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#007

学校の悪魔10

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 人を殺すこと自体はそんなに難しい事じゃない。血を多く流せば死ぬし、痛みによるショックでも死ぬ。それこそ、呼吸できなくなったら死んでしまう。

 身近なもので言えば、やはり必要な分の酸素を取り入れられない事が死因である窒息死がメジャーでしょうね。

 方法もいたって簡単。相手の首に多少力を入れても切れない太さのロープか何かで思い切り締め上げればいいだけなのだから。力がない人は三十センチくらいの鉄パイプの端と端に一本のロープを結び、出来た輪の中に殺したい人の首を入れて鉄パイプをくるくるとねじってやればいい。

 私はその必要なかったけど。

 勉学の方の才能はそこそこだったみたいだけれど、武術の方の才能は人一倍あったみたい。男女で力の差が出てくる高校生になっても、純粋に力で私よりも強い相手も投げ飛ばせる程だった。

 だから、「学校の悪魔」をやる事に対して何の障害も不安もなかった。

 そして、躊躇もなかった。

 力がある私がやらないと誰もやらない事だし、私がやれば世の中は確実に方向へと進んで行くという確信が論理的思考に基づいてあったから。

 方法は問題じゃない。

 重要なのは結果だけ。

 だが、「悪」を裁く正義そのものの私のやり方こそ「悪」だと言った人がいた。理由を尋ねたけれど、理解はできなかった。

 悪を消して何が悪いのか。

 私は世の中の犯罪が何故減らないかをその人に説いた。罪を犯しても罰を受ければまたやり直せるからだと。

 そんなわけはない。人の性根などたかだか数十年刑務所に入ったくらいでは変わらない。お金に困ればまた盗みを働くだろうし、人殺ししか快楽を感じられない人はまた人を殺す。

 私は言った。

「―――悪は滅ぼすべきだ」

 “あなたなら分かってくれるでしょう?”

 だけど、その人は途轍もない天才なのに理解してくれなかった。

 それどころか力もないのに私を、正義の私を止めようとした。「悪」だと言ってしかるべき場所で更生しろと説教した。

 そんな事をして神様に顔向けできるのかと言わんばかりに、私を「悪」に仕立て上げる為の十字架代わりのメモ帳を突き付けて。


 だから、私はその人を殺した。


 正義に仇なす者もまた、悪だから。

 後は、大元である河内森キョウコを殺せば一先ず、偽者にかどわかされた交野山高校の平和は取り戻せるところまで来ていた。

 そしてちょうどタイミングよく私は生徒会室に呼び出された。わざわざ生徒会室を指定したのだ、呼び出し人は十中八九、河内森キョウコだろう。

 長い廊下を進みノックをして生徒会室に入ると、案の定、河内森キョウコが私を「学校の悪魔」であると分かっていて攻撃してきた。一切の迷いが見られない殺気。

 けど、私の事を侮り過ぎたわね。

 私はカッターナイフで動脈を切られる寸前に頭を後方へと勢いよく倒し河内森キョウコに後頭部で頭突きを入れると、河内森キョウコのカッターナイフを持っている私よりひと回りは細い手を掴み力任せにひねりあげた。そのままいつも通り腕を後ろに回してやり床へと組み伏せる。

 このまま殺してしまおうかとも思ったが、ここで宮之阪さんもびっくりの名案を思い付いてしまった。

 私がメモ帳を持っている限り、絶対にバレる事はない―――もう一人の「学校の悪魔」の誕生。

 所謂これは、効率アップをはかる為のプラスアルファね。別に無くてもよかったけれど、この手順を踏んでおいた方がこれからもKを殺していくなら何かと都合がいいから。

「―――あなたの事は生かしておいてあげる」。

 もちろん嘘。

「代わりに、私の偽者を今ここで造りなさい。それであなたがしてきた行いについては見逃してあげるわ。どうかしら?」

 少しだけ拘束している手の力を緩めて、私は出来るだけ優しく聞いた。

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