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護る者達
護る者達
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ドラモント領の主力部隊の殆どは討伐に向かっている。
現在、この領都はもう一人の副団長クライヴが領都内の防衛を担っている。
そして、傭兵ギルドの方は副ギルド長が率いる『烈火の妖精』を中心とした傭兵達が領都周辺の防衛を担う。
こちらも、大討伐組と同様、騎士団と傭兵団達の協力が不可欠だ。
大討伐隊が出発した翌日。
傭兵ギルドのギルド館に詰めていた『烈火の妖精』の団長オーレリアは、ドラモンド領騎士団副団長のクライヴの訪問とその内容に難しい顔をしていた。
傭兵団『烈火の妖精』は女性でメンバー構成された珍しい傭兵団だ。もちろん団長であるオーレリアも性別は女である。
その筋骨の隆起はギルド長エイベルには劣るものの、そこらの男共に負けてはいない。
傍らに置かれている大弓と腰に下げられている幅広の剣。
シルバーに近い金の髪は細かく波打ち、顎程で切り揃えられている。
「ーーで、朝の見廻りでやっとこさ気付いたって事かい?」
ギルド館の応接室の一つ、その部屋のソファでふんぞり返り、頭をかきながら、ぞんざいにオーレリアは向かい側に座す壮年の騎士に問い返す。
「その通りだ。」
壮年の副団長は重々しく答える。
オーレリアはこっそりため息をつく。
ニガテだ……
オーレリアは、このお堅い副団長が苦手である。
もう一人の若い方の副団長はノリが良く話しやすいのだが……
目の前に座る副団長は若い方とは正反対でお堅い…
現に今も、領都を護る防御の魔晶石がひび割れている事の報告の合間に、幾つか『女性のたしなみ』についての小言が入ってくる。
「見廻りの兵士は、小さな音を聞いた者もいるようだが、音の出所に確信はなく、闇夜の暗さもあり、いつからヒビが入っていたかもわからない。…もう少し、足を閉じたらどうだ?」
表情を変えず、クライヴは言う。
それを無視し、
「で、何でヒビが入ったんだい?調べたんだろ?」
腿にひじをのせ、手を組みながら前のめりに問う。
「元々、最も古い魔晶石ではあったが、微かだが、外部からの魔力の気配が残っていた。と、言ってもかなり微量だが。…もう少し、襟のある衣類を身に付けてはどうだ?胸が見えるのは問題ではないか?」
胸ったって、筋肉に変わりつつある薄いモノだし、見えてるって、半分以上は確実にアーマープレートで隠れている。
世の中には、もっと際どいモノを着るご令嬢、ご婦人方もいるはずではないのか?
なのに、この程度で小言を言われるとわ……
「…その気配は、ヤバイのかい?」
またも小言を無視し、そのままの姿勢で問う。
クライヴの手が、無意識だろう、鼻下の整えられた髭に触れる。
「危険かどうかはわからない。ただ、絶対に侵入者がいない、とは断言できない。」
「単に、耐久性が落ちて中の魔力に耐えきれなくなっただけじゃないのかい?一番古いんだろ?」
「そう確信が持てるなら、そう報告しているし、注意換気に来てはいない。」
まぁ、その通りだろうね…
オーレリアは息を吐き、ソファーの背もたれに体を預けると天井を見つめる。
夜に見廻りを担当した傭兵団からは、不審者の報告は受けていない。
あったとしたら、娼婦を巡っての小競合いを見廻りの兵士が止めに入っているのを見た程度だ。
その事について、クライヴが何も言わないということは、問題が無いと言うことだろう。
「わかったよ。とりあえず、うちのモン達には見たことの無い奴がいないか、不振な行動をしている奴がいないか注意するように言っておくよ。」
「よろしく頼む。」
クライヴは頭を下げる。
オーレリアはあからさまに顔をしかめる。
「一応、領主様がいない間は、騎士団じゃ、あんたが一番偉いんだろ?そう簡単に頭を下げるもんじゃ無いんじゃないかい?」
「こちらの不手際で報告は遅れ、状況もはっきりと掴めておらず、そちらにも手間をかけさせるのだ。頼む以上、頭を下げるのは普通ではないのか?」
顔を上げたクライヴは、さも当たり前の様に言う。
しかし、王都や他国でも仕事をした経験のあるオーレリアにとって、クライヴの様な行動をとる騎士や貴族は珍しい方だ。
大抵の騎士や貴族は傭兵を見下げる傾向がある。
相当名が知れ渡り、その実力も一国を相手にできるほどのモノならば、別かもしれないが……
そんな傭兵団、いるものではない。
(ここは、この大討伐があるお陰か…)
オーレリアは納得する。
大討伐で傭兵、騎士、領民が協力し合うことで、互いの信頼が培われている……
他の領地や国ではないことだ。
(あ~、隣もそうかな……)
オーレリアは隣領を思い浮かべる。
が、思考を止める。
「まぁ、いいさ。この討伐期間は持ちつ持たれつだしね。」
「では、何かあれば、よろしくお願いする。」
クライヴは、ソファーから立ちり、黙礼するとドアノブに手をかける。
と、振り返り、
「…最近、暖かいとは言え…」
「?」
「女性は、体を冷やすものではない。なにか羽織った方が…」
