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#002
学校の悪魔4
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スナイパーが撃った弾丸が胸に直撃したが偶然にも胸ポケットに忍ばせていたコインにちょうど当たって助かった、的ななそういった超自然的な現象ってのは案外身近に潜んでたみたいだ。
「これが何に見えるって……」
どう見たって死体が転がる殺人現場じゃあないか。殺害方法は絞殺。死因はロープで首を絞められた事による窒息死。犯行動機は不明だ。
でも、そんな事を聞いてるんじゃないんだろうな。どうやら女はこの地理教師に対して何か意見を聞きたがってるようだった。おそらくだが、答えを間違えれば俺も殺される。
俺が初恋の子を前に「好きだ」となかなか言い出せない男子中学生のように言葉を言い淀んでいると、女の方が先に口を開いた。
「この世界はね、結構私達が知らない事ばかりで溢れかえっているのよ」
会話が成立するタイプの殺人鬼かと思えばいきなり突拍子のないことを言い出した。
「多分だけど、妖怪とかオバケとかはそんじょそこらにいるわね。誰もが皆気付いていないだけで」一拍おいて、「あなたは、そうね…、魔法とかってあると思う?呼び方は何でもいいわ。魔術だろうがまじないだろうが。……どう?」
どう?と言われてもなぁ……。実際、魔法とか魔術とかってもんは何らかの科学現象のひとつだと思ってるクチだからなぁ。あって欲しいとは思っているが。
しかしここは、なるべく女を刺激しないような言葉選びをして答えた。
「あ、あってもおかしくないと思うぜ。俺はまだ見たことないがな」
「……ふーん」
女はそう呟いてから考え込むように目を瞑り数秒黙ったあと、シャー芯が乗りそうなくらい長い睫毛ゆっくりと持ち上げて、
「なら、今一度あなたに問うわ。この私の足の下で転がっているコレに対して何かおかしいと思ったことはあるかしら?」
そう言われて俺はピンと来た。確かに、俺はこの地理教師に対して「何かがおかしい」と感じた経験をほんの数時間前にしたばかりだった。加えてこの女の今までのデンパな話。
ふむ、実はその地理教師は宇宙人だったとか?それで地球侵略を試みていたところをあんたがやっつけたってわけだ。
「馬鹿じゃないの?いるわけないでしょうそんなもの」
ついさっき自分自身の口から出た言葉を思い出してほしいね。
まぁでも、女の口ぶりからして地理教師が宇宙人説は違ったようだ。
であれば、何だ?そもそもどうして俺は地理教師に対して違和感のようなものを感じたんだ?
そう、何かがおかしかったからだ。今、目の前に倒れている死体を見ても未だに違和感を感じる。つまりは、外見の何かがおかしいはずなのだ。
しかし、見る限りは普通の人間と変わらない。別段、背中に羽や尻の上に尻尾を隠している様子でもなかった。
じゃあ何だ。何がおかしい。先週の授業と今日とではこの地理教師の何が変わったんだ?スーツの色か?それともやはり新しいシャンプーに変えたとか?給料が上がって腕時計を少し高級なものに買い換えたとか?
そして、ふと―――。
どうして左手に腕時計をしているんだ?仰向けに倒れている地理教師を見てそう思った。
瞬間、俺の胸につっかえていた違和感は熱々のコーヒーに放り込まれた角砂糖のようにすっと溶けるようになくなって、なるほど、考えてみれば確かにだったな。
普通、文字を書く方の利き手には時計なんてしないじゃあないか。周りのほとんどの人間が右手で物書きするもんだから、地理教師が何の不自由なく右手で黒板に文字を書いていても違和感を覚えど、それがおかしいことだとは思わなかったのだ。誰もしがない地理教師のことなんてまじまじと見たりはしないだろうからな。
俺くらいのもんさ。
それから俺は、ファイナルアンサーの重圧を受けた賞金獲得目前の回答者のような面持ちで答えた。
「……そいつは確か―――『左利き』だったんじゃあないか?」
「これが何に見えるって……」
どう見たって死体が転がる殺人現場じゃあないか。殺害方法は絞殺。死因はロープで首を絞められた事による窒息死。犯行動機は不明だ。
でも、そんな事を聞いてるんじゃないんだろうな。どうやら女はこの地理教師に対して何か意見を聞きたがってるようだった。おそらくだが、答えを間違えれば俺も殺される。
俺が初恋の子を前に「好きだ」となかなか言い出せない男子中学生のように言葉を言い淀んでいると、女の方が先に口を開いた。
「この世界はね、結構私達が知らない事ばかりで溢れかえっているのよ」
会話が成立するタイプの殺人鬼かと思えばいきなり突拍子のないことを言い出した。
「多分だけど、妖怪とかオバケとかはそんじょそこらにいるわね。誰もが皆気付いていないだけで」一拍おいて、「あなたは、そうね…、魔法とかってあると思う?呼び方は何でもいいわ。魔術だろうがまじないだろうが。……どう?」
どう?と言われてもなぁ……。実際、魔法とか魔術とかってもんは何らかの科学現象のひとつだと思ってるクチだからなぁ。あって欲しいとは思っているが。
しかしここは、なるべく女を刺激しないような言葉選びをして答えた。
「あ、あってもおかしくないと思うぜ。俺はまだ見たことないがな」
「……ふーん」
女はそう呟いてから考え込むように目を瞑り数秒黙ったあと、シャー芯が乗りそうなくらい長い睫毛ゆっくりと持ち上げて、
「なら、今一度あなたに問うわ。この私の足の下で転がっているコレに対して何かおかしいと思ったことはあるかしら?」
そう言われて俺はピンと来た。確かに、俺はこの地理教師に対して「何かがおかしい」と感じた経験をほんの数時間前にしたばかりだった。加えてこの女の今までのデンパな話。
ふむ、実はその地理教師は宇宙人だったとか?それで地球侵略を試みていたところをあんたがやっつけたってわけだ。
「馬鹿じゃないの?いるわけないでしょうそんなもの」
ついさっき自分自身の口から出た言葉を思い出してほしいね。
まぁでも、女の口ぶりからして地理教師が宇宙人説は違ったようだ。
であれば、何だ?そもそもどうして俺は地理教師に対して違和感のようなものを感じたんだ?
そう、何かがおかしかったからだ。今、目の前に倒れている死体を見ても未だに違和感を感じる。つまりは、外見の何かがおかしいはずなのだ。
しかし、見る限りは普通の人間と変わらない。別段、背中に羽や尻の上に尻尾を隠している様子でもなかった。
じゃあ何だ。何がおかしい。先週の授業と今日とではこの地理教師の何が変わったんだ?スーツの色か?それともやはり新しいシャンプーに変えたとか?給料が上がって腕時計を少し高級なものに買い換えたとか?
そして、ふと―――。
どうして左手に腕時計をしているんだ?仰向けに倒れている地理教師を見てそう思った。
瞬間、俺の胸につっかえていた違和感は熱々のコーヒーに放り込まれた角砂糖のようにすっと溶けるようになくなって、なるほど、考えてみれば確かにだったな。
普通、文字を書く方の利き手には時計なんてしないじゃあないか。周りのほとんどの人間が右手で物書きするもんだから、地理教師が何の不自由なく右手で黒板に文字を書いていても違和感を覚えど、それがおかしいことだとは思わなかったのだ。誰もしがない地理教師のことなんてまじまじと見たりはしないだろうからな。
俺くらいのもんさ。
それから俺は、ファイナルアンサーの重圧を受けた賞金獲得目前の回答者のような面持ちで答えた。
「……そいつは確か―――『左利き』だったんじゃあないか?」
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