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城人編
捜査二日目
しおりを挟む「よし、あと二日しかないからね。力入れていくよ」
朝になるとカラミンは復活していた。
「はい。カラミンさんも今日は頑張ってください」
カザンが真顔で言った。
「うん! 頑張るよ! 」
カザンの嫌味を見事にスルーした。宿を出て、拳銃の部品が見つかった現場に今日も行く。午後からはまた聞き込み。シズは暑いな、と心の中でぼやいていると女の悲鳴が聞こえ振り返った。
「ひったくりだっ! 」
シズが叫んだ方に走って行くと、女性が地面に倒れ、子どもが心配そうに女性にしがみ付いていた。親子のようだ。
「大丈夫ですか?」
女性はシズに何度も頷いた。
「ひったくりは? 」
子どもが指さす。背中が小さくまだ見えた。シズは全力疾走で走るとその背中に跳び蹴りを食らわした。ひったくりが前のめりでこける。すかさず腕を背後に回し拘束する。
「いっでぇ! 腕もげる! 」
「安心しろ。手加減してるよ」
遅れてカザンがやってきて、女性の鞄を拾う。
「本当に足がとてつもなく速いですね。カンダさん」
「そりゃどうも。カラミンさんは?」
「女性の方にいます」
「そう」
犯人を現地の四局に引き渡し、女性に鞄を返そうとしたが、どうやら足を捻ったらしく病院に運ばれたらしい。
「カラミンさんも付き添って行かれましたよ」
現地の四局にそう教えられ、シズとカザンは病院に行った。すると、廊下の長椅子でカラミンさんと女性が和やかに談笑していた。そしてカラミンさんが私達に気が付き手を上げる。
「フローラさん、鞄返ってきましたよ」
何が返ってきましたよだ、このアイス野郎、と憎しみを込めてシズはカラミンを睨む。
「どうぞ。念のため中身を確認してください」
「ああ、本当にありがとうございます」
フローラは何度も何度もお礼を言ってくれ、シズは恐縮した。
「あの、フローラ・スキャがここに運ばれたって電話があったんですけど!」
廊下の向こうで焦った男性の声が聞こえた。
「ウェルネルだわ」
フローラが、ウェルネルと呼ぶ。すると男はこっちを向いて走ってきた。
「フローラ! 大丈夫か! 」
「大丈夫よ、ウェルネル。捻挫しちゃったけど」
ウェルネルは包帯が巻かれたフローラさんの左足を見て眉を下げた。
「痛そうだな」
「大丈夫よ。盗られたものも返ってきたし、こちらのヨンキョクさん達が助けてくださったのよ」
「妻がお世話になりました! ほんとうにありがとうございます」
「いいえ、当然なことをしたまでですよ」
カラミンさんが優しい微笑みを浮かべる。お前何もしてないじゃん、シズは思った。
「シリマは? 」
フローラがシリマと呼ぶと、フローラの横からひょっこり出てきた。
「シリマ! 」
「パパ! 」
ウェルネルは息子を抱き上げる。
「怖かっただろ? 」
「いい子でしたよ、シリマ君。泣きもしなかった」
そうカラミンさんから聞くと、ウェルネルさんは息子をよく褒めた。シリマは嬉しそうに父親にしがみ付いた。
「それより、ウェルネル。仕事はいいの?今忙しいでしょ? 」
「カルセドニーさんが行ってこいって言ってくれて」
「もしかしてカルセドニー工場で働かれているんですか? 」
カラミンがウェルネルに尋ねる。昨日、シズ達は街を歩いていた時、大きい工場を見ていた。
「ええ。そこで鉄道や車の部品を作っています」
「パパは凄いプロジェクトのリーダーなんだ」
シリマがそう自慢すると、ウェルネルさんは恥ずかしそうにした。
「それは凄いですね。どんなプロジェクトなんですか? 」
「鉄道会社から依頼されたプロジェクトで。ちょっと特殊な部品を作っているんです」
恥ずかしそうだったが、誇らしげにカラミンに説明した。
「へえ。凄いですね」
カラミンは胡散臭い微笑みを浮かべる。きっと社交辞令だとシズは感じた。
「ウェルネル、仕事戻って。私は大したことないから。今日明日は忙しいって言ってたじゃない」
「そうだけどその足じゃ、家に帰れないだろう?シリマの相手も」
「それなら心配におよびません」
カラミンが立ち上がる。
「奥さんは私が責任持って家まで届けます」
こいつ捜査サボる気だなとシズとカザンは上司を殺気立つ。
「そして今日一日ぐらいうちの部下がシリマ君の子守りしますよ」
何言ってんだこいつ、とシズとカザンは殺気立つ。
「いや、でもカラミンさん僕たち仕事が」
さすがにカザンが口を出した。あと二日もないのに証拠が掴めていない。
「民間人を助ける。それが我々ヨンキョクのお仕事です」
「いや、それなら凄く助かるんですけど本当にいいんですか? 」
「いいですとも! 」
カラミンが元気に言った。
「すいません、ありがとうございます! 」
ウェルネルはシリマをシズに渡した。されるがままに、シズは抱き上げる。
「定時には帰れるようにお願いするんで! よろしくお願いします! 」
ウェルネルは直角に頭を下げると足早に去っていった。フローラは家までの簡単な地図を描くとカザンに渡す。
「じゃあ、奥さんは私と。君達、五時には送り届けてあげてよ。仕事もしっかりね」
カラミンはフローラを車いすに乗せて優雅に立ち去った。
「あの上司マジでやだ」
「同感です」
シリマは楽しそうにどこ行くの? と聞いてきた。ふたりは笑うしかなかった。
カラミンはフローラを家まで送り届けると、近くの公衆電話から電話をかけた。
「あ、四局のカラミンです。サンス副局長いますか? はい。お願いします。…………ああ、どうも。いや、まだ証拠は。それよりちょっと聞きたいことが。鉄道関連って何か新しいことする時って六局に報告いきますよね? …………そうですよね。それで何かプロジェクトがあるとか聞いてます? 特殊な部品を作っているとか…………ないですか。ええ、なら思ったより早く仕事が終わりそうです。まだ、確証はないですけどね。けど俺の予想が当たれば可哀想な家族が出来ると思います」
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