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#005
生徒会長の暗躍
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ここの学徒達は皆口々に「学校の悪魔」とは言うが、誰もがその正体を知ろうとはしていない。私には人間の感情というものがあまり理解出来ていないのだが、これまでの傾向から考えればそれは皆が皆心の何処かで学校の悪魔を「架空の人物」であると思い込んでいるからにほかならない。
何処かには居て欲しい。でも、居るわけない。そういう十代なりの理性が働いているのだ。
しかし、私からすればそんなものはファンタジーを夢見る十代の妄想に他ならない。
出来事には必ずそうなった理由がある。
警察という組織はそれを学徒の戯言だと流していたようだが、我々の同胞の自殺死体が見つかっている以上、「学校の悪魔」という殺人鬼は間違いなくこの学校の何処かいるのだ。
そして、「学校の悪魔」がただの人間である以上、見つけられないわけが無い。必ず何処かにやつを見つける手がかりがある。明けない夜はないのと同じで、見つからない犯人なんていない。時間はかかるかもしれないが、いつかは必ず見つかる。
もはやこれは学校の悪魔と私、どちらが先に相手を見つけるかの戦いなのだ。
先手を打った方が勝利する。いつかは、とは言ったが今すぐにでも手を打たなければならないだろう。向こうもまた私達に気が付いて探しているに決まっているからな。ただでさえ私が増やすよりも向こうが減らすスピードの方が圧倒的に早いのだ、これからは多少無理してでも殺す人間の数を増やしていく必要がある。
ただ、やはりこちらが圧倒的に有利な事は間違いない。村野コウイチは言った。殺して、「学校の悪魔」ではなければその人間を造り変えてしまえばいいと。向こうはそれが出来ないと。
そこに勝機がある。
私はさっそく学校の悪魔捜索に取り掛かった。その手始めとして、空き教室に呼び出した村野コウイチに釘を刺した。
「……村野コウイチ、寝返ろうだなんて思わない事だな」
私の素性が割れるという事は万が一にもないだろうが、もしバレるとすれば村野コウイチからだろうから。
私がそう言うと村野コウイチはタチの悪い詐欺師の様な爽やかな笑みを浮かべて、
「君が僕を殺そうとしない限り僕は君の味方だよ」
命がかかっている以上、村野コウイチによる告発は考えられないが、しかしどうだろう。今ここで殺しておいた方が良いのではないだろうか。
思えばあの時は生かさざるを得なかっただけで、もう生かしておかなければならない理由はなくなったのだ。確かに「安全な場所と人間の提供」という利点はあるが、それは私が公になるデメリットを背負ってまで残しておきたいメリットかと言われればそうではない。効率は悪くなるが村野コウイチと出会う前のやり方に戻るだけだ。
私はちらりと村野コウイチを見た。先程までと同じく不気味な笑みを浮かべている。裏切るとは思えないが、裏切らないとも思えない。
状況は最終局面にまで差し掛かっている。決断するなら今だ。
「……村野コウイチ」
「なに?」
「……今ここで死ね」
村野コウイチを殺す事には何の問題もない。そもそも最初は村野コウイチにナろうとしていたのだ、誰かに気が付かれる前に複製体さえ造ってしまえば誰も中身が変わった事に気が付かないだろう。
私は村野コウイチの首に手を掛けた。そのまま粉っぽい黒板に押し付けると気管を的確に押さえつける。
あとはそのまま待つだけだった。少しは抵抗するものかと思っていたのだが、村野コウイチは一切の抵抗を見せなかった。そのうち私に殺されるのを分かっていたのだろうか。それとも、抵抗しても無駄だと分かっているのか。
「……お前、死にたいのか?」
「……ま、まさか……っ」
しかし、村野コウイチは抵抗する代わりにポケットから一枚の紙切れを取り出し、これを見ろと言わんばかりに私の目の前に突き出した。
そこには今まで見つかった自殺死体の名前が日付けとともに羅列されていた。この学校で見つかっていない自殺死体の名前まで村野コウイチらしい丁寧な字で書かれていた。
