボットが故障するんです。
今、修理中なんですけどね。
でも、なんだかんだで
僕、仕事できますから。
スプーン1000本くらい
朝飯前ですよ。」
「は? 1000本?
工場並みの注文数じゃねえか。
ボスはわかってるのか?」
「…今、ボスは、出張中です。
頼ろうにも後は任せたって…。
ブラックの中でも漆黒企業ですよね。
ハハハ……。」
目の下のクマも目立っていた。
ひよこでもクマがいるんだと
マジマジと顔をのぞいた。
「あまり見ないでもらえます?
体の震えが止まらないので…。」
「食べないよ。
焼き鳥にしないと美味しく
食べられないだろ?
俺、ぼんじりって好きなんだよな。」
青筋を立てて近づくアシェル。
ひよこは、全身震えた。
焼き鳥にさせられるのかと
恐れた。
「ま、冗談は置いておくとして…。
なんだっけ、クレアってやつは
どこに行けば会えるんだ?」
「冗談キツいです。
本当に食べられるかと思いました。」
ルークは深呼吸を何度もした。
「だーかーらー。」
アシェルはルークの真後ろに近付いた。
「ぎゃーーーー!!」
顔が近くて本当に
アシェルの口の中に入りそうだった。
「食べないっつぅーの。
目的地を教えろって。」
「あ、あ。もう、顔近すぎですって。
ただでさえ、
寝不足で思考力も
低下してるんですから、
優しくしてください。
クレアさんがいるところは
ここです。」
ルークはスマホを取り出して、
マップを表示させた。
スマホ画面と空中にマップが
浮かび上がる。
この世界が下界のリアルワールドなら、
クレアが住む世界は空にあるフロンティア。
移動するには、気球に乗って空を
登っていかないといけない。
マップを表示する際、
気球もうつっていた。
「まさか、この気球に乗って
移動するつもりでは?」
「そのまさかです。
フロンティアには気球でしか行けません。
今日は天気も良いですし、
上にあがれますよ。
あ、アシェルさん?」
「俺、高所恐怖症なんだけど、
どうしても行かないとダメなのか。」
「……。
狼だから高いところ苦手ってこと
ですかね。
でも、交渉も仕事のうちです。
ね?あなたはSpoonの社員ですから。
頑張ってください。」
「へ?
俺、会社の社員になった覚えは
ないんだ…けど。
やーめーーてーーー。」
ルークのくちばしは、
アシェルの首根っこの
ポロシャツを思いっきり引っ張れている。
身動きができない。
もう後戻りもできない。
アシェルとルークは気球の
バスケットの中にフクロウの乗車員と
ともに乗っていく。
想像以上に早いスピードで空を登る。
高いところから見える
都会の景色は綺麗だったが、
高所恐怖症のアシェルは
怖くて、膝を抱えることしか
できなかった。
遠くの山の近くで虹が
さしかかっていた。
良いことがありそうだとルークは思った。
横で膝を抱えて沈んでいるアシェルが
いた。
登っていく途中に雲海の中を
気球ですり抜けていく。
フロンティアの世界が見えてきた。
小さな山から滝が流れ落ちている。
湖では首が長い恐竜が顔を出していた。
ルークも空の世界に来るのは
初めてだった。
「アシェルさん、着きましたよ。」
「あー…。」
ルーク以上にアシェルの顔は
げっそりしていた。
がっくり首を垂れた。
「ほら、行きますよ。
クレアさんの家に交渉しに
行くんですから
シャキッとしてください。」
(無理、絶対無理。
もう乗りたくない。この気球。)
断固拒否するが、
ルークは意地でも連れていく。
ズルズルと体が引きずられていく。
アシェルが通った道は跡が
残っていた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる