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学校編
コイントス
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アベンチュレの王都ペタ。シズがここに来て二日経った。汚いアパートはジャモンとシズの努力のおかげでピカピカになった。
シズはオヤコドンを食べた後、ジャモンにありのままを全て話した。ジャモンは黙って全部聞いてくれた。そして簡単にシズを信じてくれた。
「じゃあシズさんが帰れる道を俺も捜そう。それまでは俺がしっかり面倒見るから」
ジャモンはいい人過ぎた。これはカーネスみたいな人間につけ入れられるはずだと、シズは同情した。
カーネスの置いていったトランクには大量の書類が入っていた。二日目の朝ベッドの上で、シズはその書類を広げた。その中にカーネスの筆跡だあろう、シズのこの世界の『設定』がこと細かく書かれていた。簡単に説明すればこうだ。
シズは捨て子で果てしない山奥に住む狩人に拾われる。そして娘として育てられる。体の弱いシズはほぼ部屋から出なかった。狩人はジャモンが昔やっていた料理屋の常連だった。時は過ぎ、狩人はジャモンと再会。自分の死期を悟った狩人はジャモンに借金を肩代わりするからシズを引き取って欲しいと懇願する。そして今に至る。
「私が体が弱いって設定無理あるぜ」
「狩人の設定の資料もあるね。名前はアタカマ。そこそこな腕前の狩人。おじいさん。以上」
ざっくり過ぎる説明だった。シズは書類をペラペラめくった。
「ってかこの世界の人間じゃない私がこんなに簡単に養子なれるのか? 」
「実際なってるからね。これその戸籍の写し」
この世界にも戸籍といものはあった。ジャモンに見せた写しには ジャモンとシズがきちんと養子縁組が組まれていた。
「これも」
続けて見せてくれた紙も戸籍の写しだった。私とアタカマが親子だときちんと明記されていた。
「その戸籍はもうないみたいだけどね」
「偽装か! 」
「カーネスさんならできそうだ」
カーネスにはその説得力があった。シズは帰りたいと願っているのに、この世界で存在を許されている。
「カーネスさんはシズのことを"コイン"って言ったんだよね?」
夕食後お茶を飲んでいるとジャモンがシズに聞いてきた。
「うん。それが? 」
「ちょっと気になってね。それでシズとそっくりな男がシズをここに連れてきた」
「そうだよ」
「これは俺の仮定だけど、その男が今シズのいたニホンにいるんじゃないかな」
シズはお茶を飲む手を止めた。
「コインってね、こっちでは裏と表を表すのによく使うんだ。高く飛ばして手の甲の上に押さえつけて裏と表どっち? みたいな遊びもする」
「そういうの私のところでもあった」
コイントスだ。
「それと人がいつも見せない裏の顔を見せることを諺で『コインが裏返る』っていうんだ」
「コインが裏返る……」
「どっちが表で裏か俺は知らないけどね、君たちふたりは裏返ったんじゃない?子供じみた話だけど」
「いや、それしっくりくるよ。ジャモン」
同じ顔。男と女の逆の性。コインという比喩がよく合う。それならば、カーネスの仕事は『コインを裏返す』こと。理屈は後回しにして、裏返すことをカーネスに依頼したのがドッペルゲンガー。
「ジャモンの仮定で話を進めるとして、なんでそっくり野郎は私と入れ替わったんだ? 」
ジャモンはうーんと考えてくれる。
「……カーネスさんと同じ理由かな? 」
「カーネス? 」
「ロッパさんって逃げてるじゃない? 」
カーネスはヨンキョク(警察)から逃げている。カーネスと同類だとするとドッペルゲンガーもヨンキョクから逃げている。違う世界に逃げ込めれば捕まる心配はない。
「あいつそういえば死にたくないとかほざいてた」
「命が狙われるほどの罪を犯したのかな」
「けどあいつ城人だろ?ジャモン昨日、城人はエリートだって言ってたよな?」
「そうだね。けどだからこそ、逃げ道がなかったのかも」
「じゃあ犯罪者の逃亡のために私は利用されたってことかよ、おんどりゃあ」
「まだ犯罪者だと決まったわけではないよ、シズ」
ジャモンはそう言ったが、シズの中ではもうドッペルゲンガーは犯罪者で確定していた。そしてそいつが日本にいるとするならやっぱりカーネスを捕まえてどうにかするしかないようだった。やっぱり意地でもしがみついておけばよかったとシズは考えてみたが、それで帰してくれると思えなかった。実際逃げられたようなものだった。力の差があり過ぎた。カーネスを捕まえてからのことをしっかり考えなければならない、とシズは頭を抱える。
「けどシズにそっくりさんは随分金があったんだね」
「え?」
「だって俺の借金も肩代わりしてくれて、これからの生活費もびっくりするぐらいくれてる。城人っていうだけじゃ理由にならないぐらいのお金だよ」
「そうだよな」
罪滅ぼしにしてもシズをかなり優遇してくれている。ジャモンのような保護者まで付けてくれている。シズは叫びながら、立ち上がった。
