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過去編
城の人々と、ミトスの運命
しおりを挟む〔ミトスとシズが入れ替わる三か月前〕
ベグテクタ、王都ジルコン。
ジルコンに着いてすぐミトスはプライトにしか解読できない手紙を速達で送った。やばくなったからインデッセから逃げたこと。そして当分身を隠すこと。本星はインデッセで間違いなさそうだと。
ミトスはジルコンでは男の恰好をした。髪も短く切った。サングラスをかけた。
人通りの多い表通りに面する店にミトスは入った。そこはオルゴール専門店だった。客はいない。若い男が暇を持て余し、クロスワードをしていた。解けないのか、鉛筆を回している。ミトスは声をかけた。
「おいしいスープの作り方を教えて欲しい」
男は鉛筆を止めてミトスを見た。そして鉛筆で緑のドアをさした。
「入ってすぐ左へ。三つめのドアを開けて階段を。そしたらまたドアがあるから、四回続けてノックして一拍置いて、五回目を」
「ありがとう」
ミトスは店の奥にある緑のドアを開け、入る。そして言われた通り、三つめのドアを開けると階段があった。地下へと続いているらしく明かりは小さく暗い。降りて行くと、ミトスの身長の半分くらいの高さの小さいドアがあった。四回ノックし、一拍おいて五回目。五秒ほど待つとドアがあいた。
「ああ、あんたか。待っていたよ」
ウヴァロだ。三十代前半のオレンジに近い赤髪で、いつも眠たそうな顔をしている。
「もう来てるよ。不機嫌だから気を付けて」
「わかった」
ミトスは笑いながら頷いた。入口をくぐると部屋に入る。ドアの大きさからは想像できない程天井が高い。ウヴァロはドアを閉めると部屋の奥を指差した。十年ぶりなのにすぐに彼だと分かる。足を組んでソファに座る彼はびっくりするぐらい大人になっているのにミトスは懐かしさに満たされた。ゆっくりとコーネスに近づく。ミトスの足音に気が付き、コーネスは振り返った。ウヴァロの言う通り不機嫌そうな顔だった。
「しつこい客ってあんたかい? しつこい上に約束の時間に遅れるって僕のことなめてる? 」
「そんなはずないよ」
サングラスをかけた男がフランクな言い方に、コーネスはさらに不機嫌になった。コーネスが文句を垂れる前にミトスが弁解した。
「急いで来たさ。ずっとずっと会いたかったんだから」
ミトスはサングラスをはずすと、コーネスに微笑む。コーネスは不機嫌な顔を三秒崩さず、四秒後に目を見開いた。そして震えながら口を開く。
「ま、さか……」
コーネスはソファから立ち上がる。
「言ったでしょ? 大きくなったら会いに行くって」
ミトスは微笑んで両手を広げた。コーネスは理解が追い付かず、茫然とミトスを見つめる。待ちきれなかったミトスはコーネスに飛びついた。コーネスはよろめきながらも受け止める。
「ずっと会いたかったんだ、コーネス」
「お前、死んだんじゃ……」
「色々あってね。全部話すよ。聞きたいこともある。けど、とりあえずもっと俺との再会を喜んでよ」
コーネスの前だとミトスは自然と幼くなった。コーネスはスイド家の日々が蘇り、全身に流れた。そしてやっとミトスを抱きしめた。
「……大きくなって良かったな」
「なんか老けたね、コーネス」
「うるさい」
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