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過去編
城の人々と、ミトスの運命
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〔ミトスとシズが入れ替わる前日〕
月が浮かんでいる。この世界で見る月はこれが最後だとミトスは眺めた。その月は最後にふさわしく、雲を寄せ付けずに輝いていた。
「インデッセは神を持っていると? 」
月明かりの中、アンドラにミトスは報告をした。
「ええ。持っているのは事実です。隠し場所までは分かりませんでしたが。けれど神を動かすことはできないようです」
「なぜ? 」
「条件が揃っていないようで。その条件が分かる前に逃げてしまったもので」
ミトスは条件がシズであることを主に伝えなかった。伝えておけばもしもの時、どうにかする対策ができる。それでもミトスは伝えなかった。なぜだと言えば、それはきっとうまく言葉にできないが、自由のためだった。ひとりの自由のためだった。
「私はもうインデッセの王にも、神の団にも近づけれません。顔が割れています。城内からインデッセのスパイを捜すべきかと」
「そうだね。考えてみるよ。いい機会だ。ゆっくり休むといい。金が必要ならいつでも言ってくれ。また、プライトを通して連絡する」
「はい」
最後の別れであることをミトスは微塵もにおわせなった。
メトの部屋のバルコニーに降り立つ。窓をノックする手を一瞬とめた。いつもよりミトスは緊張していた。手に力を入れて、優しく窓をノックする。窓が開くとメトは愛しそうにミトスを見上げたまらない笑みを零した。叫びそうになるのをあっと飲み込み、囁くように名を呼んだ。
「ミトス」
呼ばれた自分の名を聞いてミトスは泣きそうになった。
「さあ、入って」
メトは大きく窓を開けたが、ミトスは動かなかった。メトは不思議そうにした。
「ミトス? 」
「メト様、お別れです」
ミトスは最初に別れを口にした。最初に言わなければ言わずに消えてしまいそうだった。メトは言葉が出ずに、うろたえた。
「あなたにだけです。お別れをいうのは。アンドラ王にも伝えていません」
「な、なぜ」
「もうわたしはこの世界で生きられないんです。こことは違う世界に行きます」
「違う世界って、どこへ? 」
「こことは違う太陽がのぼり、こことは違う月が沈む世界です」
ミトスは怒られると思った。けれどメトはしっかりとミトスを見上げ、そうと零した。ミトスはびっくりした。
「信じるのですか? 」
「嘘なの? 」
ミトスは首を横に振った。
「信じるわ。何かの比喩なのかもしれないけど、事実だと思って信じるわ。それほどに私は貴方が大切なの」
メトはミトスの胸元を握った。
「もし、行かないでって言ったら、また会いにきてくださる? 」
ミトスは首を動かさない。
「ほら、貴方は誠実。だから信じるわ」
メトはミトスの胸から手を離す、その手を思わずミトスは握った。
「勝手なお願いがあります。頭の片隅に置いておいて欲しいのです」
「……なに? 」
「もし、私とそっくりの女が現れ、もし城と関わっていたら、」
インデッセに行って神を起こし、この世界から追い払えと言ってください。
「その子は国が関わる大きな悪事に巻き込まれてしまうでしょう。そしたら他国に逃がしてあげて欲しいのです」
インデッセに連れていって欲しい。
「インデッセ以外に」
ミトスは本心を押し隠した。コーネスはミトスに人生に使命感を持つなと言った。ミトスはいくつも使命を持たされ運命を翻弄された。叶うはずの夢も叶わなかった。それを自分のコインには最初から背負わしたくなかった。だからできるだけ逃げ道を残しておこうと思ったのだ。慈悲に近いかもしれない。
「わかりました。覚えておきます」
ミトスはメトの手を離した。
「あなたに会えてよかった。それが私の人生の救いでした」
メトはミトスの顔を見たが、月光が眩しくよく見えなかった。
「あなたに会えたから、この世界にいてよかったって思えるんです。だからあなたに生きていて欲しい。つらくても。俺も生きますから。俺の命が例え無意味だったとしても。俺は生きていきます」
メトは見えないミトスの顔の頬に手をやった。
「無意味なんかであるはずがないわ。そんなこと言わないで」
「ごめんなさい」
「ミトス、私のお願いもひとつ聞いてくださる? 」
「なんでしょう? 」
「口づけをください」
ミトスは目を見開く。メトはミトスの頬から手を離すと瞼を閉じた。ミトスはメトの肩に手を置く。そして迷いを挟みながら、ゆっくり唇を近づけた。メトの額にキスをした。メトは瞼を開ける。そして寂しそうに微笑んだ。
「ずるい人」
ミトスは謝ることもできなかった。ミトスは太陽のブローチを出すとメトに握らせた。
「貰ってください。いらなければ捨ててください」
「捨てるわけないでしょう」
ミトスはメトから手を離すと一歩一歩後ろに下がった。メトは思わず前に出た。そしてミトスは言った。
「一度でいいから、太陽の下であなたを美しいと思いたかった」
メトの胸は締め付けられた。
「さようなら」