「……何が言いたい」
村野コウイチは離してくれと言う代わりに自身の首を絞める私の腕をポンポンと叩いて一呼吸置くと、額に浮かんだ汗を拭ってから言った。
「……僕は―――『学校の悪魔』の正体を知っている」
何処かには居て欲しい。でも、居るわけない。そういう十代なりの理性が働いているのだ。
しかし、私からすればそんなものはファンタジーを夢見る十代の妄想に他ならない。
出来事には必ずそうなった理由がある。
警察という組織はそれを学徒の戯言だと流していたようだが、我々の同胞の自殺死体が見つかっている以上、「学校の悪魔」という殺人鬼は間違いなくこの学校の何処かいるのだ。
そして、「学校の悪魔」がただの人間である以上、見つけられないわけが無い。必ず何処かにやつを見つける手がかりがある。明けない夜はないのと同じで、見つからない犯人なんていない。時間はかかるかもしれないが、いつかは必ず見つかる。
もはやこれは学校の悪魔と私、どちらが先に相手を見つけるかの戦いなのだ。
先手を打った方が勝利する。いつかは、とは言ったが今すぐにでも手を打たなければならないだろう。向こうもまた私達に気が付いて探しているに決まっているからな。ただでさえ私が増やすよりも向こうが減らすスピードの方が圧倒的に早いのだ、これからは多少無理してでも殺す人間の数を増やしていく必要がある。
ただ、やはりこちらが圧倒的に有利な事は間違いない。村野コウイチは言った。殺して、「学校の悪魔」ではなければその人間を造り変えてしまえばいいと。向こうはそれが出来ないと。
そこに勝機がある。
私はさっそく学校の悪魔捜索に取り掛かった。その手始めとして、空き教室に呼び出した村野コウイチに釘を刺した。
「……村野コウイチ、寝返ろうだなんて思わない事だな」
私の素性が割れるという事は万が一にもないだろうが、もしバレるとすれば村野コウイチからだろうから。
私がそう言うと村野コウイチはタチの悪い詐欺師の様な爽やかな笑みを浮かべて、
「君が僕を殺そうとしない限り僕は君の味方だよ」
命がかかっている以上、村野コウイチによる告発は考えられないが、しかしどうだろう。今ここで殺しておいた方が良いのではないだろうか。
思えばあの時は生かさざるを得なかっただけで、もう生かしておかなければならない理由はなくなったのだ。確かに「安全な場所と人間の提供」という利点はあるが、それは私が公になるデメリットを背負ってまで残しておきたいメリットかと言われればそうではない。効率は悪くなるが村野コウイチと出会う前のやり方に戻るだけだ。
私はちらりと村野コウイチを見た。先程までと同じく不気味な笑みを浮かべている。裏切るとは思えないが、裏切らないとも思えない。
状況は最終局面にまで差し掛かっている。決断するなら今だ。
「……村野コウイチ」
「なに?」
「……今ここで死ね」
村野コウイチを殺す事には何の問題もない。そもそも最初は村野コウイチにナろうとしていたのだ、誰かに気が付かれる前に複製体さえ造ってしまえば誰も中身が変わった事に気が付かないだろう。
私は村野コウイチの首に手を掛けた。そのまま粉っぽい黒板に押し付けると気管を的確に押さえつける。
あとはそのまま待つだけだった。少しは抵抗するものかと思っていたのだが、村野コウイチは一切の抵抗を見せなかった。そのうち私に殺されるのを分かっていたのだろうか。それとも、抵抗しても無駄だと分かっているのか。
「……お前、死にたいのか?」
「……ま、まさか……っ」
しかし、村野コウイチは抵抗する代わりにポケットから一枚の紙切れを取り出し、これを見ろと言わんばかりに私の目の前に突き出した。
そこには今まで見つかった自殺死体の名前が日付けとともに羅列されていた。この学校で見つかっていない自殺死体の名前まで村野コウイチらしい丁寧な字で書かれていた。
「……何が言いたい」
村野コウイチは離してくれと言う代わりに自身の首を絞める私の腕をポンポンと叩いて一呼吸置くと、額に浮かんだ汗を拭ってから言った。
「……僕は―――『学校の悪魔』の正体を知っている」
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