211 / 241
平和編
一矢のてだて
しおりを挟む「抹消したい物を悪にしただけだ」
バライトはどすんとやっと椅子に座った。掻きむしり過ぎた髪はボサボサだった。
「生きていくのにルールは大切だ。それが窮屈であってもその窮屈のおかげで生きやすくなる。ルールがあるってことは自分で決めなくていいからな。だが、正しいルールを決めることは死ぬほど難しいんだ。それを多くの人間は理解してくれない。世の中馬鹿ばっか! 」
「バライト暴言は慎め」
ハクエンがまた宥める。
「おい! もうこっそりお前ら、アルガー塾長殺しにいっちまえ! 」
バライトは落ち着くどころか噛み付いてきた。
「あのな、バライト。秩序ある世界を守るには、殺してもいい奴でも勝手に殺してはいけない。秩序とはそういうものだ。それくらい頭のいいお前なら分かってるだろう」
「知ってるさ! 秩序は法をつくる! 法が国を創る! そもそも国なんかにカタチはない。同盟はまぼろし。国もまぼろし。俺達はまぼろしをつくってまぼろしに踊らされまぼろしの中を生きている。ぜーんぶまぼろし! ぜーんぶだ、全部! 」
「これはまた、元も子もないことを、バライト局長」
セッシサンは笑うしかない。カルカがため息を吐いた。
「局長のおっしゃっていることは正しいですが、今それをいっても現状は最悪から変わりません。しいていうなら、まぼろしの中で多くの人間が死ぬということでしょう」
カルカの言葉に部屋は静かになる。
「まぼろしの中に理性があります。これは理性でまぼろしを守ろうという会議です。まぼろしがなければ人の世はないのでしょう? 私達の仕事もない。けれどまだまぼろしは消えていない。仕事はあります。ふててないで仕事しましょう」
カルカに叱られ、バライトはやけくそから抜け出した。
「カルカはまるでお母さんだな」
セッシサンが褒める。
「やめてください。キショイです」
「傷つく。カルカなんか猫舌のくせに」
「猫舌は悪口にはなりませんよ」
バライトはテーブルを叩く。
「なにかないかカルカ? 一矢を報いるてだては? 」
「インデッセを今から口や脅しで止めても無理でしょうね。こっちを理解する気はない。ヨール王もきっと揺るがない。王の意思を知る機会はもうないですよ」
カルカはそうとしかすぐには言えなかった。意思がわからないというのは厄介だ。どうしてやればいいかわからない。
「やはり直接止めるには、機密手配人を使うのがいちばんいい。インデッセの許可がいらないからな」
シプリンが降り出しに話を戻した。すると、アザムが手を上げた。
「なにかあるのかアザム? 」
バライトが尋ねる。
「ミトス・スイドを機密手配人にしたらどうでしょう? 実は九十七期生に生き残りがいたという理由で。カンダと同じ顔ですし。カンダはインデッセ城にいるはずです。城に乗り込むにはいい理由になりませんか? 」
「悪くはないな」
シプリンが頷く。いや、とカラミンは懸念した。
「それでも、二局四連会議で銃の事を出してくるだろう。それを阻止することを考えないとミトス・スイドを機密手配人にするのは厳しい。なぜ我々が、ミトス・スイドがインデッセ城にいることを知っていることを問い詰められたら芋づる式に全部話さないといけない」
また沈黙が流れる。カザンはポケットに手を入れる。そして反対の手を上げた。
「カザン? 」
アシスが呟く。カラミンが黙ってカザンを見た。
「ひとつ、案があります」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる