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城人編
九十七期生の悲劇(増える味方)
しおりを挟む山籠もり研修を一週間前に控えた頃だった。アカクラスのトイサキレウ教官にルバは呼び出された。いつも壊れた腕時計をはめていてこの人もちょっと変わった人にルバには見えた。周りに人がいないか念入りに確認して、ルバは個室に連れていかれた。
「お前が、元アルガー塾生だと聞いた」
「そうですけど……」
「その塾がどんなだったか、教えて欲しい」
「え? 」
「お前の同級生を悪く言うのはよくないと分かっている。けど言わせて貰う。あいつらはおかしい」
ルバは嬉しかった。気が付いてくれる人間がいなかったから。ミトスはあいつらが苦手だ、で終わらせていたし、根本的にスフェン達をどうにかしようとなんて考えていなかった。それでもミトスがいてくれて、ルバはよかった。ミトスがいなければ、ルバの学校生活はもっと地獄だった。
教官という頼りになる大人がスフェン達の事を気が付いてくれて、ルバは嬉しかった。ルバは塾であったことを全て話した。途中から泣き出した。トイサキレウ教官は黙って最後まで聞いてくれ「よく頑張ったな」とルバの頭を撫ぜた。そして、クレオ教官もアルガー塾生の事を危険視している事を教えてくれた。
「よく話してくれた。後は俺達に任せろ」
心強かった。次の日トイサキレウ教官は体調不良で休んだ。すると廊下でクレオ教官がすれ違いざまこっそり、ルバに教えてくれた。
「トイサキレウが今日アルガーに会いに行っているわ」
「え? 」
「何か証拠を掴めればいいんだけど」
ルバもそう思った。次の日、食堂でスフェンが俺に話しかけてきた。
「ルバ。お前教官に何かありもしないこと吹き込んだのか? 」
冷たい目でルバ見下ろしてきた。ルバはしらを切った。
「知らねぇよ」
スフェンはそれ以上俺に言わなかった。ルバの横にいたミトスに向かってスフェンは言った。
「同情か何かしらないけど、いい加減ルバと関わるのやめた方がいいよ」
そう言って去って行った。ミトスは少しルバを見つめて「同情じゃないから」と言った。
「俺、ルバがいなかったら二人一組の時組む相手いなくなるから」
「もっと他に言う事あるだろうが」
「けどなんであいつらはあんなにルバに対して風当たりが強いんだ? 」
ルバはその日の夜、部屋でミトスにアルガー塾の事を話した。ミトスは最初の方はいつも通りだったが、途中からしっかりとルバの話に耳を傾けた。
「じゃあ、そのアルガーって男は戦争をやりたいって事か? 」
「そうだと思う。それでインデッセにいる神を奪いたいようだ。まあ、まだいるっていうのはアルガーが勝手に言っているだけで、スフェン達を焚き付けるための虚言だと思うが」
ミトスは教科書を開くと神の挿絵を見た。
「インデッセ、神……」
「どうした? ミトス? 」
「なんか、少しだけ分かりそうな気がした」
「は? 何が? 」
「自分の事が」
「え? 」
そこで部屋のドアがノックされた。ミトスが出ると寮婦だった。手紙だった。ミトスが封を開けて少し読むと俺に渡した。
「ルバにだ」
「え? 」
「封筒は俺宛だけどね。差出人も出鱈目。トイサキレウ教官から。念には念を入れたんじゃないか? ルバ宛の手紙だとスフェン達がもしかしたら盗むかもしれないし」
ルバは手紙を読んだ。最初の三行はミトス宛で、この手紙をルバに渡せと書いてあった。
直接話したいが、カザン達が敏感になっているように感じるから手紙にした。読んだら千切って捨てろ。できたら燃やせ。
アルガーに会ってきた。塾はまだ続いているようだ。話したがあいつはとんだタヌキだ。頭がいい。アルガー塾生に極端な異常性があるとかなり突っ込んだが、かわされた。少し脅しといた。あいつを捕まえられればいいんだが証拠は掴めなかった。近所の評判もいい。もう少し調べる。時間がかかりそうだが、必ず本性を炙り出す。アルガーはスフェン達と密に連絡をとっているようだ。お前に何かするかもしれない。俺の方も目を光らせておくが、気を付けてくれ。
読み終えるとルバはすぐに手紙を燃やした。手紙を燃やす事ばっかりに気がいってミトスの発言の事は、ルバの頭から消えていた。
そして悲劇の山に行く日を迎えた。
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