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#005

宮之阪の手紙

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 学校の悪魔の正体自体は案外簡単に予測が着いた。

 学校の悪魔の唯一の手がかりは点在する「自殺死体」だけなのだから、そこから遡れば辿り着けるのではないかと思ったのだ。生徒会が閲覧可能な学校の記録書を漁ればすぐだった。

 案の定、この街で発見された自殺死体とその周りの人間、例えば仲が良かったり、親同士が顔見知りだったり、そういうのをひっくるめて調査したら、最初の一人の自殺死体の少女に親友とも呼べるクラスメートがいた事が分かった。

 クラスでも目立つタイプではなくどちらかと言えば地味で、教師から聞いたところ母子家庭の上、小さい頃に姉を亡くしているらしいその女生徒。

 僕の見立てが正しければ、そいつがうわさの殺人鬼「学校の悪魔」だ。

 正直なところ、ヤツの正体をこの化け物に言うつもりはなかった。もっと終盤の切り札にと取っておきたかったのだ。

 だが、僕の知らないところで思ったより事態は進んでいたようで、生徒会役員全員の下駄箱に入れられた手紙を見る限りもまたこの化け物の正体に迫りつつあるようだった。まさかこんな形で切り札を投じるとは思わなかったが、切るのを勿体ぶらないで本当によかった。

 僕は改めておそらく学校の悪魔からであろう手紙に視線を落とした。

 “私たちは”、か。

 なかなかにセンスのある文章じゃないか。

 迫りつつあるとはと言っても、こちらの正体までは分かっていないらしい。僕に協力を仰いでいるのが証拠だ。確かに、この化け物は行動は大胆だが、絶対にバレないようある一定のマージンを常に取っている。対して、向こうは偽者が増え続ける現状でこちらがボロを出すのを待つ余裕はもうないのだろう。

 つまり、僕次第で情勢が傾くわけだ。今日この場で咄嗟に僕を殺す判断をした河内森キョウコの判断は正しかったと言えよう。こうなった今、僕は味方をしてくれると分かった学校の悪魔側に付くつもりだからね。

 しかし、ふと思ったのだが「学校の悪魔」というのは一人ではないのだろうか。というより、一枚岩ではないのだろうか。この手紙を送ったのはおそらく今まで殺しをしてきた本人では無いはずだ。僕の知っている「学校の悪魔」は偽者以外に興味なんて示さない。加えて鏡の一件もそうだろう。あんな露骨な一斉捜索なんてこれまでの学校の悪魔からなら考えられないからね。

 考えられるのは一つ、学校の悪魔に協力者が現れた可能性だ。それについては河内森キョウコも薄々気が付いているだろう。

 僕が推理の最後に学校の悪魔である「星ヶ丘ユウキ」の名を口にすると、その化け物は化け物らしい寒気のするようないやらしい笑みを浮かべて、

「……面白くなってきた」

 どうやら僕はまだ生かしておいて貰えるらしい。河内森キョウコは僕からメモを奪い取るやいなや空き教室を飛び出して行ってしまった。相手の名前が分かった今、あの感じでは少しばかり手荒な手段に出るのかもしれないね。
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