「さっさと帰んなっ!!!」
オーレリアはたまらず声を張り上げた。
現在、この領都はもう一人の副団長クライヴが領都内の防衛を担っている。
そして、傭兵ギルドの方は副ギルド長が率いる『烈火の妖精』を中心とした傭兵達が領都周辺の防衛を担う。
こちらも、大討伐組と同様、騎士団と傭兵団達の協力が不可欠だ。
大討伐隊が出発した翌日。
傭兵ギルドのギルド館に詰めていた『烈火の妖精』の団長オーレリアは、ドラモンド領騎士団副団長のクライヴの訪問とその内容に難しい顔をしていた。
傭兵団『烈火の妖精』は女性でメンバー構成された珍しい傭兵団だ。もちろん団長であるオーレリアも性別は女である。
その筋骨の隆起はギルド長エイベルには劣るものの、そこらの男共に負けてはいない。
傍らに置かれている大弓と腰に下げられている幅広の剣。
シルバーに近い金の髪は細かく波打ち、顎程で切り揃えられている。
「ーーで、朝の見廻りでやっとこさ気付いたって事かい?」
ギルド館の応接室の一つ、その部屋のソファでふんぞり返り、頭をかきながら、ぞんざいにオーレリアは向かい側に座す壮年の騎士に問い返す。
「その通りだ。」
壮年の副団長は重々しく答える。
オーレリアはこっそりため息をつく。
ニガテだ……
オーレリアは、このお堅い副団長が苦手である。
もう一人の若い方の副団長はノリが良く話しやすいのだが……
目の前に座る副団長は若い方とは正反対でお堅い…
現に今も、領都を護る防御の魔晶石がひび割れている事の報告の合間に、幾つか『女性のたしなみ』についての小言が入ってくる。
「見廻りの兵士は、小さな音を聞いた者もいるようだが、音の出所に確信はなく、闇夜の暗さもあり、いつからヒビが入っていたかもわからない。…もう少し、足を閉じたらどうだ?」
表情を変えず、クライヴは言う。
それを無視し、
「で、何でヒビが入ったんだい?調べたんだろ?」
腿にひじをのせ、手を組みながら前のめりに問う。
「元々、最も古い魔晶石ではあったが、微かだが、外部からの魔力の気配が残っていた。と、言ってもかなり微量だが。…もう少し、襟のある衣類を身に付けてはどうだ?胸が見えるのは問題ではないか?」
胸ったって、筋肉に変わりつつある薄いモノだし、見えてるって、半分以上は確実にアーマープレートで隠れている。
世の中には、もっと際どいモノを着るご令嬢、ご婦人方もいるはずではないのか?
なのに、この程度で小言を言われるとわ……
「…その気配は、ヤバイのかい?」
またも小言を無視し、そのままの姿勢で問う。
クライヴの手が、無意識だろう、鼻下の整えられた髭に触れる。
「危険かどうかはわからない。ただ、絶対に侵入者がいない、とは断言できない。」
「単に、耐久性が落ちて中の魔力に耐えきれなくなっただけじゃないのかい?一番古いんだろ?」
「そう確信が持てるなら、そう報告しているし、注意換気に来てはいない。」
まぁ、その通りだろうね…
オーレリアは息を吐き、ソファーの背もたれに体を預けると天井を見つめる。
夜に見廻りを担当した傭兵団からは、不審者の報告は受けていない。
あったとしたら、娼婦を巡っての小競合いを見廻りの兵士が止めに入っているのを見た程度だ。
その事について、クライヴが何も言わないということは、問題が無いと言うことだろう。
「わかったよ。とりあえず、うちのモン達には見たことの無い奴がいないか、不振な行動をしている奴がいないか注意するように言っておくよ。」
「よろしく頼む。」
クライヴは頭を下げる。
オーレリアはあからさまに顔をしかめる。
「一応、領主様がいない間は、騎士団じゃ、あんたが一番偉いんだろ?そう簡単に頭を下げるもんじゃ無いんじゃないかい?」
「こちらの不手際で報告は遅れ、状況もはっきりと掴めておらず、そちらにも手間をかけさせるのだ。頼む以上、頭を下げるのは普通ではないのか?」
顔を上げたクライヴは、さも当たり前の様に言う。
しかし、王都や他国でも仕事をした経験のあるオーレリアにとって、クライヴの様な行動をとる騎士や貴族は珍しい方だ。
大抵の騎士や貴族は傭兵を見下げる傾向がある。
相当名が知れ渡り、その実力も一国を相手にできるほどのモノならば、別かもしれないが……
そんな傭兵団、いるものではない。
(ここは、この大討伐があるお陰か…)
オーレリアは納得する。
大討伐で傭兵、騎士、領民が協力し合うことで、互いの信頼が培われている……
他の領地や国ではないことだ。
(あ~、隣もそうかな……)
オーレリアは隣領を思い浮かべる。
が、思考を止める。
「まぁ、いいさ。この討伐期間は持ちつ持たれつだしね。」
「では、何かあれば、よろしくお願いする。」
クライヴは、ソファーから立ちり、黙礼するとドアノブに手をかける。
と、振り返り、
「…最近、暖かいとは言え…」
「?」
「女性は、体を冷やすものではない。なにか羽織った方が…」
「さっさと帰んなっ!!!」
オーレリアはたまらず声を張り上げた。
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