「もうわけがわからなすぎるから風呂に入って寝る」
「風呂で寝ては駄目だよ」
シズはオヤコドンを食べた後、ジャモンにありのままを全て話した。ジャモンは黙って全部聞いてくれた。そして簡単にシズを信じてくれた。
「じゃあシズさんが帰れる道を俺も捜そう。それまでは俺がしっかり面倒見るから」
ジャモンはいい人過ぎた。これはカーネスみたいな人間につけ入れられるはずだと、シズは同情した。
カーネスの置いていったトランクには大量の書類が入っていた。二日目の朝ベッドの上で、シズはその書類を広げた。その中にカーネスの筆跡だあろう、シズのこの世界の『設定』がこと細かく書かれていた。簡単に説明すればこうだ。
シズは捨て子で果てしない山奥に住む狩人に拾われる。そして娘として育てられる。体の弱いシズはほぼ部屋から出なかった。狩人はジャモンが昔やっていた料理屋の常連だった。時は過ぎ、狩人はジャモンと再会。自分の死期を悟った狩人はジャモンに借金を肩代わりするからシズを引き取って欲しいと懇願する。そして今に至る。
「私が体が弱いって設定無理あるぜ」
「狩人の設定の資料もあるね。名前はアタカマ。そこそこな腕前の狩人。おじいさん。以上」
ざっくり過ぎる説明だった。シズは書類をペラペラめくった。
「ってかこの世界の人間じゃない私がこんなに簡単に養子なれるのか? 」
「実際なってるからね。これその戸籍の写し」
この世界にも戸籍といものはあった。ジャモンに見せた写しには ジャモンとシズがきちんと養子縁組が組まれていた。
「これも」
続けて見せてくれた紙も戸籍の写しだった。私とアタカマが親子だときちんと明記されていた。
「その戸籍はもうないみたいだけどね」
「偽装か! 」
「カーネスさんならできそうだ」
カーネスにはその説得力があった。シズは帰りたいと願っているのに、この世界で存在を許されている。
「カーネスさんはシズのことを"コイン"って言ったんだよね?」
夕食後お茶を飲んでいるとジャモンがシズに聞いてきた。
「うん。それが? 」
「ちょっと気になってね。それでシズとそっくりな男がシズをここに連れてきた」
「そうだよ」
「これは俺の仮定だけど、その男が今シズのいたニホンにいるんじゃないかな」
シズはお茶を飲む手を止めた。
「コインってね、こっちでは裏と表を表すのによく使うんだ。高く飛ばして手の甲の上に押さえつけて裏と表どっち? みたいな遊びもする」
「そういうの私のところでもあった」
コイントスだ。
「それと人がいつも見せない裏の顔を見せることを諺で『コインが裏返る』っていうんだ」
「コインが裏返る……」
「どっちが表で裏か俺は知らないけどね、君たちふたりは裏返ったんじゃない?子供じみた話だけど」
「いや、それしっくりくるよ。ジャモン」
同じ顔。男と女の逆の性。コインという比喩がよく合う。それならば、カーネスの仕事は『コインを裏返す』こと。理屈は後回しにして、裏返すことをカーネスに依頼したのがドッペルゲンガー。
「ジャモンの仮定で話を進めるとして、なんでそっくり野郎は私と入れ替わったんだ? 」
ジャモンはうーんと考えてくれる。
「……カーネスさんと同じ理由かな? 」
「カーネス? 」
「ロッパさんって逃げてるじゃない? 」
カーネスはヨンキョク(警察)から逃げている。カーネスと同類だとするとドッペルゲンガーもヨンキョクから逃げている。違う世界に逃げ込めれば捕まる心配はない。
「あいつそういえば死にたくないとかほざいてた」
「命が狙われるほどの罪を犯したのかな」
「けどあいつ城人だろ?ジャモン昨日、城人はエリートだって言ってたよな?」
「そうだね。けどだからこそ、逃げ道がなかったのかも」
「じゃあ犯罪者の逃亡のために私は利用されたってことかよ、おんどりゃあ」
「まだ犯罪者だと決まったわけではないよ、シズ」
ジャモンはそう言ったが、シズの中ではもうドッペルゲンガーは犯罪者で確定していた。そしてそいつが日本にいるとするならやっぱりカーネスを捕まえてどうにかするしかないようだった。やっぱり意地でもしがみついておけばよかったとシズは考えてみたが、それで帰してくれると思えなかった。実際逃げられたようなものだった。力の差があり過ぎた。カーネスを捕まえてからのことをしっかり考えなければならない、とシズは頭を抱える。
「けどシズにそっくりさんは随分金があったんだね」
「え?」
「だって俺の借金も肩代わりしてくれて、これからの生活費もびっくりするぐらいくれてる。城人っていうだけじゃ理由にならないぐらいのお金だよ」
「そうだよな」
罪滅ぼしにしてもシズをかなり優遇してくれている。ジャモンのような保護者まで付けてくれている。シズは叫びながら、立ち上がった。
「もうわけがわからなすぎるから風呂に入って寝る」
「風呂で寝ては駄目だよ」
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