異界の相対者

文字の大きさ
224 / 241
平和編

偶然たる幸運

しおりを挟む



 あ、ティアラをしたままだった。思い出したシズは、はずそうと思ったら、仮面の男が現れた。男は問答無用で拳を振り上げてきた。
「あんなにお姫様扱いだったのに、随分扱いがガサツになったな。逆ギレか? 」
「事態が事態ですので。少し眠っていただこうかと」
 穏やかな口調と共に、再び殴ってき、シズは背面に反って避けると、そのままブリッジをしてバク天を決めながら顎を蹴り上げた。そのまま手をついて、立ち上がるとふらついた相手の腹に一発蹴りをいれ引き、すかさず懐に飛び込むと腹を殴った。男は咳き込みながら倒れた。シズはティアラをはずすと、男の頭巾の上から無理矢理かぶせた。
「かわいそうだからそれあげる」
 やっと、式場のひとつ下、シズが軟禁されていた部屋の階に来れたが、仮面の男達がぞろぞろと沸いてくる。
「お前ら今までどこに隠れてたんだよ。どんだけうじゃうじゃいたんだよ。悪寒が走るぜ」
 シズは黒光りのあれを想像する。
「これから先は行かせません」
 シズは人数を数える。五人、いや六人いる。このまま下にいくには、やっぱり隠し通路を使った方がよさそうだとシズは考える。右足を下げる。敵が距離を詰めてくると、腰を入れて顔面を狙って蹴り上げたが避けられた。もう一度、回し蹴りで顔を狙うふりをして、もう一周回って、横腹を蹴り飛ばすと、仲間の方へ飛び、倒れた。途端、後ろから羽交い絞めにされた。両肘を閉めて、後頭部で敵の顔面を打ち付けてやると拘束が緩んだ。その間に正面からもうひとり来た。左手で背後の奴の右手を取りながら、正面の奴の蹴り飛ばし、
「おりゃあああっ! 」
 背後の奴をそいつの上にシズは投げ飛ばした。
「くそっ! 」
 一応、シズに杖を使ってこなかったようだが、しびれを切らし、仮面の男が杖を振り下ろしてきた。シズは頭を抱え、左の膝を床につけてしゃがみ、杖を攻撃を左によけ、右足を敵の足の間にいれる。そして右手を上から大きく振りかざすと、相手の股間に振り上げた。男は声にならない叫びを上げながら膝が曲がった時を逃さず、足を引っ張り背後に倒れさせた。すぐさま立ち上がると、最後のひとりの背中に回る。
「人生二回目はお前だ」
「え? 」
 手を回し、男の腰の前でしっかり組むと持ち上げ、そのまま反り投げる。尻もちをつくことなく、するりと立ち上がる。前より綺麗に決まった、ジャーマンスープレックス。
「やっべ、今の超カッコイイ」
 シズは床に倒れている人数を数える。五人。ひとり逃げたか。部屋に入ると、まっすぐ本棚の方へ行く。深呼吸をする。やはり今日は一段とそわそわする。式の前に、頬の内側を噛んでいた。しょぼい痛みだが、地味に気になる。これで正気を保っていられるだろうか。隠し扉の通路を開ける。背後に人の気配がした。仮面の男が花瓶を振り上げていた。シズはとりあえず頭を守ろうと腕で覆った。痛みを待ったが、来ない。そして花瓶が割れる音に遅れて、どさりと人の倒れる音がした。床に仮面の男が倒れている。その後ろに、仲間であるはずの仮面の男が立っていた。
「本当にビビるぐらいに、ミトスにそっくりだな」
 敵であるはずの男は、まじまじとシズを見て、仮面と黒の頭巾をはずした。そこから鮮やかな色の髪が見えた。月明かりでははっきりと言えないが、オレンジの髪だった。
「お前、ルバ・ソーか? 」
「お前は、シズ・カンダだな。サルファーから聞いたよ。ミトスのそっくりちゃん」
 ルバは微笑んだ。そして開いたドアの方を振り返る。
「アベンチュレのヨンキョクが来てる。お前を助けに」
「お前はどうしてここに? どうやって紛れ込んだ」
 再び私をみたルバは微笑みを崩さない。冷たいよな、諦めたような、悟ったような、狂ったような、ピエロみたいな微笑だ。
「神の団の男をひとり捕まえてね。入れ替わった」
「そいつ、生きてるのか? 」
「ああ。閉じ込めてるだけさ」
 そしてシズに指をさした。
「それ、隠し通路? 」
 シズの後ろを指さした。
「ああ。ここから下に行けば、外に出れる。一緒に逃げるか? 」
 隠し通路をさしていた指を、ルバは上に向けた。
「あいつはまだ、てっぺんにいるだろう? 」
 カバンサがアルガーだと分かっている。ここにいるのだから当たり前だろう、とシズは考える。
「運よく今のあいつの素性が分かってね。やっとここまで来た」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...