ミトスは月夜の下に姿を消した。メトはブローチを握りしめてうずくまり、静かな夜の中で涙を落とした。孤独の居場所は太陽のそばなのかもしれない。
月が浮かんでいる。この世界で見る月はこれが最後だとミトスは眺めた。その月は最後にふさわしく、雲を寄せ付けずに輝いていた。
「インデッセは神を持っていると? 」
月明かりの中、アンドラにミトスは報告をした。
「ええ。持っているのは事実です。隠し場所までは分かりませんでしたが。けれど神を動かすことはできないようです」
「なぜ? 」
「条件が揃っていないようで。その条件が分かる前に逃げてしまったもので」
ミトスは条件がシズであることを主に伝えなかった。伝えておけばもしもの時、どうにかする対策ができる。それでもミトスは伝えなかった。なぜだと言えば、それはきっとうまく言葉にできないが、自由のためだった。ひとりの自由のためだった。
「私はもうインデッセの王にも、神の団にも近づけれません。顔が割れています。城内からインデッセのスパイを捜すべきかと」
「そうだね。考えてみるよ。いい機会だ。ゆっくり休むといい。金が必要ならいつでも言ってくれ。また、プライトを通して連絡する」
「はい」
最後の別れであることをミトスは微塵もにおわせなった。
メトの部屋のバルコニーに降り立つ。窓をノックする手を一瞬とめた。いつもよりミトスは緊張していた。手に力を入れて、優しく窓をノックする。窓が開くとメトは愛しそうにミトスを見上げたまらない笑みを零した。叫びそうになるのをあっと飲み込み、囁くように名を呼んだ。
「ミトス」
呼ばれた自分の名を聞いてミトスは泣きそうになった。
「さあ、入って」
メトは大きく窓を開けたが、ミトスは動かなかった。メトは不思議そうにした。
「ミトス? 」
「メト様、お別れです」
ミトスは最初に別れを口にした。最初に言わなければ言わずに消えてしまいそうだった。メトは言葉が出ずに、うろたえた。
「あなたにだけです。お別れをいうのは。アンドラ王にも伝えていません」
「な、なぜ」
「もうわたしはこの世界で生きられないんです。こことは違う世界に行きます」
「違う世界って、どこへ? 」
「こことは違う太陽がのぼり、こことは違う月が沈む世界です」
ミトスは怒られると思った。けれどメトはしっかりとミトスを見上げ、そうと零した。ミトスはびっくりした。
「信じるのですか? 」
「嘘なの? 」
ミトスは首を横に振った。
「信じるわ。何かの比喩なのかもしれないけど、事実だと思って信じるわ。それほどに私は貴方が大切なの」
メトはミトスの胸元を握った。
「もし、行かないでって言ったら、また会いにきてくださる? 」
ミトスは首を動かさない。
「ほら、貴方は誠実。だから信じるわ」
メトはミトスの胸から手を離す、その手を思わずミトスは握った。
「勝手なお願いがあります。頭の片隅に置いておいて欲しいのです」
「……なに? 」
「もし、私とそっくりの女が現れ、もし城と関わっていたら、」
インデッセに行って神を起こし、この世界から追い払えと言ってください。
「その子は国が関わる大きな悪事に巻き込まれてしまうでしょう。そしたら他国に逃がしてあげて欲しいのです」
インデッセに連れていって欲しい。
「インデッセ以外に」
ミトスは本心を押し隠した。コーネスはミトスに人生に使命感を持つなと言った。ミトスはいくつも使命を持たされ運命を翻弄された。叶うはずの夢も叶わなかった。それを自分のコインには最初から背負わしたくなかった。だからできるだけ逃げ道を残しておこうと思ったのだ。慈悲に近いかもしれない。
「わかりました。覚えておきます」
ミトスはメトの手を離した。
「あなたに会えてよかった。それが私の人生の救いでした」
メトはミトスの顔を見たが、月光が眩しくよく見えなかった。
「あなたに会えたから、この世界にいてよかったって思えるんです。だからあなたに生きていて欲しい。つらくても。俺も生きますから。俺の命が例え無意味だったとしても。俺は生きていきます」
メトは見えないミトスの顔の頬に手をやった。
「無意味なんかであるはずがないわ。そんなこと言わないで」
「ごめんなさい」
「ミトス、私のお願いもひとつ聞いてくださる? 」
「なんでしょう? 」
「口づけをください」
ミトスは目を見開く。メトはミトスの頬から手を離すと瞼を閉じた。ミトスはメトの肩に手を置く。そして迷いを挟みながら、ゆっくり唇を近づけた。メトの額にキスをした。メトは瞼を開ける。そして寂しそうに微笑んだ。
「ずるい人」
ミトスは謝ることもできなかった。ミトスは太陽のブローチを出すとメトに握らせた。
「貰ってください。いらなければ捨ててください」
「捨てるわけないでしょう」
ミトスはメトから手を離すと一歩一歩後ろに下がった。メトは思わず前に出た。そしてミトスは言った。
「一度でいいから、太陽の下であなたを美しいと思いたかった」
メトの胸は締め付けられた。
「さようなら」
ミトスは月夜の下に姿を消した。メトはブローチを握りしめてうずくまり、静かな夜の中で涙を落とした。孤独の居場所は太陽のそばなのかもしれない。
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