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逃亡編
再会
しおりを挟むアベンチュレの王都ペタ。帰ってきた。帰って来てしまったという気持ちも、シズには正直ある。これから先の事を考えると胃がきゅっとしまる。胃を押さえる。
「どうした? 飯の食べ過ぎか? 」
「もっとデリケートな理由です」
船を降りながら胃を撫ぜる。そしてペタの地に足を再びおろした。
「カンダ」
「はい? 」
セドニが少し先に目をやる。シズがその視線の先をたぐれば、車があった。そしてアシスとリョークが立っていた。リョークにいたっては腕を組んでシズを睨んでいる。仕方ない。シズは速足で二人の所へ行く。そして立ち止まる。二人の目を交互に見る。二人はシズを見る。シズはトランクを地面に置く。そして頭を下げた。
「迷惑かけてごめんなさい」
「本当にね」
「本当だ」
二人の冷たい声が、シズの頭の上に落ちる。そして突然顔を両手で挟まれ持ち上げられた。アシスの顔が、シズのすぐ近くになった。アシスは手を頬から離す。
「ごめん」
「馬鹿」
「ごめん」
「許す」
アシスが抱きしめてきた。
「本当に馬鹿ね。反省して暫く謹慎しなさい」
「はい」
アシスを抱きしめ返した。
「本当にこの馬鹿野郎が! 」
リョークが、シズ達二人をまとめて抱きしめる。
「え、あんたもこの流れにのるの? 」
シズが思わず言ってしまった。
「何ナチュラルに抱きしめてんのよ」
アシスは冷たく言う。
「だって俺達仲間じゃん! 」
「楽しい所悪いけど、早く車乗れ」
運転席からセッシサン副局長が煙草を吹かしながら顔を出した。
「カンダ、元気そうで何より」
「本当にすいませんでした」
「いや、いいよ。お前のせいだけじゃないし。早く乗れ。セドニも乗っていくだろう? 」
いつの間にか後ろにセドニがいた。
「俺は歩いて戻るので。この馬鹿よろしくお願いします」
セドニは抑揚なく言って立ち去った。背中を見送っているとセッシサンに急かされ、シズは車に乗り、八局棟に戻った。シズは、懐かしいと思ってしまった。刑務所が懐かしいとかどうなんだろう、と唸る。シズ達が、八局棟に入るとすぐにハクエン局長とカラミンが立っていた。ハクエンに殴られた日の事をシズは、思い出す。死ぬほど恥ずかしくて申し訳ない。謝罪の言葉が上手く口から出ない。シズはただ、黙って頭を下げた。足音が聞こえた。ハクエン局長の黒いブーツが視界に入る。そして背中を優しく二度叩かれた。
「バライトからあらかた経緯は聞いた。だからまあ、怒りはしない。けど礼を言え。カラミン達がコーネス・カーネスを捕まえたぞ」
シズはゆっくりと顔を上げる。
「コーネス・カーネスを捕まえるためにお前はヨンキョクになったんだろう」
「はい」
シズはまた、頭を下げる。
「ありがとう、ございます」
「いいよー」
カラミンさんが能天気に言った。
「ってかカンダ。逃亡で少しはやつれてくると思ったけど太った? 」
え。シズはショックを受ける。
「それ私も思った」
シズは自暴自棄になっていため、筋トレをサボっていた。
「まあ、しっかり鍛え直しなさい。それで、」
ハクエンの声が厳しく変わる。
「コーネス・カーネスと話すか? 」
背中を伸ばす。
「はい。お願いします」
一年の少し振りだった。コーネス・カーネスを捕まえるために、シズはヨンキョクになった。そして元の世界に帰るために。けれどもう元の世界に帰っても、死んでしまうから戻る意味がない。どうしてこんなややこしい事になったのか。理不尽なややこしさの言い訳をシズは知りたかった。けどもう、絶望は探さない。
「九局が今尋問している」
ハクエン局長がノックする。
「はーい、どうぞ」
バライトののんびりした声が聞こえた。ハクエンがドアを開ける。そこにはカルカ副局長と座っているバライト局長の背中。その向こうに、カーネスがいた。「コイン」の事実を知った後だからだろうか、シズは怒りがすぐに沸いて来ない。
「選手交代」
バライトが席を立ち、シズに座るように促す。ドアが閉まる。入ってきたのはシズとハクエンだけだった。シズは椅子に座る。・カーネスと向かい合う。闇に近い深く濃いネイビーの髪色。三白眼。
「久しぶり」
シズがそう言えばカーネスは鼻を鳴らした。
「俺を捕まえるために四局になるなんて、情熱的だな」
「何? 嬉しかったのか? 」
「馬鹿だと思っただけだ」
もし、自分がカーネスを捕まえられたとしても、結局受け止められない理不尽をぶつけられただけだ。意味がない。確かにカーネスから見れば馬鹿だろうとシズは思った。
「けど、四局になったおかげであんたが私に『二度手間』って言った意味が分かった」
あの日、カーネスは「二度手間」とい言葉の時、シズの顔をしっかりと見た。終戦記念日の話をしていた。
「お前は死ぬべきだった」
カーネスは軽蔑を込めて三白眼で、シズを睨む。
「じゃあてめぇが今殺せよ」
カーネスの手が伸びる。ハクエンがカーネスの腕をデスクに押さえつけて止める。
「挑発するな! 」
ハクエンが怒鳴る。
「大丈夫だよ。ハクエン。鎖で繋がれているんだからカンダまで手が届かないよ。焦り過ぎ」
バライトが歯茎を見せ、にたにたした。
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