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#007
真相
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河内森キョウコはしばらく考えた様な間を開けた後、
「……不可能じゃない。私の事を生かしてくれるというのなら応じよう。しかし、何故」
「理由をあなたに話す必要はないわ。あまり時間に余裕はないの。出来ると言うなら早くやってちょうだい」
私がそう言って河内森キョウコを自由にしてやると、彼女はさっそくを造るべく準備を始めた。人差し指の先を少し噛み切り、にじみ出て来た血で生徒会室の床に見た事もない文字を綴って直径一メートルほどの円を描く。それはまるで、オカルト研究会がアニメや漫画に影響されて描いたような魔方陣そのものだった。
「……生体情報が少し必要だ。髪が一本欲しい」
私は言われたままに髪を手串でさっとすいて指に引っかかってきた髪を河内森キョウコに渡した。すると河内森キョウコはそれに自らの血を少しつけて、先ほど描いた円の中心へと落とした。
すると、あろうことか、それこそテレビで見た魔法のようにその魔方陣の様なものがぼんやりと赤く光り始めた。それから河内森キョウコは一言二言何かを呟いた後、その中心にゆっくり手を近づけると、水に手を浸けるように床に手を。そして床の中で何かを掴むと、ゆっくりと引き抜いていく。
「……驚いたわ。この世界にこんなでたらめな現象があるなんて」
けど、よくよく考えれば人間の他に人間の偽者がいるような世界なのだから魔法みたいな現象の一つや二つあっても別段おかしくはないわね。
まず床から―――――というより魔方陣のようなものから見え始めたのは中指だった。河内森キョウコの手に握られて、ゆっくりと出てくる。順に手、腕、肩、そして首を経由して私の顔が現れる。
時間にして四十分くらいかしら。私の全身が世界に二つとなった。驚くべき事に、きちんと制服を着ている。スカートのポケットを探ると、今使っている私のスマートフォンとそして宮之阪さんのメモ帳が出てきた。
「……目を覚ますまであと五分くらいだろう」
「ありがと。助かったわ」
私は礼を言うと、当初の予定通り河内森キョウコをその場で殺した。加えて今造られたばかりの「私」も目を覚ましたタイミングでその首を締めあげ殺した。そして、それを生徒会室の天井から吊るした。
これで全ての目的は達成。学校にいるKをすべて取り除き、害を成す輩に裁いた。「学校の悪魔」の名も未だ国の法律以上に生徒達をけん制している。殺されるかもしれないというのにわざわざ悪事を働くほどのお馬鹿さんはもうこの学校にはいないでしょうからね。
―――――と思っていたのだけれど、一人いたのよ。
そのお馬鹿さんは丁寧にも事前に宣言までして、テロをするつもりらしかった。私としては理不尽にも「気に入らない」という理由で誰かが殺されようとしているのを止めないわけにはいかなかった。
私が私でいる為に。
そして、七月二十五日の十七時五十九分。
最初に爆発があった屋上へと私は向かっていた。死んだことになっているので真っ黒なパーカーのフードを深めに被り、誰にも見られないように裏門から学校に侵入。爆弾魔の脅威に生徒たちが慌てふためく中、人目につかないルートで屋上までの階段を一気に駆け上がる。
屋上に入る唯一の扉の前にたどり着いてからふと、つい先日もここに来た事を思いだし、何か嫌な予感がした。だが、テロ行為を止めないわけにはいかないし、私の正体がバレたとしてもどの道この場で殺すつもりだから問題はない、はず……。
ゆっくりと重い扉を押し開け歩みを進める。
「―――――よう、来ると思ってたぜ?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「……不可能じゃない。私の事を生かしてくれるというのなら応じよう。しかし、何故」
「理由をあなたに話す必要はないわ。あまり時間に余裕はないの。出来ると言うなら早くやってちょうだい」
私がそう言って河内森キョウコを自由にしてやると、彼女はさっそくを造るべく準備を始めた。人差し指の先を少し噛み切り、にじみ出て来た血で生徒会室の床に見た事もない文字を綴って直径一メートルほどの円を描く。それはまるで、オカルト研究会がアニメや漫画に影響されて描いたような魔方陣そのものだった。
「……生体情報が少し必要だ。髪が一本欲しい」
私は言われたままに髪を手串でさっとすいて指に引っかかってきた髪を河内森キョウコに渡した。すると河内森キョウコはそれに自らの血を少しつけて、先ほど描いた円の中心へと落とした。
すると、あろうことか、それこそテレビで見た魔法のようにその魔方陣の様なものがぼんやりと赤く光り始めた。それから河内森キョウコは一言二言何かを呟いた後、その中心にゆっくり手を近づけると、水に手を浸けるように床に手を。そして床の中で何かを掴むと、ゆっくりと引き抜いていく。
「……驚いたわ。この世界にこんなでたらめな現象があるなんて」
けど、よくよく考えれば人間の他に人間の偽者がいるような世界なのだから魔法みたいな現象の一つや二つあっても別段おかしくはないわね。
まず床から―――――というより魔方陣のようなものから見え始めたのは中指だった。河内森キョウコの手に握られて、ゆっくりと出てくる。順に手、腕、肩、そして首を経由して私の顔が現れる。
時間にして四十分くらいかしら。私の全身が世界に二つとなった。驚くべき事に、きちんと制服を着ている。スカートのポケットを探ると、今使っている私のスマートフォンとそして宮之阪さんのメモ帳が出てきた。
「……目を覚ますまであと五分くらいだろう」
「ありがと。助かったわ」
私は礼を言うと、当初の予定通り河内森キョウコをその場で殺した。加えて今造られたばかりの「私」も目を覚ましたタイミングでその首を締めあげ殺した。そして、それを生徒会室の天井から吊るした。
これで全ての目的は達成。学校にいるKをすべて取り除き、害を成す輩に裁いた。「学校の悪魔」の名も未だ国の法律以上に生徒達をけん制している。殺されるかもしれないというのにわざわざ悪事を働くほどのお馬鹿さんはもうこの学校にはいないでしょうからね。
―――――と思っていたのだけれど、一人いたのよ。
そのお馬鹿さんは丁寧にも事前に宣言までして、テロをするつもりらしかった。私としては理不尽にも「気に入らない」という理由で誰かが殺されようとしているのを止めないわけにはいかなかった。
私が私でいる為に。
そして、七月二十五日の十七時五十九分。
最初に爆発があった屋上へと私は向かっていた。死んだことになっているので真っ黒なパーカーのフードを深めに被り、誰にも見られないように裏門から学校に侵入。爆弾魔の脅威に生徒たちが慌てふためく中、人目につかないルートで屋上までの階段を一気に駆け上がる。
屋上に入る唯一の扉の前にたどり着いてからふと、つい先日もここに来た事を思いだし、何か嫌な予感がした。だが、テロ行為を止めないわけにはいかないし、私の正体がバレたとしてもどの道この場で殺すつもりだから問題はない、はず……。
ゆっくりと重い扉を押し開け歩みを進める。
「―――――よう、来ると思ってたぜ?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
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